2004年1月6日(火) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨

○伊勢神宮を参拝:民主党が世界・日本の難しい局面に対応できるよう祈願
年金改革:目先のことのみに終始する与党案に乗る必要はない
自公連立政権は無責任。筋がますますわからなくなっている
憲法論議は国民主権の原理のもと、一歩二歩進めるべき

■伊勢神宮を参拝:民主党が世界・日本の難しい局面に対応できるよう祈願

【代表】明けましておめでとうございます。

昨年に続いて、伊勢神宮にお参りをさせていただきました。昨年は、私もあらためて代表に就任いたしまして、また岡田幹事長にもその時から幹事長として尽力いただいています。そういう意味で幹事長の地元でもあるこの伊勢の初詣でということで、昨年に続いてお参りをさせて頂きました。この一年間いろいろなことがありましたけれども、まずはそのことに対するお礼の気持ちと、いま世界も日本も非常に難しい局面にあるなかで、私たち民主党はそういったことに対してきちんと対応できるように、そういうことを願ってお参りをさせて頂きました。

特にこの伊勢神宮というのは、私から申し上げるまでもなく、ある意味では天皇家を祭っているわけでありますが、2000年くらい前にできたとも言われております。最近、憲法の議論も盛んになっておりますけれども、聖徳太子が17条憲法というものを発表されたのが7世紀と聞いておりますけれども、その第一項目には、「和をもって尊しとする」という有名な第一条があるわけであります。

いろいろな意味に解釈されるところもありますが、イラクに対する自衛隊派遣を含めていろいろな議論が今年はあると思います。やはり日本という国が「和をもって尊しとする」という、そういった考え方を今から1600年くらい前にすでに一つの基本としてもっていたということを、私たちは大事にすることが必要ではないか、とこんなふうにも改めて思ったわけでもあります。

今日は、三重の私たちの仲間と、さらには、候補者であった金子さんにもご同行いただきまして、これから一年、今申し上げたような考え方に基づいて、また、迎える参議院選挙についても、しっかりがんばりたいということの気持ちも込めて、お参りをしてきたところであります。

以上ご報告です。

<質疑応答>

■年金改革:目先のことのみに終始する与党案に乗る必要はない

【記者】今年は参議院選挙に向けて年金制度改革が一つの焦点だと思うが、その中で与党側から年金制度改革を協議するための協議会を民主党と一緒に立ち上げたいというような声も上がっているが、実際にこのような非公式の打診はきているのか。また、実際に打診が来た場合、対応をどうするのか、民主党のほうから呼びかけていくようなことはあるのか。

【代表】まず呼びかけがあったのかどうかということについては、まだ今年正式な会議を開いておりませんし、具体的にどういう形のことがあったのかということは私自身は聞いておりません。ただ昨年の衆議院選挙で、年金制度については民主党としてかなり根本的な改革案を提示しました。そういう考え方のなかには年金制度という、50年、100年を見通す制度については、ある意味では超党派で合意をすることが望ましいという一般的な考え方は持っております。ただ与党の議論を聞いておりますと、あまりにも目先のことに終始しています。何かこう、アリバイ証明的に民主党も加えてやろうとういうような話であれば、そのような場に乗る必要はない。しかし本当にわが党が提示している年金改革案を含めて、50年、100年を見通した議論をしようという提案が、もしあったとすれば、それは真剣にというか、全力で受け止めたいと思っております。

■自公連立政権は無責任。筋がますますわからなくなっている

【記者】与党の中での公明党の役割について、このところどう見ているか。自公保3党という体制が、自公2党になってからおよそ50日が経過し、その中でイラクへの自衛隊派遣問題など様々な議論があったが、自民党にとっての歯止めになる、あるいは公明党が入ったほうがよくなるという主張を公明党はしているが、果たして公明党が本当に歯止めの役割ができているとお考えでしょうか。

【代表】まず年末以来の国内の政局に関して言えば、私は自民・公明の連立政権というのは、大きな矛盾が明らかになってきたと思います。一般的に言っても、公明党というと、「大きな政府」、「小さな政府」という言葉をあえて使えば「大きな政府」、かつては地域振興券といったバラマキ型の要素も含めた大きな政府論です。自民党は、いろいろな要素はあるが、小泉総理のおっしゃっておられることは、それとは全く逆の方向になっております。ですから年金制度という、衆議院選挙で公明党が特に重視した課題についても、その大きな溝が全く解消されないまま、1年2年3年という短期の先送り的案にしかまとまらなかった。これは一つの象徴です。この自民・公明無責任政権の姿があまりにも明らかになってきていると思っています。

また自衛隊派遣につきましても、結局のところ自民党に言い訳を提供するという役回りをやっているだけではないか。神崎代表がサマワにいかれましたが、結局それが、何か公明党ないしは支持団体である創価学会に対する、いわば言い訳に使われているのではないか、というふうに思います。そういう点では連立政権というのは、国民から見て無責任な、筋がますますわからなくなっている、こういうふうに思っています。

私たちとしては、自民・公明あわせた勢力、このような無責任な政権そのものを交代させる必要があります。この夏の参議院選挙で、私たちが2500万票、つまりは2500万人の皆様の支持を目標とするということは、自民・公明連合軍を超える支持を国民の皆様にぜひ与えてもらいたいという意味をもっているのです。

■憲法論議は国民主権の原理のもと、一歩二歩進める議論をしていくべき

【記者】年金制度と同様、憲法問題についても、民主党と共に協議会を持ちたいというようなことを自民党は考えているようだが、それについての対応ははどう考えているか。また関連するが国民投票法案について、自民党が今回予定される通常国会に提出するという考えがあるようだが、それに対する対応もどのようにお考えでしょうか。

【代表】憲法については、すでに国会の中に憲法調査会も設けられており、自民、民主に限りませんが、国会という正式な場での議論が数年間に渡って続いております。

それに加えて特に自民党と民主党との2党での協議会が呼びかけられているという話は、現時点では私の耳に入っておりません。入った時にはまた考えなくてはなりませんが、憲法議論というのは、本当に幅広い議論が必要ですので、あまり軽々に二党間の話し合いというかたちを取ることは、現時点では急ぐ必要もないし、望ましくないのではないか。議論は大いに、国会を中心にいろんな場面でやればいいし、党内においても憲法調査会が熱心にやっていただいていますので、私はそのように思っております。

また国民投票法案につきましても、まだ細かい意味づけなどを聞いておりませんが、私は憲法を見る限りでは衆議院選挙、参議院選挙ともに国民投票ができる制度になっているわけですので、改めてそのような投票制度が必要と考えるのか、必要でないと考えるのか、まだわが党のなかでも十分な議論ができておりませんので、あまり手続き論だけをもって、例えばわが党を揺さぶろうなどと自民党が考えているようなことであれば、あまりにも姑息なのではないかと思っております。

逆に言えば、1946年の憲法発布から58年が今年の11月で経過をするわけで、2年後にはいわゆる還暦という、60年の節目も迎えるわけであります。私たちとして、まさに国民主権の原理のもとで、今の憲法そのものでいいのか、積極的な意味でもっと民主主義的な、あるいは平和主義、基本的人権、国際協調という問題をしっかり踏まえて、環境権とかそういったものも含めた憲法というものを必要とするのか、まさに創憲の議論を一歩二歩進めていく、そういう議論を展開していきたいと思っています。あまり、国民投票の手法がどうこうという技術的なところに重点を置くということではないのではないか、と思っております。

【記者】党内での議論を踏まえるということでしたが、どのようなスケジュールで考えていらっしゃるのか。現段階でわかる範囲で教えてください。

【代表】今日もこちらにくる途中で、最近発売された月刊誌に書かれた、小沢代表代行と横路副代表の対談式インタビュー記事も改めて読ませていただきました。党内の議論も正式であるかないかは別として、いろいろな形で巻きおきております。どこでどういう形式で議論するかというのはまだ決めていませんが、一般的にいえば『次の内閣』あるいはその中にある部門会議などで議論することになると思いますが、必要であればまたそれに加えて必要な場を作っていくことになると思います。

いずれにしてもこの自衛隊の海外活動については、現実にイラクの問題という目の前の問題と同時に、原則をしっかりしない中で、状況対応で物事が動いていくというのは最も危険なことであり、望ましくないことであります。そういう面を含めてわが党として、自衛隊が海外で活動するためにどういうやり方があるのか、これはそう遅くない時期までには一つの方向性を出す必要があるだろうと、基本的にそう思っております。どの場でやるかは、また相談したいと思っています。

【記者】そう遅くない時期というのは、参院選というのが一つの時期なのか。いつまでにひとつの一定の方向性を議論してまとめるとお考えか。また国連待機部隊についても、武力行使ができるのかというのがあると思うのですが。

【代表】時期については、私が今一人でいつまでと言えるところまで固めてはおりませんが、参議院選挙というのが、一つのそういう国民的な議論をするうえでの、それぞれの党が見解を持つ一つの場になります。できれば参議院にむかって政策を詰めていく中に、この問題もしっかりした位置づけをもてればいいと思っております。また、国連待機部隊の議論については、個人的には今の民主党ができるよりもかなり前からいろいろな議論をしてきた経緯があります。ただ民主党の中では、あまり私自身はこれまで直接には問題提起は、あまりしておりません。

そういった意味では、さきほどひとつの例をあげましたけれども、小沢代表代行や横路副代表を含めた議論というのは、私から見て、そう私自身が思い描いていることと大きな齟齬がないのではないか、大きな違いはないのではないかと、そのように受けとめております。ただ、もっと幅広い、わが党の中にはこういった問題について、かなり専門的にしっかりと取り組んでいるメンバーが何人もいるので、しっかりと議論をしてもらいたいと思っています。

【記者】野党第一党の党首としての神宮参拝の意味について、もう少しお聞かせ願いたい。小泉首相は、伊勢神宮に変わるものとして明治神宮ないし靖国を考えておられて、来年は伊勢神宮に来られないかもしれませんが、この辺をどのようにお考えなのでしょうか。

【代表】まず総理が靖国に参拝された問題は、これは伊勢神宮参拝とは全く別の意味を持ちますので、これを同じ土俵で議論するというのはあまり適切ではないのではないかと思います。私が伊勢神宮にお参りしたのは、先ほども申し上げたように、一昨年の暮れに改めて代表に就任させていただいた中で、初詣でと申しますか、一年の計をお参りするなかでお願いをするということです。多くの方も12月の終わりごろはクリスマスを楽しみ、お正月というのは、神社などにおまいりするというのは一つの慣習であります。特にこの伊勢神宮は、自然に恵まれた、最も日本で代表される歴史のある神宮でありますので、そういう意味で私はお参りをしたと、そういうことでありました。

【記者】党首であられる限り、神宮には機会があれば来られると、そういうことか。自民党は、内閣が変われば来年からは来ないかもしれませんが。

【代表】そこまで固く決めているわけではありませんが、少なくとも昨年今年とそういう気持ちで参拝したと、来年はどのような立場にいるかわかりませんけれども、大変気持ちの良い神社ですし、すがすがしい気持ちになるところですので、個人としても今後も折をみて参拝はいたしたいと、このように思っています。

■今の時代に最も必要な憲法をどのようにつくるのかという姿勢が必要

【記者】憲法改革について、先ほどお話しの中で幅広い議論が必要という話があったが、具体的に代表が現時点でお考えになっている、変えなくてはいけない部分は、具体的にどの程度あるとお考えでしょうか。

【代表】幅広い議論と申し上げたのは、まさに幅広い議論でありまして、私もお正月休み前後に多少憲法に関する本も紐解いてみましたが、あまり個別的にこの部分がこうとか、1分2分で申し上げるのは誤解を招くかと思います。

私としてはやはり一番の大きなことは、明治憲法というものは、日本の近代化を急ぐときに、大日本帝国は万世一系の天皇家であり、天皇がこれを統治するというようなところからスタートしているわけです。1946年の現行憲法は、中身は国民主権という形がとられておりますけれども、実際の運用は必ずしもそうなってこなかった歴史があります。それはやはり国民主権ということを意識して国民的な議論を行って作られた憲法ではなくて、憲法解釈の中から、国民主権というものをいわばひろげていったということがあると思います。

思うに、まさに国民主権の国日本が、国民の主権に基づいて、自分たちとして今の時代に最も必要な憲法をどのようにつくるのか、そういう姿勢が最も必要なのではないか。単にこの条項がどうだからということではなくて、あえて言えばヨーロッパの歴史には、市民革命を起こして、いろいろなときに憲法ないしそれに匹敵するものを作った歴史をもっている。そのようなことを考えますと、先ほど聖徳太子の17条憲法を申し上げたのも、日本にもまた別の歴史があるわけですが、そのようなことも踏まえながら、憲法をどうするか、そういう基本的な姿勢が私は大事ではないか、と思っております。個々のことはいろいろありますけれども、それはまたたくさん時間のあるときに述べたいと思います。

■循環型社会を目指すべきではないか、など国のあり方について議論し提起したい

【記者】参議院選挙でマニフェストを出す場合、前回衆議院選挙のときはグランドデザインがないとかいう指摘もあるわけだが、その辺はいかがですか。

【代表】マニフェストというものは、政権交代を目指して、政権を担当するときにはこうしますという、まさに政権公約であります。衆議院で出した政権公約をさらに変化させていくという位置づけで、いま『次の内閣』でもプロジェクトチームを作っていただいて、その作業もいろいろな切り口で行わなくてはならないと思っています。

参議院選挙において、どのような形でどのような表現で公約を出すかは、最終的にはこれからの議論となりますが、私としては少なくとも衆議院のマニフェストに対応する何らかの、より深めたものがあったほうがいいのではないか、とは思っています。ただ一般的には参議院選挙だけで政権交代し、民主党が政権を担当するという形にはなかなかなりにくい選挙ですので、もうちょっと一般的になるかなと思っています。

国のグランドデザインについて言えば、いろいろな見方がありますが、憲法の議論とか、自衛隊の海外派遣の議論とか、さきほどもあるテレビ局からキーワードを言ってほしいということだったので、「自然と共に生きる」という言葉も申し上げました。最近スローライフという言葉もありますけれども、近代化から大量生産・大量消費・大量廃棄というものを前提とした社会で今の日本がここまできたわけですから、文明論的にも変わるのではないかと思います。さきほども神社で話を聞いておりますと、遷宮をされる時の古い材木は次々に別の要素に使われていくという、まさに循環型の行動をとられているわけです。そのような考え方を大事にした日本社会というものを、もう一度目指し直すべきではないかとか、そういった国のあり方については大いに議論をし、国民のみなさんに提起していきたいと思っております。


編集/民主党役員室


2004年1月6日 戻るホーム記者会見目次