2004年2月24日(火) 戻るホーム記者会見目次

菅直人代表/定例記者会見要旨

○ アナン国連事務総長との会談では民主党の立場を理解していただけた
小泉総理は結果的に道路公団改革を逆行させただけ
普天間基地を巡る問題は沖縄県民にとってプラスになるよう推進すべき

■アナン国連事務総長との会談について

【代表】今日はアナン国連事務総長の国会演説がありましたが、2時半から30分余り、民主党として、私や羽田最高顧問、幹事長、政調会長、さらには担当ネクスト大臣、国際局長でアナン事務総長と会談して参りました。特に、国会での演説での「イラクの戦争前にどんな意見を持っていた人でも、平和なイラクを作ることについては、共通の利益であるから支援をしていこう」という呼びかけや、あるいは「一部困難な議論を経て、人道支援をするためにサマワに自衛隊を派遣されました」という話について、私のほうから少し民主党の考えを最初に説明し、意見を求めたところです。

まず民主党としては、アナンさんの考えに賛成だということを申し上げました。わが党は人道支援、復興支援には、資金的にも、条件付きではありますが人的にも貢献を行うことに賛成している。ただ戦争そのものは、査察継続が行われるべきで、やるべきでなかったと。このあたりについては、アナン事務総長も同じ意見だと思いますが、と私からは申し上げました。

アナンさんからはその通りだと、自分はイラク戦争そのものには反対だったし、一貫して反対してきたということを明確に言われました。

また、自衛隊の派遣についても、わが党としては、非戦闘地域というフィクションの下で送るということについては反対していると、将来イラク人による政府が出来、国連の要請がきちんとあった場合には、PKO活動の拡大といったような観点から自衛隊を派遣することがあってもよいとしても、今のイラク特措法に基づく派遣には反対をしているのだということも説明しました。

それに対してもアナンさんは、そういった意見は現在、イラクに軍隊を派遣していない多くの国の意見と共通で、理解できるという姿勢を示されました。その上で、6月30日にイラク人による政権への権限委譲ができた後には、イラクに軍隊を送っていない多くの国からも送る国がもっと出てくる可能性がある、という言い方の中で、わが党の主張についても、そのような国々と同じで理解できるというニュアンスの話をされました。その上でもちろん、やはり治安の回復というものがいろんな意味で必要だということも併せて言われました。

アナン国連事務総長の発言について、一部の政治家、あるいは一部のマスコミからは、イラク戦争そのものに国連事務総長がお墨付きを与えたかのような報道振りがありますが、それは基本的には報道としても間違っているし、またそういう理解で話している政治家は理解が間違っていると思います。

固有名詞を出して恐縮ですが、今日の読売新聞の社説なども、そのような主旨のことを書いておりますが、申し上げたように決してアナンさんは、イラク戦争そのものを肯定したわけではありません。そのことは、アナンさん自身の口から繰返し出てきたところであります。

また、昨日の産経新聞の社説でも、「正邪ではなく国益で語れ」という、大義のことをあまりいろいろ言っても意味がないではないかという主旨でありますが、まさに大義を外れて行動することが国の道を誤って国益を損なうということを、昭和に入って我が国は経験したわけでありまして、そういった意味では、大義はどうでもいいから国益へというのは、私は論理矛盾でもあるし、逆だと思います。

大義という意味は何かといえば、頭の中の大義をいっているわけではなくて、国際的に理解される、なるほどと思われる、そういう理論付けの中で行動することが、ひいては日本の平和や安全にもつながり国益につながるという、そういう意味であります。その大義を、いい加減というよりも、間違ったことを正しかったかのごとく言い繕うやり方のほうが、国益を損なうということだけは、改めて申し上げておきたいと思います。アナンさんは、われわれの立場をよく理解していただいていると感じました。

■ 道路関係4公団民営化法案について

道路公団についても、いろいろな動きがありますけれども、結局なんだったのかと思います。この間も党首討論で申し上げましたが、全く恥じることを知らない総理です。自ら、道路公団改革というものを託した人たちが委員である推進委員会の主要メンバーが、まったく自分たちの意見が尊重されていないと言っているのに、自ら画期的だと言うばかりか、その意見を無視したことについて一言も釈明もない。まさに使い捨ての推進委員会であることに対して恥じることを知らない。

そして結果としても、だんだん法案が見えてきましたが、結局は道路族の一方的な思いがそのまま通った結果です。最近、山陰道、いわゆる高速道路をめぐって、青木幹雄幹事長の関与なり、その兄弟の関与がいろいろ指摘をされていますけれども、結局は青木幹雄氏と手を組んで総裁に再選されたということが、結局のところ道路公団改革を進めないどころか逆行させている、最大の原因だろうとこのように思っております。

■普天間基地をめぐる問題について

もう一点、最近普天間をめぐって、アメリカの何人かの人からの発言がありました。私はこのメッセージは非常に重要だと思っております。

ネオコンと称される人たち、あるいはその流れを汲むとされるラムズフェルト国防長官は、アジアにおける米軍の配備について、前線に近いところに軍隊を張りつけること、とくに陸上兵力については、方針を変えようとしているわけです。たとえば38度線の陸軍も後ろに下げていますし、沖縄の海兵隊も必ずしも沖縄に置かなくてもよいという考えを基本的に持っているわけです。

世界中どこでも飛行機で行けばいいということですから、そういうメッセージをしっかり受け止めて、かつこの間の沖縄をめぐるいろいろな経緯の中で、どうすれば日本の安全と同時に、沖縄県民にとっても一番プラスになるかという視点から考える必要があると思います。

端的にいえば、普天間を返還はすると言っているわけですから、新しい巨大な基地を沖縄県内につくるのではなく、海兵隊をどこかに移すかあるいは削減をして、既存の基地の中に、例えば削減した海兵隊の残留部隊を残すということも考えられるわけで、少なくともこの問題の大きな進展が図られると、このように思っております。

衆議院選挙の折りにも沖縄に行ってそういう話をしたわけです。しかし自民党は逆に、私の見るところでは、そのようなアメリカの海兵隊を削減ないしは他に移してもよいというメッセージをあえて聞こえないふりをしているのか、いやそれは困ると言っているのか、国民にきちんとした説明をしていないわけであります。この問題は、極めて重要な橋本内閣以来の懸案事項ですから、推し進めるべきだと思っています。

<質疑応答>

■アナン国連事務総長の民主党の考え方への理解について

【記者】アナンさんが理解している、というのはイラク戦争についてのことなのでしょうか。自衛隊派遣についてはどうなのでしょうか。他の野党、例えば共産党の志位さんは、派遣を評価するところが同意できないと、アナンさんの言葉に異を唱えるような言い方をされていますが、民主党の代表としてはどうでしょうか。

【代表】先ほど言いましたように、二つの点について併せて民主党の考え方を説明しました。戦争を始めたことについては、われわれは反対だったということに対して、全く自分も同じだったと、一貫してこう言っているとおっしゃいました。

自衛隊の派遣については、今日の演説でも、「この先には困難な挑戦があるのです。しかし、国際社会が一致してイラク人を支持すれば、乗り越えられないものではありません。日本はこの挑戦に率先して向かい合ってきた国の一つです。貴国は、安保理決議の要請に応え、窮状に立ち向かうイラクに対して賞賛されるべき連帯姿勢を示されました。貴国は、私が設立した『イラクに関するフレンズ・グループ』に参加しています。貴国は、復興に対して寛大な貢献を表明されました。また、困難な議論を経て、貴国は人道復興支援を行うためにサマワに自衛隊を派遣されました。」とおっしゃいました。

この表現を聞くと、全体のトーンとしては、イラクへの貢献として自衛隊を派遣されたと見えますが、必ずしも我々との話の中で言ったように、我々の反対理由に対して否定する言葉は全くなくて、イラクに軍隊を派遣していない多くの国と共通ですという言い方で、イラク人に権限が移ったときに考えるという国もあります、ということで、今の小泉政府がやっていることも肯定的な捉え方をされているのでしょうが、我々の考え方も十分理解した形の言い方でした。この演説も冷静なトーンではないかなと思います。

【記者】アナン事務総長は自衛隊派遣を適切に評価しているとは解釈できないというお立場でしょうか。

【記者】あるテレビ番組もそうですが、アメリカの民主党はどうかということになると、アメリカだけが負担を引き受けるよりはいろいろな国が負担してくれていたほうがいいわけですから、日本が自衛隊を出すことに賛成なわけです。しかしわれわれの反対している理由は、非戦闘地域というフィクションの下での派遣であるからで、外国や国連が評価される理由とは基本的に意味を異にしています。そのことについて、アナンさんは理解してくれています。

我々は、非戦闘地域だから行くということにはなりません。イラク人政府ができたときに、イラク人政府の要請があり、あるいは国連の要請があった場合には考えるというのが従来からの考えです。基本的なフレームがぜんぜん違うわけです。現在の日本政府がやっていることのほうが極めて便宜主義的です。ただ外国なり国連から見れば、便宜主義かどうかというのは日本の国内問題ですから、併せてある程度の評価はあるのでしょうね。他党の皆さんがどう言われているかは構いませんが、我々は、自分たちの考え方をきちんと伝えた中で、そういう考え方はありうる、という理解はあったのかなと思います。

■国民保護法案について

【記者】政府が来週にも国民保護法案を提出する構えのようですが、民主党と修正協議をしながら、速やかな成立を図りたいとの姿勢を示していることについて、民主党としてどう考えますか。

【代表】緊急事態に対処するための基本法というものをきちんと作る必要があるということを、昨年の有事法制・緊急事態法制をわが党が出すときの基本的な姿勢としてきました。そしてそれを自民党が受け入れる形で、あのような形で修正の上での賛成ということになったわけです。それに引き続く形で、基本法については我々が提案してきたことですから、作るという前提であれば、話し合いに応じるのは当然のことです。我々が作れといったわけですから。他の法整備については、今の私が聞いている話によれば、政府が出してきたものを、フリーな立場で徹底的に国会で議論をしていけばよいのではないかと、そういう姿勢で臨みたいと思います。

【記者】関連ですが、修正に応じる可能性はないのでしょうか。基本法の問題と国民保護法制の修正の問題がリンクしてくるのでしょうか。その辺りをお聞かせください。

【代表】基本法を作るというのが我々との約束ですから、それがないがしろにされていいとは思っていません。それ以上のことは、今申し上げた方向で内容的なものの議論に入っていくと思います。

■国会終了後の訪米について

【記者】アナンさんとの会談の中で、近くニューヨークに行くというような話が出たようですが、具体的なお考えや日程等は決まっているのでしょうか。

【代表】国会が終わるとすぐ参議院選挙ですから、選挙までの間に外国に出るか出ないかというのは、今検討してもらっています。その候補の一つとして、国連関係者に話を聞くということがあったわけです。検討中なのですが、行ったときには今日の会談に引き続く話をお願いしたいと言ったら、大いに歓迎しますと言ってくれたわけです。今決まっているのはその程度です。


編集/民主党役員室


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