2004年2月10日(火) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨

○ 総理は、言葉だけスローガンだけの空虚な答弁をやめ、内容のある議論を
外交官殺害事件の報道がやや低調であることは疑問
民主党予算案は政権を担う準備ができていることの象徴
年金制度改革では真の抜本的改革をせよ
BSE問題を契機に日本の食料全体の見直しも
中堅、若手議員の活躍でチームとしての民主党をアピールしたい

■予算委員会について

【代表】
来年度予算の審議が今日から始まりました。わが党は、岡田幹事長をトップバッターとして質疑に入ったところであります。まだ入ったばかりでありますが、テレビで見ておりまして相変わらずの小泉総理の言葉だけ、スローガンだけの空虚な答弁が続いているというのが感想であります。もう少し内容のある議論をする姿勢が、総理には必要ではないかと思っています。

■外交官殺害事件の調査について

二人の外交官がイラクで殺害された件について、民主党の首藤議員が質問主意書を提出しておりました。その答弁書が返ってきたようですが、ほとんどについて答弁を差し控えたいということになっています。ご遺体が日本に戻り検死などが行われて、すでに2ヶ月以上が経っているわけでして、いろいろな科学的分析などは行うに十分余りある時間があったのにもかかわらず、何一つきちんとした報告をしていません。

これが、これからの活動についてならば、いろいろな意味で日程などについては事前に伝えると危ないからということも部分的にはあるかもしれませんが、すでに起きた事件の調査について何も答えようとしないのは、これ自体が今の政府の都合の悪いところは隠して、都合の良いところだけを公開するという、大変問題な姿勢ではないかと思っています。

これは我々国会議員、あるいは野党として、政府に国政調査権に基づく質問をしているわけですが、メディアの皆さんも役割が問われているのではないでしょうか。特にこの二人の外交官が亡くなった事件については、その原因、犯人像を明確にする意味からも、野党も我々もがんばらなくてはいけませんが、率直に申し上げて、これだけ重要な問題を国会で取り上げていながら、報道が極めて低調なことにやや疑問に感じています。

■民主党の来年度予算案について

わが党の来年度予算案がまとまりました。詳しい説明は政調会長からすでに皆様にも行われていると思います。昨年に続いてきちんとした案ができたことは、いつ政権を取ってもどのようにやっていくかということを、スローガンではなくてマニフェストで示し、さらには予算で示すというわが党の姿勢を最も象徴的に現していると思います。

内容については、多岐に渡るので多くは言いませんが一つだけ申し上げると、高速道路の無料化について、今日の予算委員会の中でも小泉総理はあのインチキな民営化のほうが高速道路の無料化よりもいいのだ、と言っておられました。しかし、わが党の案を見ていただければ、一兆九千億円の予算を道路の借金返しに振り向ければ、高速道路の料金を無料化させたうえで、さらには経済的波及効果も、減税あるいはそれ以上の効果が上げることができるという提案が盛り込まれています。ぜひそうした内容も、これから国民の皆さんに伝えていきたいと思っています。

■経歴問題への説明責任について

また一連の経歴に関する議論がありましたが、それぞれ指摘をされた方は、自らの問題ですから、自らの言葉できちんと説明されるのが筋であると思っています。他の人に説明させるのではなくて、自ら説明することがこの種類の問題としては当然の義務であろうということだけは、申し上げておきたいと思います。

<質疑応答>

■年金制度改革について

【記者】
今朝の閣議で政府が年金制度の改革関連法案を決定しましたが、これについての評価と、今後の法案提出なども含め民主党の対応を教えてください。

【代表】年金の問題については、従来から指摘してきたところであります。まず一つ、大きな観点からいえば、自由民主党と公明党という二つの政党の基本的な考え方の違いが、バックグラウンドにあるのではないかという気がします。

年金に限りませんが公明党という政党はどちらかといえば、税金をばらまくという、地域振興券のように、ばらまき型の大きな政府という傾向が強いと思います。自民党も一部は公共事業というかたちでのばらまき型はありますが、福祉の面については財源の方を厳しくみる傾向にあります。結局のところはその二つの違う意見を、数字の上で足して2で割ったのが今回の案であります。根本的な改革案に全くなっていません。

特に問題にしなければいけないのは、国民年金について、簡単にいえば掛け金を次第に引き上げるという以上のことは何も含まれておりません。国民年金、厚生年金、共済年金をバラバラな制度で、10年、20年、30年とやっていくのか、わが党の案ように、会社勤めをしたり個人で仕事を始めたり、個人の一生の中でもいろいろな立場に立つこともあるわけですから、制度を一元化、一本化するという方向に進むのか、一切抜本的な改革に踏み込んでいません。2003年中に抜本改革案をまとめ、2004年に法案として出すということが、「小泉改革宣言」にきちんと書かれているわけですから、マニフェスト違反の第一号であるということを申し上げておきたいと思います。

わが党の考え方は、マニフェストに含めて提案しています。ただこれはかなり大きな改革で、単年度でできるような改革ではありませんので、法案とした形で出すことができるのかどうかはまだ確かめていません。基本的な形はマニフェストの段階でも提起していますので、その方向の中でより具体化することを進めていきたいと考えています。もちろん、政府案がでてくれば、その問題点を含めてしっかり議論していきたいと考えています。

■イラクへの自衛隊派遣について

【記者】
イラクへの自衛隊派遣についての国会承認を受けて、今後民主党はどのようにこの問題に取り組んでいくのか。また反対してきた経緯から、自衛隊の撤退を求めていくのか。またその場合タイミングなどを考えていますでしょうか。

【代表】この派遣については国会承認が要件になっているわけであり、我々の反対にもかかわらず残念ながら承認されました。局面は、承認をされたという状況を一つ踏んだわけです。これが良い方向か悪い方向かについては歴史が判断するわけですが、単純にこれまで反対していたからそれを繰り返し言うという状況からは、段階が一つ進んだと思います。

ただ私は、国会の質疑の中でも言いましたが、日本が、戦争が事実上継続しているところに軍隊を送ったというこの重い意味は、絶えず検証していかなくてはいけないと思っています。もう行ってしまったから仕方がないという言い方ではなく、本当にこれが中長期の日本及び世界にとって良いことなのかどうかを厳しく検討していかなくてはならないと思っています。

ただ、「すぐ帰れ」という話になるのかどうか。国会が承認した形で出て行ったわけですから、私たちはその判断は間違いだとは思いますが、反対していたから一日も早く帰れという言い方になるのか、もう少し、派遣された中での問題点をしっかり見守りながらの議論ということになるのか。議論は、派遣されたということを前提としたものに進んでいくのではないかと思っています。この辺りは、少し整理が必要だと思っています。

■集団的自衛権について

【記者】
今日の予算委員会で、総理が集団的自衛権行使の容認を含む憲法改正に関連して、「時代が変わるにつれて解釈が変わってくるのも悪いことではない、改正するのもいい、改正しないのなら解釈を変えるのもいい、大いに議論の余地がある」と言ったが、これについてのお考えは。また、菅代表自身は、集団的自衛権の行使についてどう考えますか。

【代表】これは、今日の岡田幹事長の質問の中でも取り上げられていましたが、このようなやり方が一番、日本の安全保障の問題についての不明確なやり方そのものではないかと思っています。憲法を改正するのもいい、それができなければ解釈で対応するのもいいというなら、憲法というのは一体何なのかということになってしまいます。

私が先日、敢えて憲法裁判所ということを申し上げたのも、憲法の解釈を誰が変えるのか、ドイツのように憲法裁判所が変える、あるいは判断するということであれば、それは一つの行政とは違う主体ですからそれはわかります。あるいは日本でも最高裁判所がそこまで判断するということであれば、それは一つの考え方としてわかります。しかし憲法が改正できないなら政府が解釈を変えればいい、ということでは憲法そのものにどう書いてあっても、やりたいことはやってしまうということになりますから、基本的に法治国家であるということを自ら放棄するものであります。総理の言葉は、言葉そのものはたくさん出ますが、あまりにも軽すぎると感じました。

また、政府の見解である、集団的自衛権を日本は保有しているけれども憲法上の制約からいって活動できない、というこの間の解釈については、基本的にはそういうことであろうかと思っています。ただもう少し突っ込みますと、これもある場面で与野党の議論がありましたが、集団的自衛権という言葉が、例えば日本の周辺での米軍の活動に対する攻撃があった場合に共同で動くという問題と、今回のイラクや、あるいは全く日本とは違う地域、日米安保条約が規定するいわゆる極東といったような地域と全く関係のない地域での行動に対して協力するといった話とは、少し性格が違うのではないかと思っています。ですから、抽象的に集団的自衛権の問題というよりも、日本固有の自衛の問題と、それ以外の問題をもう少し分けて考える必要があると思います。このような議論はこれからしっかりやっていかなくてはいけないと思っています。

■BSEによる牛肉輸入問題について

【記者】
代表は先日牛丼を食べに行っていましたが、その吉野家も明日で牛丼の販売を中止するとのことです。率直なご感想をお願いします。

【代表】二つの感想があります。一つは、いまなかなか給料が上がらない、場合によっては賃上げどころか賃下げさえ広く行われている中で、サラリーマンの懐も大変厳しい状況があります。280円で昼飯がおいしく食べられるということがなくなるということは、おそらく多くのサラリーマンにとっては打撃ではないでしょうか。この間行ったときに、周りの方々と一緒に食事をして、話をした中で、そのような感じがしました。

もう一つは、BSEという問題について、日本のこの問題の海外からの輸入に対する取り組みについて、もう少ししっかりした方針が必要ではないかと思っています。もちろん現在、輸入は禁止をされているわけですが、日本が全頭検査をしているのに対し、それ以外のものは輸入しないのか、それともそうでなくても輸入するのか、必ずしも原則がまだはっきりしておりません。私はいま農村地帯をできるだけ歩いていますが、農業というよりは食料といった観点から、安全でできればおいしい食べ物ができるだけ地産地消で日本の中で生産され、それが多くの消費者に消費されるという方向に進むことのきっかけになりうることではないかと感じています。

安全性という意味で日本がしっかりすれば、外国にも同じレベルの安全を求めるけれども、それが達成されない場合はやはり日本の中ものを尊重するという形になっていくのではないでしょうか。このきっかけになるということも前向きに考えても良いのではないだろうかと思っています。

■小泉内閣との対決姿勢

【記者】
菅代表は小泉内閣との対決姿勢を明確にし、昨年は予算委員会の冒頭から質問者として立っていたが、今国会では譲ることにした理由と、今後どういった形で質問に立たれるおつもりなのかなどを教えてください。

【代表】昨年は、一昨年の12月に代表になって最初の国会から、確か14回の総理との直接対決を行いました。わが党の方針としても、総理対野党第一党の党首が真正面から議論することが、自民党対民主党、どちらの政権を選択してもらえるかという一番わかりやすい形であろうということでやってきました。私は、それなりにこれらの議論が一つの成果や効果を上げたと思っています。

そして昨年の選挙で58名の新人議員を含めて、中堅、若手議員の層がさらに厚くなってきました。そのようなところから今年は、冒頭の代表質問でもあのような形で質問もしておりますので小泉総理との対決を避けているわけではなく、同時に、中堅、若手議員の皆さんに積極的に国会審議の中で活躍してもらいたいという思いもありますので、今回は私と小泉総理の対決が中心というよりも、チームとしての民主党と、チームとしての小泉政権とのチーム同士の対決という形により重点を置いていこうということであります。

これは国対委員長の考えもありますがが、私も大変好ましいことだと思っています。早ければ来週にも党首討論の可能性があるとも聞いていますので、そうした場面でこれまで以上に、小泉総理のあのまともでない答弁に対して、風穴を開けるような質疑をやらなければいけないと思っています。


編集/民主党役員室


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