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2012年9月28日 第 2 回講義「日中関係― 1 」               講師  江田五月

 

今日は日中関係をテーマに取り上げます。今朝 5 時 30 分に起きて、北京から午後 3 時 30 分頃帰国し、 5 時 15 分に官邸で野田総理に訪中の報告をしました。今年は非常に重要な年、日中国交正常化 40 周年です。去年、野田総理が北京で胡錦濤主席と会い、今年を日中国民交流友好年としようと確認しました。私は飯田橋にある日中友好会館の会長をしています。できて 30 年しかたっていないですが、中国と青少年交流を毎年やっており、会館には 200 人収容の学生寮やホテルもあります。

 

【日中国交正常化 40 周年】

日中友好 7 団体というものがあります。私が会長を務める日中友好会館のほか、日中友好協会(会長 加藤紘一衆院議員)、日中友好議員連盟(会長 高村正彦衆院議員・自民党副総裁)、国際貿易促進協会(会長 河野洋平元衆院議長)、日中協会(会長 野田毅衆院議員)、日中文化交流協会(会長 辻井喬、作家)、日中経済協会(会長 張富士夫元トヨタ社長)です。この 7 団体に外務省がはいって、日中国交正常化 40 周年記念実行委員会をつくりました。

今年は様々な日中国交正常化 40 周年を祝う交流イベントが行われています。 35 周年の際は 400 の交流企画でしたが、今回は 600 を超えています。 9 月 27 日に予定されていた中国側のメインイベント、「中日国交正常化記念式典」は取りやめになりました。これは中国側の判断であり、代わりに中日友好協会の唐家?会長(元の中国大使、 OB リーダーの一人)が 7 団体との晩餐会を企画してくれました。招待されたメンバーのうち、議員は民主党が私だけであとは自民党でした。

自民党の皆さんは、総裁選挙中で決戦投票は議員だけでやるため忙しかったのです。高村さんは安倍さんの一番の後ろ盾でもあり、昨日朝、羽田をたった。話がそれますが、こういった話は学問的ではないのですが、政治学とはこういうことも参考になると思います。

おととい私は北京空港上空が混雑のため、 1 時間半遅れて北京に着きました。昨日の皆さんはなんと 4 時間遅れました。どうしてそんなに遅れたのかというと、羽田―北京便は韓国を抜けて渤海湾、旅順を通るが、大連で突然、軍事演習が行われ、しばらく飛行機は飛べず、中国外務省が軍に要請して、この飛行機は大事だからと話してようやく上海上空コースで北京にはいりました。トヨタの張さんはプライベートジェットだったため、さすがに許可されませんでした。張さんだけ来られませんでしたが、経団連の米倉会長がいて、 7 人で唐会長と懇親しました。戦時ならともかく平時なのに、定期便が軍の演習によって飛べないとはと驚きました。懇親会の前に賈慶林さんと会談しました。共産党内の序列は No.4 です。何故、記念式典が取りやめになったのかということについて、中国側は諸般の事情によってだと説明しています。

 

【尖閣諸島】

尖閣諸島について、日本の立場は、歴史的、国際的にも我が国固有の領土であり、領土問題は存在しない。現に日本が実効支配している。これが日本の主張です。 1971 年になり、海底資源が見つかり、それから中国が言い出しました。

1978 年にケ小平さんが、「今の時期は知恵がない、解決は知恵のある将来世代に棚上げにしよう」と日中平和友好条約締結の際、日本の園田外相に言った。日本はどうしたのか。このへんから微妙になってくるのです。中国側は、日本はそうしましょうと言った。だからそこに領土の問題があって、そしてこれを将来世代に解決を委ねるという了解の共通認識ができたというのが中国の主張です。日本側は、ケ小平さんは言ったが園田さんは黙って答えず、ケさんが勝手に言っただけであり、日本は領土問題は存在しないという主張をそのまま維持しており、何の了解も共通認識もないという認識です。しかし、ことがことだけに日本は、尖閣諸島にどんどん出て何か建てるとかやると中国側もおもしろくない、それもよくわかる。将来知恵のある世代がでてくるまでそのままにしておこう、だけど日本がここを支配している、海上保安庁の船が警備する、それでずうっと 40 年きたのです。

最近になって、石原都知事が米国で講演し、「そんな実行支配があるか、日本はいやしくも国家、国家なら自分の領土は守る、中国に遠慮して何もしないのはだめ、東京都が買う。少なくとも船留まりをつくり、もっとどんどん開発する」都知事は勇ましい。「シナにでかいこと言わせるな、中国の軍艦などオンボロだから日本の軍艦の方が強い」と言った。これに対して、「東京が買う、これは大変だ。日中関係がぐちゃぐちゃになってはいけない。中国側は知恵がある将来世代が出てくるまで待っていようとういうスタンスである。文句言わせない手はないのか、都が買ってやるからいけない、国が買いましょう」となった。昔は鰹節を作ったり、ヤギを飼っていたりしていたが、その後所有者は何もしなかった。あるとき、日本青年社が灯台を了解なしに作ったこともあった。所有者と国とが賃貸借契約し、登記もしたが、この賃借権が来年3月で切れてしまう。切れたら都が買って自由にできる。だったら国が買って安定的な維持管理をしていくために、 20 億5千万円で買うことを閣議決定した。

ところが中国が怒った。中国からしてみれば「自分のものだ。それを何と日本は国有化する、現状を大きく変えることになる、何もしないといったのになんだそれは。将来に委ねるという了解があったのにそれを破棄した。じゃ中国も了解に捉われることはない」。「また日本は、あの第二次世界大戦のことを忘れたのか。こうやって近隣諸国をじわりじわりと攻めてくる、これは大変だ。」と中国国民は怒った。

9 月 18 日、 100 の都市で 100 万人がデモを始め、一部は暴徒化した。中国としてみれば、日本は軍国主義、領土拡張主義、帝国主義への一歩を踏み出したとし、これでは日中国交正常化 40 周年記念の祝賀ムードなどとんでもないと、大もめにもめている。そういう最中でも、今、日中関係は経済的には本当に深い関係になっています。トヨタの車など日本車が大分襲撃されたが、その車は中国の労働者が作っており、それを中国の人が壊すというのはどうも微妙な話です。日本の資本が中国全土に進出し、 1000 万人の雇用をつくっている。中間の貿易は双方で一位であり、日本にとっても経済活動は中国なしではやっていけず、中国も日本なしにはやっていけない状況です。

中国はヨーロッパや米国の不況で海外からの投資が去年 16 %減りましたが、減った分日本が代替しているといえるほど深い。文化でも最近は、谷村新司の「昴」は日本の曲なのかというぐらい中国の皆さんに知られていたり、中国のドラマも日本でみられるなど、かつてとはずいぶん違う関係ができている。しかし、中国の皆さんはそういう関係を全部反故にしても、命がけで戦った日本軍国主義との闘いをもう一度繰り返す愚は避けなければならないが、日本がそういう挙に出てきているのを何としても止めなければと固い姿勢を通していると感じます。

 

日本はあっけにとられるわけです。野田総理からしてみれば、石原さんに買われたんじゃ、中国を刺激することになる。泣きの涙で 20 億円払って買って、日中安定化のためにやっているのに、野田が海外侵出を目論んでいると言われる。今日、中国の楊外相が、「魚釣島を日本が盗んだ」と発言した。「そんなことを言われるのはとんでもない」と野田さんは怒った。中国からみたら、同じ日本の中で都知事と総理大臣でしょう、総理が都知事に止めろといえないはずがない。それはまず都知事にアドバルーンあげさせて走らせて、そこでできた道を総理が来る。だから都知事と総理は結託していると見えてしまう。野田さんからすると石原都知事と結託などとんでもない話であり、誤解もはなはだしい。そういうものすごい食い違いが起きた中で 7 団体代表が中国側から招待されての夕食会であり、単なる夕食会と違った。しかしこういう状況の中で、細い糸でもやっぱりこの糸をきるわけにはいかないと思います。

 

帰国後、中国側の賈慶林さん、唐家?さんと会った模様を野田総理に報告しました。さあ、これからどうすればよいか。日本の主張はさっき言いました。沖縄の人が漁に出て行って、ある時、こんな島があると発見した。そこはどこかの国が主権を主張しているのか調べたが、どうもなさそうだ、日本のものだと。その後、ずっと誰も文句を言わなかった。

民法で無主地先占ということが動産法にある。主のいない土地は先にとったものが勝ちということです。それに対して中国は違う主張をしている。昨日、唐家?さんと会った。これまではことを荒立てない方がよいとしてきたが、こうなった以上、中国は主張を明確にするペーパーを作った。これが配布された。中国の声明の片棒をかつぐのもよくないが、勉強のために見て反論を次回までに考えてきて下さい。いろいろ古文書などひいて根拠をあげて言っており、ブックレットにして皆に配っているのをみると、中国は簡単にひかないですね。

ケ小平は「今の世代は知恵がない、将来必ず知恵のある世代がでてくる」と言ったが、将来世代はもっと知恵がない。ケ小平は頭のいい人だったが、間違った。どういう知恵がいいのか。

 

質問などあれば。

(学生)ロシアとは江戸時代に条約を結んでいたけれども、中国とは多分していない。これが尾を引いているのかなあと。国と国との争いも先に住んだ方が勝ちなのか。無人島にしてしまったのがまずかったのでは。

(江田)一時、水産加工所があった。それをずっと続けておけば問題なかった。そもそもその時、違法に日本人が操業していたと中国は言っているが。

(学生)日本は、領土問題はないのだという主張はするが、なぜ問題がないという根拠があるのか。なにか資料が残っているのか。

(江田)日本の領有権の主張は歴史的にも国際的にも明確で文句のつけようがない。資料は外務省にある。歴史的には、かつて中国人が尖閣諸島付近で遭難した際に、琉球の人に助けてもらったという感謝状が残っている。日本領である尖閣で助けてもらい有難うという資料である。中国側からいうと、明の時代、交易船が琉球の人を乗せて帰った。琉球の人は尖閣を過ぎても何も言わず、久米島まできて初めて帰ってきたと。よってそのあたりが国境だと。そんな話はいろいろある。

領土問題は存在しないは外交上の常套句でもある。竹島については、韓国は領土問題は存在しないと言っている。実効支配している国の外交上の言い方だ。

(学生)世界のどこかで、二つの国が互いに所有する、管理している土地はあるか。

(江田)領土問題はたくさんあるが、両方の国が主権を主張して共同管理している土地というのは聞いたことがない。中国はロシア、インド、ベトナム等々いっぱい領土問題を抱えている。最近だとラトビアとロシアの例があり、ラトビアが譲歩した。タイとカンボジアとの間では、世界遺産の地域について、双方が主権を主張しており、これも激しい論争をしている。

 

【国際司法裁判所】

隣国同士はそういうことはよく起きる。人間でもお隣同志でよくあることで、境界確定の訴えはややこしい訴訟になる。ややこしさを回避するために、所有権確認の訴えに置き換えて裁判を行うこともあるが、それでもややこしいため、裁判所でなくて民間に任せることが多い。土地家屋調査士にお願いし、それでも大ゲンカとなることもある。車庫のトタン屋根がちょっと入っても大変な紛争になる。その場合は引っ越せますが、国と国の場合は引っ越せない。何とか話し合いで解決しないといけない。話し合い以外の解決方法は戦争があるが、これをやったら元も子もない。裁判という方法もある。今回、日本が竹島について国際司法裁判所に提訴したが、韓国が応訴してくれないと裁判が生じない。韓国は政治的に利用するのはけしからんといっているが、国際的な司法手続きで決めてもらえば、勝てば日本の領土となり、負けたら韓国に譲ることで政治的ということはない。紛争解決を司法手続きでやろうと言っているだけである。

残念ながら、この司法手続きで解決しないのであれば、国際司法裁判所など意味ないと思われるかもしれないがそうでもない。国際司法裁判所にどこかから提訴されたら、私の国は必ず応じますと宣言できることとなっており、日本はそうしている。どこからでもどうぞ訴えて下さい、日本は応じます、裁判所の決定に従います。そういう国が多くなっている。

国連ができるまでは国際関係はもっぱら力の世界であった。国連ができて国際司法裁判所ができた。国際刑事裁判所規定の条約を結んでつくった際、日本は最初入らなかった。国際機構はできるだけ最初から入っていた方が発言力が強くなる。あとからだとそれまでにつくられたものに従うようなってしまう。余談ですが、 TPP なども日本に利益にならないから入るのは止めた方がよいと声もあるが、入るのなら初めからがよい。

3年ぐらい前、国際刑事裁判所に入って、今日本から裁判官が出て逮捕状を出すなど、国際社会における法の支配は前に進んできつつある。日本が韓国を訴えるが韓国が応訴しない。しかし、国際社会がもうちょっと進歩してくると、これは応訴してそこの判断に従うというのがだんだん増えてくる。だからそういうことを目指しながら日本もこの際、そうしたことへの一歩として韓国を提訴した。

 

尖閣諸島はどうして日本が提訴しないのか。中国が提訴してくれるといいのですが。どちらかが提訴すればよい。尖閣諸島について日本は領土問題がないと主張しているのだから、あるといって提訴するわけにはいかないと自縄自縛になっている。領土問題があるなら日本が訴えを起こす、中国は応訴しないだろうが、だけどそれは次の世代まで待とう、国際司法裁判所がもっと国際社会全体をしっかり管轄する裁判機構になればそこで判定できるわけで、そうするとそこで知恵のある世代ができたねということになる。ところが領土問題がないのだから、ないものがあるってわけにはいかないので困ってしまう。中国は主張に自信があるならぜひ提訴してくれと言いたいところだが、あれこれ話し合う中で何か知恵をみつけていくしかない。中国が提訴してくれば、日本はどこから訴えられても応訴しますという強制管轄権を認めているので、日本は応訴する。領土問題がないと言っている日本でも応訴する。あると言っている国があればしようがない。

 

【中国の内部事情】

まだ話し合いはそんなところまで到底いっていない。昨日も賈慶林さんと話したのも先ずは主張の言い合いであった。ただ有難いことに、どちらの国も武力に訴えて解決しようということは考えてないはずである。ところが日本では中国は武力でやってくるのではと思っているふしはある。それを中国側に言うとそんなことは全然考えていないとびっくりする。中国は日本が自衛隊を出して来るんじゃないかと疑っている。日本はそんなことは考えていない。両方とも疑心暗鬼であり、ある日、ころっと現実に変わることはあり得る。これはよく注意してそういうことにならないようにしないといけない。

軍事力で解決するということになると、石原さんが言うように日本が勝つかもしれないが勝って済む問題でもない。軍事力で解決はしません。日中の経済関係はズタズタになる。中国は困る。

中国は今や世界を相手にどんどんいろいろなことをやっており、ものすごくアフリカにも進出している。また韓国と中国との間では、今 FTA 交渉やっている最中であり、これにより日中韓経済関係が非常に大きくなる。韓国経済も大きくなってきており、日本を代替する経済になることも可能と言える。日本がだんだんさびれていって、中韓はどんどん繁栄していくとになれば、これは笑いごとではすまない、そういうこともリアルに考えないといけない。

 

やっかいなことになってきた。日中国交正常化 40 年の期間で一番悪い状態になってしまう。

中国の国民感情が荒れている。共産党がやらしているのではという話もあるが、それだけではない。誰か火をつけた人がいるが、それだけ不満が鬱積していないと燃えない。日本だけに向いているのか、それとも中国政府、共産党に向いているのか。中国政府も大変だ。これだけ中国も発展したが、繁栄しているところと田舎の方ではものすごい経済格差がある。格差に中国人自身がいらだっている。地方から大都市に若者が入ってくる。金が儲かると来たものの、失業で、困りはてている若者がいて、共産党支配にいらだちを持ってきた。その皆さんが頼りにしたのが毛沢東である。デモで毛沢東のプラカードがいっぱいみられたが、あれだけ同じものが揃っていると誰かが用意していないとありえない。共産党指導部に不満が向けられる心配がでてきたので、押さえにかかっている。

党大会でトップが習近平さんに代わろうとしており、中国側も政治的に不安定なところもある。日本側も民主党政権が3年目を迎え、非常に揺らいできて、そこへ自民党総裁選挙で安倍晋三さんが総裁になった。総選挙で勝って安倍さんが総理になったらどうなるのか。中国は日本が次第に右傾化し、ナショナリズムが強まってきているとみている。それの一つの表れが今度の領土問題であり、だから黙っていられないというのが中国の説明である。ある程度あたっていると思う。もし、安倍さんが日本の総理大臣になったら、石原都知事と結託することは現実化するかもしれない。領土問題は民族主義、ナショナリズムに一番火がつきやすい道具である。

領土問題でそういう指導部が日本にできて、そこにナショナリズムの火がついたら大変だ。この問題をあおると、それに中国は手を貸すことになるんですよ。それは大変だ、日本にそういう動きを起こさせたらいけないから、この尖閣問題は小さくさせよう、失敗すると中国のナショナリズムが燃え上がる、共産党の指導体制が危ぶまれる、という非常に微妙なところにきています。ちょうど、バルカン半島で一発の銃声で世界戦争に広がるような、そういうことも頭の片隅におきながら、この事態をコントロールしていかなければならないという微妙なところにきている。こうした問題は政治が解決すべき重要な出番なのに、仕切っていく知恵者がいない。

 

(学生)外交に関して立場のある人が、失言をなさる。それを食い止める指南役はいないのだろうか。政治のシステムがないのか。

(江田)ミスマッチがある。中国側はいやしくも中国 13 億の民の頂点の胡錦濤さんが日本側の野田総理のたっての願いを聞き入れて、忙しいのに 15 分間立ち話に応じた。そして丁寧に礼を尽くして中国側の立場を説明して、国有化は反対だ、思いとどまったらいかがかとアドバイスをした。そのわずか二日後に国有化を決めるとは中国国民に対して最大の侮辱である。そういう感じが中国国民の中にわあっと広がった。半分は当たっているけど、半分は脚色あるかもしれないが。

日本側が「そうじゃないんだ。国有化の検討は 6 月頃から始め、ずっと検討を重ね、中国側にも説明してきた。ウラジオストックでトップ同士がいるのだから、是非会って説明させてくれ」と。

「十分、意は尽くしている。これで機を逸し、地主が国はやめて他に売るといいだしたらどうしようもない。中国は多分、計算間違いをしたんじゃないか。胡錦濤さんが止めろと言えば、日本は聞くだろうと誤解をしたのではないか。」というのが日本側の説明である。

日本はチームでやっているが、結果からみるとチームの判断が甘かった。外交ルートだけでなく、日頃からいろいろな信頼関係が積み重なっていればそういうときに役立つが、今はうまくいっていない。これはある意味では民主党政権の弱さと言える。政権交代のない民主主義は中途半端であり、やっと政権交代した。しかし、民主党が政権を運営していくだけの能力を十分蓄えていたか、そうでもない。現に今の日中関係ひとつとっても、日中 7 団体の政治家がトップの 5 つのうち4つは自民党である。そういう今までの積み重ねによる人の厚さが自民にはあり、民主党はまだ若く、薄い党で、こういう時に裏目に出てしまうという現実は確かにある。いずれにしても丹羽大使が代わる。次の大使が決まらないのも困ったものだ。

河野洋平さんが唐家?さんに伝えたのは、以下の3点である。

•  暴動とか軍事力とかでなく、外交による解決

•  頭に血が上った状態ではなく、まず事の沈静化

•  日中の平和友好関係の再構築

日本と中国の外務省事務次官同士のパイプはつながっており、そこを機能させてくれと中国は言っている。

 

【公務執行妨害と出入国管理法違反】

香港の船の乗組員が尖閣諸島に上陸した件について、どういう処理にしたかというと、逮捕して送り返した。一昨年の中国の船長の時は逮捕して送り返さず、捜査を継続して拘留し、拘留延長までした。その後、途中で起訴猶予にして送り返した。何故扱いが違ったのか。現場での裁量で大きな違いがでる。前は那覇地検は処分保留で釈放したが、同時に入管が身柄拘束し、強制退去させた。今度はどうしたか。刑事訴訟法では逮捕したら 48 時間以内に検察に送致する、検察は 24 時間以内に拘留請求するか、釈放するかしなければならない。今回香港の人たちは検察に送致せず、入管に送った。入管はそこで強制送還した。出入国管理法違反だけの場合、入管に送って入管が処理できる規定がある。前にそうしなかったのは公務執行妨害だったからであり、刑法犯は検察としては送致せざるをえない。

問題は、最初の時に公務執行妨害で逮捕するのか、出入国管理法違反で逮捕するのか、そこの分かれ目が、その後の大きな分かれ目につながってくる。公務執行妨害とは暴行または脅迫で公務の執行を妨害することである。暴行または脅迫で人の財物を強取するのが強盗である。強盗の暴行と公務執行妨害の暴行は違うというのが判例であり、強盗の暴行は人の抵抗を抑圧するに足りる暴行、つまり、手をもったぐらいでは暴行にはならず、腕をひねりあげてどうだとやってはじめて暴行になる。公務執行妨害の場合は、人に向けられている権力の防止であり、ぱぁっとやるだけで公務執行妨害になるというのが判例である。レンガをぱぁっと投げた場合、レンガが飛んでくるのですから、公務執行妨害にしようと思えばできる。判例は意外なもので、少なくとも法解釈では極力広く、刑事だったらとにかく有罪の方向に傾ける。証拠判断の場合はあやしければ被告人の利益になるのだが。例えば、税務署の職員が査察にきてそれに対し て鉛筆かなにかでわぁっとやったら、公務執行妨害というのが判例の立場である。

レンガを投げたって届かないのだから無視するとその時判断すれば香港のような事例になる。

船がぶつかったってこすったと同じで、漁船と海上保安庁の艦船では勝負にならないから、そんなものは公務執行妨害にならないとすれば前のだって事件にならない。しかし、公務執行妨害だと言われれば公務執行妨害になる。まあ、最初の一歩の違いがこれほど大きな違いになることからも、やはり現場というのが重要になる。

 

配布した資料を読み、中国の主張に対する反論を考えて下さい。注目すべき点は日清条約の締結の日付はいつかということにあるのではないだろうか。

 

(学生)議員外交の成果はどこにあるのか

(江田)中国の要人と会えたのは大きな成果と思う。 11 月に AKB48 を連れていこうとしているのだが中国側の事務局長が会ってくれない。今回は唐家?さんの招待ではあるが、中国共産党 No.4 の賈慶林さんがあってくれたのは今後につながっていくと思う。議員外交は官僚の外交とは違うわけでお互いに協力していくために意義がある。

 


2012年9月28日−第2回「日中関係-1」 ホーム講義録目次前へ次へ