2003/03/24-1

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156 衆議院・予算委員会会議録  イラク問題集中審議 1

質問者=中山太郎(自民)、田端正広(公明)、松浪健四郎(保守)/前原誠司(民主)/一川保夫(自由)、木島日出男(共産)、今川正美(社民)


平成十五年三月二十四日(月曜日) 午後六時三十分開議

藤井委員長 これより会議を開きます。
 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。
 本日は、イラク問題等についての集中審議を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中山太郎君。

中山(太)委員 自由民主党の中山でございます。

 本日は、集中審議に当たりまして、まずもって、小泉総理の先日の、日米安保条約を堅持する、そしてアメリカを支持するという決断に対して、我々自由民主党としては心から敬意を表するものであります。一国の総理の決断というものがいかに重たいか、またそれによって国の命運が変わっていくわけであります。そういうことで、大変な御心労があったと私は思っております。

 そういうことで、総理の本会議における演説に対する質問を聞きながら、野党の中には総理の決断に対して厳しい批判の声も出ました。しかし、私は、忘れてはならないのは、村山総理が総理としておつきになったときに、自衛隊は違憲ではない、合憲である、そして、日米安保を維持するとはおっしゃらないで、日米安保を堅持するという決意を表明されたことを忘れることはできません。

 こういう状況の中で、私は、総理の言われるように、日米関係をこれからどう維持していくか、また国民の皆様方になぜ小泉総理がこの決断をされたのか、そこいらのところをよく理解が行き届くようにお話をちょうだいしたい、私はそういうふうにかねがね思っておりました。

 国連決議の六百八十七あるいは六百七十八、一四四一というこの数字だけが国民の頭に残って、どういう経過でこのプロセスが来たのか、私は、きょうはパネルを用意してきましたので、これを申し上げてみたいと思います。

 一九九〇年の八月二日にイラクのクウェート侵攻が起こった。このイラクのクウェート侵攻というものは、私はちょうど海部内閣の外務大臣をしておりました当時でありまして、私はちょうどASEAN外相会議、そしてAPECの閣僚会議に出席をして東南アジアを回っておりまして、ラオスに来たときにイラク軍のクウェート占領を報告されたわけであります。そのときの私の驚きというものは、これは大変なことになる、クウェートを一夜にして全土を征服した、こういう状況の中で国際社会がどう対応するか、私は直ちに東京へ戻りました。そして、外務省で緊急会議を開きました。

 そういう経験から見て、私は、今回の総理の決断というものは正しかったというふうな認識を強く自由民主党の一員として持っております。

 そこで、問題は、クウェートを占領したイラク軍、これが一体何をしたか。これに対して、ここのパネルにありますように、八月二日にクウェートを侵攻したために、安保理決議を、直ちに六百六十号で、国際平和と安全の破壊、こういうふうに安保理は決定をして、そして八月六日、六百六十一号、対イラクの経済制裁、日本政府も行いました。

 こういうことで時が流れて、九〇年の十一月二十九日、安保理は対イラクの武力行使の容認決議をやったわけであります。そして、あらゆる外交努力をやりながら、クウェートからのイラク軍の撤退について国際社会は努力をいたしましたが、残念なことに、占領したイラク軍はクウェートから撤退しなかった。こういう状況の中で、ついに一月の十七日、湾岸戦争が勃発したわけでありますが、それまでには、幾度となくイラクに対して警告を発しておったのが安全保障理事会であります。

 こういう環境の中で、私は、アメリカがいよいよ決断をするときの一月十四日、ホワイトハウスで、今のブッシュ大統領のお父様のブッシュ大統領を初めベーカー国務長官、あるいはスコウクロフト大統領特別補佐官等と話し合いをいたしましたが、アメリカの決意は固かった。このイラクの無法を許しておいては民主主義は崩壊してしまう、こういうことで、私は、この会談を終えたときに、アメリカを支持するということを申し上げると同時に、イラク軍が撤退すれば平和がやってくるけれども、撤退しなければ九〇%は国連決議による戦争が起こるということを直ちに日本政府に電話でワシントンから連絡をいたしました。そして、国内体制を整備するように時の総理にお願いをしたわけであります。

 そういう経過から見て、この湾岸戦争の結果、どういうことになったかというと、一九九一年の四月の三日に、対イラクの停戦決議が安保理で行われる。しかし、その停戦の条件というのが、イラクが受諾すればイラクは実行しなきゃならない。その中身は一体何かというと、大量破壊兵器の破棄に関する国連特別委員会及びIAEAの査察の無条件受け入れ、経済制裁の継続、クウェートの財産返還ということでありまして、これが四月の十日、イラクによって受諾をされたわけであります。

 そのときにイラク軍は撤退をするわけでありますが、イラク軍が占領中にクウェートで何をやったかというと、多くの関係のない市民を殺りくしていた、あるいは女性を家族の前で暴行した、こういったようなことから、いろいろと政府に関係のない一般市民が、占領したイラク軍によって大変な殺りくを受けたわけであります。こういう経過から見て、私は、今回の第二次湾岸戦争とでも申しますか、この状況を見ながら、率直に申し上げて、イラク軍がクウェートから撤退するときに、千六十本あったクウェートの油井を六百本以上放火したわけであります。その天を焦がすような黒煙がテレビの映像で日本国民にも紹介されたと思いますけれども、我々の国の環境問題担当者も、海鳥が油の流れたこの湾岸で飛べなくなっている姿、そして天を焦がす黒煙、これによる大気汚染、こういうことが起こって、日本はこの汚染の排除のために政府を挙げて協力をしたということは事実だと私は思います。

 こういうことを考えてみますと、今回の新しい米、英、スペインの国連安保理決議に対する、イラクに国家権益を持っている国家は一体どこかというと、油田に関しては中国あるいはフランス、そしてロシアも現在交渉中。こういう状況の中で、安保理決議にかけて、国連の安保理決議のもとにこの無法なイラクの停戦決議の実行を迫るという考え方は、シラク大統領が、ちょうど三月でしたか、たとえ安保理事会の理事国九カ国が賛成をしてもフランスは反対をするということをテレビのインタビューで言われたわけであります。つまり、安保理の常任理事国というものはかつての戦勝国でありまして、その中にフランスがいる。そのフランスが反対意思を、投票で決めるということは拒否権の発動であります。つまり、安保理による決議はできない、こういうことの予測を私はしたわけであります。結局、安保理決議に至らなかった、そして米英を中心とする、四十五カ国がこのアメリカ、イギリスあるいはスペインの考え方に同意をしている。

 こういう状況の中で、今日、日本の国会ではいろいろな議論が行われておりますが、きょうは集中審議であります。こういうことを考えると、私どもは、この中東地域で日本政府はどのような関係を持っているのか、これは一番大きな私は問題だろうと思います。

 この地域と日本との関係は何でしょうか。それは、我々の国が輸入をしている重油の八八%がこの地域から来ているという現実であります。この現実を考えるときに、この中東地域に八八%の油を依存している世界の国はどこもありません。こういうことを考えると、日本のいわゆる石油政策というものを国家として考え直す必要があるんじゃないかな。

 こういう問題から、私は総理にお願いをしたいことは、なるほどLPガスはアジアが中心に日本に入ってきている、しかし、油については中東、そういう中で、アメリカは既にロシアの油を昨年二百万トン輸入しているわけであります。つまり、油というものが国際市場において一点に集中することはその国の命運に関係をする、こういうことでありまして、私どもは天然資源に恵まれず、あるいは燃料にも恵まれない国家でありますが、そこで、これからの日本をどうするか。

 こういうことで、私は総理に特にお尋ねをしたいのは、我々の国の近所のサハリンで石油が出た、ガスが出た、全く鼻の先に新しい油田あるいはガス田が出てきたわけであります。また、総理は、プーチン大統領との話し合いで、シベリアの油をナホトカに輸送してくる、こういうパイプラインの構想も協議されたと承っておりますが、この点について、まず総理のお考えをお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 中山先生におきましては、外務大臣としての豊富な経験から、先日はシリア、トルコに総理特使として訪問していただき、外交的な努力をしていただいたことに対して、まず感謝を申し上げたいと思います。

 また、あの湾岸戦争当時の外務大臣として今詳しく経緯をお話しいただきまして、今回こういう残念な事態に至ったということについての、今後の日本の生活に大きな影響を与えるエネルギーの問題等についての御質問だと思いますが、私は、一月、プーチン大統領と会談した際にも、日本とロシアの間には、北方領土、いわゆる平和条約締結に向けて大事な問題を抱えております。また、困難な問題であります。両方の主張に開きがある。これをどうお互い平和条約締結に結びつけていくか。この平和条約締結のためには領土問題の解決をしなければならないという問題がありますが、ロシアが、大きくソ連時代から、サミットの参加国に変わってきたという状況も踏まえまして、両国に見解の主張はありますけれども、国際舞台での協力はしていかなきゃならない面が多々ある。同時に、二国間の友好も図っていく中で、お互い信頼感を築き上げていく中でこの北方領土の問題を解決していこうという観点から、政治、経済、エネルギー、文化、芸術、スポーツ、幅広い交流を重ねていこうという会談をし、今後の日ロの行動計画をお互い確認し合ったわけであります。

 そういう中で、今お話しのシベリア、サハリンのいわゆるエネルギー開発問題、これは非常にロシア側も関心を持っておりまして、今後この問題についてはどういう点で協力が可能か、今話し合いを継続しております。

 特にこの問題については、ロシアは中国との関係も重視しておりますので、そういう点も踏まえながら、日本としては、ロシアのエネルギー輸出国としての立場と日本がエネルギー輸入国としての立場、相互補完的な面からも協力できる分野は十分あるのではないのかということで、今、平沼経済産業大臣にも指示しておりまして、今後どのような協力が可能かという点について十分検討する必要があるということで、この開発問題についても、日本としては、ロシアとの協力関係を増進する中で考えていかなきゃならない。

 同時に、今、エネルギーが中東分野で八八%以上依存している、このエネルギーの多角化も図っていかなきゃならない。同時に、石油の備蓄も大事です、あるいは省エネも大事ですが、このエネルギーの、油にかわる代替エネルギー、こういう面についても十分新たな道を探すべきではないか、これは環境にも大きく影響してまいります。

 そういう点、いろいろな分野に目を向けて、今後、エネルギー供給問題に対して、国民に不安のない対応をしていかなきゃならないと思っております。

中山(太)委員 問題は、この戦後の復興について日本がどういう点で協力ができるか。ここいらの点については閣内でもいろいろ御相談が行われていると思いますけれども、やはり日本は国連を中心にこの復興について御協力をいただきたい、私ども自由民主党はそのような方針を決定いたしております。

 そこで、私は、総理の特使としてイランのハタミ大統領にお目にかかったときに、ハタミ大統領が私にこう言われた。我々は、イラン・イラク戦争で八年間戦った。しかし、イラクは化学兵器を使った。その負傷者が現在でも三万五千人生きている。だから、化学兵器というものは大変人類に不幸をもたらす、もし今回の新しい戦争が起こってもイランは中立を守るという約束を、総理の特使である私に、ハタミ大統領はされたわけであります。

 こういうことを考えると、トルコにいたしましても、あるいはジョルダンにいたしましても、あるいはこのイランにしても、問題は難民の救援をどうするか、これが一つの大きな日本の課題であろうと思いますが、実は私も、第二次世界大戦の最中には、アメリカの空軍の大爆撃を受けて危うく死に損なったり、あるいは艦載機の機銃掃射を受けながら麦畑に飛び込んで命を取りとめたことも体験をしております。こういう中で、現在、イラクの、政府に関係のない一般の市民をどのようにこれから救援していくか、これは非常に大事な問題でありまして、ぜひひとつこれは積極的にやっていただきたい。

 私は、みずからの体験を通じて、この大規模爆撃の中に生き残るイラクの人たちあるいは負傷した人たちをどう救うか、それに、一般の民間の医療団体だけで事が済むのか、あるいは自衛隊の医療部隊を派遣できるのか、こういったことについて、川口外務大臣と石破防衛長官に御答弁をお願いしたいと思います。

川口国務大臣 難民支援あるいは周辺国支援、そして戦争が終わりましたときの復興支援、それぞれ大事であると考えております。

 我が国として、とりあえず緊急的な人道支援として行いましたことは、まず、今おっしゃられた医療の関係でございますけれども、これはJICAベースの医療の協力ということで、既に出発をしております。それから、今後引き続き、国際平和協力法によって医療チームを派遣するということも考えております。

 また、物資の協力もする予定にいたしておりますし、それから、こういったことについてはNGOの方がきめ細かい支援をしていただくのに非常に適切でありますので、現在、日本のNGOが、クルド地域、イラクの北部ですが、そしてヨルダン、そしてイランに行っております。ヨルダンそれから北部のクルド地域に行っているNGOの人たちに対しては四億円の支出をするということを決定いたしました。イランについては今後検討をするということでございます。

 また、周辺国の支援ということで、ヨルダンに一億ドル、そしてパレスチナに対して五億円、四百二十万ドルほどですが、決定を、閣議等がございますが、実質的にはしております。

 こういったことをとりあえず行い、今後、事態の推移を見て、まず国連機関の救援ということが要望が出ると思いますので、それを見、あるいは事態の進展を見て考えたいと思っておりますし、引き続き復興支援についても、状態を見て、日本としてしかるべく責任を果たすべくやっていきたいと思います。

石破国務大臣 今外務大臣から答弁がございましたとおり、例えば難民に対してテントのようなもの、これを国際的な人道支援ということで自衛隊機で運ぶということは現在でも可能でございます。そういうようなニーズが発生をすれば、御指示に従ってそういうことになろうかと思います。

 あとはもう、また先生の御指導を賜りたいところでございますが、どういう形で終わるか、そして、復興が国連の手によってなされるのか、それによってまた変わってくる点があるだろうとは思っております。

 ただ、私どもが持っております補給でありますとかあるいは医療でありますとか復興でありますとか、そういうような能力というものは相当に活用ができるものだというふうに考えております。今の法律の枠組みでできるかどうか、そしてまた、現地に行きまして活動しますときの治安というものはどのようなものであるのか、そのような、私どもの能力あるいは法的な可能性というものを勘案しながら、可能な限り国際的な責務を果たしていく、そういうふうに考えておる次第でございます。

中山(太)委員 もう時間がございませんので、いろいろと質問をいたしたい多くのことがございますが、韓国は既に六百名の工兵部隊を派遣することを閣議で決定をした。こういうことも踏まえて、私どもは、憲法と自衛隊法の許す限り、できるだけの支援をやっていかなきゃならない。

 また、アジアには非常に不安定な要素がございます。三月二十八日は日本の国産の偵察衛星が打ち上げられるわけでありますが、これについて、朝鮮の労働新聞、朝鮮中央通信、これは大きな関心を持っていることを既に表明をしております。

 こういう中で、国内の治安の問題、その問題について、官房長官が中心に随分御苦労いただいているようですが、その点について国民に、簡単で結構ですから、心配がない、政府は責任を持ってやっているということをぜひひとつ御明言いただきたいと思います。

福田国務大臣 衛星の打ち上げについては先生も大変御熱心でございまして、もう五年ぐらい前でしょうか、そういう提案をされておられたわけで、ようやくそれが実りまして、今週の金曜日、二十八日に打ち上げの予定、こういうことになりました。まだ予定でございまして、何かあれば、天候とかそういうような問題があればまた延期もございますが、予定どおり上がることを私も期待いたしているところでございます。

 そこで、これは情報収集衛星。これは、情報と申しましてもいろいろな情報がございます。安全保障上のこともあるかもしれぬけれども、我が国の場合には防災という観点からも大いに活用できるのではないかというようなことでございまして、私もこの衛星の活用については大いに有効活用できるように考えてまいりたいというように考えております。

 そこで、これを打ち上げて心配する国があるのではないか、そういうことでございますけれども、これはほかの国でも上げている衛星でございますので、特別に何かをするということではない。そういうことよりも、そういう問題が生ずることのないようなことをその国には申し上げたいというふうに思うくらいでございまして、万一何かあるということがあるならば、それはそれで十分な警戒態勢というものはとらなければいけないということで、このことについては十分な警備をするようにという指示を現地にも出しておりますので、全く御心配ないと思っております。

 どうぞよろしく御理解を賜りたいと思います。

中山(太)委員 最後に、もう時間がありませんので、総理に御質問申し上げたい。

 世界は、宗教人口というものを見てみますと、大変大きな数で分かれているわけですね。日本のように、仏教、神道、キリスト教、いわゆる多神教の国家、インドもそうでありますが、イランのハタミ大統領が私に言われたことは、文明間の対話をしないとどちらもやがてお互いが戦争をするような悲惨な世界になっていくだろうと。こういうことで、私は総理にお願いをしたい。

 日本のような、クリスマスイブも楽しめる、あるいは仏教で大みそかの除夜の鐘も聞く、元旦は神道で初もうでをやる、こういう国家、あらゆる宗教を認めている国家というのはインドと日本がアジアでは特筆されていると思います。

 こういうことを考えると、ハタミ大統領の文明間の対話について、日本が積極的に同じような考えを持っているインドなんかとも協力されて、ハタミ大統領の考え方というものを、イスラムの世界の考えの中にもそういう考えを指導者として持っておられる、こういうことで、ぜひひとつ日本は文明間の対話について国際的に努力をされたい、このことを総理にお願いを申し上げたいと思うんですが、総理の御決意を聞いて、私の質問を終わらせていただきます。

小泉内閣総理大臣 かねてより私は、このイラク問題について話すときに、これはアメリカとアラブの対決でもないし、イスラムとの対決でもない。お互いの違いを尊重しながら、各国それぞれ宗教がある。イスラムとの対話、アラブ諸国との交流、これは、日本のみならず、あるいはアメリカ初め全世界が心がけるべき点ではないかという点から、今回も私は、戦後の復興支援につきましても、あるいは戦闘行為が継続している中でも、周辺国のアラブ諸国、イスラム諸国との幅広い交流については十分配慮すべきだ。

 また、日本としても、今後そのような諸国との友好のために何が必要かということを、今までも考えてまいりましたけれども、今後さらにアラブ、イスラム諸国との幅広い交流に意を用いるべきだということを外務大臣初め関係閣僚に指示しているところでありますので、今御指摘の点、これから全世界との交流を心がける意味においても、また対話の重要性を考える意味においても、ただいまの御指摘というものは大変重要だと、これからも、そのような点に気をつけて、アラブ諸国、イスラム諸国との幅広い交流を進めていきたいと思っております。

中山(太)委員 時間が参りましたので、これで私の質問を終わらせていただきますが、どうぞ、総理を中心に一致結束して、この日本の新しい時代への大きな扉をあけていただきたいということをお願い申し上げて、自由民主党を代表しての質問を終わらせていただきます。

藤井委員長 これにて中山君の質疑は終了いたしました。
 次に、田端正広君。

田端委員 公明党の田端正広でございます。

 総理及び関係大臣、大変に遅くまで御苦労さまでございます。
 総理、まず、今回のこの問題、総理は、国際協調と日米同盟、この二つが基本的なスタンスだ、ずうっとこうおっしゃってこられました。

 しかし、そういう意味では、国際協調と言われる大きなテーマである国連の合意というものが今回可能でなかった、そういう中でのこのアメリカの武力行使。悪いのはといいますか、問題なのは、大量破壊兵器、これを廃棄するということがイラクの側にあるわけでありますけれども、しかし、結果としてこういうことになったということについて、総理はどういうふうにお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 平和的解決を望んでおりましたけれども、結果として戦闘状況に入ってしまったというのは残念なことでありますが、こういう事態に立ち至った以上は、できるだけ被害が少なく、速やかに戦争を終結させなければならない、これを強く希望しております。

 結局、戦争が早く終わるということは被害が少なく終わるということにもつながりますし、残念な結果に立ち至りましたけれども、私は、多くの戦争に関係のない人々が被害を受けないような配慮が必要ではないかと思っております。

田端委員 今お話のあったように、早く終わるということ、これはもう最大のテーマだと思いますが、大量破壊兵器がもし万一テロ組織のところに手渡ったらどうなるかという、ここのところがやはり私は今回の大きな問題だと思います。

 それで、九月十一日というあの衝撃的な同時多発テロ、この事件に遭遇したアメリカにすれば、これはそういう意味では大変な思い詰めたものがあったんであろうという感じはするわけであります。あの直後の九月二十日のブッシュ演説を見ても、テロリストを支援したりかくまったりする国家はテロ組織と同じだということで、イラクに対しての対決姿勢というものを明らかにしております。

 今回、この問題に対しては、過去十二年間ずうっと、国連においても、先ほどもお話があった国連決議六七八、六八七、そして一四四一に至るまでずうっと、十二年間に十七本国連決議があったわけでありますが、イラクはそういった問題を無視するといいますか、軽視するといいますか、そういうことをずうっと一貫してやってこられた。これは、そういう意味では、大量破壊兵器を廃棄するという意思がはっきりしていない。ここが一番大きな問題であり、この大量破壊兵器のマスタードガスとかVXガスとか炭疽菌とか、生物兵器、化学兵器、これはもう大変な脅威になっているわけでありまして、この脅威、これはつまり、テロと一緒になれば差し迫った脅威になる、そういう意味でなかなか、アメリカの立場というものもこれは大変なものがあったという感じがするわけです。

 それで、私は別に先制攻撃論を認めるわけでも何でもないんですが、しかし、アメリカからすれば、国連の決議がきちっとあり、踏まえている、そして国際協調という枠組みもわきまえている、そういう中で、世界的な脅威というものを、これを除かなきゃならない、未然に防ぐ、そういう発想を持ったんではないのかなという感じがします。

 例えば、病気になっても、病気がこじれてから治療するより、なる前に予防ということでやることが大事なんであって、そういう意味では、私は、予防自衛といいますか、予防的な自衛、こういう発想がこれからの国際社会にあっては必要ではないかな、こんな思いもするわけでありますけれども、総理は今回の問題、この点についてはどういうふうなお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 今回のイラクに対する武力行使は一連の国連決議に基づくものでありまして、私は国連憲章に合致するものだと思っております。

 今までの、いわゆる脅威に対する考え方、戦争に対する考え方、これは確かに、委員御指摘のとおり、一昨年の九月十一日のニューヨークに対するテロ事件、あるいはアメリカの国防の本拠である国防省、ペンタゴンへのあのテロ等から変わってきたということは言えると思います。

 アメリカの本土に、国ということではありませんけれども、テロリストが攻撃をしかけて、あのような多数の死傷者を出した。日本が真珠湾を攻撃したときには、ハワイにおける軍事施設だけだったと伺っています。それで、軍人が死んだのが二千数百名。ところが、今回、テロリストの攻撃は、ニューヨーク、本土で、民間人だけで三千人を超している。この衝撃というのはアメリカ人以外にはわからないだろうとアメリカ人はよく言われますが、やはりそういう思いも寄らない、しかも武器を使っていない攻撃であのような被害を出したということに対して非常に脅威を感じているというのは私も理解できますが、今回のイラクに対する武力行使というのは、一連の国連決議に根拠をなすものだと思っております。

田端委員 私もそのとおりだと思いますが、しかし、少し時代は変わってきつつあるなという、これは感じるわけであります。だからといって、私は何もアメリカがいいと言っているわけじゃなくて、私は、アメリカに大変行き過ぎがあった、こう思っております。

 それは、特にこのブッシュ政権にかわってから、国益中心主義といいますか、非常にそういうところが目立っているのではないか。冷戦崩壊後、新しい秩序を構築する、そういう建前はあるんでしょうけれども、しかし、アメリカのみずからの国益を中心にした判断、例えば、私は、実際に、京都議定書の離脱とか、国際刑事裁判所、ICCの設立条約からの離脱とか、こういった問題、それから、CTBT、包括的核実験禁止条約、これに署名しておきながらまた反対とか、いろいろな変化はあると思いますが、しかし、そういう意味では大変後退してきている、つまり国際協調という中から少しずつアメリカが孤独なところに入っていっているんではないかなという感じがします。

 昨年九月、総理も出席されたヨハネスブルク環境サミットのときも、私は、総理のスピーチ、大変すばらしかったと思いますが、持続可能な発展のかぎを握っているのは人である、人間であると野口英世の話を通されてスピーチされた。これは大変な評価でありましたが、ブッシュ大統領は京都議定書離脱ということでこの会議には来られなかった。それでパウエル国務長官が来られた。ところが、そのパウエル国務長官の演説の中で、アメリカは今後も京都議定書にコミットするということを言った途端に、これはもう大変なブーイングで、演説が中断してしまった。中断すること三回あったわけでありまして、そういう意味では、このアメリカの対応というのは少し行き過ぎたところがある。

 きのう終わりました世界水フォーラム、私が残念だったのは、アメリカの政府関係者も国会議員も出席を見合わせたということは、こういう大きな国際会議にむしろ出てきて、今の現状に対してアメリカがしっかりと物を自分の口で発信すべきであった。これをやらなかった。

 こういったことを考えますと、私は大変残念な思いをしますが、こういうアメリカにはっきりと今度物を言えるのは、逆に言うと、日米同盟である、盟友である小泉総理、あなたがブッシュ大統領にしっかりと物を言う、こういうときに今あるのではないか。そうしないと、今の国際社会が、これ以上おかしくこじれてしまったら、もっともっと偏った方向に行くのではないかということを私は危惧するわけであります。

 まず第一点は、戦争が早く終結するように、ぜひ総理の方から助言をしていただきたい、はっきりと物を言っていただきたい、こう思います。

 もう一点は、国連の安保理が、今そういう意味では機能がおかしくなりました。これを回復させる必要がありますが、イラクの復興決議というものを国連でやることを前提に、アメリカとしっかりとそこを詰めていただいて、そういう意味で、二つの点で、アメリカに対する明確なアドバイスをしっかりとやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、国際協調と日米同盟、この重要性をよくわきまえて、これを両立させるように努力していくのが日本の基本的姿勢であるということをかねがね言っております。

 今回も、安保理の会議の中では残念ながら一致を見ませんでしたけれども、今後、イラクの戦後復興等の面につきましては、私は、国際協調が図られるような対応が必要だと思っておりますし、そういう観点から、私は、アメリカも十分国際協調体制を構築するように努力すべきだということをかねがね申しております。

 どういう形でこの戦闘行為が終結されるかまだ定かではございませんが、また、今後どのような復興支援というものを各国が考えているかまだ不透明な点も多々あると思いますが、日本としては、できるだけのことをやっていきたいと思っております。

田端委員 そもそも、このイラク問題に関しては、私は大変残念なことが一つあると思います。それは、日本の首脳、つまり総理あるいは川口外務大臣、こういった方々が国際舞台でしっかりとメッセージを発していない、これが私は大変残念だと思います。それは、具体的に言いますと、これは野党の皆さんにもお願いしなきゃなりませんが、国会開会中であった、だから思い切った行動がとれなかったということが大きな問題点だろうと思います。

 しかし、それはそれとして、もっともっとやり方があったのではないか。例えば、政府には専用機もあるんだし、副大臣もいるわけですから、幾らでもそれは、こういう大変な緊急非常事態に対してはもっと積極的な対応の仕方があったのではないか。情報化社会といえども、電話会談だけじゃいかにも寂しいんじゃないか、こんな感じがしております。これはまた国対レベルでぜひ各党とも話し合っていただいて、そういうことをお願いしたいと思います。

 実は、公明党は、大変そういう意味では、国連中心主義の政党として、この問題で苦慮しました。

 それで、国連が三つのグループに分かれて行き詰まった三月の三日、四日、五日、神崎代表が急遽ニューヨークに飛びました。そして、アナン国連事務総長に直接会って、そしてこの今行き詰まっている国連を、アナンさん、あなたが何とかここでもう一回きちっと整理して、そして国際合意というものをきちっと果たして、場合によってはバグダッドに飛んでフセイン大統領と直接談判してでも、平和的な解決へぎりぎりの努力をしてもらいたいということを神崎代表から直接申し上げたわけであります。そして、その足でアーミテージ国務副長官にも会って、アメリカも最後まで平和的努力をしてもらいたい、これも直接要請した、こういうことをさせていただいた。

 そしてまた、浜四津代表代行は急遽ジュネーブに行きまして、国連難民高等弁務官のルベルス高等弁務官にも直接お会いして人道支援のことについて話し合い、その足で今度はイランに飛び、イランで難民キャンプの予定地を視察し、イランとイラクの国境のところまで足を運んで、その現場に行ったわけであります。浜四津代表代行はちょうどその国境に立ったのが三月の十七、十八日ですから、三月二十日の、戦争が始まった二日前、そのぎりぎりまで現地に臨んで対応を協議したわけであります。

 そういう意味では、一つの政党でもそういうことができるわけですから、ぜひ総理、そういう意味では、今後とも国際舞台にどんどん出ていっていただきたい、こんな思いをしておりますが、総理の御所見と、それから、川口大臣は、先進国の中でも平和を愛する女性の外務大臣、紅一点だと思いますが、ぜひそういう意味で、川口大臣の働きの場もこれから多いと思いますので、その辺の決意のほどもお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 日本が国際社会の中で経済力にふさわしい役割を果たさなきゃならないという御指摘だと思いますが、私は、昨年一年間見ましても、外務大臣よりも外国を訪問しているんじゃないでしょうか。また、各国大統領、首相、これも日本をよく訪れてくれます。そういう際にも、国会の日程の合間を縫って、できるだけ面会し、会談するようにしております。さらに、副大臣、政務官初め、総理大臣経験者、外務大臣経験者にもお願いしまして、特使として、あるいは必要な対話を心がける場合には派遣いたしまして、できるだけ日本の立場を理解し、各国との協力を得ようということで努力しているわけでございます。

 もちろん、国会で法案たくさん抱えていまして、それぞれ皆さんからの御協力を得ないと成立しないものですから、それについても十分配意しています。しかし、できるだけ国会の御理解を得て、必要な会議には出席するように心がけていきたい。

 昨年ですか、田端議員も南アフリカで、ヨハネスブルクでお会いしましたね。やはり目に見えないところで努力されているなと。公明党の皆さんが、神崎代表もアナン事務総長と会談する、あるいはアーミテージ国務次官とも会談される。先日、浜四津代表代行もジュネーブでいろいろな方々、要人と会談された。午前中は、参議院の予算委員会で遠山参議院議員が、浜四津代表代行と一緒にイランを訪問されて、実際にクルド人がイラン、イラクの国境を越えて、イランに難民として、あるいは戦争の被害から逃れてこられている、その現場の写真を提供して、じかに行っている写真も見せていただきました。そういう面で、議員外交も活発に展開されるということはよく承知しておりますし、お互いみずからのできないところを補い合っていく……

藤井委員長 総理、時間が来ていますので。

小泉内閣総理大臣 日本の立場というものをできるだけ理解されるような外交努力を心がけていきたいと思います。

藤井委員長 もう時間が来ていますから、じゃ、簡単に一言、川口外務大臣。
 時間をちゃんと守るようにしてくださいね。

川口国務大臣 私は、昨年外務大臣になりましてから、一年間で七十日強海外に出ておりますけれども、やはりまだ、国会も大事でございますので、必要な会議に出られないことがございます。田端委員から非常に温かい、会議に出ることについての御支援をいただきましたので、ぜひ必要な会議には出かけていって、そして自分で外交をしていきたいと思っております。よろしく御支援のほどお願い申し上げます。

田端委員 ありがとうございました。

藤井委員長 これにて田端君の質疑は終了いたしました。
 次に、松浪健四郎君。

松浪(健四郎)委員 保守新党の松浪健四郎でございます。

 まず冒頭、保守新党を代表して、重い決断をされました小泉総理に敬意を表したいと思います。そして、私たち保守新党は、総理の決断を支持し、これからもいろいろな形で支援をさせていただきたい、このように思います。

 古代ローマの風刺詩人ユウェナリスは、パンとサーカス、こう申しました。人間は、食べるものに不自由しなくなると、変わったものや野蛮なもの、残虐なものが見たくなる、こういう意味であります。

 英米は豊かであるから、そのような変わったもの、残虐なもの、これを見たくなったんだろうか。決してそうではありません。大量破壊兵器、特に化学兵器や生物兵器の拡散、これが国際的に広まればどのようなことになるか、このことを恐れた。そして、そのことに対して小泉総理も大変な脅威を持ち、米英を支持する、このように決断されたのではないのか、私はこう思っておりますが、総理の見解をお尋ねしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 今回、まず、イラクがこの十二年間にわたって国連の決議を忠実に守ってこなかった。そして、大量破壊兵器という脅威にどう対応するのか。危険な大量破壊兵器を危険な独裁者が持った場合に、我々はどういう危険な状況に直面するかというのは、だれもがこれは人ごとでないと思っていると思います。

 そういう点と、さらに過去の経緯からしまして、私は、日本の安全を確保するという点から考えましても、日米同盟と国際協調を両立させるということを言ってまいりましたし、同盟国であるアメリカが、そのような一連の十二年間にわたる国連決議というものを根拠にしながら、危険な独裁者が大量破壊兵器を持った場合、この脅威をどう除去していこうかということで立ち上がったわけでありますので、私は、日本としてもこれを支持するのが日本の国益にかなうのではないか。そして、今後とも、日米信頼関係の上に立って、国際協調体制を図っていくということも大事ではないか。

 そういうさまざまな角度から、残念ながら、国連安保理で結束はできませんでしたけれども、今回の戦闘行為はやむを得ない苦渋の決断だったのではないか。同盟国としての日本もこれを支持するのが、今後の世界情勢を考え、日米関係を考え、日本国民の利益を考えて妥当なものではないかなと考えた次第でございます。

松浪(健四郎)委員 次に、外務大臣にお尋ねいたしますけれども、大量破壊兵器、とりわけ生物兵器、化学兵器、これらをイラクは保有しておるというふうに言われておりますけれども、その具体的な事例とその威力、これについてお尋ねしたいと思います。

川口国務大臣 いろいろございますけれども、例えばVXガスというのがございます。

 これは最も強力な化学兵器の一つというふうに言われておりますけれども、筋肉がけいれんしたり、呼吸障害があってそれで人が死ぬということですが、致死量はわずか〇・二滴程度、サリンの約三百倍の威力があると言われておりまして、二・四トンのVXガスは、計算を単純化していたしますと、約二億人の致死量分をイラクが持っている懸念があるというふうに言われておりまして、それについてイラクは何も、廃棄をした証拠も見せていないということでございます。

松浪(健四郎)委員 最後に、総理にお尋ねしますけれども、国論が大きく二分されております。事は安全保障の問題であります。私は、ここで総理は決断をして国民に信を問うべきではないか、こういうふうに思っておりますが、総理、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 国民に信を問うということは、解散しろということだと思いますが、まだ任期がありますので、その前にやるべきことはたくさんありますので、総合的に実績を積んで、その上で、いずれ時期が来れば信を問わなければならないと思っております。

松浪(健四郎)委員 時間が参りましたので、これで終わります。
 どうもありがとうございました。

藤井委員長 これにて松浪君の質疑は終了いたしました。
 次に、前原誠司君


2003/03/24 イラク問題集中審議 1  

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