2004/04/01 D'ear

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欲しいのは感性、心の通じ合い。   交 游 録
      わたせ せいぞう
日本の誇りを大切にして…。
      江田 五月

自然や花々、日本の四季の美しさをテーマに描き続けるわたせせいぞう氏と、政治の抜本改革を目指して日夜活動する江田五月参議院議員と。自称・元少年たちは、出会いから政治の未来像まで、わたせ氏描くイラスト世界のような花に囲まれた庭先で、しばし語り合った。


日本の四季を作品世界にちりばめる

江田 私は生まれ育った瀬戸内を「日本のエーゲ海」だと思っていますが、あなたも海と縁が深いとか。

わたせ 神戸生まれで北九州の玄界灘育ち。いつも海が近くにありました。

江田 それで作品に海辺の町が登場するわけだ。植物もずいぶん描かれますね。

わたせ 花が好きなんです。人生の節目に、いつも花との出会いがありまして。

江田 ほう、たとえば?

わたせせいぞう(渡瀬政造)さん

わたせ 大学卒業のときに後輩からもらった抱えきれないほどのバラの花束、会社を辞めて独立するときに部下からもらったカサブランカ、花には人の心を高揚させる力があるんです。花を描いていると日本の四季がしっかりわかります。

江田 季節感が薄れているいま、大切な感覚ですね。

わたせ 季節ごとの行事が好きなんです。5月は菖蒲湯、暮れには柚子湯を着物姿の妻が用意していてくれたら嬉しいですね。現実は違いますけれど(笑)。

江戸時代に思いを馳せ美しさと知恵に学ぶ

江田 最新作の舞台は江戸時代の江戸だそうですね。

わたせ 僕のモチベーションは色彩にあるんです。スタートはウェストコーストの色、その次に日本の色、そして次は想像の色を描こうと、江戸を舞台に『江戸恋もよう』を連載中です。

江田 江戸の色というと?

わたせ 今よりもっと澄んだ色だろうし、夕焼けなどは想像を絶する色彩だったでしょうね。『江戸……』は、侍の心がもうひとつのテーマです。侍の誇り、身の処し方の潔さ、女性も封建社会に生きながらも侍を力強くサポートして……そんな失われつつあるものを描きたかったんです。

江田 菅前代表が「江戸ルネッサンス」といって、江戸時代の藩政に地方分権のあり方を学ぼうと提唱しました。当時はそれぞれの藩が藩札を出したり、独自のシステムを持って自立していた。その活気と個性とをいまの日本の地方に取り戻そうと言うんですね。もうひとつには、スローライフに学んで、経済の豊かさよりも、生活の芯のようなものを大切にしようという意味もあります。

何足かのわらじを履き替えて…

江田五月

江田 サラリーマン経験がおありなんですね。

わたせ 16年間、損保の営業を。その間、二足のわらじを履いていました。

江田 営業成績を数字で求められる仕事と創作活動との両立……器用ですね。

わたせ 現実が生々しく厳しいほど、休日にふっと違う世界を夢見て思いを馳せるんです。営業だから夜遅くまでカラオケにもつき合いましたが、月曜から金曜まで完全燃焼すると、まっさらな状態で土日に絵の世界に入れる。その切り替えが体内時計に刻まれると、互いにプラスに作用し、ストレス解消にもなりました。

江田 私は一足のわらじを履き替えてきたタイプ。学生運動、そこから足を洗ってひたすら勉強、そして裁判官になった。政治家の父が政治生命のすべてをかけて新しい政治の道を目指そうと、社会市民連合を立ち上げたときも知らん顔をしていました。ところが父が亡くなった日が私の誕生日で……その瞬間にバツと政治のわらじに履き替えて、以来20数年なんです。

民主党は人の心の温かさに迫る政党に育つ

高輪プリンスホテル・貴賓館庭園にて

江田 20年ほど前の作品『ハートカクテル』は息子が大好きで、私も横目で読んでいました。癒し系のはしりでしょうか。

わたせ いつも作品では、人間のコミュニケーションの温かさを伝えたいと思っています。アナログの、真空管がじんわり暖まって明るくなるような世界を。

江田 いま、世界経済全体が産業革命以来の大転換期にあると言われているんです。産業革命的な意味での豊かさでは、もう景気はよくなりません。欲しいのは情報。それに感性や心の通い合いなんですね。人間のやる気のように計算できないものに支えられた企業や業種が努力して実績を上げ、景気を支えています。小泉さんは構造改革の成果だと言いますが、実は政治はまるで関わっていない。政治が人の心の温かさのようなところに関わることが大切。いままでの政治では、やっと回復基調をつかもうとしている経済を、妨害さえしかねません。

わたせ もう政治には失望して、自分で城を守ると言う人が増えていますよ。

江田 でも、やはり政治がきちんとしないと、将来展望が見えない場面もたくさんある。政治に望むことは、もうないんでしょうか。

わたせ たとえば国益に関わるような場面では、超党派で臨んでほしい。党の利益ではなく、日本の誇りを大切にして。

江田 よくわかりますが、民主主義では、有権者が自分で政党を選んで政治を動かすことが大切なんですね。いつも超党派でやっていたら、選びようがない。

わたせ では、民主党には選べる政党として、もっと頑張ってほしいですね。

江田 自民党は相続政党で、相続するたびにやせ細っていく政党。民主党はいま一生懸命に育っている過程にいます。期待していてください。


わたせ せいぞう◎渡瀬 政造 http://www.apple-farm.co.jp/
コミック作家、イラストレ一夕ー。1945年神戸市生まれ。早稲田大学法学部卒。同和海上保険勤務中に第13回ビッグコミック賞入選、『ハートカクテル』連載を週刊モーニングで開始。85年サラリーマン生活にピリオドを打つ。02年北九州の門司港に「わたせせいぞうと海のギャラリー」オープン。現在『江戸恋もよう』を週刊モーニング(講談社)にて、『ハートステーション」をBRIO(光文社)にて連載中。

江田 五月◎えだ さつき
参議院議員・岡山県選挙区・2期(衆議院議員・4期)。1941年岡山市生まれ。66年東大法学部卒、オックスフォード大学法律証書課程修了。裁判官を務めた後、77年参議院議員・全国区初当選、83〜96年衆議院議員、社会民主連合代表、93年細川内閣・科学技術庁長官、98年参議院議員・岡山県選挙区。民主党法務ネクスト大臣、参議院議員副会長など歴任。

プレス民主102号(2004年5月28日)掲載


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