2003年12月24日(水) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨

○来年度政府予算案は改革のかけらもない「改革断念予算」
○小泉内閣では何年経とうが改革はできない
イラク問題はより大きな展望を踏まえた議論が必要

■来年度政府予算案は改革のかけらもない「改革断念予算」

【代表】来年度政府予算案が決まったが、改革のかけらも残っていない、まさに「改革断念予算」と名付けたいと思います。また、道路公団民営化推進委員会が事実上崩壊しました。これもまさに小泉改革がいかにまやかしであるかを自ら証明した結果だと思います。道路族議員の嬉しそうな顔を見れば、これで推進委員会の意向が尊重されたなどとまともに信じる人は世の中にひとりもいないと思います。

<質疑応答>

■小泉内閣では何年経とうが改革はできない

【記者】菅代表が就任して1年、支持率も安定し、今年は年末恒例の離党劇が見られない。どのように受け止めるか。また、仮に菅政権だったら予算案のポイントは。

【代表】政党助成金の関連などもあって年末の政界再編がしばしばあったことは事実です。しかし今回の選挙で2大政党の形ができ、今の政権がダメなときには民主党に変わってもらいたいという思いがしっかりと根付いてきたと思います。そういう大きな構図の中で、また選挙が終わった間近ということもあり、少なくとも民主党周辺で離党など考えている人はいないと思うし、またそれは当然のことです。逆に来年の参院選に向けて何人かの無所属の皆さんが民主党に参加して下さる動きがありますが、より求心力が強まっている結果だと思います。

我が党が政権を担った際の予算案は、基本的にマニフェストに沿って中期的な方向を出しつつ、取り組めることから取り組んでいくものとなると思います。例えば高速道路についても、初年度からどの程度やるかは別として、ある地域から先行して無料化することも考えられます。また霞ヶ関からの紐付き補助金全廃という方向性の中で、自治体が使途を決める一括交付金化も当然の前提として予算を組んでいたことは間違いありません。小泉総理は今が一番自由にやれる時のはずです。初めての総選挙で与党の安定多数を得たわけですから、逆に言えば自由にできない条件はひとつもないはずです。悪い条件がひとつもない中でやらないということは、あと3年、10年経とうが何もできない内閣であることを自ら証明したということ。これが「改革断念予算」の意味です。

【記者】来年度予算について「改革のかけらも残っていない」とは具体的にどの点か。

【代表】先の総選挙ではいくつかの大きな課題がありました。年金改革、地方分権改革、道路改革、財政再建、小泉総理はプライマリー・バランスを2010年度初頭に回復すると言いました。総理が述べたいくつかの改革の方向性について、半歩でも前進したという予算の組み方をやっているか。後退したものは山のようにありますが、前進したものはひとつもありません。

この間、小泉総理の発言を聞いていても、「これは改革の方向に進めた」という説得力ある説明は1カ所も聞こえてきません。例えばもっと大きなことのひとつで、プライマリー・バランスの回復は、もともと6合目くらいにあった小泉内閣のスタート時から10年余りで頂上まで登ると言っていたわけですが、2,3年経って5合目、4合目に下がっています。今回の36兆円の国債も、プライマリー・バランスからの乖離幅という意味では従来より大きくなっているのに、改革はやっているという。

もしかすると小泉総理は「改革」という言葉の意味をまったく逆に理解していて、何もしないことを指して「改革」という言葉が語られているのかも知れません。改革のかけらもないとは、特にこの総選挙のマニフェストで小泉総理が語った部分についてもかけらも見あたらないという意味です。

■イラク問題はより大きな展望を踏まえた議論が必要

【記者】来年はイラク情勢も変化が出てくる。イラク人による国家が樹立され、国連が多国籍軍を派遣するような状況になった場合の民主党のスタンスは。

【代表】イラクの問題について、私はこの戦争の原点ばかりでなく、戦後60年になろうとしている日本のあり方を含む原点に戻って、中長期の大きな方向性の中でこの問題にどう対処していくのかという姿勢が重要だと思っています。

例えば今のフランス・ドイツの姿勢は、EUをもう一度アメリカと匹敵する政治的・経済的・軍事的主体とするという方向の中で、アメリカと本当の意味の対等な関係を築こうという大戦略の中で具体的な事柄を進めていると私は見ています。したがって、部分的に対立しようとも一時的に批判されようとも、大きな方向として数十年後に“United Statesof Europe”というものをアメリカと並ぶ存在となっていくプロセスに位置づけながら現実の状況に対応しています。ある段階ではフランスもドイツも多国籍軍ないしは復興支援に乗り出すかも知れません。しかしそうした大きな戦略の中での行動だと思います。

小泉総理のこれまでの行動は、ネオコンに引っ張られているブッシュ政権のシッポについて行っているだけで、まったく中期・長期の戦略を持っていません。小泉総理は国内の政局に対しての反応速度はいいのですが、つまり戦略ではなくて状況に対する反応速度だけで動いているものだから、気がついたら自分自身が考えてもいなかったところにたどり着いているという状況になりかねないというか、今後も多くの問題でもなるでしょう。

民主党のスタンスは、例えば北朝鮮問題で最も重要なキーになる国はアメリカと同時に中国です。岡田幹事長から訪中の報告も受けましたが、中国からの石油や食料の支援が止まれば、北朝鮮という国は存在できない状況に既に立ち入っています。中国を含めて、アジアの問題をアジアである程度解決できるという、そういう大きな枠組みを作ろうという戦略を持ちながら、一方でもちろんアメリカとの良好な関係は維持していく。そうした大きな戦略の中で問題を位置づけていくことが必要だと思います。

自衛隊派遣についても、今の憲法、あるいは特措法から言えば、戦地に自衛隊を送っておいて戦争のためではないと言っても、状況はまさに戦地です。相手から攻撃される可能性が一番あるところに自衛隊を送って、戦争に行っているつもりは無いと言ってもほとんど意味を持ちません。そういう意味で、我が国として、どういう原則で自衛隊を外に出すのかということも合わせてきちんとした議論が必要になるでしょう。状況に対する小泉総理の動きにその後ろから状況に対応して、そういう発想に振り回されて民主党が動くというのではなくて、我々が政権を担当したときにはこういう原則で動くのだということをはっきり作ることが野党第一党の民主党の役割だと思います。小泉総理の後ろからついて行くようなことを考える必要は全くありません。

【記者】今後議論するということか。

【代表】もちろんこれまでも議論していますが、特に来年はそういう年になるでしょう。今年は緊急事態法制について、我が党の方からきちんとした対案を出すということを1月の党大会で国民に約束しました。現実にその約束に沿って修正を提案して、ある形の法律が成立しました。この問題についても年明けにそうした議論をする土俵について何らかの提起をしたいと思っています。


編集/民主党役員室


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