2007年5月15日 >>質問事項メモ

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166 参院・法務委員会

10時から法務委員会に出席。少年法改正案の質疑で、11時から1時間、私が長勢法相を中心に法務省と警察庁の担当者と衆議院での修正案提出者に質問しました。

まず、東京地検特捜部の証拠品誤廃棄問題を取り上げ、口で立派なことを言っても、こういう想定外の不祥事が起きるのでは、国民の信頼は得られないと、強く釘を差しました。次いで本題に移り、冒頭に、私と少年法との関わりにつき、森田宗一さんのことや家裁勤務のことなどに触れ、今回の改正に関する安倍首相の発言を取り上げました。そして、凶悪化と幼稚化、2000年改正と今回の関係、触法少年調査のあり方などにつき、時に声を荒げながら質問しました。問と答がすれ違う場面が多かったと思います。


平成十九年五月十五日(火曜日)

○江田五月君 少年法改正案について質問をいたしますが、その前に、新聞報道でちょっと看過できないことがありますので聞いておきたいと思います。

 事件の捜査とか調査とか、これにかかわるときにどういう心構えで行わなきゃならぬか。言葉でいろいろいいことをおっしゃっても行動が付いていかなかったらどうにもならない。逆に、行動がその逆の方向へ行っていたんではこれは幾ら言葉で言われても信用できないということになるわけで、少年事件のことではありませんが、東京地検、証拠うっかり廃棄、特捜部ですね。これについて、これは国民も、法務委員会やっているのに何も触れないというんじゃ、これは法務委員会の見識を疑われるので、一応伺っておきたいと思うんですが、緑資源機構の官製談合事件で公取が捜索をして証拠を収集をした、これを東京地検が預かっていて、そしてどこかへ運ぶのに一箱だけ忘れていて、これがごみだと思って捨てられたと、既に焼かれたと、こういう話ですが、いろいろありますね。

 まず第一に、証拠品がうっかり廃棄されて焼かれちゃったという、何か新聞によると、というか、これはほかの、私も確か耳にしたと思いますが、警視庁が凶器と見られる木刀、のこぎりなどを紛失していたことが発覚したと。これは地検は誠に遺憾というコメントを出したとかいう話でありますが、地検、当の地検がこういうことをやっていた。

 それだけじゃないんですね。問題は、この事件はまだ公取から告発を受けてないんですね。なのになぜ証拠品が地検にあるのか。これは公取が事件を調査をするときに、起訴をする検察といろんな調整、調整というとちょっと言葉は悪いですね、いろんな打合せをしながら、協議をしながらこれは告発してくださいねとか、ここのところをちょっとよく調べてくださいとか、いろんなことをおやりになる。私はそのことに若干の批判を持っておるんです、本当は。公取は公取の判断できっちりやって、それで地検は地検の判断でまたそれをちゃんと処理をするという、そういうある種のけじめが要るんじゃないかと思うんですが、しかし、今現実にはそういういろんな協議の上、事件を処理している。協議ならいいんだけど、証拠物まで地検に、何の手続も多分ないんです、これね。領置とかいうようなことを多分やってないんじゃないかという気もするんですが、だってやりようがないですよね、事件が来てないんだからね。

 いずれにしても、そういうような問題もあってこういうことになっているので、昨日通告をしましたら、これは今まだ動いているところで告発もされてないんで、できれば質問は控えてほしいというような様子であったんですが、そうはいきませんが。まだお答えにくい部分もあると思いますけど、法務大臣、これどういうふうに報告を受けてどうされるおつもりか、具体的事件ですから、こういうふうにすると言うとまたこれが法務大臣が指揮したとかいうようなことになるかもしれませんけど、今の法務大臣の、どういいますか、お考えを、今の程度で結構ですからお答えください。

○国務大臣(長勢甚遠君) 先におっしゃっていただきましたけれども、捜査機関の具体的活動内容にかかわるので詳細にお答えすることは差し支えますけれども、いずれにしても、この東京地検において公正取引委員会から預かっていた証拠品の一部を紛失、破棄したという事態が生じたということの報告は来ております。私自身も何ということだと驚くといいますか、信じられない気持ちでございまして、誠に申し訳ない次第だと思っております。

 今、公取との関係についての御質問でございますが、一般論として申し上げれば、公正取引委員会の犯則調査は告発に向けられた調査であるところ、告発後の捜査主体であり、公訴維持に当たる検察当局は、告発前であっても犯則調査部門との間で必要な情報交換、その他の連携を取りつつ捜査を行うのは当然であると考えております。そして、そのことは、公正取引委員会に犯則調査権限が与えられた趣旨に沿い、また当然に予定されているものと言えますので、公正取引委員会の犯則調査部門が差し押さえた証拠物を検察当局に貸し出す行為や、検察当局がこれを借り受ける行為には問題はないものというふうに考えております。

○江田五月君 貸し出したり借り受けたりするのは問題がないと言われましたが、どういう手続でやっておられるのか、何か受領証とかをきっちり出しているのかとかいうようなこともいろいろ調べてお知らせをいただきたいんですが、今日はやめておきますけれども。優しいと言われますが、優しくはないんですけど、今日、余り無理にそんなことを答えていただくこともできないかと思いますが。

 ひとつ刑事局長、これ、東京地検がコメントを出したというように新聞には書いているんですが、コメントを出したというんだと文書か何かでお出しになっているのか、御存じですかね。もし文書で出しているんなら、この委員会に文書を提出してもらえませんか。

○政府参考人(小津博司君) 東京地検からは、マスコミの方に口頭でコメントをしたというように報告を受けております。

○江田五月君 口頭、口頭ね、荒唐無稽じゃないかと。

 これ、故意にこの証拠をなくしておいて、そして、これはちょっと告発を受けても事件として扱えないからというようなことでうやむやに処理するなんということがあったら、これはもう大問題ですよ。そういうことさえ疑われるようなことですので、きっちり責任問題含めてしっかりした処理をし、当委員会に報告をしていただきたいと、今そのことだけはひとつお願いをしたいんですが、いかがですか、法務大臣。

○国務大臣(長勢甚遠君) 捜査の問題でございますので、事案に応じてどのように考えるか、改めて検討させていただきたいと思います。(発言する者あり)

○江田五月君 いや、本当に、捜査の問題じゃないと。どういうか、法務行政全体の信頼性の問題なんですよ。こういうことをこのままにしておいて、そしてうやむやにしたままで、幾ら触法少年に対して警察はこんなに優しくいろいろやっていますとかいったって、信用できないという話ですから、これはここで、この問題だけにかかわっておると少年法の質疑ができませんので次へ行きますが、本当に肝に銘じておいていただきたいと思います。

 さて、少年法改正案ですが、私は実は少年法とか少年保護についてはかなり長いかかわりを持っております。一九六三年ですからもう四十何年か前、懲戒処分を解かれて大学に戻った後に、長勢大臣とは一緒に入りましたから、大臣は私より先に本郷の方に行かれておるんですが、私は後から付いていったんですが。

 縁あって森田宗一さんの御自宅にしばしばお伺いをするようになりました。森田宗一さんは、戦後、家庭裁判所の開設にかかわられたり、また少年法の制定にも関与されて、例の有斐閣のポケットコンメンタールですかね、少年法を団藤重光先生と共著でお出しになっている方で、少年法の権威、今年二月に九十二歳で他界をされまして、私も葬儀に駆け付けました。つい先日、しのぶ会も行われましたが、この場をかりて少年保護の大先輩の御冥福を心からお祈りをさせていただきたいと思います。

 その後、私自身もまだ三十代のころに、裁判官として少年審判を主宰をいたしました。森田さんあるいは同僚裁判官や職員の皆さん、特に家庭裁判所調査官の皆さん、そして何よりも少年自身から非常に多くのことを学んだと思っております。当時は付添人は本当に、制度はあったんですが、付添人をやってくれる弁護士さんはほとんどいなかったですね。しかし一方で、補導委託先など社会的な少年保護のリソースというのはかなりあったと思いますし、また家庭裁判所にやる気があったと思うんですね、当時。しかし、今、付添人は確かに随分増えてまいりました。ところが、どうも家裁の元気、あるいは社会の少年保護のいろんなリソース、そういうものはどうなっているかと思いますと、ちょっと心が寒くなるような思いがいたします。

 私、なぜそういう話するかというと、そういった家裁の問題、あるいは児相の問題、あるいは社会的な少年保護にかかわるリソースがだんだん弱体化しているんじゃないか、そのようなことを、そのようなことを少年にしわ寄せするような形で解決しては断じてならぬということなんですね。これはやっぱり、家裁ももっと元気に働けるように、あるいは保護司さんたちもそうですし、またいろんな社会のリソース、こういうものが少年保護のために一生懸命頑張ろうという、そういう制度をつくっていくように我々立法にかかわる者は最大限努力をしていかなきゃならぬし、また法務大臣、法務行政の中で、あるいは今日は厚労省の皆さんは呼んでませんが、児相の実際の運営の中で少年の保護、これを第一に置いて、国連の子ども特別総会決議にもあるように、チルドレンファーストということですべてが努力をしていかなきゃならぬと、私自身もそう自分自身肝に銘じておきたいと思っているところです。

 今回の改正は、私は実は若干責任を感じているんです。長崎の事件や佐世保の事件があって、当時私、ちょっと何をしていたか忘れたんですが、民主党の中の刑事司法関係、法務関係の何かの役を持っていたと思うんですけれども、この事件は大変衝撃的な事件で、この二つの事件、事案解明、刑事責任年齢に達していないからというんで事案解明ができないということでいいんだろうかとか、あるいは十四歳未満で児童自立支援施設にしか入れられない、しかし強制的措置がとれる児童自立支援施設というのは数が少ない、もっと多くの児童自立支援施設が強制的措置がとれるようにするのがいいのか、しかしそうすると児童自立支援施設というもののまた性格ともこれは関係するわけですから、それでいいかという問題も出てくる。しかし、何か一般の児童自立支援施設だけで社会が納得するだろうかというようなことを考えると、保護処分の弾力化、少年院送致の弾力化ということも考えなきゃならぬのじゃないかというようなこともちょっと言ったことがございまして、余り自分で思い上がっちゃいけませんけれども、私が言ったことがこういう提案になってきたかなというような思いがあって、それにしてはちょっとこの今回の提案は悪乗りが過ぎるんじゃないかとじくじたる思いも持ったりしながら質問をいたします。

 まず、この今回の改正の目的は一体何なんだということなんですが、法務大臣に伺います。

 安倍首相は、衆議院の法務委員会で、これ我々から言わせれば強行採決ですが、採決の後に記者に聞かれて、残念ながら少年犯罪が凶悪化しており、被害者の気持ちも踏まえればやむを得ない、各紙報道の、おおむねこういうトーンですね。残念だ、しかし凶悪化がある、被害者の気持ちを踏まえてやむを得ないと、こういう単語が並んでいるわけですが。

 安倍首相に聞いてくれと言われるかもしれませんが、衆議院の方でこれについて法務大臣お答えになっていますので、こういう安倍首相のコメントというのをどう思われますか。

○国務大臣(長勢甚遠君) 今回の法案は、少年の非行に関する事実の解明をより一層進めるということ、そして少年の状況に応じた保護処分の選択を可能にするということを内容とするものでございまして、少年の健全育成を図るために必要な法整備を行うという趣旨のものでございます。その背景には少年非行の状況があるわけでございますが、先般来、刑事局長から御説明したとおりでございます。そういう状況の中での、いわゆる厳罰化を目的とするというものではない、今申しましたように、健全育成を図るために必要な法整備を図るという趣旨のものでございます。

 総理におかれましても、当然そのことを御理解の上で御発言をされたものと理解をしておるわけでございます。

○江田五月君 御理解の上じゃないと私は思うんですよ。

 というのは、新聞報道をもうちょっと子細に見ると、少年院送致年齢の引下げについての認識を言ったんだという報道もあるんですね。それから、厳罰化を図る内容であるかについての認識だという、そういう報道もある。要するに、全体として、安倍首相の認識というのは、本改正案は少年事件の凶悪化に対応をして厳罰化を図ることで、それは被害者の気持ちを考えたらやむを得ないんだと、こういう内容なんです。したがって、今の事案の解明、そして処分の弾力化、これがいいとか悪いとかというふうに安倍首相は何も言っていない。ところが、この法案というのは厳罰化じゃないとおっしゃるわけですね。

 安倍首相に聞いてくれと言わずに、ちょっと、そこの、安倍首相はどういう理解でこういうふうなコメントをされたかお分かりですかね。

○国務大臣(長勢甚遠君) そのコメント自体について直接真意をお伺いしたことはないわけでございますが、少年非行が高水準で推移をしてきておる、また非常に重大な事件も起きておるということについて、世論のいろんなお考えもあるということが背景にあって、そういうことも背景として今回の法案になっておるわけでございますが、そういう中で、これからの健全育成を図る上でどういう方策があるかということで今回御提案申し上げているわけでございます。

 総理もそのことを十分御理解の上で、この法案の意義を理解していただいておるというふうに思っております。

○江田五月君 安倍首相が理解しているかしていないかをここで法務大臣とやり取りしたってしようがない話ですが、被害者の気持ちを踏まえるとと言っているんですが、今回の改正案に被害者保護ということは何かちょっとでも入っているんですか。

○政府参考人(小津博司君) 直接ではございませんけれども、例えば、重大な事件に係る触法少年の事件についてできるだけ家庭裁判所の審判を経ることにしようということにつきましては、その家庭裁判所の審判というものを通してと申しますか、介してと申しますか、被害者の方がその事件の内容等々を知るなどの機会を得ることができるということになるわけでございまして、そのような意味では被害者の方の御要望に沿う面もあると理解はしております。

○江田五月君 小さなところを見付けましたね。今回の改正の中の本当に小さな部分で、家裁へ行って審判で、審判にはいろいろ被害者がかかわるようなことも先般の改正で取り入れたからというんだけど、ちょっとそれはこの安倍首相のコメントの筋道とは違うんじゃないですか。

 私は、安倍総理大臣、少年保護のことなど何も分かっていないんで、分からずに、ただ単に世間一般が、少年に対しては甘いんでこれに対して厳重に対処しなきゃならぬ、したがって少年法の厳罰化はいいことだ、そんな空気がある中で、それに、まあポピュリズムというんですかね、乗っかって、いいことだいいことだと、あるいはやむを得ないというようなことを言うことは本当にやめてほしいと思っております。もっと本当に真剣に少年保護のことを考えなきゃならぬと思うんですが。

 さて、法務大臣ね、少年犯罪が凶悪化しているかどうか、これは今いろんな統計の話なんかはありますけれども、その統計の見方もいろいろあると思いますが、思いますが、私が思うのは、凶悪化というこのことは何を意味するんだと。少年事件というのが身の毛もよだつような、とても大人じゃ考えられないような残酷な、残虐なことを行うようなことになってきて、だから凶悪化しているんだと、よってこれに対しては厳しくと。しかし、それはちょっと少年犯罪というものの見方が違うのではないかという気がします。

 少年というのは汚れのない天使のようなものとは違うんですよ。そうじゃないんです。少年の心の中はもっともっとどろどろしているんです。当たり前なんです。

 こういうことを言うんですね。人間というのは哺乳類の中で一番未熟で生まれてくるというんですね。とにかく生まれてきたときには首も据わっていない、ぐにゃぐにゃで、みんなが保護して大きくしていかなきゃ、そのままで置いておいたんじゃもうどうにもならないと。何とかポストができるなんというのも、そういうことなんです。もう一番未熟な状態で生まれて、これが随分長い時間を掛けて、次第次第に育っていくんで、その過程でいろんな、すうっと育つ子供ばかりだったらそれは手間暇掛からないけど、そうじゃないんで、いろんな脇道へそれたりいろんなことをする、心の中もいろいろ動いていく。

 そんな中で、まだ幼稚な、ある意味で残虐というようなことの判断さえ付かない、そんな状況を残したまま、何か感情の赴くままに事件を起こす。大人の目から見たら、それはもう極悪非道、とても許し難い。だけど、子供のそのときの気持ちからすると、幼稚性の表れなんだというようなことも一杯あると。そこの見極めをやって適切な処遇をするのが家庭裁判所の役目なんですよね。

 私自身も家裁で事件を扱っているときに、もう本当に、例えば殺人、殺人だけど、これは保護処分、保護観察と、そんなことをしたこともあります。いや、不処分でもいいかと思ったこともあります。どういう事件かというと、まあ十八、十九の女の子が、いろんなことがあって子供が、おなかが大きくなって、そしてある日便所で産み落とすと。これは殺人ですね。しかし、要保護性というのは決して高くない。その子自身が一番傷付いているわけで。あるいは、単にちょっとした無免許運転。しかし、その子を調べてみると、その要保護性というのは非常に高い。この無免許運転についてはこれはきっちりした保護処分をしなきゃいけないというんで少年院送致にすると、そういうこともある。

 少年事件の見方というのをそこまで是非理解をした上で見てほしい。何か、刑法犯の凶悪犯、粗暴犯がこういう件数になっているから少年は今凶悪化しているとかいう理解は是非慎んでほしいと思うんですが。そして、社会全体で少年の非行についてそういう物の見方をしないと少年保護というのは成り立たないんだということを是非理解していただきたいと思うんですが、法務大臣、いかがですか。

○国務大臣(長勢甚遠君) 少年に関する大変含蓄のあるお話でございまして、そのことはおっしゃるとおりだろうと思います。

 やっぱり少年に対して社会全体、我々も含めて、そういう存在であるということの認識に立っていろんな政策、施策を、また現場においてもそういう気持ちで接すべきことであるということはおっしゃるとおりだろうと思います。そういう中で、今回の法改正を踏まえて、事案を十分に認識をして、それに沿った対応が取れるようにやっていく必要があるものと考えております。

○江田五月君 分かっていただいたかどうか。お分かりいただけたでしょうかという最近のテレビの口調ですが、本当に分かってほしいと思うんですよ。

 さて、今回の改正は、これ今、改正自体は事案解明とそれから処分の弾力化ということですが、その目的といいますか背景といいますか、提案理由説明では、近年ということで始まって、少年事件の増加、それから凶悪犯の増加、凶悪化ですね、そして触法少年ですからこれは低年齢化。少年事件の増加と凶悪化と低年齢化、そして深刻であるからそれを踏まえてこういう改正にするんだというふうに書いてあるんですが、今の増加と凶悪化と低年齢化、これが今回の改正が対処しようとする少年事件の今の状況だと、こういう認識でいいんですか。

○国務大臣(長勢甚遠君) 提案理由で申し上げておるとおりでございますが、短期的にここ一、二年どうという話ではなくて、やはり趨勢的に増加の傾向、そして予断を許さない状況にあるということは共通の認識であろうと思います。

 そしてまた非常に凶悪な事件も起きておるわけで、こういう問題に対処して社会全体として対応をきちんとやっていかなければならないというのが、みんなが考えておるところだろうと認識をしております。

○江田五月君 私はもうちょっと論理的に考えていただきたいと思うんですよ。この提案理由の説明の中にも、このような現状を踏まえ、云々云々とずっと書いてあって、そしてこういう検討事項があって、その検討事項を実現するために今度の改正案を出したんだという趣旨だと思いますが、これらの検討事項はいずれもかねてから立法的手当てが必要と指摘されていたところでありますと。つまり、現時の少年事件の動向に対処するということと、かねてから立法的手当てが必要と指摘されていたことと二つのことが書いてあるんですが、今度の改正は、今の少年事件の動向に対応するというよりも、かねてから指摘されていた懸案、これを解決しようということではないんですかと。助けを出しているつもりなんですが、どうなんですか。

○国務大臣(長勢甚遠君) もちろん、ずっと議論のあった立法が必要、手当てが必要であるという議論のあったことでありますと同時に、昨今の状況から見てそれに対する必要性といいますか、立法の機運が高まったというふうに理解をしております。

○江田五月君 じゃ伺いましょう。

 二〇〇〇年ですよね、前回の改正が。二〇〇〇年の改正のときに、今の少年非行の増加とか凶悪化とか、それが何であるかは今ちょっと議論しませんが、増加とか凶悪化とか低年齢化とか、少年事件の動向は看過できない、したがって改正をするんだと、これは法務省が提案したんじゃなくて議員立法ですが、知らぬ存ぜぬとはそれは言えませんわね、法務省としても。そういうことで改正をしたんですよ。

 そして、私ども民主党は、これ恥をさらすというか、我々自身一生懸命悩んだということを言いたいんですが、本当にそれでいいのかという議論をしまして、それで衆議院の段階では造反が出たんです、たくさん。出たんです。それで参議院に移ってきたんです。私は当時責任者で、そして参議院で修正をしてもらったんですよ。

 当時、確かに少年事件についていろいろと困ったことはあった。何より何が困るかというと、少年自身が、少年の時代に犯罪を起こせば罰せられないから今だとかいってやったというようなことを言うような少年さえ出てきて、つまり少年法の運用が社会全体の確信、法的確信によって支えられているかどうかが非常に危ないことになってきたと、これはマスコミの責任もあると思いますけれどもね。そういう状況になってきて、何か手当てをして、立法として手当てをしないと、これはそのまま今の状況をほっておいては少年法及び少年保護の理念に対する社会の確信が元へ戻らない。

 だからというので、我々、これは何かしなきゃいけない、しかしその内容がこれでいいのかということはあって。まあ厳罰化です。検察官の関与にしても、あるいは刑事責任、逆送年齢を引き下げることにしても、厳罰化です。厳罰化がそのような社会の確信の立て直しに役に立つのかどうか、これは証明はないんです。何のデータもないんです。ないけれども、じゃやってみようと。やってみるけれども、五年間期間を置いて、そしてその間の状況を検討し、見直しをしようというので、そういう見直し条項を参議院で修正で加えて。

 これ本当に、私も当時の活動日誌、今ずっとさっき見てみたんですけれども、もう連日のように交渉しました。現場での交渉もしました、現場以外のところでもいろんな交渉をしました。そして修正というのを入れて私たち民主党も賛成をして、それで参議院で議決をして衆議院に送って、衆議院でも我々賛成して二〇〇〇年の改正を実現したんですよ。で、二〇〇一年からこれが施行された。

 そのときは、増加、凶悪化、低年齢化、これに対処するという。で、今回も同じ増加、凶悪化、低年齢化に対処するというんだったら、二〇〇〇年改正の検証を踏まえてでなければ出せないはずじゃないですか、今回。それを私は言っているんですよ。だから、そうじゃなくて、あのときにまだ残っていたものがあったからそれを直すんだというなら、それは百歩譲って分かると。だけどそうじゃなくて、今のような少年事件の傾向がこうだからといって、二〇〇〇年の改正からまたここで、しかも今度は法務省がお出しになる。これは筋が違うんじゃないですかと、そういうことを言いたいんですが、法務大臣、いかがですか。

○国務大臣(長勢甚遠君) 平成十二年の改正の際は私が衆議院の法務委員長をいたしておりましたので、大変先生方に御苦労掛けたこと、先生ほど記憶力がないので正確には覚えておりませんが、御苦労掛けたことだけは覚えておりまして、当時衆議院の筆頭理事は佐々木秀典先生だったと思いますが、大変御苦労掛けたことを委員長として覚えております。そういう意味で、大変今のお話、迫力があるわけでございますが。

 御案内のとおり、十二年の改正では、少年事件の処分等の在り方の見直し、少年審判の事実認定手続の適正化及び被害者への配慮の充実というものを内容としておったと思っております。一方、本法案は、平成十五年十二月に策定された青少年育成施策大綱等や、平成十四年三月に閣議決定された司法制度改革推進計画に掲げられた新たな検討事項を中心に、平成十二年改正後の五年後見直しとは別に所要の整備を、法整備を行うということにしたものでございます。

 本法案に盛り込まれた事項は、かねてから立法的な手当ての必要性が指摘されながら、平成十二年の改正後の少年非行情勢等から改めて積極的な議論の対象となったものと考えておりまして、前回の改正時に残された問題というわけではないんではないかというふうに考えております。

○江田五月君 そこで、修正案提出者に伺いますが、大変な、かなりの修正をされたことは事実だと私も受け止めたいと思います。なぜここまで思い切った修正を与党の方でされたかですが、それでもまだ問題はあると思うんですけど、なぜここまでされたか。

 それは、私が今言ったように、二〇〇〇年改正をちゃんと踏まえなければその一般的な法改正、少年法改正というところはそれは無理ですよと。しかし、佐世保事件、長崎事件などで前から残っていた事案解明の手続とかあるいはその保護処分の弾力化とかということの懸案が鋭く社会に提起をされた。だから、これはそこの部分はちょっともう最小限の手当てをしておかなきゃならぬ。ところが、今回、最小限の手当てより更に進んでいろんなものが入ってきているんで、まあしかし入ってきたものをゼロにするわけにもいかないから、そこのところには一杯条件を付けて、極力そのとげを抜いて、今の調査のことと少年院送致年齢のことについて手当てをしたんだというのが修正案の皆さんの気持ちじゃないか、提出者の皆さんの気持ちじゃないかと推測するんですが、いかがですか。どちらがお答えになる。

○衆議院議員(大口善徳君) 今、江田委員の非常に含蓄あるお言葉をいただきまして大変勉強させていただきました。

 私どもは、やはり衆議院のこの政府の案は政府の案でありますが、私どもやっぱり立法府としての見識を示さなきゃいけない。今回、三月二十八日、四月十日と法務委員会の審議が行われまして、四月十一日に少年院そして児童自立支援施設等にも行かさせていただきまして、児童相談所にも行かせていただきました。そこのいろいろ現場の話を聞く。そして、四月十三日には参考人からいろんな貴重な御意見をいただく。また、厚生委員会との連合審査もさせていただく。こういう中で、やはり例えば虞犯少年に対する調査については、いろいろな、その対象が限定されていないので非常に不安があると、こういうことを参考人からそういう話があったりとか、あるいは少年院なのか自立支援施設なのかということは、現場を見させていただいて、やはりこの下限というものを設けなきゃいけない、参考人もそういうお話があるとか等々、やはりこの委員会の審議また視察の中での貴重なこの成果というものを今回修正案、修正という形で立法府の見識を示すためにやらせていただいた、こういうことでございます。

○江田五月君 何か問いと答えがちょっと擦れ違っているような感じですが。

 私は、そういう意味でこの少年保護の理念、これは少年保護にかかわる者はだれも疑っていないと思うんですね。少年というのが、先日、参議院の本会議で千葉景子さんが質問されましたが、育ち直しと。少年が自分で育っていく、その育っていく育ちがいろいろ揺らいだときに、その少年の自分で育っていくこの道筋をへりからちょっと手助けをする。そして、そのことは本当に健全な社会人をつくっていくためにどうしても私たち取り組まなきゃならぬ、言わば人間社会の非常にこの未熟な状態で生まれた子供をちゃんと社会の構成員にしていくための人間社会が持っている重要な責務なんだというような思いで少年保護というものをやっているわけで、それで二〇〇〇年改正でああいうことをやった、これはある種の社会的実験で、しかしそれがもう一度少年保護の理念に対する社会の確信を取り戻すことに役立ってほしいという思いをみんな持っているんですが、その思いだけじゃいけないんで、やっぱり実際に行動で少年保護の理念をもう一度みんなで大切にしようということを社会の皆さんに理解していただく、その努力をしなきゃならぬ。

 ところが、私は、どうもその努力が足りなかったんじゃないかという気がしております。我々もそうですが、特にその衝に当たる法務省、どういう少年保護の理念に対する社会の確信を取り戻すための努力をこれまでしてこられたのか、お答え願えますか。

○国務大臣(長勢甚遠君) 先生の御質問の趣旨は、少年保護の意義というか理念を国民に分かるようにどうしてきたかという御趣旨だろうと思います。

 それにぴったり合っていたのかどうか、私は、正確には私自身がまだ理解していないかもしれませんが、十二年の改正法については、法務省としても関係省庁と協力して改正の目的等を分かりやすく説明したリーフレット、ビデオを作成し、リーフレットについては全国四万四千部余りを配付するというような努力をいたしておりましたし、また具体的内容についても、担当者から一般向けにQアンドA形式とした分かりやすい解説書を執筆するなどして周知に努めてきたところでございます。

 今回の改正についても法務省のホームページに掲載しておるわけでございますが、今後とも関係機関と連携しつつ、この十二年の改正も含めて広く国民に少年保護の意義を理解していただくように努めてまいりたいと考えております。

 ただ、制度の説明だけでは、先生の言っておられることとちょっと違うことを私は言っているのかなと思いながらしゃべっておるんですが、是非そういう気持ちをきちんと伝えるような仕組みも考えていかなきゃならぬなと確かに思います。

○江田五月君 違うように思いながらということを言われてしまったらこっちもどうも追及しにくいんですけれども、違うんですよね。

 制度の説明もさることながら、法務大臣の下にあるすべての少年保護にかかわる皆さんが一つ一つの少年保護の現場で、それは保護司さんであったり、まあ家庭裁判所は法務大臣の下にはありませんけれども、かかわる皆さんが一つ一つの少年保護の現場でいろんなことをやるときにこうやって自分たちはやっているということを、プライバシーの問題なんかはもちろん注意するのは当然ですが、社会の皆さんに理解をしていただいて、少年というのが立ち直っていって、そして本当に健全になっていく例は一杯あるはずなんですよ。少年院に入った、出てきた、もうあいつは少年院上がりだからとかいうようなことはもう極力なくして、例えばそういう子供を雇い入れるような機関を一杯増やしていくとか、雇ってこんないいことがあったというような事例もそこはかとなくみんなに伝わっていくような努力をするとか、そういう努力が必要なんじゃないかということでございまして、分かっていただけたと思いますので、是非よろしくお願いをしたい。

 触法少年の調査についてちょっと伺っておかなければなりませんが、これ、いろんなことを伺いたいんですが、時間の方がだんだん来ておりまして、触法少年の調査というものが今回法定されると。強制調査もできるようになるが、もちろん少年自身の事情聴取を強制的に行うことはできない、身柄を確保するというようなことはできないと、しかし任意で触法少年に事情聴取をする権限というものを警察が持つようになるということなんですね。これは、全面的にノーとは言いませんが、しかし危ないことではあるんですね。

 警察庁の方に伺いますけれども、犯罪捜査規範、ここでいろんなことをお書きになって、少年についての特則もある。この少年の特則の関係は犯罪少年と触法少年で違いがありますか。

○政府参考人(片桐裕君) 御指摘のように、犯罪捜査規範において少年事件の捜査に関する特則を設けてございます。これは直接的には犯罪少年にかかわるものでございますけれども、他方で少年警察活動規則という国家公安委員会規則がございまして、ここにおいて犯罪捜査機関で定められている配意事項とかいうものはそれに準ずるという形でもって準用されているということでございます。

○江田五月君 私が聞いたのは、そういうものは犯罪少年と触法少年とで適用に違いがありますかということを聞いたんです。

○政府参考人(片桐裕君) 実態からすると大変難しい問題がございますけれども、ただ、触法少年、十四歳未満であるから特性が急に変わるとかいうものではなかろうと思います。したがって、特に低年齢層とか中年齢層とか高年齢層とありますけれども、やはり低年齢層については特別な配意をしなさいということは我々言ってきたつもりでございますけれども、ただ、触法少年だからそこについて特にこれをやりなさいというようなことは特に申してはおりません。

○江田五月君 私も、それはある日突然がらっと変わるということはないと思いますよ。思いますけれども、今の犯罪捜査規範などがある中でいろんなことが起きているじゃないですか。

 ここへ私持っているのは「少年警察活動と子どもの人権 新版」という、日本評論社、これは日弁連ですよね、持ってきておるんですが、えっ、こんなことやっているのという事例が山ほどあるんですよね。いや、まあこれはちょっと古い話なのかなと思ったら、これ今朝の新聞、少年の処分取消し、これは当時、大阪地裁所長だった鳥越健治さん、たまたま私は同期なんですけれども、彼の事件と言うといかぬか、彼が被害者になった事件ですね、についての少年の調べ、これ当時十四歳の少年という、今十八歳だそうですが、抗告審の決定があったと。この中では、少年の取調べについて机をたたくなど穏当を欠いた。決定で、机をたたくなど穏当を欠いた、ただそれだけの文字で書いてありますが、その奥は相当いろんなことがあったんではないかと思われますよ。

 そういうようなことが行われているわけで、そうすると十三歳十一か月何日と十四歳と、そこでぱっと切れるわけじゃないけれども、やっぱり触法少年についてはこういうことに注意をしなきゃというような規範はきっちり作っておかなきゃいけないんじゃないですか。いかがですか。

○政府参考人(片桐裕君) 御指摘の事案については、今朝、報道で私も承知をしておりますけれども、まだ係争中でございますので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

 そこで、触法少年について規範を定めるべきだというお話でございますけれども、現在も、今申し上げましたように、触法少年だからと、触法少年のみについての配意事項というものは決めておりませんけれども、ただ非行少年についての面接と申しますか調査に当たっては、その少年の特性について深い理解を持って当たるとか、また、少年の性行、環境を深く洞察し、非行の原因の究明や犯罪等の状況の把握に努めて、その非行の防止及び保護をする上で最も適切な処遇の方法を講ずるようにすることとか、また少年に応じてふさわしい、分かりやすい言葉を用いるとか、また少年の話の良い聞き手となって、一方的に押さえ付けようとしないとかいったようなことを配意事項として定めているところでございまして、御指摘のように触法少年についてはこういったことが特に強く要請されるというふうに考えております。

 そこで、こういったことで我々これまでも規則、通達でもって大分定めてきているつもりではございますけれども、今回、この改正が通って、触法少年に関する警察の調査権が明記されることになれば、その施行に向けて更に規則、通達等を整備する必要があるかどうかについては検討してまいりたいと考えております。

○江田五月君 検討と言われますけれども、もうちょっと何か腹の底からそう思っているというような気持ちがにじみ出るような答え方はないんですかね。だから言うんですよ。ここでしゃべってもらうだけじゃ信用できないんで、だから言っているわけで。現に起きているわけですよ、次から次へと。

 私は、やはりこれは、初めにも申し上げましたが、チルドレンファースト、子供たちに向かうときに子供のことを一番に考えなきゃいかぬよということで、やはり今まであれでしょう、触法少年に対する事情の聞き方というのは、警察法二条でしたか、というようなことでやっておられたということなんですかね。

 しかし、犯罪少年に対しても触法少年に対しても同じ規範なんで、それでいいのだと言わんばかり。検討すると言うけれども、検討するじゃ何だかよく分からぬということなんで、そうじゃなくて、触法少年についての調査の権限も特に今回これで、まだ通っていないから与えられるとはなりませんが、多分そういうことに残念ながら、委員長がにこっと笑っておられるから、そうなるんでしょう。

 しかし、権限が与えられることになったら、やっぱりその権限の行使について本当に真剣に何か考えなきゃいけない。触法少年について事情を聴くときの聴き方というものについて、単に警察庁内部の検討だけでなくて、例えばそれは専門家、いろんな心理学者のこともあるでしょう。あるいは厚生労働省関係、児相の関係なんかもあるでしょう。弁護士会もあるかもしれません。そういう皆さんとよく相談しながら、こういう聴き方しましょうねと、そういうような準則、ルールをお作りになってはどうですか。

 そして、併せて言いますと、十四歳の直前と直後でがらっと変わるわけじゃないけれども、それでも十四歳以後についてはいろんな刑事手続の保障というものがそのまま働くわけで、供述拒否権のことであるとか弁護人選任権のこともあるわけですよ。これは、触法少年だったらそんなものは一切要りませんというんではなくて、憲法の黙秘権の保障がそのまま当てはまるかどうかなどということを概念法学的にあれこれ言うんではなくて、もうちょっとそこは、だれしも、どんな小さな子供でも自分のことについて、自分の不利益なことについて供述が強制されるということはやっぱりあっちゃいけないんで、その子に分かりやすいようにいろんなことをちゃんと保障していくと、そんなことも含めてルールをちゃんとお作りになったらどうですか。

○政府参考人(片桐裕君) 私も、先生の今ずっとお話を伺っておりまして、全く同感でございまして、決して我々何もしないとかいう趣旨では全くございません。また、現場の職員も、単に罰を与えればいいという気持ちで調査に当たっているわけではなくて、やはり少年の保護とか健全育成のためにはどうしたらいいかということを真剣に悩みながらやっているところでございますので、是非その点は御理解をいただきたいなというふうに思っています。

 加えて、今の準則のお話でございますけれども、私ども、規則とか通達では相当程度のことを決めているつもりでございますが、むしろ、先生のおっしゃっていることは調査に当たってのマニュアルとかというふうなお話なのかなというふうに考えておりまして、こういったマニュアルについては、今後、今おっしゃった、こういう御指摘があったように、専門家の御意見も聞きながらこういったものを整備することについて検討してまいりたいと考えております。

○江田五月君 これは本当に本気でやってくださいよ。検討と言って、また聞きますよ、どういうふうにしましたかというのを。いいですか。覚えておいてくださいよ、ちゃんと。

 ほかにもいろいろ聞きたいことあるんですが、それは、そういうふうに言われたって、ここで、十四歳の少年に対するこれ捜査なんですよね。穏当を欠く、何だっけ、穏当を欠いたというのがね。是非やってほしい。

 あわせて、可視化です。やっぱり今可視化の問題というのは議論になっているのは、裁判員制度がスタートするのでその前にということで、検察庁の方も一定の前向きの対応をされているようですが、それはそれでいいんですが、警察の方は依然として駄目だということですけれども、せめて、一般論言いません、せめて触法少年の事情聴取はちゃんと録音、録画やられたらどうですか。

○政府参考人(片桐裕君) 可視化という、いわゆる取調べといいますか、面接の録音、録画についてのお尋ねでございますが、これについては今提案者の方から御説明があったように、司法制度全体の中でもって検討されるべきであるというふうに考えております。

 特に、今御指摘は触法少年についてというお話でございますけれども、いろいろ議論はあるところでございますけれども、少年につきましては、先ほども御答弁を申し上げましたように、質問者の暗示を受けやすいというふうなこと、また迎合的になるという、なりやすいという特性を有するということは我々も十分承知をしておりまして、その点については十分に配意をしながら面接をしなければならない。

 他方で、少年の健全育成のためには、まず事実が、どういった事実があったのかということの真相を解明するということは絶対にこれ必要不可欠な話であるというふうに我々は考えております。そのためには、取調べというか、面接の場で少年に無用の緊張を与えないように配意をしながら少年とのコミュニケーションを重ねていくということが大事だということで考えております。

 しかしながら、御指摘のあったような取調べの過程の録音、録画ということになりますと、供述の内容、過程、又は態度、少年のしゃべった中身だとか、どういった過程でもって話をしたのかとか、また話すときの態度、表現ぶりといったものがすべて公になるのではないかというふうな心理的圧迫が加えられますので、十分な供述が得られないというおそれがあるわけでございます。

 特に、少年からは、その原因、動機を解明するために聞かなければならないという問題がありまして、例えばそれは親とか兄弟への思いとか、また学校への不満であるとか、また仲間、先輩への思いであるとかといったことがあからさまに供述されるといったことが多いわけでございまして、そうなりますと、それでもってこれが録音、録画されてしまいますと、それらの自分でしゃべった中身が関係者にそのまま伝わってしまうのではないかということについて少年は強い懸念を持つというふうに我々は考えております。

 他方で、調査においてこのような思いを聞き出す中で非行の原因とか動機等の真相の解明につながっていくことが多いというふうに考えておりますので、それが録音、録画されていくということであれば、こういった供述が得られなくなって真実の解明に支障が生じるというふうに考えております。

 したがって、その過程を録音、録画することについては極めて慎重な検討が必要であるというふうに考えております。

 こうしたことから、警察としましては、これまでも少年その他の関係者が秘密の漏れることに不安を抱かないように配意するということを決めておりまして、また他方で、少年に応じてふさわしく分かりやすい言葉を用いるとか、また少年の話のよい聞き手となるとか、また一方的に押さえ付けようとしないとかいったようなことの配意事項を決めて調査に当たっているところでございます。

○江田五月君 全然駄目ですね。そうやってやっている、やっていると言うけど、こういうことが起きているじゃないですか、現に。こういうことが起きている。ですから、あなた方がこうやっている、やっていると言ったって、そうじゃないという事実が出てきているから私は言っているんで、世間の理解を得ようとするならば、触法少年の調査の権限を警察が持つことについて世間の理解を得ようとするならば、こういうことはもう起こさないと、そのためにもそれは可視化というものにちゃんと本気で取り組むべきだということを申し上げておきます。

 触法少年の付添人の関係について、これは今回修正によって導入されたので、これなかなか大きなことだと思うんですが、しかしいろいろ聞きたいこともあるんですが、ちょっと時間がなくなりました。

 選任ということは、これは刑事手続といいますか捜査の手続の中の行動ですが、あくまで私選になるわけですから、そうすると民事上の契約関係はどういうふうになるかということもあったり、民事上の契約関係があれば、そうすると、その付添人として選任された、委任を受けた弁護士さんが委任の趣旨に沿った付添人としての活動をしなかった場合のことはどうなるのかとか、逆にした場合の報酬とか、あるいは費用の請求はどうなるのかとか、いろいろありますが、今日は時間ありません。

 そこで、これはまだまだいろいろ質疑は続くんだと思いますから、そうしたことをまた聞かしてほしいと思いますが、最後に、刑事局長、さっきの答弁に間違いがあったそうなので、訂正してください。

○政府参考人(小津博司君) 申し訳ございません。
 先ほど、東京地検の証拠品紛失問題につきまして、これを東京地検の方でマスコミにどのような方法で知らせたかということにつきまして、私の方で口頭でということだけ申し上げました。もちろん、口頭で対応した社もございますけれども、各社に取りあえずファクスでお知らせしたということがこの間判明いたしましたので、その部分、訂正、補充させていただきます。
 恐れ入りました。

○江田五月君 じゃ、それ当委員会に出してください。

○政府参考人(小津博司君) この事案、そして経緯につきまして、どのような方法で御報告させていただくかということにつきましては、またよろしく御指導をいただきながら検討させていただきたいと思います。

○江田五月君 理事会で検討してください。

○委員長(山下栄一君) 今の件、理事会で検討させていただきます。

○江田五月君 終わります。


2007年5月15日

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