2004年1月27日(火) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨

○ 古賀議員の問題は常任幹事会で結論を出す
小泉総理は大量破壊兵器が存在すると主張する根拠を示すべき
政府は二人の外交官殺害について調査結果の報告をせよ
鳥インフルエンザでは正確な情報提供を望む
農業再生プランの打ち出しで日本再生につなげたい
政治献金は政策研究のためのシンクタンクの充実などに充てたい

■古賀議員の問題は常任幹事会で結論を出す

【代表】
本日12時20分頃、古賀潤一郎代議士が私と岡田幹事長に会いに来られまして、この間の経歴問題について説明と申入れがありました。説明では、自分としては問題となっている大学は卒業したという認識であったと。その認識の中でペパーダイン大学へ行って確認したところ、単位が十分でなくて卒業していないことがわかった。国民の皆様、有権者の皆様にこうした認識の中でご迷惑をかけたと、また党に対しても迷惑をかけたということでありました。そういう中で、民主党を離党することによって一つのけじめをつけたいという申入れがありました。

それに加えて、ご本人は記者会見等でも言われたようですが、機会をみて大学へ行って不足した単位をとりたいということを言っていました。古賀代議士を公認した民主党という立場からも、本人も誤った認識の下で国民の皆様にたいへんご迷惑をかけたことに対して謝罪の意を表しておりますが、私たちとしても、当然にそうした経緯につきまして申し訳ないと国民の皆様に申し上げなくてはいけないと思っております。

その上で、この扱いについては近く常任幹事会を開いて、提出された離党届に対してどういう形で対応するかを判断したいと思っています。幹事長の話の中では、基本的には本人の申し出を重く受け止めていくことになるだろうということであり、その認識は幹事長からも本人に伝えたところであります。この問題について、次の常任幹事会で党としての判断をきちんと出していきたいと思っています。

■小泉総理は大量破壊兵器が存在すると主張する根拠を示すべき

二つ目の問題として、一昨日以来報道にも出ていることですが、アメリカで大量破壊兵器の調査に当たっていたデビット・ケイ氏が、戦争が始まった時点ではイラクには大量破壊兵器はなかったという認識を示しました。しかし昨日からのわが党始め各党の質問に対して総理は、今なお大量破壊兵器は見つからないだけで、あるのだという主旨の答弁をしています。フセイン元大統領も拘束され、さらには1000名を超える調査団が数ヶ月に渡って調査した結果、その責任者がここまではっきり言っているのに対して、小泉総理がそれでもあったのだと言うのであれば、今度は立証責任は小泉総理にあると思います。

一般的には、これはイラクのことですから日本が直接に行って調査をするということが難しいということは我々も理解しています。しかし最も積極的に捜査をする立場にあるアメリカの調査団の責任者がこれだけ調べてもなかったということは、湾岸戦争後本格的にそうした大量破壊兵器の製造には乗り出していない、あるいはその時点では破棄されて戦争開始の時点ではなかったということです。事実上その報告を世界に対してしたということは、一般的に言えば、調べても存在は証明されなかったということでありますから、それでもあったと言うのであれば、あった証拠を出してもらいたい。立証責任は、ここまでくればあったと言う人の側に移ってきたと思います。小泉総理は、少なくとも根拠もなくあったと言うことは、議論の仕方として認められないのではないか。ないという立証を我々がすることは、論理学として不可能なわけです。徹底して調査した結果で、ないという結論を出す以外ないわけですから。

小泉総理が、もしこれから先も大量破壊兵器は見つかってないだけであるのだと言うのであれば、ちゃんと見つけて我々の目の前に出してもらいたい。そのことを、強くこの場でも申し上げておきますし、今後もこのような姿勢で臨んでいきたいと思っています。この問題は、今回のイラクへの自衛隊派遣のまさに原点、イラクに対する米英の先制攻撃を支持したところから今回のことが始まっているわけであります。その原点のところで誤魔化しやあるいは嘘を言うところからスタートしたのでは、国民に対する説明責任に答えていることにはならないわけですから、この点については
明確にしていきたいと思います。

■政府は二人の外交官殺害について調査結果の報告をせよ

もう一点、昨日もわが党の首藤議員の質問や他党議員の質問にもありましたが、二人の日本人外交官が亡くなられたその経緯について、いろいろな調査結果に対してまだ不明な点がたくさんあります。わが党としては、亡くなられた二人の検視結果をきちんと報告するように求めてきました。特にお二人のご遺体に残っていた弾丸の分析結果を出すようにと強く求めていました。私自身が詳しく知っているわけではありませんが、スタッフの調査によれば、その弾丸の成分を調べれば、銅を含有しているのがロシア製カラシコフ銃の弾の特徴であるとわかるということです。それに対して、タングステンを含有しているのがNATO弾と呼ばれる米軍が使用している弾だということです。そういうことを考えますと、体内に残っていたはずの弾丸を分析すれば、その弾がどういう種類でどういうところで主に使われていたかは十分にわかるわけです。

今の日本の技術をから見ても、その分析にそんなに長くかかるはずがありません。このことを強く求めていますが、今なお分析に時間がかかる等の言い方で、報告が出てきていません。これも、大量破壊兵器とは性格は違いますが、どういう形でこのお二人が亡くなられたのか、どういう人達に襲われたのか、きちんと事実関係を把握しなくてはどのようなテロリスト、グループに襲われたのかの予測もつきませんから、調査をすべきだと思っています。すでに同僚議員がこれまで何度か国会の質問で取り上げておりますが、これまでまともな答弁は返ってきていません。重大な問題ですので、わが党としてしっかり取り組みたいと思っています。

■鳥インフルエンザでは正確な情報提供を望む

最後に、一昨日、昨日と山口県へ鳥インフルエンザについての視察に行ってきました。こちらもわが党の議員が取り上げておりますが、少なくともこれまで鳥の卵や鳥肉を食べて感染した人間はいないというのがこれまでの調査報告であります。いま一部に報告されているのは、生きている鳥との接触によって感染したという例がベトナム等で報告されていますが、そのことと卵や肉という問題は若干性格が違うわけであります。

私たちも安全性は大変重要視していますが、同時に、きちんとした情報を国民・消費者に伝え、いわゆる間違った情報による風評被害をできるだけ防がなくてはなりません。正確な情報を伝えなければならないという思いから、私も現地で鶏肉や卵を使った食事をとったわけでありますが、メディアの皆様にも、正確な情報をお伝えいただきたいと思っています。私の、このような取り組みについても申し上げておきたいと思いました。私からは以上です。

<質疑応答>

【記者】古賀潤一郎さんの件だが、今日これから幹事長と対応などを協議する予定はあるか。またこの問題は党としても長引かせるとマイナスイメージが広がる気がするが週内に対応を決めるおつもりなのでしょうか。

【代表】常任幹事会の定例は来週となっています。ただ先ほど幹事長と会った時に、場合によっては少し前倒しを含めて検討したいということでありました。長引かせるつもりはありませんが、常幹の召集は基本的には幹事長がすることになっていますので、日程までは私はまだ確認しておりません。

【記者】本日の役員会での意見の一つとして、党への説明の前に街頭演説をするのは手続きとして順番が逆ではないかとの意見があったようだが、それについてはいかがお感じでしょうか。

【代表】古賀代議士本人がアメリカから戻ってどのような行動をとるかについては、あるレベルではきちんと幹事長なり幹事長代理なりしかるべきところと連絡はとりあったと聞いているので、必ずしも事前の連絡なしでとった行動ではなく、ある程度情報としては伝わってきていたと理解しています。

【記者】古賀さんから事情を聞いた後の印象は。また、与党内だけでなく民主党内からも議員辞職すべきとの声があるが、具体的にどうお考えでしょうか。

【代表】印象というのはそれぞれの印象があるのですが、本人の説明では18歳の時に渡米していくつかの大学や公開講座などというかたちで、「transfer」という言葉を使われていましたが、学校を変わったりした中で大学に在籍したとのことです。本人としてはペパーダイン大学で単位をとって卒業できているものという認識をもっていたとのことです。

私の印象ということで言えば、話し振りからして、古賀さん自身そのような認識を持っていたのだろうと思います。そこに何らかの事実関係の認識の曖昧さがあったのかなと。意図的というよりも、学校を辞める時に、本人としては卒業という認識だったようですが、その後の仕事のことなどもあって、十分な確認ができなかったので申し訳ないということを言っておりました。

いろいろな意見があるのは当然だと思っています。ですから私も本人の話を聞くまでは敢えてコメントを控えてきたわけでありますが、今日の話を聞いた中で、自らの不注意、不十分さを本人も認めた中で、離党して本人としてのけじめをつけたいという話でありました。党としてどう受け止めるか、最終的には常幹できちんと結論を出したいと思っていますが、ご本人としては自分の過去の判断の誤りを認めた上でのけじめのつけ方なので私もある程度理解できるというのが今の気持ちです。

【記者】擁護論の一つとして、古賀さんが辞職をするならば山崎拓前自民党副総裁、与党側に結果的に議席を譲ることになるかもしれないという考えがあり、また本来審議すべきであるイラクの問題から目をそらされてしまうという危惧があるようですが、どうお考えでしょうか。

【代表】イラクの自衛隊派遣の問題は、この問題のあるなしにかかわらず極めて重要な問題ですから、小泉総理の認識そのものが誤っていた、自分がいくらあると信じていてもそれは通らないわけですから、徹底して正面から議論し、何らかの行動をとっていきたいと思っています。山崎元副総裁との関係は、客観的にはいろいろあることは事実ですが、特に党としての判断がそれによってどうこうではないのではないか。独立した問題だと思っています。

【記者】古賀さんの件で、与党側が辞職勧告決議案を出すような動きがあるがそれについてどう思うか。また実際に出た場合の対応などを教えてください。

【代表】先ほどから言っておりますように、離党届に対する党としての最終的判断は常任幹事会を通して出したいと思っています。手続もそうなっておりますので。それ以降与党がどのような対応をとってくるかについては、その後の段階で判断したいと考えています。

【記者】古賀さん本人との面会の後、岡田幹事長は除籍処分については従来のケースと異なるのではないかというお考えを示した上で、それは代表も同じだと思うということを言っていました。離党を承認する方向を強くにじませたが、代表も同じだということでよろしいでしょうか。

【代表】何度も同じことを申し上げますが、手続き上からも常任幹事会の中でいろんな議論が出る可能性も十分ありますので、その中で判断していきたいと思います。私の感想は先ほど申し上げた通りで、それをどう判断されるかは皆様にお任せします。

■農業再生プランの打ち出しで日本再生につなげたい

【記者】最近、山口県や秋田県の視察をされて、参院選を睨んで一人区でもある農村部をまわったようだが、今後もそのような取り組みを続けていくのか。また、FTAの推進に関して、小沢代表代行はFTAを推進していくために農産物の輸入をどんどんしても良いのではないかという発言をしているが、これまでの民主党の認識より踏み込んでいるような感じがするが、どうお感じでしょうか。

【代表】今年に入って、秋田の大潟村、鳥インフルエンザ問題で山口県、来週は富山にも出かけることになっています。パーティーではありましたが、先日北海道でも挨拶の中で農業について触れさせて頂きました。党大会でも挨拶の中で農業に関しての考え方を申し上げました。これはいわゆる参議院の一人区対策というそのことだけを考えているわけではありません。もっと根本的に、日本の将来、あるいは日本社会のあり方について、スローライフという言い方も使いましたが、人間の生き方、日本人の生き方の問題として、農業推進として林業、漁業を含めてしっかり再生させることが、日本を再生させる大きな要素になるとの認識の中で、昨年も全国を回りましたが、今年も足を運んで話を聞き、しっかりした再生プランを参院選までに打ち出したいと思っています。それが結果として農村地域の選挙にもプラスになることは大変ありがたいことだと思っております。

FTAに関して小沢代表代行が話をしたことについては、テレビ番組を見ることができませんでしたので、新聞記事程度しか見ていませんが、大きな方向としては民主党が従来から言ってきたこととそう違わないのではないかと思います。直接支払い制度というものは民主党の基本的な政策の中に、マニフェストの細かい部分に入っておりますし、FTAについても、日本農業の再生と両立させる形でFTAに関する積極的な取り組みもしていくということをマニフェストに盛り込んだという記憶があります。大きな面では、方向としては共通していると思います。敢えて私が先日農地法の問題を少し取り上げました。これは制度上の問題としては日本の農業の中で、殖産制度と同時に良くも悪くも日本の農業を否定してきた基本的な制度であり、そういったものの根本的な見直しということで申し上げたことは、それは少し踏み込んだものと言えるかもしれません。

■政治献金は政策研究のためのシンクタンクの充実などに充てたい

【記者】日本経団連についてだが、民主党、自民党、公明党に対して政治献金再開をする方針を固めているようです。政策を個別に判断して政治献金の額を決めていくということだが、手法を含めて、献金再開についてどのように受け止めますか。

【代表】政治献金についてはわが党の中でも、私個人にもいろいろなかたちで考え方の多少の幅はあり、議論も展開されています。手続きとしては、日本経団連の側でそのようなことを考えられて実行される場合には、例えば民主党は今、連携できるシンクタンクといったものを数年前から支援したりしていますので、日本の行く末をきちんと見定めるようなそういう政策研究のできるシンクタンクの充実やそのようなものに充てさせてもらいたいと考えています。個別の政策云々というのはいろいろな判断があるのでしょうが、日本全体を考えて、政策立案能力を持つ党になるための基本的なインフラであるシンクタンク機能の充実に充てていきたいと思っています。


編集/民主党役員室


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