2004年7月30日 >>年金改正法廃止法案(骨格) 戻るホーム民主党文書目次

仙谷由人政調会長/臨時記者会見要旨
年金改正法廃止法案の国会提出にあたって

【年金改正法廃止法案を提出】
 本日、7月30日10時に、前国会で強行採決により成立した年金改正法を廃止する法律案を衆議院事務総長に提出してきた。

 この間の経緯は、十分ご承知いただいているものと思うが、参議院選挙はまさに年金選挙でもあった。その中で、年金改正法というものが国民の審判にさらされ、比例区の票は民主党に約2100万票、自民党に約1700万票。獲得議席数も与党が60議席、野党が61議席となった。

 その後の世論調査等においても、政府・年金改正法については批判が強く、60〜70%程度の批判がある。じっくりと抜本的な年金改革を国会で協議してほしいというのが現時点での民意だと受け止めている。

 したがって民主党としては、(1)10月1日から効力が発生する予定の年金改正法をいったん廃止すること。(2)年金一元化を目指して国会で協議し、政府が責任を持って平成18年度中には法案及び制度設計を行うこと。(3)先般の改正法でも個別具体的に改良がなされた。現在の非常に複雑でわかりにくく、事務的にも過誤を生みやすいところを部分的に是正させた部分は改めて効力を持たせる――以上3つの柱を持った廃止法案を提出してきた。

 ここには、(1)社会保険庁の廃止、(2)公債特例法において国費の事務経費等について、どこに境目、境界線があるのかわからない。3000億のうち、2000億程度を保険料からまかなう。この保険料からまかなうところが、異常なモラルハザードを起こしているため、これを当然のことながらやめさせる。事務経費は国費で、一般財源で支払う。また、(3)議員互助年金を廃止することを法案の中に盛り込んでいる。

 そして、いわゆる三党合意等の問題がある。これで年金改正法の矛盾を覆い隠しながら、現状維持を図ろうとの意図が与党に透けて見えるわけであり、かつ、今国会においてまともに議論しようとしない。小泉総理は「説明が不十分だった」といいながら、今国会では説明しようとしない。民主党としては、何とかして適切な審議時間を確保し、国民の前で年金を一から議論し直すことを、これからもねばり強く要求していきたい。

参議院で提出する内容は若干変わっていると聞いているが】
 参議院法制局とも細かい技術的な詰めがあるため、最終的には参議院で詰めてみないとわからない。基本的なところは全く同じだ。法案名も全く同じだ。

8日間という会期では、十分な議論はできないのではないか】
 与党は、年金の問題だけでなく、国政全般、イラク問題、日歯連問題など、日本の政治の質に対する議論から逃げたいということであろう。これでは国民の政治に対する不信感は増大するばかりであり極めて残念だ。

 その過程で、細田官房長官の消費税つまみ食いのような話が出てきたり、参議院選挙敗北の結果を何とか早急に打ち消したいという意図だとみているが、事は選挙戦で勝った負けたというだけでなく、日本はもう少し大きな断崖絶壁に追い込まれているという危機感を持っている。党首討論をはじめ、日本の置かれた現状を国民に理解していただき、ある種の覚悟を決めて本格的な改革を始めるんだと。そのプログラムを国民と一緒に書くという決意がほしい局面だと私は思っているし、民主党執行部もそのような認識だと思う。政局的にこれを封じ込め、時が経てば何とかなるとやり過ごそうとしているのは、いよいよ自民党政治の終焉が始まったと。その程度のエネルギー、活力しか残っていないことを示したものではないか。

米国での岡田代表の発言について】
 いわゆる国連による集団安全保障を岡田代表が講演でどのように発言し、どのように訳されたのかについて、テクニカルタームのところまでは確認していない。報道しか見ていないため、とやかくいえる筋ではないが、ただ、岡田代表が就任されて以降、私は憲法調査会会長として、安全保障政策、憲法9条論、国連憲章を日本がどう受容するのか。国連による集団安全保障、とりわけその中の軍事的な措置をどのように受け止め、これからの日本国家のあり方として、憲法上どのように規定するのか、どのように解釈していくのかという問題意識の下に議論してきた。

 先般示させていただいた、憲法調査会の中間報告において、国連による集団安全保障に積極的に参画していく。これは憲法上明確にさせることが必要だと書いているが、岡田代表の発言はその範囲内の発言であると私は理解している。集団安全保障の中には、軍事的措置、武力行使を含む。日本が国連の多国籍軍等、集団安全保障の軍事的措置の中で日本がどの部分を担うのかについては、時と状況によって必要であるとの政治判断が必要で、現在のフランスやドイツのように、選択の幅は大きいと思うが、日本がどの部分を担うのかを別にすると、一体として、国連の統一的な指揮の下で、積極的にその一端を担うことになれば、それは法律概念としては武力行使の一端ということになる。岡田代表の言い方は、この間の民主党の詰めてきた方向の枠内にある。

衆議院、参議院にほぼ同じ内容の法案を出すことについて】
 衆参の役割分担論、憲法上の議論、参議院の存在理由、日本の二院制の下での議論としては、決着がついていない悩ましい問題だ。国会の慣行という話であれば、この間の自民党は、国会運営のやり方を全く無視して進めているわけであり、憲法上、法律上、衆参に類似法案を出すことができないという規定がない以上、何をか言わんやだろう。

 参議院先議、衆議院先議、どちらに先議権があるのか。両方で同じようなものが提出された場合どのようにするのかについて、確立した慣行はないと思う。両院協議会というのも大げさだが、このあたりで審議方法をこれから議論しなければならない。憲法調査会などは、両々相まって進んでいるが、どちらにかけるのか。例えば、参議院では参議院憲法調査会の中で、与野党の統一的な憲法改革草案を作り、衆議院でも与野党が出してきた場合、両方審議するのかといった問題もある。今は、年金改正法廃止法案というレベルだが、国論を二分するような話になる可能性がある。これは重要な検討課題であり、大きな問題につながってくることをご理解いただきたい。政治的には、参議院選挙で国民の意思が示されたわけであり議論していきたい。それを担って勝ち上がってきた議員もいる。国民の意思によって新たに構成された勢力分布であり、その方々で議論することが本来的には必要だ。

三党合意における協議会の設置について】
 現在の法律の効力を凍結するか、廃止法案を通す。一元化に向けた協議会をつくる。年金抜本改革特別委員会を設置するなり、厚生労働委員会の中に常任委員会なみの権限を持った小委員会を設置するといった話であれば、前提条件が平成18年度中には法案を通し、新しい制度が平成19年度から発足するということまで合意できるのであれば、民主党は堂々と参加したい。

上記のようなことが示されなければ協議会には参加しないのか】
 現時点ではそのように考えている。私も今まで、財金の分離、行政監視委員会の設置などに取り組んできたが、中途半端な改革の共犯にさせられそうになったことがある。現状維持、もしくは現状維持よりも悪い方向にしか進んでいない今までの歴史であるため、中途半端なことはやらないほうが良い。

 一方で政府が、経済財政諮問会議に匹敵する権威をもった国家の基本的な戦略方針を示すことができるような「社会保障懇談会」をつくるとのことだが、もしそうであれば、経済財政諮問会議との関係はどうなるのか。社会保障の問題は半分以上、財源、財政問題であり、国の財政総体との関係が問われる、あるいは経済構造の問題につながる話であるため、権限を持たせなければ、国民にやっている姿だけをパフォーマンスで見せるだけになってしまうのではないか。

 民主党が従来から言っている年金に関する協議会は、与野党が本気で国家の戦略課題として、国民の意見を重視できるような権限、影響力もあり、そこで決めたことには国民が納得して従う。この方式でいくと、旧来の自分の既得権は少々削られてしまうがやむを得ないこうといった大きな決定ができる協議会をつくるべきだ。

 民主党は、内容のスウェーデン方式だけでなく、亡き今井澄氏(元民主党参議院議員)が提唱したプロセスのスウェーデン方式を実現させなければならない。これには、年金問題は利害関係が錯綜し、タイムスパンが20年〜50年と非常に長い。それを解決し、合意形成を図るものをつくる気があるのか。世間向けに、政府の懇談会をつくり、三党合意を持ち出すような政府・自民党のやり方には、現段階では理解しがたい。

 そのような観点を加味しながら、国会に権限のある委員会なり小委員会を設置していくということで良いのではないかと思っている。

 詳しくは古川元久政調会長代理より説明させていただきたい。

――以下、古川元久政調会長代理より 「年金改正法廃止法案」の説明――

 選挙でも約束したが、政府・年金改正法を廃止する。積立金の問題も年金改正法では不十分でありこれも廃止する。

 公債特例法の第3条〜5条を廃止する。これは年金保険料の流用を認めている条文であり、これを廃止する。年金保険料で、社会保険庁の事務経費等が使われている実態を改める。

 抜本改革までの当面の措置として、マニフェストでも約束してきたこと、今回の改正年金法廃止の中でも除外として付加すべきものについては規定する。主な項目として、基礎年金の国庫負担率の引き上げは、平成20年度末までには1/2とする。そして、この選挙期間中にも様々な流用、無駄遣いの実態が明らかになってきたが、社会保険庁は廃止し、国税庁と統合して「歳入庁」を創設する。これは先の国会で民主党が提案した抜本改革の中にも含まれている条項であるが、もう一度確認させていただいた。

 また、福祉をすることができる条項により、グリーンピアなど、年金保険料の無駄遣いを認めている「福祉増進事業」を認める条文(=厚生年金保険法第79条、国民年金法第74条)を廃止することによって、そうした福祉という名の下に、年金保険料が流用されない仕組みを担保させていただいた。

 また、廃止の除外として、抜本改革の間まで少しでも前進であるためこの部分については、活用した。(※添付別紙参照

 付則については、民主党は先の年金改正法本体には反対したが、付則部分の公的年金の一元化を含めた抜本改革の議論を平成18年度までに行うことについては賛成している。その部分については、今回の廃止法案でも付則という形で平成18年度までに抜本改革案をまとめ、平成19年度から抜本改革の新しい年金制度をスタートさせることを盛り込んだ。

 最後に、一元化の実施に先だって、前倒して国会議員互助年金については廃止することを規定した。

 以上が年金改正法廃止法案の概略であり、廃止するだけでなく、選挙で約束したこと、マニフェストに記載したことすべてを含めたものが本法案である。


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