2003年8月6日(水) 戻るホーム記者会見目次

岡田克也幹事長 定例記者会見要旨

○広島平和祈念式典での総理発言は核への危機感や廃絶への思いがない
民由合併、社民との選挙協力を進めて国民の期待感を高め政権交代を実現
集中豪雨災害の水俣市視察や新人候補の応援に明日から九州4県を遊説
選挙後に与党へ移るという最大の公約違反を許してよいか有権者は判断を
後ろを振り返らず前だけを見て、小沢カードを政権交代のために使いたい
今回の合併は民主の政策・規約を継承、野合批判は全く当たらない
女性の支持が男性並みになれば支持率はグンと上がる、しっかり分析したい

■第58回広島平和祈念式典

【幹事長】まず、今日、朝の式典も私もテレビを通して拝見しましたが、第58回広島平和祈念式典が開催されました。その式典を見ての私の感想は、小泉総理がいかにもなおざりな言葉を述べられたなということです。

 その前の秋葉広島市長のお話は、市長の思いがこもったご発言だったと思いますが、総理は核の不拡散等について文字通り、型通りの発言をさらりとされて、また、被爆者の方々に対する政府の対応を述べられたわけですが、これだけ核の問題が引き続き重要なテーマであるときに、例えばアメリカ政府の中で小型核兵器の議論が出たり、あるいはモラトリアム、核実験の一時停止がどうなるか分からないというような議論があるなかで、何の危機感もない、核兵器廃絶に対する政治家あるいは総理としての思い入れが全く感じられない極めて形式的なご発言だったと、非常に残念な気持ちで聞いていました。

 民主党の核政策については、私が政調会長代理だったときにまとめたものがすでにありますが(「民主党核政策」)、もちろん日本自身は核武装をしないこと、そして同時に核の廃絶に向けてきちんとステップを踏んで進んでいくこと、そのためのイニシアチブを日本が発揮すべきことなどについて、具体的な提言をさせていただいています。

■民由合併と政権交代への道

【幹事長】次に、細川政権が成立してから10年が経ちますが、そういうなかで自由党との合併が決まり、そして昨日、社民党の土井党首と菅代表が会って、社民党との選挙協力についても具体的にスタートしました。

 今度の選挙、私は10月解散はほぼ間違いないと思っていますが、そういうなかで野党が結集して、少なくとも自由党とは同じ党になるわけですが、プラス、社民党とも選挙協力をしっかりやるなかで、10年ぶりの政権交代を是非実現したいと考えています。

 国民の皆さんの期待感もすでに高まっていますし、これからの10月に向けての持っていき方でそれは十分可能になる。今まで小泉総理に替わる者はないというなかで、やむを得ず小泉支持が5割とか6割とか、そういうことだったと思いますが、そういった国民の皆さんの気持ち、期待感に新しい民主党が対応できるように、そして「菅総理」というところに期待が集まるようにしっかりと持っていきたいと考えています。

 今日は合併準備委員会も第2回目の開催を予定していまして、それが終わったあとブリーフもしたいと思いますが、前回、特に新人同士のぶつかり合いの選挙区については客観的な手法で候補者を絞るということまでは原則を決めたところですから、その原則に基づいて具体的な調査の手法とか、調査すべき選挙区についてある程度方向性が出せればいいなと思っています。

■九州地方遊説

【幹事長】3番目ですが、明日から私自身は九州を回ります。鹿児島、熊本、佐賀、福岡の4県を回ることにしていますが、特に水俣市は集中豪雨で災害に見舞われたわけで、そのあとの状況視察も含めて、主として新人候補者のところを回って活動をしてきたいと考えています。

<質疑応答>

■小選挙区制で政権交代が実現しなかった理由

【記者】細川政権誕生10年に関係してお伺いしたいのですが、細川政権のときに小選挙区制の導入が決まり、その後2回の選挙が行われました。当初、小選挙区制というのは政権交代が可能な二大政党制をつくり出すと言われていましたが、過去2回の選挙では自民党から政権交代をなし得ませんでした。この10年を振り返ったときの感想と、なぜ政権交代にならなかったかという分析をお聞かせください。

【幹事長】10年経つわけですが、思い出すのは羽田政権の最後の場面です。不信任案が提出されて、数から言えば、このままでは羽田政権は潰れてしまうという状況の中で、解散するかどうかということを羽田総理がお考えになった時期がありました。

 あのときに私は、今の防衛庁長官の石破さんと2人で官邸に行って、深夜だったと思いますが、解散すべきではないというお話を2時間ぐらい羽田総理にさせていただきました。

 私の念頭にあったのは、あの段階で解散すると当然のことながら中選挙区制での解散になります。法案は通っていましたが、まだ施行期間に至っていませんでしたので。

 解散を中選挙区制でしてしまうと、次に当選してきた人たちは中選挙区で選ばれた人ですから、小選挙区比例代表並立制という新しい選挙制度は日の目を見ないまま、もう一度中選挙区制に戻ってしまうのではないか、そのリスクは極めて高いと判断しました。従って、あの時点での解散は絶対避けるべきだと私は羽田さんに申し上げました。

 私の説得がどれくらい効いたかわかりませんが、それから数時間後に羽田さんは解散はしないということを発表されました。

 そういう意味で、今の選挙制度に対する私の思い入れ、ちょっとほろ苦いところも含めて、あの時解散していればひょっとしたら当時の連立与党が勝ったのではないかという話もありますから、ほろ苦さも含めながら、しかし私自身が当時主張したことは間違っていなかったと考えています。

 2回選挙をやってあまり変わっていないじゃないかというお話ですが、1つはやはり完全小選挙制ではなくて、そこに比例制というものが組み合わさっているためになかなか2つの政党には収斂しない。当然、少数政党の余地を残しているということだと思います。それは良い面悪い面がありますが、国民の選択がきちんと政権選択にダイレクトに結びつかないという意味では、今の制度はやや中途半端だと私は思っています。

 できれば小選挙区は300、比例は100程度にしたほうがいいと個人的には考えています。そうすれば、恐らく一党で過半数を取るということももっと可能になるでしょうし、比例区があれば少数政党も少しは残ります。私はそういった形が望ましいのではないかと思っていますが、今の状況の下では単独ではなかなか過半数を取れずに連立という中途半端な形になっているということだと思います。

 政権交代がなかったじゃないかということについては、新進党で一度チャレンジし、民主党になってチャレンジしましたが、いずれも自民党には届きませんでした。

 しかし、比例区で見れば野党3党で与党3党と同じだけ取っているわけですし、3度目の正直という言葉もありますが、いよいよ今度の3回目の選挙で政権交代というものが現実のものになったと考えています。

 新進党のときのチャレンジ、そして前回の民主党での総選挙と比べて、はるかにリアリティが高い。つまり政権交代を起こす可能性が高い状況にまで来ていると感じています。

■細川連立政権成立から10年を振り返って

【記者】選挙制度も含めて、細川連立政権10年になりますけれども、振り返ってこの10年の功罪といいますか、先頭に立って岡田さんもやってこられたと思いますが、その総括をしていただけますでしょうか。

【幹事長】自民党に替わる新しい政党ができるためにはある程度の期間は必要ですから、10年かかったことは致し方なかったと思いますが、残念だったのは新進党の解散ですね。これで少し遅れました。しかし今の民主党ができて5年で、ようやくリングに上がって1対1で戦うだけの、そこまで来たという思いはあります。

 少し予想外だったのは、政党間移動の話ですね。つまり、野党になった瞬間また与党に行ってしまうということが、ごく日常的に行われた10年だったと思います。

 私はそのこと1つひとつについて批判するつもりはありませんが、しかしやはりマニフェストも議論になっていますが、自分がこの党で戦うということを明らかにして選挙に出て、選挙が終わったら当然のように他の党、例えば具体的には自民党に移ってしまうということが、これほど起きるとは予想しませんでした。

 もう一言言うと、それを有権者が許しているという現状は、非常に私自身の予想を超えていますし残念だと思います。最も公約に違反した候補者が堂々と政党間移動をして、その次当選するということが現実に起きているわけで、ここは有権者の皆さんもしっかりその候補者を見極めるときの大きな判断基準にしていただきたい。そう簡単に政党を野党から与党に変わるということを許しているのは有権者ですから、それがいいのかどうかということは判断していただきたいと思います。

 ついでに1つ申し上げておきますと、今日の某新聞に「政界渡り鳥」ということで、私の名前も出ていましたが、あれはちょっと表現が私は非常に不本意ですね。

 「渡り鳥」というのはあっちに行ったりこっちに行ったりするのですが、私自身は自民党を出て10年、自分の意思で政党を変わったことは一度もありません。新生党は合併をして新進党になった。その新進党が解散されたので暫時数週間の政党をつくりましたが、最終的には民主党に合流したということであって、私自身があちこち行ったという認識は全くありませんので、「渡り鳥」という表現は適当ではないと思っています。

■小沢一郎評

【記者】お伺いするつもりはなかったのですが、今のお話に関連して新進党の解党や野党から与党にということを言うと、小沢一郎さんが今回合併しますが該当するんじゃないかと思うんですが、そういう点について彼をどう見ていらっしゃいますか。

【幹事長】私が今申し上げたのは、個々の議員として野党議員で当選したのにその政党を辞めて与党に行く、自民党に行くということを申し上げたわけで、自由党が野党でありながら途中で与党の連立に加わったというのは全く性格が違うと思いますね。

 私の小沢一郎さんに対する10年間の思いは非常にいろいろありますが、今私が考えているのは後ろを振り返らず前を見て、そして小沢一郎さんという有能な政治家をいかに政権獲得のためのカードとして使っていくか――。そういう発想だけです。

■埼玉県知事選挙

【記者】埼玉の知事選について、上田清司議員が立候補を表明して「友情支援」というなかなか聞き慣れない形の支援をするようですが、こういう結果になった経緯と、先に行われた神奈川県知事選の松沢さんの応援体制とはどんなふうに違うのか。あと全体の知事選の構図ですが、最初に声をかけられた坂東万里子さんがそれを断って無所属で出るということも含めて、その辺りをお聞かせください。

【幹事長】まず、知事選挙は基本的に県連で対応するということが原則です。その上で推薦依頼が本部に上がってきます。私はその原則が非常に大事だと思っていますので、特に県連から本部も含めて候補者擁立に関与してもらいたいという話が来ない限りは、基本的に都道府県連に任せています。例外は都知事のときでしたが、あの時は都連のほうからむしろ本部で決めてもらいたいというお話があって、一緒になって議論をしたという経緯ですね。

 今回のことは細川県連代表から適宜ご報告はいただいていましたし、私の意見も時々申し上げましたが、基本的には県連で対応されてきたことで、上田さんが今回こうなったことについて、あるいはその前に少しおっしゃった他の候補に出馬依頼したといったことについて、党本部は関与していません。むしろ県連の責任と範囲の中でやっていただいたと思っています。

 それから「友情支援」の意味ですが、友情支援は友情支援です。松沢さんのときと基本的に共通していると思いますよ。濃淡は多少あるかもしれませんが、埼玉県連の議員も一生懸命応援して、私も機会を見て埼玉県に応援に何度か入りたいと思っています。

 ただ、上田さんとはまだ相談していませんので、彼自身の考えもあると思いますのでよく聞きたいと思いますが、私は個人的にも上田清司という人間を非常に買っていますので、そういう意味では衆議院に残ってもらいたいという気持ちが実は人一倍あったわけですが、出ると決めた以上は是非勝っていただきたいという思いの中で応援に行きたいと思っています。

■民由合併が野合でない理由

【記者】先ほどの話に戻りますが、これまで政党が合併したり合流したりするたびに野合という批判がありました。今回もそういう話がありますが、幹事長の立場から見てこれまでの離合集散と今回の合併というのは何が違うのか、どういうふうに見ていらっしゃるのでしょうか。

【幹事長】野合批判で一番言われるのは、政策や理念の合意がないじゃないかということだと思いますが、今回の場合は合意があるんですね。形だけ政策合意して一緒になるということではなくて、今回は民主党の政策やマニフェスト、規約に合わせるという約束のもとで一緒になっているわけですから、そういう意味で野合批判は全く当たらない。我々の考え方を受け入れてもらうということだと思います。それが今までにない特徴と言われればその通りかもしれません。

■自民党・山崎幹事長の愛人疑惑報道

【記者】今週の週刊誌に山崎幹事長の第3の愛人疑惑という記事が出ていますが、こういう愛人疑惑ばかりが報道されるような状況について、同じ幹事長としてどのように思いますか。(笑)

【幹事長】ちょっと私は3番目の話は見ていませんのでコメントしにくいのですが、いずれにしてもプライベートなこととはいえ公人ですから、特に第一党の幹事長という立場にある人が国民から見て倫理的に批判される状況というのは望ましいことではないと思いますよ。

 どういう答えを期待したんですか?(笑)

■小沢カード

【記者】先ほど幹事長から、小沢さんをいかにして有効なカードとして使うかという発言がありましたけれども、合併後の小沢さんの処遇について、現段階でのお考えを改めて伺えますか。

【幹事長】人事の話はしません。菅さんも言っておられるようにこれからの課題だと思います。小沢さんご自身は「一兵卒で」とおっしゃってますが、それは本当にご自身の気持ちとして言っておられると受け止めています。それ以上のことは今の段階で申し上げるのは適当ではないし、幹事長の私が申し上げるべき話ではないように思います。

 もちろん、カードという言い方がやや誤解を受けるかもしれませんが、例えば今、小沢さんと菅さんのお二人があちこちのテレビや、あるいは街頭演説などをして「新しい民主党」をアピールしておられるということですね。そういうことを含めて、私は先ほど端的な言い方で申し上げました。

 小沢さんには新しい民主党の中で存在感をしっかり示していただくと。それが政権への道につながるということであれば、当然そのことは必要だと思います。

■女性票の獲得策

【記者】先週末の弊社(日経)の世論調査の結果で、投票したい政党は自民党32%、自由党と合併した民主党24%、これは男女を合計した数字ですが、男性は自民党32%、自由党と合併した民主党31%と1ポイント差です。

 ただ、女性は自民党31%、民主党18%ということで、かなり女性票が少ないという形になっています。前から民主党が言われていることですが、それについて衆院選へ向けて何か具体的な女性票の獲得策を考えておられればお伺いしたいのですが。

【幹事長】もともと民主党も自由党も女性の支持率が、男性と比べると低いんです。その結果が合流したあとも続いているということだと思います。

 女性の支持率を上げるにはどうしたらいいかというのはこの党のずっと課題であるわけで、もう少し詳しく分析する必要もあると思いますね。女性の中のどういった層の皆さんが、年齢層とか職業とか、そういうことをよく分析したうえできちんとした対応をこれから選挙に向けて取っていきたいと考えています。
 
 我が党の政策はかなり実は女性の皆さんから見て、なるほどと言えるものを出しています。出していますが、マスコミへの露出などということになるとどうしても経済政策、金融政策あるいは安全保障といった問題が中心になって、より生活に密着したような話題や政策が載ることが少ないということも、あるいは影響しているかもしれません。

 他にも多様な理由があると思いますが、そこはしっかり分析をして、逆に言うとそこが男性並みになれば支持率がグンと上がるわけなので、そのこともこれからの課題だと思います。

 ただ、与党か野党かっていうのはかなり効くんですよね。私自身も与党の時代と比べると、やはり野党になって女性の支持が少し下がりました。男性との比較でいうとね。

 韓国の新千年民主党の議員とその話を議論したときにも言われました。野党のときは女性の支持率が韓国の民主党も低かったと。金大中氏が当選して政権党になったらそれが逆転したと。「女性の場合は与党志向があるのではないか」と韓国の議員が言っていました。「あまり気にしなくていいよ。政権取ったら上がるから」と。政権を取るために上げなきゃいけないんですがね。
 
 他に何かありますか……何か言いたそうですね。

【女性記者】いえいえ……。


編集/民主党役員室


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