2007年5月15日 >>会議録

戻るホーム2007目次前へ次へ


法務委員会質問事項メモ(少年法改正案質問項目)

民主党・新緑風会 江田 五月

第1. 証拠誤廃棄について(法相)

  1. 事案の報告−緑資源談合、証拠うっかり廃棄、東京地検、公取からの預かり品
     「農林水産省所管の独立行政法人・緑資源機構の官製談合事件で、東京地検特捜部が証拠品の一部を紛失し、廃棄されていたことが14日、分かった。」「同地検の岩村修二次席検事は『当庁に全責任があり、おわびするほかない。詳細についてはいずれ改めて説明したい』とのコメントを出した。」(毎日12日)(同旨、読売同日)。告発のない段階での証拠品の預かり。手続きもチェックが必要。

  2. 原因究明と責任、再発防止策について、今後どう発表するか?

第2. 少年法改正総論―改正の目的

  1. 森田宗一さんのこと、家裁裁判官の経験など

  2. 安倍首相の発言(法相)。
     安倍首相の発言―衆議院法務委員会裁決後、記者に聞かれて、「残念ながら少年犯罪が凶悪化しており、被害者の気持ちも踏まえればやむを得ない」(日経)との認識を示したが、これをどう思うか。

  3. 少年事件は凶悪化しているか(法相)。
     もっと子細に見ると、報道はいろいろ。上記は日経で、「少年院送致年齢の引き下げについて」の認識。毎日は、「少年法改正案が厳罰化を図る内容であることについて」の認識。産経は、「被害者の気持ちも踏まえれば、やむを得ない」だけで、何についてかは記載なし。読売も、「少年による犯罪が凶悪化している。被害者の方々のお気持ちも踏まえれば、やむを得ない」とし、何についてかは記載なし。少年犯罪が凶悪化しているとの認識か。

  4. 「凶悪化」とは何か、少年事件の特殊性をどう認識するか(法相)。
     少年犯罪の特徴を、どう認識するか。少年は、「汚れのない天使」のような存在だと思うか、発達途中の未完成なものと見るか。人間は、哺乳類の中でもっとも未熟状態で生まれ、長い時間をかけて成熟していく。その過程にあるのが少年。残虐行為は、判断力が未成熟な状態での幼稚性の表れ。結果の外形的残虐性と少年の要保護性は、一致しません。むしろ、行為の反社会性は小さくても、要保護性は極めて大きい場合や、その逆も、いくらでもあり、そこを見極めて適切な保護処分を選択する(チルドレン・ファースト)のが、専門機関としての家庭裁判所の使命です。私の経験でも、例えば原付無免許で少年院送致にしたり、殺人(嬰児産み落とし)を保護観察にしたりした。そういう把握の仕方を、社会全体で持つように努めないと、少年保護は成り立たないが、認識を問う。

  5. 本改正案の目的に、被害者保護は入っているのか(法相)。

  6. 安倍首相は、本改正案の目的を何だと認識して、やむを得ないと言ったのか(法相)。
     安倍首相の認識は、何についてだと思うか。送致年齢引き下げか、厳罰化か、改正全体か、そのいずれにしても、被害者の慰藉とは直接の関係はないように思うが、どうか。今回の改正には、被害者救済の視点は入っているのか。

  7. 安倍首相には、本改正案についても少年法についても、理解がないのではないか(法相)。
     要するに、安倍首相は少年法改正については何も分かっていないのではないか。半知半解という言葉があるが、少年法改正といえば、少年厳罰化で、それは少年犯罪の凶悪化で被害感情に苦しんでいる被害者から見ると正しいことという思いこみがあり、今回のものがどういう内容なのかについては、何の知識もないのではないか。

  8. 本改正案は、少年非行の増加、凶悪化、低年齢化に着目した対応策か(法相)。

  9. 少年非行は、増加、凶悪化、低年齢化しているのか(法相)。

  10. 2000年改正も同じ事態への対応策だったのではないか(法相)。

  11. 本改正案は、かねてから立法的お手当てが必要とされていた問題、つまり2000年改正の際に取り残された問題点への対応策ではないのか(法相)。
     今回の改正は、(1)触法少年の調査、(2)少年院送致年齢の下限、(3)保護観察の強化、(4)付添人制度の整備の4点と思います。これらはいずれも、提案理由説明で「これらの検討事項は、いずれも、かねてから立法的手当が必要と指摘されていたところでもあります。」と述べられている範囲内のものなのではありませんか。

  12. 長崎事件、佐世保事件で、従来から指摘されていた不備が浮き彫りになったのではないか(提出者)。
     修正案提出者にも同じ質問を伺います。つまり、前回の改正が議員立法だったこともあり、かねてから指摘されていた問題点への手当てが抜けていたので、特に長崎事件〈1〉や佐世保事件〈2〉で上記の(1)と(2)が鋭く浮き彫りになったので、内閣提出法案でこれへの手当てを行おうとしたのですが、言ってみれば法務省が「悪乗り」で虞犯少年の調査権限や保護観察遵守条件違反の制裁などを盛り込んできたので、その部分を削ぎ落としたということではないでしょうか。
    (参考)
    〈1〉長崎市男児誘拐殺人事件。男子12歳。電気店でゲーム機で遊んでいた4歳の男児を暴行目的で約4q離れた立体駐車場の屋上に連れ去り、約20メートル下の通路に突き落として殺害した。児童自立支援施設送致・1年間の強制的措置付き。強制措置1年ごとに3回延長。
    〈2〉佐世保小6女児殺害事件。女子11歳。インターネットの掲示板に「ぶりっこ」等とかかれたことから殺意を抱き、同級生の女児(12歳)を校内でカッターナイフで殺害した。児童自立支援施設送致・2年間の強制的措置付き。2年間で通算50日の限度で延長。

  13. なのに、なぜ増加、凶悪化、低年齢化を提案理由に挙げるのか(法相)。
     さて、そうすると、少年法改正を必要とする事情は、2000年改正の際の事情と同じものであり、2000年改正の際に手当てし損なっていたものをこの改正で手当てするのに、なぜ今回、増加、凶悪化、低年齢化を、改正を必要とする事情に上げるのですか。

  14. 増加等を理由とするなら、2000年改正の際に参議院修正で盛り込まれた5年後見直しを踏まえた提案にしないのか(法相)。
     もし、増加等を今回の改正の理由に挙げるのなら、なぜ、2000年改正から5年後の検証と見直しのプロセスなしに、今回の改正案を提案するのですか。私がこうしたことに拘るのは、私自身が前回の改正に参議院の法務委員会理事として関わったからです。私の活動日誌の2000年11月の欄を、読み返してみました。ここに書いていない水面下の動きも盛んに行い、参議院で修正合意をまとめました。私たち民主党は、少年法の理念にはいささかの疑念も持っていませんが、国民が、特に当事者である少年が、少年保護理念を正確に理解しておらず、不幸な事件の独発もあって、反対に少年法への信頼や確信が揺らいでいます。理念に対する少年からの「挑戦」さえも見られます。厳罰化も検察官関与も、信頼回復に繋がるかどうかはデータで証明されておらず、いわば「社会的実験」なのです。衆議院段階で、民主党の党議は賛成でしたが、造反が多く出ました。そこで、修正で見直し条項を入れたのです。その結果、衆参とも民主党の造反はなくなりました。そのような経過に私自身が当事者として関わっているので、2000年改正がそういう効果を生んだかを検証することなく、さらに増加等を理由として一層の改正をすることは、是認できないのです。改正部分の活用状況ではなく、これによって社会の少年保護に対する確信が回復したかどうかです。分かっていただけたでしょうか。

  15. 少年保護の理念への社会の確信を確固たるものにする努力が、法務省にも関係者にも必要なのではないか(法相、提出者)。
     もっと言えば、少年保護理念への社会の確信と少年の理解を回復するには、この理念の実施に関わるものがみな、協力して努力しなければならないのですが、法務省は何をしたのでしょうか。拱手傍観していて、同じ増加等の事情に基づき今回の改正案を提出するのは、怠慢としかいえませんが、いかがですか。

第3. 触法少年の調査

  1. これまで、触法少年の調査はどう行っていたのか(警察)。

  2. 捜査手法を活用していたのではないか、それがなぜ出来ないのか(警察、法相)。
     捜査手法の活用―被疑者不詳の場合、共犯者に14歳以上がいる場合。捜査の進展により、被疑者が特定でき、これが刑事責任年齢未満だと判明したら、遡って捜査が違法になるわけでもないし、収集した証拠が証拠価値を失うわけでもない。それなのに、はじめから構成要件該当行為の行為者が14歳未満だと分かっている場合には、なぜ捜査ができなくなるのか。捜査が、被疑者を特定して刑事責任を問うためのものだから、はじめから特定できていて刑事責任を問えない場合であることが明らかなので、捜査はできない。しかし、捜査目的はなぜ刑事責任を問うために限定されるのか。事案解明自体を捜査目的だとする制度設計が、なぜ出来ないのか。行為者の身柄確保は出来ないとしても。

  3. 家裁や児相の手続では、なぜ不十分なのか(法相)。
     新たに強制調査制度を設けなくても、家裁の強制証拠収集手続きや児童相談所の手続きを活用できるという主張も有ると思われるが、どう反論するのか。

  4. 強制調査と刑訴法の捜査と、どこが違うか(法相)。
     今回の改正で新設される強制調査と、従来の刑事訴訟法に基づく捜査は、捜査主体の権限、令状審査のやり方、収集した証拠の価値の上で、どこか違いはあるのか。なぜ、このような迂遠な制度設計をするのか。

  5. 犯罪捜査規範の少年中、犯罪少年と触法少年とで違いがあるか(警察)。

  6. 触法少年の調査につき、規範作成、教養等に、専門家と相談して取り組むべきではないか(警察)。
     犯罪捜査規範の適用につき、14歳未満と以上とで違いがあるのか。触法少年の調査に当たっての規範を、新たに設ける必要はないのか。その考えはないか。

  7. 犯罪少年と触法少年とで、なぜ手続保障に違いを置くのか(法相)。
     14歳以上の少年に対する捜査では、刑事手続き上の人権保障規定の適用があるが、14歳未満だとなぜこれを認めないのか。刑事責任を問う可能性の有無の違いというが、観念的には可能性があっても現実的には明らかにその可能性はない場合はある。それなのに、そのような観念的な区別によって手続保障の有無を決めるのか。

  8. 刑罰を科せられる可能性は、あまりにも建前過ぎるのではないか、現実的対応を考えないのか(法相)。

  9. 触法少年の調査段階で付添人を認めた意義(提出者)。その結果は、受け入れ可能か(警察、法相)。
     今回、触法少年に調査段階で付添人選任権を認めたことは、理論的整合性は別として、人権保障の前進と高く評価する。なぜこの制度を認めたのか。

  10. 犯罪少年の捜査段階での弁護人と触法少年の調査段階での付添人と、権限上の違いはあるのか(提出者、警察、法相)。
     14歳以上の少年は、被疑者段階で弁護人選任権がある。この弁護人と、14歳未満の少年により選任された付添人とでは、権限において違いが有るのか。

  11. 衆議院での修正は、与野党間の協議を途中で打ち切って、与党だけで行われたのは、なぜか(提出者)。
     ここで、衆議院での修正の経緯について伺う。修正案提出者は、内閣提出法案の与党による審査には関わったと思いますが、いかがですか。その際、もちろんこれを了解されましたね。その上で、なぜ今回、民主党修正案の提出者との修正協議を尽くすことなく、与党修正案を提出してこの採決を強行したのですか。修正プロセスとしては、極めて異常だと思いますが。

  12. 審判手続での国選付添人以外の付添人や弁護人は、全て私選の性格と思うが、その場合の私法上の契約関係はどうなるのか(提出者、警察)。
     捜査手続きの過程での付添人は、弁護人と同様の活動できるが、審判手続きの中での国選付添人と違って、あくまで私選付添人です。そうすると、刑事手続き上の選任行為の効果とは別に、委任契約上の事務処理の不履行とか費用や報酬の請求とかの問題も有り、付添人との間で契約関係に立つものは誰になるかという問題が生じると思われますが、どうお考えですか。親権者や後見人などの法定代理人をどう扱うかという問題です。これらのものが少年の福利を阻害する場合もありますが、親権の剥奪等がなされていない場合に、すぐに親権者を排除するのが妥当だとも思えないのですが。

  13. 弁護士会の法律扶助制度で対応するとも耳にするが、修正案の提出段階で、そのような話があったのか(提出者)。
     弁護士会の法律扶助制度で対応することになっているとの話もありますが、修正案提出に当たって、そのような合意はあったのですか。

  14. 触法少年の調査では、保護者や付添人の立ち会いのほか、可視化を取り入れてはどうか(警察)。
     触法少年の調査権限が法定されると、捜査官の適切な権限行使が何よりも重要になってきます。保護者や付添人の立会いのほか、この際ビデオ録画などの可視化を本格的に検討してはいかがですか。可視化全体の議論は、裁判員制度導入との関係で議論され、検察段階では部分的にではありますが導入に踏み切っています。触法少年の場合には、別の観点から、事情聴取の適正さを図らなければなりません。日弁連編集の書物にも、数多くの問題事例が紹介されています。昨日の大阪高裁決定の例もあります。ぜひ、触法少年本人の調査の可視化を検討していただきたい。

2007年5月15日 >>会議録

戻るホーム2007目次前へ次へ