2003年12月12日(金) >>菅直人代表の記者会見録 戻るホーム記者会見目次

岡田克也幹事長 定例記者会見要旨

○イラク問題について仏大使・独公使と意見交換、相当共通部分があると感じた
○自衛隊派遣ではなく、国際的な枠組みづくりに日本の外交力を集中すべき
○国連憲章の枠を出た米国への支援は、結局日米同盟自体をおかしくする
菅・岡田体制発足から1年で足場固めはできた、次は攻めの1年にしたい
高速道を造り続けないための民営化論がどこかに行ってしまっている
新人議員研修担当を設置、次期選挙で確実に小選挙区で勝ってもらうため
参院選:各県連に候補者擁立を急ぐよう指示、本部も公募を含めて進めている

■仏独大使館訪問と閉会中審査

【幹事長】私からは2つほど申し上げたいと思います。1つは、今日、在京のフランス大使館を訪れて大使、そして今先ほどはドイツ、大使が東京におられませんので筆頭公使と、イラク復興支援の問題について意見交換をしてまいりました。

 基本的には、我が党の考え方と相当部分共通するところがあると感じましたが、いずれにしても、月曜日に閉会中審査もあります。

 今日一緒に行ってもらった前原さん(ネクスト外務大臣)も私も質問に立ちますので、今日の議論も非常に参考になったと思いますが、とにかく、今我々がなすべきことは自衛隊を出すことではなくて、国連中心で国際協調の中でイラクの復興支援が実現するような枠組みをつくっていくこと、そこに日本の外交力を全力を挙げて集中する、実現に向かって努力するということが、日本の国益にも資するし、同時にイラク国民のためにもなるということだと思います。

 自衛隊を出して、600人以内の陸上自衛隊、そして8機以内の輸送機・航空機ですね、そして4隻以内の艦船を出して、それでどれだけイラク国民のための復興支援に貢献するのか。それは象徴的な意味しかないと思います。

 そして、その象徴的な意味というのが、イラク国民にとって良い意味での象徴であれば救いがありますが、それは結局、占領軍である米英軍に日本も一体となってやっているという印象を与えるだけで、そうであればプラスはほとんどなくて、マイナスのみ大きい自衛隊派遣ということになると思います。

 そういったところに日本の力を注ぐのではなくて、先ほど申し上げたような形で日本の外交力を枠組みづくりのために集中的に投下していくということが極めて大事だと考えています。

 今日、お2人の外交官とお会いして、そのことをについて私の確信を強めたということだけ申し上げておきたいと思います。

 月曜日の質問要旨はお配りしてありますので、特に申し上げることはありませんが、まずは総理の説明責任が果たされていない。先般、記者会見でいろんなことに触れましたが、憲法前文のつまみ食いに象徴されるように、それぞれ国民に対して誠意を持って説明していないということが1つ。今日もどこかの新聞に書いてありましたが、安全確保支援活動を行うにもかかわらず「人道復興支援のために行くんだ」と言い切ったところなどは、その1つの典型です。

 それから、憲法との関係、日米同盟と国際協調の両立と総理は言われますが、言葉の意味自体明らかではありません。

 私が非常に懸念しているのは、一方の日米同盟は小泉総理の下で範囲がどんどん広がっていますので、日米安全保障共同宣言の中で「アジア太平洋地域の平和と安定」という言葉が使われたわけですが、今や中東まで当然のように日米同盟が広がって、自衛隊をそこに出して、日米同盟の名の下に自衛隊を出している。

 しかし、そのアメリカは先制攻撃・単独主義ということを言ってるわけで、日本がこのままこういう形で日米同盟の下でアメリカの支援をしていくということになりますと、もうすでに国連憲章とアメリカの考え方の間には大きな開きがありますが、その矛盾がますます高まってくる。

 そしてそのことは恐らく日本にとって、私は長い目で見れば日米同盟の維持をむしろ難しくしてしまうのではないか──。そういうふうにも思っています。

 ここをきちんと原理・原則を立てて、どういう枠組みの中で日米同盟というものを行っていくのか。言葉を変えれば、やはり国連憲章の枠の中での日米同盟という位置付けをしないと、どんどん両者間の乖離が大きくなって、そして結局は日米同盟自体がおかしくなってしまうのではないかと、そのことを非常に懸念していますので、そういったことについて、総理としっかり議論をしたいと考えています。

 その他、先ほど申し上げた、国際的な枠組みづくりに日本がもっと役割を果たすべきだというようなことを含めて、1時間ですので、しっかり議論し、そして何とか自衛隊の派遣を思いとどまる、そういう選択を総理が取っていただけるように、私なりの努力したいと考えています。

■菅・岡田体制発足1年

【幹事長】もう1つは、実は丁度新体制といいますか、菅代表・岡田幹事長体制がスタートして1年になります。この1年を振り返って、いろんな思いがあるわけですが、1年前に代表選挙をやり、そして菅さん、鳩山さんに言われて幹事長をお引き受けしたときは、党の支持率は5%を切っていましたし、国民からの信頼は全くない状態、そして党の中はまとまりを欠いていましたし、あるいは連合始め従来民主党を支持していただいていた支持者の中からもいろんな声が挙がっていた時代でした。

 それが1年経って、総選挙で政権は取れませんでしたが、1つのまとまりを持った民主党になり、そして若い力、58名の新人も当選し、政権交代に向けてしっかりした足場ができたということは、私にとって大変感慨深いものがあります。

 昨日新しい体制について両院議員総会でも報告しましたが、これからは「攻め」だと思っています。この1年は地固め・足場づくりをしたと。これからはまさしく攻めの1年にしたいと考えていまして、正確に言えば9月までが私の任期だと考えていますが、それまでの間、1つは仙谷さんに党の対外的な活動についての責任者(団体交流委員長)になってもらって、従来の支持していただいたところだけではなくて、よりウィングを広げて幅広い支持を求めていくと。こういうことだと思います。

 そしてもう1つは、我々いい政策を持ちいいことを言ってるんですがなかなか伝わっていないということですから、広報体制をより強化するということ、そういったところを中心に新しい民主党の組織をつくったわけです。

 そして同時に、党の中がしっかりまとまっていくように地域担当の常任幹事というものを改めて位置付けをし、昨日、常任幹事会の後、地域担当常任幹事だけに集まっていただいて、山岡筆頭副幹事長にリーダーになっていただき、我が党は派閥のない政党ですから、しっかりと地域単位でコミュニケーションを良くしていくと。そのために地域担当常任幹事の皆さんに責任を果たしていただくということをお願いしたところです。

 政権に向かって、これから1年間、攻めの1年にしたいと思っています。

<質疑応答>

■仏大使と独公使の意見

【記者】今日のフランス大使、ドイツ公使との会談の模様を、幹事長からどういうことを説明して、仏独それぞれからはどういったご意見があったのか詳しくお聞かせください。

【幹事長】こういう会合ですので、あまり議事録的なものは作っていません。まず、民主党の考え方、すでにペーパーにまとめたもの、皆さんもご承知だと思いますが、その考え方について説明し、そして国際的な枠組みをつくっていくために日本やドイツ、フランスがお互い協力すべきことはないだろうかといったことを中心に意見交換をさせていただきました。

 もちろん、その間、アメリカの今の政策あるいは政府をどう見るかとか、今後どういう展開になるだろうかだろうかとか、そういったことも意見交換しましたが、これはあまり具体論に触れないほうがいいだろうと思いますので、以上ポイントだけ申し上げておきたいと思います。

【記者】民主党の考え方に対して、フランスとドイツの方はどういうふうに?

【幹事長】「非常に近い」というお返事でした。事前に民主党の考え方は、紙では我々がまとめたものを英訳したものを送ってありましたので目を通していただいてまして、「非常に近い」ということでした。

【記者】改めて要請書か何かそういうものを渡されたということではなくて?

【幹事長】要請書は渡していません。我々の考え方について翻訳したものを事前に渡してありましたので、見ておいていただいたということです。

【記者】民主党は国連の新たな決議を採択すべきだと主張されていますが、それについての賛同なり留保なり、どういった反応だったんでしょうか。

【幹事長】そこは基本的に共通していると思います。これは中身を言ってもいいと思いますが、ドイツ公使は「今の国連決議1551はドイツ軍を海外に出す根拠たり得ない」という趣旨の発言をされました。つまり、一般的な国際協調の中で復興支援をしていくということは書いてあっても、軍を出すということの根拠にはならないとドイツとしては判断しているということでした。

 もちろんそれだけではなくて、もうドイツとしては海外に1万人以上の軍を出していますので、アメリカに次ぐ多くの人数を人道支援のために出しているということで、それだけの余裕がないということも言っておられました。したがって議会の承認を得られる状況にはないだろうと。そういうことを言っておられました。

■高速道路建設に対する自民党道路調査会・国交部会の見解

【記者】先の総選挙で焦点になっていた高速道路について1つお聞かせください。今日、自民党が午前中に道路調査会・国土交通部会を開きまして、国として残りの高速道路を造るという考えで一致したようですが、これは小泉総理と意見が相対するものとなってしまいました。このことについて幹事長のご意見をお聞かせください。

【幹事長】総理と合わないだけでなくて、安倍幹事長も「全てを造るわけではない」と選挙中に明言されてましたから、幹事長とも違いますね。

 自民党の部会が決めたことが自民党全体の意見になるかどうか分かりません。安倍幹事長は選挙で約束したわけですから、それははっきりと「それはそうではない」と言われるはずだと私は思いますよ。言わないとおかしいですから。

 ですから、まだ議論は途中だと認識をしますが、何度も申し上げていますが、この高速道路、道路公団民営化の議論のスタートは、要するにこれ以上残る2000kmを造り続けるのかどうかということが最大のポイントであって、そこから民営化という議論が出てきたわけですね。道路公団を民営化することで、採算性という視点を入れて高速道路を造り続けるかどうかの判断ができると。

 そこのところがもうどこかに行ってしまって、結局何のために民営化の議論をしたのか分からないという状況に今陥っていると思います。

 それはひとえに、小泉総理が道路公団民営化の議論をする前提として、「全てを造るわけではない」あるいは「このぐらいは造るが、このぐらいは造らない」といった考え方をまず政治決断して、そのうえで民営化の形態の議論、技術的な議論に委ねるべきだったのを、一番大事なことを先送りして、議論してきたからこういうことになるんだと思います。

 一体この、大騒ぎしていろんな議論をしましたが、猪瀬さん(民営化推進委員会委員)随分頑張ったし、今井さん(前民営化推進委員長)も揉みくちゃになりましたが、ああいう議論は一体何だったのかということになりますね。

 まあ、安倍さんがしっかり、選挙のときにテレビで述べられたことを実行されることを期待したいですね。

■山崎前自民党副総裁の参院選出馬

【記者】自民党の山崎前副総裁が来年の参院選に出馬するということで、比例代表を考えているようなんですが、それについてのご感想がありましたら一言お願いします。

【幹事長】それは他党の中のことですから、出るなと言う立場に私はありませんし、コメントは控えたいと思います。

【記者】山崎前副総裁はスキャンダルのこともありましたが、比例代表ということですと党の公認ということになりますので、自民党の姿勢の問題にも関わってくるわけですが、その点についてはいかがですか。

【幹事長】党としてもう決めたということですか?

【記者】いえ……

【幹事長】ですから、その判断がない状況であまりコメントするのは控えたほうがいいと私は思います。

■新人議員研修担当の設置

【記者】昨日、新人議員研修担当を総合選対本部に新たに設置するということですが、これをつくられた理由と、実際どういうことをこの担当に期待されているのか伺えますか。

【幹事長】玄葉さんにその役割を担っていただくということで決めてありますが、まず形から言うと、年内に選対本部会議を一度開いて、そこできちんと確認したいと思っています。

 狙いは、58名の新人が当選されて、やはり彼らが次に確実に小選挙区で通ってもらうことが政権獲得に向けての非常に大事なステップだと考えているからです。

 そのために、もちろん政策あるいは国対、それぞれ政調会長と国対委員長の下でいろんなトレーニングといいますか、やっていただくんですが、あるいはそういう活動をするなかでそれぞれ学んでいただくわけですが、やはり次の選挙に向けてのいろんなアドバイスをしっかりしていったほうがいいと。

 私も選挙期間中いろいろ回ってみて、日常活動が非常に不足しているといいますか、やはり風頼り、あるいは支援団体頼りの選挙というところがかなりあるということは、それは小沢代表代行に指摘されるまでもなく私自身も感じていることですので、やはりそこは自分の足でしっかり立って当選できるような、そういったことについて、もちろんこれは選挙区ごとに状況が違いますから最終的にはご本人に判断していただくことですが、いろんなメニューや活動の仕方についてアドバイスしなければいけないと思います。

 例えば今の時期に、昨日は両院議員総会がありましたからそこには出ていただく必要があるんですが、例えば今日や明日も東京でウロウロしている新人議員がいたとしたら、それはたいぶ感覚が違うんじゃないかと、そういうふうに申し上げなければいけないですよね。

 そういったことをきちんとアドバイスしていくということが主な仕事になると思います。

【記者】玄葉さんをそこに指名したのはどうしてなのかということと、あと勉強会とか面談とか、具体的に考えていらっしゃることがありましたら。

【記者】今日たまたま私が理髪に行きましたら玄葉さんと鉢合わせしまして、前回行ったときは小沢さんと一緒だったんですが(笑)、そこで一言二言話をしたんですが、来週くらい彼にどういうことがメニューとして考えられるか提起してもらって、少し相談したいと思っています。

 面談とか、そういうことを今具体的に考えているわけではありませんが、それは玄葉さんのところというより、幹事長としてやはり新人の皆さんといろんな意味で意思疎通を良くしていくということは大事だと思いますので、この前代表のほうで4つぐらいのグループに分けて意見交換をしていただいたんですが、私も次の国会が始まって多少時間ができた段階で、少しきめ細かくコミュニケーションを良くしていく必要があると考えています。

 今はむしろそんなことする暇があったらむしろ地元に帰ってろと、こういうことですので、国会が始まってからだと思いますが。

【記者】指名の理由は?

【幹事長】人事について「なぜか」というのはいちいち言うべきじゃないと私は思いますね。ただ、私が非常に信頼する、能力のある政治家ですし、そして選挙も強いわけですから、いろんな意味でそういった当選1回生の監督役・指導教官としては適任ではないかと思います。

 もちろん、玄葉さんの下に若い人をさらに何人か指名してもらって、手分けしてやっていただくということになるんだろうと思いますが。

■参院選の候補者擁立

【記者】来年の参院選についてですが、現在の公認候補者は選挙区で20人、比例区で13人ということですが、もうちょっと急いで擁立しないと選挙は半年後ですから、現時点で選挙区では何人、比例区では何人立てたいというお考えでしょうか。

【幹事長】これは相手のあることですが、私の考えは順次各県連の方に来ていただいて述べてありますので、それに基づいてご努力いただくしかないと思います。本部が無理に立てるわけにはいかないんですよね。

 ただ、とにかく急いでいただきたいということでご努力いただいてるはずですが、比例区の候補者については本部主導の部分がかなりあります。そういう意味で、もう少し候補者を立てなければいけないと思います。比例ブロックですね、まだ東海とか、東北とか、中国・四国が空いています。そういうところに候補者を擁立したいと思っていますが、他のところは大体何人か名前が挙がっているわけですから。できれば、女性の候補者をそういったところに立てていきたいと考えています。しかし、今具体的な名前があるわけではありません。

 数日前に赤松選対委員長、堀込選対委員長代理に指示を出しておきましたが、前回の衆院選の前にかなり大々的に公募をしたんですね。その中で、今回当選された方もいらっしゃいます。同様の公募を何とか1月中にして、そして間に合えばこの夏の参院選にもその中からいい候補者がいれば立てていくと。そして、もちろん衆院選も睨んでやることなんですが、そのことの指示を出しておきました。

 何とかそういう形で、今民主党に対する期待も高まっていると思いますので、さらにいい候補者が集まるんじゃないかと期待しているところです。

 とにかく先を先をと思っていますので、攻めの1年にしたいと考えています。衆院選の候補者も21名内定しましたが、年内にもう少し増やせると思っています。そんな形でやっていきたいと考えています。


編集/民主党役員室


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