2003/03/24-3

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156 衆議院・予算委員会会  イラク問題集中審議 3

質問者=中山太郎(自民)、田端正広(公明)、松浪健四郎(保守)/前原誠司(民主)/一川保夫(自由)、木島日出男(共産)、今川正美(社民)


平成十五年三月二十四日(月曜日)

一川委員 自由党の一川保夫でございます。

 小泉総理にまずお伺いするわけですけれども、連日、プロ野球の生中継を見るがごとく、今イラクの戦争が報道されています。こういうのを見ている国民にとっても大変つらいものがあると思いますけれども、私は、これからの新しい国際的な安全保障ということを考えてみた場合に、我が国が今回とったこの判断というのは本当に正しかったのかなというふうに思います。

 我々自由党の基本的な考え方の中に、二十世紀の我々人類の悲劇を繰り返してはいけないという基本的な気持ちの中で、日本の憲法の理念を生かしながら、新しい概念のもとで国際的な安全保障体制というものをしっかりと構築しなければならないという問題意識を持っております。そういうことからした場合に、我々はやはり国際社会と真の協調を図っていく必要がある。そのためには、やはり唯一の国際機関である国連というものをしっかりと中心に据えて、それを生かしていく必要があるのではないかなという考え方を基本に持っておるわけです。

 私は、今回のこのイラク問題、我が国が以前からいろいろなかかわり方をしてまいりましたけれども、日本が本当に世界平和のためにすばらしい貢献をしておるということを世界各国に知らしめる絶好のチャンスではないかというふうに思ってまいりました。しかし、残念ながらといいますか、日本政府は本当に国際的な世論を形成するために先頭に立って努力したというような印象は全然残っていないわけです。

 私は、そういう意味においては、本来の今日の日本が果たすべき役割といいますか、その責務を日本政府は果たせなかったのではないかという思いを持っているわけですけれども、総理はどのようにお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 日本は今まで、国連の中におきましても、あるいはアジア地域におきましても、さらには日米関係におきましても、それぞれの国際社会の中で日本としての役割を果たしてきたと思います。

 外国を回っていろいろな要人と会談してみれば、日本の役割にいかに大きな期待を示し、今までの日本の戦後の実績に対していかに高い評価を下しているか。私は、総理になってからも改めて認識しておりますし、今後とも、日本の役割として、国際社会の中での活躍の余地はたくさんある、また、日本の経済力にふさわしい活動をしていかなきゃならないと感じておりまして、そんなに日本の外交面において卑下する必要はないと思っております。

一川委員 国民の皆さん方とも、この休みの間、いろいろなお話をやってまいりましたけれども、やはり、何かちょっと、アメリカ、イギリスを中心として、急いでいるなという素朴な印象も国民の方々はみんな持っていると思うんです。それは、やはり日本という国がもう少し冷静に考えて、国際社会の中で、本当に世界の平和をかち取るためにはどうするかということを、もっと世界をリードするような考え方のもとで立ち回ってほしかったという気持ちが多分にあるのではないかなという思いを私は持っております。

 そこで、今回、アメリカ、イギリスを中心としたイラクに対する戦争が開始されたわけでございますけれども、私は、アメリカという国に対する反米感情的なものが、この戦争を契機にして何となく世界に広がっているのではないかということを非常に心配しております。

 そういうことをいろいろと考えてみますと、本当に、今回こういったことを日本政府が判断したことは、これから、開戦した後どういうふうに始末されるかわかりませんけれども、例えばテロの抑制とか大量破壊兵器をいろいろな面で監視していくということからすると、ますますやりづらくなるのではないか。世界各国でそういう反米的なデモ行進が起こったり、いろいろなことが起こってくればくるほど、そういうものを国際的に監視するというやり方がだんだん心配になってくるわけです。

 そういう面で、私は、今回の国連の決議なしに開戦したということは、非常に、今後のことを考えますと、むしろアメリカを孤独に追い込んでしまう危険性があるのではないかというふうに思いますけれども、総理はどう思いますか。

小泉内閣総理大臣 私は、イラクの問題がさらにテロ活動を活発にするんじゃないかというふうには見ておりません。また、そういう対応をしないように、アラブ諸国、イスラム諸国との対話とかあるいは協力を促進していかなきゃならないと思いますが、テロ活動は、イラクの問題になる前から、ニューヨークにおいても行われたわけでしょう。あるいはまた、全く関係ないインドネシアのバリ島でもテロ活動は起こっているわけでしょう。イラクの問題が起きたからもっとテロ活動が活発になるか。その以前からテロ活動は活発だったんですよ。

 私は、そういうことを考えると、イラク問題が起こったからテロの心配ということもしなきゃなりませんが、同時に、イラク問題が起こる前からテロの心配はあったんです。こういうことに対しては、国際協調の中でテロ防止のために全力を挙げていかなきゃならないと思っております。

一川委員 いや、私はそういうことを言っているんじゃなくて、今回のイラクの問題に対する、アメリカを中心としたそういう国々の戦争を行ったということが、要するに、国際的ないろいろな合意形成というのが十分なされないままに開戦したということであったわけですけれども、それが、これからの新しい時代に向けての、いろいろなテロの抑制とか大量破壊兵器を監視するという観点から見た場合に、果たしてそれで十分だったのかなということなんです。もっといろいろと熟知しながら、粘り強く説得する必要があったのではないか。そこを指摘しておるわけですよ。

川口国務大臣 いろいろな考え方はあると思いますけれども、世界が今後、大量破壊兵器あるいはテロの問題に対処をしていくために重要なことは、国際社会が毅然として、敢然と大量破壊兵器あるいはテロに立ち向かうということであるわけですね。

 その点からいきますと、国連が一四四一で最後の機会を与えて、それっきり国連が何もしないという状況は、これは国連の権威にかかわることであり、国際社会が敢然と対応するということにつながっていない話であるわけですね。まさにその抑止ということの観点からいうと、国連としてあることをやりますと言った以上は、最後の機会を与えた以上は、その次にきちんと行動をとるということがなければ、テロリストに甘く見られ、大量破壊兵器を開発する国々に甘く見られるということになるわけだと考えます。

 ですから、そういう意味で、米国あるいは英国がやったことというのは、まさに国連の権威を維持するということのためにやったということであるというふうに私は理解をいたします。

一川委員 そうすると、ちょっと念押しにお聞きするわけですけれども、では、外務大臣でも結構ですけれども、今このタイミングで、国連の手続がああいう状態でアメリカなりイギリスが武力行使をした、それを日本が支持したということは、今でもやはり正しいと思いますか。

川口国務大臣 正しいと思います。

 逆に、もし査察をずっと続けていたとして、大量破壊兵器の問題にきちんと対応できただろうかということが問題になるわけでございまして、イラクが積極的にいろいろな証拠を開示してということをやっていない、それから、米国が圧力をかけているということがあって、この査察というのが、イラクが小出しにするという形で続いていたわけでございまして、イラクは圧力がなくなればこの問題について対応してこないと思われる、そして、その結果として、大量破壊兵器の問題は解決をしない。大量破壊兵器の問題について対応をするということのために、必要やむを得ない措置であったと私は考えております。

一川委員 では、もう一度お聞きしますけれども、このイラク問題、具体的に、イラクという国はけしからぬ、だから国連の先ほど政府が答弁しておられる決議に基づいていつ武力行使するかもしれない、その場合はよろしくというような旨の相談事というのは、日本政府にいつあったんですか。

川口国務大臣 質問の意味をちょっと誤解しているかもしれませんが、米国が武力行使をするということをいつ日本に伝えてきたかということをおっしゃっているのでございましたらば、その当日の、二十日の十一時半ごろであったかと思います。質問の意味をもし誤解していましたら、失礼いたしますが。

一川委員 そういうことじゃなくて、要するに、このイラク問題、武力行使も含めてどう対応するかということについて、いつごろから日本政府にそういう相談事があったかということをお聞きしているわけです。

川口国務大臣 米国から、これについて武力行使をするということについて、具体的に相談があったということではございません。我が国として、米国と、このイラクの問題の対応についてはいろいろなことを密接に話し合ってきてはおりますけれども、我が国として、国際社会が協調して平和的に解決をしていくことが重要であるということは言っておりますけれども、米国から我が国に武力行使をすることはどうだろうかという相談があったかということが御質問でしたら、そういうことではございません。

一川委員 では、アメリカのブッシュ大統領から、トップの権力者ですけれども、日本の小泉総理に直接事前に何か通知があったんですか。

小泉内閣総理大臣 これは、アーミテージ国務副長官から、私と竹内外務次官が協議している最中に連絡があったということであります。

一川委員 日米は同盟国だということを総理が強調する割には、ちょっと扱いが軽いんではないかなという感じを率直に受けます。

 そこで、もう一回小泉さんにお聞きするわけですけれども、要するに、米国、アメリカの抑止力というものを非常に期待しているという言い方がございます。それは北朝鮮との問題でもそういう言い方をされますけれども、昨年総理自身が北朝鮮と交わした平壌宣言、あれは国交を正常化するというような趣旨だというふうに読めるわけですけれども、そういう観点からすると、今総理がおっしゃっている、北朝鮮の問題は米国の抑止力を期待するんだということとその考え方は整合性がとれているんですか、そのあたりは。

小泉内閣総理大臣 整合性、よくとれていると思います。

一川委員 いや、そこをちょっと国民にわかりやすく説明していただけませんか。

小泉内閣総理大臣 日米安保条約というのは、あらゆる国に対して、日本を攻撃すれば、それはアメリカへの攻撃と同じなんだ、日本への攻撃というのは、アメリカと戦う覚悟なしに攻撃できないという点において、すべての国に抑止力としてきいている、日本にとっての戦争を防ぐための、安全を確保するための大事な抑止力だと私は思っております。

一川委員 そこで、せっかく文部科学大臣にも来ていただきましたので。

 私は、一昨年の米国における同時多発テロ、大変悲しい現象だったわけですけれども、しかし、ああいう場所でああいうことがなぜ発生したのかということの分析なり、そういうことが余りなされていないような気もするわけですけれども、文部科学大臣としては、これから日本を担う子供さんたちに対して、ニューヨーク等においてああいうテロがなぜ発生したのか、また、今回国連の決議なしにアメリカなりイギリスが中心となってイラクに戦争を開始したというようなことは、これからの子供さんたちにどういう教え方が望ましいと思いますか。

遠山国務大臣 学校教育におきまして、今起きているような問題、あるいは九・一一のような問題、これは社会的事象というだけではなくて、国際的な大きな複雑な問題にも絡んでいるわけでございますが、そういったことについて学ぶ機会を持つということは、子供たちが将来日本を担うというときにしっかりした考えを持つために大変大事だと思います。

 ただ、どういう社会的事象をどういうふうに取り扱うかということは、私は、これは各学校におきまして十分に適切な指導方法というのを考えてもらいたいと思っております。これはまず、非常に客観的な角度から取り上げるべきだと思いますし、また、児童生徒が公正な全体的な知識を得た上で判断できるようにすることが必要だと思います。歴史的な事象を含み、あるいは国際機関が絡み、幾つかの国々が絡んでいるようなこのような問題については、学校において取り扱う場合には、私は、十分注意した上で取り扱ってもらいたいものだと思っております。

一川委員 最後に、総理に決意というか今後の取り組みをお聞きするわけですけれども、こうなった以上は、一日も早く戦争を終結して、国連中心的なそういった世界平和をしっかりとこれから構築し直す必要があると思うんですけれども、それについて私は、アメリカの後につくんじゃなくて、日本が先頭に立って、これこそ本当に真剣に汗を流す必要があるんではないかというふうに思いますけれども、総理の決意のほどを。いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 日本は、戦後六十年近く戦争を経験しないで安全を確保してきた。これは大変恵まれていると思います。これからも、日米同盟、国際協調、この重要性をわきまえて、戦争を決して起こさせないという決意のもとに外交努力を重ねていきたいと思います。

一川委員 終わります。

藤井委員長 これにて一川君の質疑は終了いたしました。
 次に、木島日出夫君。

木島委員 日本共産党の木島日出夫です。

 総理にお聞きをいたします。
 三月二十日、アメリカは、世界の多くの人々や国々の反対の中、イラクに対する武力攻撃を開始いたしました。日本政府、小泉総理は、これに間髪を入れず支持を与えました。総理は、二十日深夜の衆議院本会議での報告で、武力行使に至ったことはやむを得ないことだと考える、その根拠に、こう述べました。「問題の解決をいつまでも先延ばしにすることは許されないのです。イラクの対応を根本的に変えるための方策も見通しも全く見出せない以上、武力行使に至ったことはやむを得ないことだと考えます。」

 そこで、総理にお聞きします。イラクの対応を根本的に変えるための方策も見通しも全く見出せないとの認識は、一体だれの認識なんですか。総理個人の認識ですか、それとも、国連安保理がこういう認識に立っているという報告なんですか。

小泉内閣総理大臣 私は、私自身の認識を申し上げたわけであります。

木島委員 では、国連安保理はそんな認識に立ってないということと聞いていいですか。
 いや、総理です。

小泉内閣総理大臣 国連安保理の中では意見が分かれているということは承知しております。

木島委員 単に分かれているだけじゃない、安保理を構成する多数の国々の認識は全く逆ではなかったでしょうか。

 三月十七日に、UNMOVICのブリクス委員長は、イラクの大量破壊兵器廃棄のための具体的、詳細な計画を安保理に提出いたしました。これを受けて開かれた三月十九日の国連安保理外相級会議で、例えば、例を挙げます、フランスのドビルパン外相は、次のように述べています。

 ブリクスやエルバラダイの、彼らの計画は、イラク軍備解体を平和的に行う明確で信頼に足る展望がいまだ存在することを示している。この計画は、この査察の優先課題を提案し、その実行のための現実的な日程表を提示している。また、この報告は、査察が明確な成果を上げていることや、査察が平和的で引き締められた期間内で真の軍備解体を行う展望を示している。我々が決議一四四一の枠内で共同で歩んできた道はいまだに存在する。

 同じく、その日、ドイツのフィッシャー外相の発言。
 未解決の軍備解体問題のリアルな記述をした作業プログラムが、今、我々の目の前にある。これは、イラクをどのように平和的に短期間で軍備解体するのかの明確で説得力あるガイドラインを与えている。私は、特に、きょう、その事実を強調したい。厳格な期限を持ったこれらの要求を支持することで、イラクを平和的に軍備解体することは可能だ。したがって、平和的な手段は尽くされていない。

 中国も同様であります。
 国連安保理は、十五カ国のうち、米、英、スペイン、ブルガリアの四カ国を除く九カ国、多数が、査察継続で平和的な解決は可能だという認識だったんじゃないですか。

 総理、これは認めますか。

小泉内閣総理大臣 それはフランスやドイツの見方であるということは承知しております。

 しかしながら、過去の行動を見ると、昨年の十一月の一四四一、これについて、最後の機会を与える。ブリクス委員長は、十分な協力をしてないということを言っているんですよ。これはもう全社会一致している。なおかつ、一九九〇年、イラクがクウェートを侵略したときに、クウェートを解放するために、国連は武力行使容認決議をした。そして、そういう圧力をかけたとしても、イラクは、平和的解決、クウェートから撤退しなかったんです。幾ら圧力をかけてもイラクは……(木島委員「昔話を聞いているんじゃないんだよ」と呼ぶ)聞いてないって、私は一連のことを言っているんだ。一連のことを言っているんです。(木島委員「ことしの三月時点のことを聞いているんだよ。だめだよ」と呼ぶ)質問に答えているんです。質問に答えているんです。(木島委員「三月の時点のことをどうかと聞いているんだよ。三月十九日にどうだったかと聞いているんだよ。時間のむだだよ、こんなの」と呼ぶ)だから、今、順を追って言っているんです。過去のことを言っているんです。

 それは、クウェートに侵略したときにも、国連が一致して武力行使容認決議をしても、イラクは言うことを聞かなかった。それでやむなく、湾岸戦争、イラクを解放するために戦闘行為に出た。

藤井委員長 答弁は簡潔にお願いします。

小泉内閣総理大臣 そして、撤退されて、停戦決議、これも、大量破壊兵器を廃棄しなさいというのが十二年間続いているんですよ。十二年間、イラクは守ってこなかったんです。そして、昨年の十一月に最後の機会を与えるといって、これは三月まで議論してきたんじゃないですか。昔話から、関連あるんですよ、今まで。

 単に三月時点だけの議論じゃないんです。ずっと関連している。昔の約束はほごにしていいということじゃないでしょう。十二年間の約束をどう考えるか。そして、過去の、平和的解決を望んでいるけれども言うことを聞かない。そうして、やむを得ない決断だったと私は言っているんです。

木島委員 そんな昔話を聞いているんじゃないよ、私の質問は。三月十七日と十九日の国連安保理の状況を聞いているんじゃないですか。

 次の質問に移ります。

 総理は、武力行使の法的根拠について、二十日、二十一日の衆参両本会議で、イラクが決議一四四一で履行を求められている武装解除の義務を履行していないことから、さらなる重大な違反が生じていると言わざるを得ずと答弁をして、決議六八七、六七八違反につなげようとしております。

 そこで聞きます。イラクが安保理決議一四四一の義務に対しさらなる重大な違反をしているという認定権限を持っているのは、国連安保理だけであります。国連安保理はそんな認定をしていますか、総理。

小泉内閣総理大臣 それは、安保理で一致結束した認定はしていない。しかしながら、一四四一で、過去の六七八、六八七を含めて、最後の機会を与える。そこのときにイラクが即時、無条件、無制限に協力していれば、戦争は起こっていないんです。そういう四カ月の期間の中で、ブリクス委員長も、十分な協力をしていないと言っているんです。

 そして、過去の経緯も、武力行使容認決議をしても、一九九〇年は、イラクは言うことを聞かないでクウェートから撤退しなかった。幾ら平和的圧力をかけても言うことを聞かない。これは、もうやむを得ない私は決断だったと思います。

木島委員 総理は、重大なことを認めました。国連安保理は、イラクが一四四一決議に違反をして、さらなる重大な違反をしていると認定していないということを明確に答弁をいたしました。これは重大なことであります。

 ここに国連安保理一四四一を持っております。国連安保理一四四一の本文第四項、イラクがそういう重大な違反をしているかどうかの評価をするのは安保理だ。それから十一項、イラクが妨害をしているかどうか、軍備解体義務の遵守に対するイラクの不履行があるかどうか、それは安保理事に報告して、安保理が十二項でその状況並びにすべての安保理決議の全面遵守の必要性について検討する。

 すべて安保理が認識し、認定し、決定する権限があるんです。それがないということは、いまだ国連安保理は、イラクはこの決議一四四一に違反していないという状況に国連安保理があるということを総理が認めたということを意味するんです。いいですね、総理、これは。これは、法的権限に係る……

小泉内閣総理大臣 違います。言っているでしょう。一四四一、六七八、六八七含めて、安保理決議なんです。根拠はそこなんです。十分な協力をしていないと、もう認定しているんです。しかし、三月の時点において、この問題について安保理が一致した決議は出せなかったということを言っているんですから。根拠は十分にある。安保理が最後の機会を与える、十分な協力をしていないということは、国際社会が一致結束して認定しているところであります。

木島委員 総理は、全然一四四一を読んでいないんですよ。一四四一の第一項を読んでください。イラクが決議六七八を含む関連決議に基づく義務の重大な違反をしてきたと決定している。昔そういう違反をしていると一四四一は認めているんですよ。二項、そう認めながらも、最後の機会をまだ与えるんだということを一四四一は言っているんですよ。そして、まだ機会を与えている最中なんですよ。そして、報告を受け、それに基づいて、さらなる重大な違反をしているかどうかを国連安保理が認定するかしないか決定するんですよ。それがいまだにしていないということなんですよ。

 ですから、そういう段階に国連安保理があったということは、総理が言っているように、単純に、国連安保理違反だから決議六七八、六八七に戻れるなんという理屈は成り立つはずがないんですよ。

 だから、アメリカ、イギリス、スペインの三カ国が三月七日に安保理に提出した決議案、これには、イラクは決議一四四一によって与えられた最後の機会を生かすことができなかったこととなると決定すると書いてあります。今総理が考えているようなことと同じことが書いてあります。しかし、この決議案を提案した米、英、スペインは、安保理決議とすることを断念したんですよ。撤回せざるを得なかったんでしょう。

 このことは、もう明らかに、安保理がいまだにイラクの一四四一違反の認定をしていないこと、むしろ、安保理の多数国の認識は、査察による平和的解決が有効とするものであることの立派な証明じゃないですか。

 ですから、総理が言うように、国連安保理がイラクの決議一四四一違反を認定していないんだから、六八七、六七八に戻るなんという理屈は成り立たないということは明らかじゃないですか。

小泉内閣総理大臣 それは見解の相違ですよ。もう一四四一において、十分な協力、即時、無条件、無制限、その最後の機会を与えるということに、イラクは生かさなかったんですよ。そして大量破壊兵器、これに対して、一連の行動に対して、ブリクス委員長も十分な協力をしていないということをはっきりして言っているじゃないですか。

木島委員 だから、イラクが最後の機会を生かしたか生かさなかったか、その認定権限、判断権限者は国連安保理にのみある。総理、さっき認めたじゃないですか。まだ認めていないんですよ。ですから、法的権限がないということをもう逆証明しているんじゃないでしょうか。私は、米英両国のイラクに対する武力行使が全く国際法上の根拠を欠くことが、これできょう明らかになったと思います。これは、言葉をかえれば、米英両国の武力攻撃が違法、無法で野蛮なことだということであります。

 最後に、安保理事国のチリの上院議員リカルド・ヌニェスさんはこう言っていることを紹介します。

 チリ政府が国連安保理で米国を支持しなかった態度は、千五百万人のチリ国民の平和の願いを代表した、極めて尊厳のある行動だった。私たちはラゴス大統領の行動を誇りに感じている。今回の戦争開始を阻めなかったのは、日本など一部先進国の責任が大きいと思う。残念なことは、経済大国の日本が、米国にすんなり同調して不当な戦争を進める米国を野放しにしてしまったことだ。

 日本政府、小泉内閣の、無法なアメリカの戦争を支持した態度を私は厳しく糾弾したいと思うんです。そして、政府は、国連決議違反、法律違反、この態度をきっぱりと改めて、米英両国政府に対して、直ちにですよ、武力攻撃を中止するように行動を起こすことを求めて、私の質問を終わります。

藤井委員長 小泉内閣総理大臣、答弁を求めます。

小泉内閣総理大臣 イラクが、大量破壊兵器、十分協力すれば戦争は起こらなかったんです。一にかかって、戦争か平和かの選択はイラクにあったんです。

木島委員 もうそんな理屈は通用しないということは明らかになったと思います。
 質問を終わります。

藤井委員長 これにて木島君の質疑は終了いたしました。
 次に、今川正美君。

今川委員 社会民主党・市民連合の今川正美です。

 私は、きょうこの席に非常に沈痛な気持ちで立っております。今この時間にもイラクで、何の罪もない子供たちを初め、既に百人を超える多くの人々がとうとい命をなくしていっている。そのことに思いをはせたいと思うんであります。

 さて、具体的な質問に入る前に、小泉総理、まず冒頭に一つお尋ねをしたいんです。

 ことしに入ってからイラク戦争に踏み込むまでの間、世界各地で多くの、戦争だけは回避をしてほしい、こういう声が上がりました。デモや集会が起こりました。特に二月中旬には、全世界で一千万人を恐らく超えると言われる戦争反対のデモや集会がありましたが、我が国内でもそうであります。これに対して小泉総理は、イラクに誤ったメッセージを送りかねない、あるいは、過去の歴史の中で世論に左右されて政治が間違ったこともあるという趣旨のコメントを出されておりますけれども、本当に驚きました。

 世界各地の、戦争だけはやめてほしい、人だけは殺さないでほしいという声は、私は非常に健全な声だと思うんだけれども、総理はどのようにこれをお考えなんですか。

小泉内閣総理大臣 これは、世論というものは重視しなきゃならないというのは、民主主義の時代では当然のことだと思います。しかしながら、過去の歴史の事実を見ますと、世論に従って政策を推進した場合に、正しい場合も当然たくさんあります。そして、時には、世論に抗してやった場合においても、後で評価される場合もある。これは歴史の事実が証明しているということを言ったわけであります。

 例えて言えば、古い話で言えば、日露講和条約。日露戦争の後、講和条約を結んできた小村外務大臣、講和はけしからぬとして多くの批判を浴びました。しかしながら、結果的に、あのとき戦争を進めたら、もう日本も疲弊していた。さらに、日米開戦のときも、真珠湾を日本が攻撃した場合に、もう日本は沸き立ちました。戦後、日米安保条約の改定時、もう連日、日米安保条約改定反対のデモが国会を取り巻きました。そして消費税導入のとき、所得税減税のためには消費税導入が必要だろうと。これも、圧倒的多くの国民は消費税導入反対でした。

 しかし、日を追って、今どうでしょう。たしか、今になってみれば、やはり日米安保条約が必要だなという意見の方が多いんじゃないでしょうか。消費税導入、これも、やはり今は、消費税やむなしといいますか、消費税に対しても大方の国民の理解は得られているんじゃないでしょうか。

 そういうことを考えますと、時に世論に従わない場合があっても、進めた政策も、時間がたつにつれて大方の理解が得られる場合もあるんじゃないかということを私は申し上げたんであって、それは歴史の事実が証明しているということを申し上げたわけでありますから、その点は御理解をいただきたいと思います。

今川委員 実は、新聞等の報道によりましても、全国の各地方自治体、県議会、市議会、町議会ですね、今月の十八日の段階で五百十六の地方自治体から、イラクの戦争に反対だという意見書とか決議書が採択をされております。

 ですから、今総理がおっしゃった過去のことも大切なんだけれども、今私が問いかけたかったのは、我が国はもちろん、世界各地で、戦争だけは回避してほしいという声は正しくないんですか。もう一度。

小泉内閣総理大臣 戦争を回避してほしいというのは世界の国民の願いだと思います。日本もそうであります。しかしながら、残念ながらそれができなかった。こういうことについては、残念でありましたけれども、やむを得ない決断だったのではないかと。

 大量破壊兵器を廃棄する、そういうことを考えますと、今回、平和的解決によらず、このような事態に至ったことは残念でありますが、こういう事態に至ったからには、一日も早く、犠牲を少ない形で戦争を終結させなければならないと思っております。

今川委員 そこで、少し具体的な御質問を総理にしたいと思うんですが、まず、私の簡単なこのイラク戦争に関する考えを述べてから質問をいたしたいと思います。

 このイラク戦争に関しては、昨年一月のブッシュ一般教書演説あるいは昨年九月のブッシュ・ドクトリンが非常に大事だと思っているんです。そこでは、特定の国を悪の枢軸と指定して、先制攻撃も辞さないとしています。イラク問題もそもそもは、ブッシュ政権にとっては、フセイン政権を打倒するということが真のねらいであった、私はそう思う。当初その理由づけをブッシュ大統領などはテロ組織との結びつきに求めたけれども、立証できなかった。それでその次に大量破壊兵器問題にすりかえたんだ、私はそう思っています。

 この問題は、湾岸戦争以前の歴史的背景を踏まえることが私は大切だと思うんです。八〇年代のイラク・イラン戦争のときにアメリカはフセイン政権を支援し、武器を与え、財政支援をし、その過程で生物化学兵器をアメリカが提供したんじゃないですか。そこのところをきちっと踏まえた上でこのイラクの問題を語る必要があると思います。

 そこで、まずお尋ねしたいんでありますが、いわゆるブッシュ・ドクトリンの先制的自衛という考え方に対して総理の御見解をお聞きしたいと思うんですが、ブッシュ・ドクトリンでは、大量破壊兵器がテロ組織に渡ってからでは手おくれなので、先制攻撃も辞さないという論理の組み立てをしているんですね。こういう考えに関して、小泉総理はどうお考えですか。

小泉内閣総理大臣 アメリカはアメリカとしての考えがあると思います。アメリカはあらゆる選択肢を排除しないということを言っておりますし、私は、しかしながら、戦争というのは、自衛権の行使あるいはまた国連安保理の決議、これが必要だということでありますので、こういう点につきましては、今回のアメリカ、イギリス等の武力行使というのは、国連憲章に合致したものであり、一連の国連決議を、根拠になっているということを繰り返し繰り返し述べているわけでありまして、アメリカのいわゆる先制攻撃論ということとは違う、国連憲章に合致したものである、私はそのような根拠を示しているわけであります。

今川委員 いや、私は、今回のイラクに対する武力攻撃の問題をこれから御質問しますが、一般論として、これまでの国連憲章なり国際法上、このブッシュ大統領が出された昨年九月のブッシュ・ドクトリンの中にある、先ほど申し上げました先制的自衛あるいは先制攻撃というものが国際法上許されるんであろうかどうか、私は許されないと思うんですが、その点に関して小泉総理の御見解を伺いたいんです。この今回の武力行使が正当かどうかということを直接お尋ねしているんじゃないんです。

 簡潔にお願いします。

川口国務大臣 ブッシュ・ドクトリンというのは、先制的な行動と言っているわけですけれども、具体的にそのブッシュ・ドクトリンに基づいて米国が何か行動をとるとしたら、米国は当然に国際法に合致をした行動をとるというふうに考えております。

今川委員 いや、答えをはぐらかしてもらったら困るんですよ。
 では、次に移ります。

 次に、先ほども議論がありましたが、国連決議の六七八、六八七、あるいは一番新しい一四四一、これは私は、例えば一四四一の場合に、一番最後に、たび重なる義務違反を受けて深刻な結果を招くと繰り返し警告してきたことを確認するとは書いてあります。これイコール武力行使をしてよろしいというふうに私は理解しません。多くの国際社会はそのように理解をしていると思います。

 そこで、今申し上げた三本の一連の国連決議が、総理、武力行使をしてよろしいというふうな根拠になるんであれば、なぜアメリカやイギリスなどは武力攻撃をするための新たな決議を求めたんでしょうか。いろいろな工作、働きかけをし、最終的に、新しい決議の採択がどうもできそうにないという判断をしてから、もとに戻ってこの一連の国連決議で十分なんだというのは、余りにもいいかげんじゃありませんか。どうですか、総理。

小泉内閣総理大臣 これは、武力行使なしに平和的解決を国際社会は望んだんですよ。日本も望んだんです。だからこそ、アメリカは一四四一の決議なしでも武力行使も辞さないと言ってきたんです。それを、私は、国際協調が望ましいということで、一四四一決議に持っていくために、アメリカは国際協調体制をとるようにさまざまな努力を積み重ねてきて、昨年十一月、一四四一の決議がなされた。

 それで、あのときに、一四四一の決議というのは大量破壊兵器の廃棄をイラクに求めているわけです。この点については、アメリカもフランスも一致しているわけです。そういう中で、即時、無条件、無制限にイラクが協力していれば、平和的解決が望ましい、できたんです、戦争なしに。しかしながら、さらに平和的解決を望むがために、国際社会が一致結束してもう一段の決議をすればこれはイラクも協力するのではないかという状況にあったから、私は平和的解決を求めるために望ましいと言ったんです。だから、既に根拠は、一四四一、六八七、六七八に根拠はあるんですよ。

今川委員 いや、委員長、答弁が食い違っているんですよ。私の質問にまともにお答えになっていない。

 私、もう一度言いますよ。
 例えば一四四一、これは、先ほど申し上げたように、だれが読んでも即武力行使をしてよろしいというふうには書いていないじゃないですか。だから、今おっしゃったように、ブッシュ政権の中でも、例えばラムズフェルド国防長官とかウォルフォウィッツ国防副長官などは、暗にパウエル国務長官を指して、国連などに新たな決議などを求めるという、迂回するからこんな時間がずれてしまった、時間のむだだったとはっきり言っています。しかし、パウエル国務長官は、より明確な武力行使を求めるための決議を求めたわけでしょう、国連に。結果としてはだめだった。

 つまり、これははっきりしているじゃないですか、一四四一号では国際社会のコンセンサスが得られないと思ったから新たな決議を求めたんじゃないですか。そして、その新たな決議がとれなかった以上は武力行使に入ってよろしいということにはならないということを私は言っているんです。どうですか、いま一度。

小泉内閣総理大臣 一四四一の決議は国際社会が一致して決議したんです。これはもう最後の機会を与える。そしてその後、四カ月たってもさらなる重大なる違反があるということを認めているんじゃないですか。これをどう思うんですか。

今川委員 しかしそれは、国連安保理に対してもブリクス委員長は、いまだイラク政府の協力は十分とは言えないまでも、もっと時間が欲しいと言っています。実際に査察に入った査察団のブリクス委員長が言っているんです。それから、フランスにしてもドイツにしてもロシアにしても、あと三、四カ月の時間を与えれば、武力を使わずとも平和的に解決は可能であるとはっきり言っているじゃないですか。そのことを私は申し上げているんです。どうですか、総理。

小泉内閣総理大臣 そういう見方があるのは承知しています。しかしながら、見解は各国で分かれたから、安保理で決議が採択されなかった。

 しかしながら、その前の一四四一、六七八、六八七を通じて、さらに、一四四一の決議がなされた後の四カ月間、ブリクス委員長も、十分な協力をしていないと言っているんです。そういう一連の決議、過去、根拠は、今回の武力行使が正当化される、私は日本政府としてそういう立場をとっているわけであります。

今川委員 もう時間が参りましたので、最後に一言だけ。

 今回、国連を中心にした国際社会の全体的な、武力行使をやってもよろしいというコンセンサス、合意はありません。こういう国際法に反するような武力行使は一日も早くやめるように日本政府として働きかけるべきだということを申し上げて、私の質問を終わります。

藤井委員長 これにて今川君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして、本日の集中審議は終了いたしました。
 次回は、来る四月一日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後九時三十分散会


2003/03/24 イラク問題集中審議   3

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