1980年11月16日 第二回全国大会

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第二小委員会(組織、財政、機関紙、選挙等)の提案

 一、衆参ダブル選挙の結果

 今回の衆参ダブル選挙は自民党圧勝に終わった。このことは同時に、革新野党側の未熟さと限界性を示すものであった。

 その中にあって、われわれ社民連がともかくも勝利したことのもつ意味は、われわれ自身が思っている以上に大きいのではなかろうか。

 つまり、社民連は党を丸がかえしてくれるような党外の大組織を持っておらず、また教条的イデオロギーに没入した集団でもない。言い換えればわれわれ社民連は、社会党が百年一日の如くとなえてきた「労組依存からの脱却」をいやおうなく前提としてきた。社会党的常識から言えば、参議院全国区を巨大労組の丸がかえ以外で戦うことは、手こぎのボートで太平洋横断を目ざすに等しく、衆議院選挙でも、労組を中心とした選対に地方議員が加わるのが社会党選挙の姿である。

 そうした社会党的常識破りの選挙において、ともかく全国区一名を維持し、衆議院で新人一名を加えて三名に回復したことは、社会党の持つ限界性を打ち破ったと自負できることではなかろうか。われわれ社民連が、社会党的常識を超える新しい運動形態により、衆参でそれぞれ二ケタ議席を実現することができれば、低迷状況にある革新政治勢力を根本から脱皮させる大きな契機となるであろう。

 二、社民連再スター卜に向けて

 社民連への一国民の期待は、二年前の結成の時以来の高まりを見せている。

 しかし一方で、社民連結成以来、「われわれのめざすもの」に盛られた高い理想の実現に向けて、組織づくり、機関紙拡大、大衆運動の展開など、どれほど実践し得たかをふりかえってみると、厳しい現実に突き当たる。結成以来、昨年春の統一地方選挙、秋の衆議院選挙、本年の衆参ダブル選挙と、まさに社民連の存亡をかけての選挙戦に追われ、政党としての体制作りは不十分なままに推移してきたと言わざるを得ない。

 一九八三年の統一地方選挙までの今後約三年間、国政選挙が行われないことが確実な今こそ、社民連再スタートヘ向けての本格的な体制づくりに着手する時である。

 こうした視点にたって、七月十日の常任運営委員会において、理論面と党運営に関する二つの小委員会が設けられ、八月末をメドに、それぞれの課題について提案をまとめることとなった。

 本報告は、その内の党運営に関する小委員会の提案のまとめであり、以下、(1)機関紙、(2)大衆運動、(3)党組織、(4)財政、(5)全国本部体制、(6)選挙の六項目に分けて具体的提案をまとめた。

1. 機関紙

 政党機関紙は、いうまでもなく政党の「顔」であり、政党の思想、理念、政策、主張、方針、行動などを卜−タルに内外に伝える媒体としての機能、さらには運動と組織活動における強力な武器としての役割をもつ。

 現在発行中の社民連機関紙「月刊社会民主連合」は、発刊以来既に三十五号(一九八〇年七月現在)を数え、その間機関紙として一定の役割を果たしてはきたが、政党機関紙としては、残念ながら要求されるレベルにはほど遠い現状にある。

 われわれはこの状況をいかにして克服するか。
 以下数点にわたりその具体策を提案する。

(1)目標
 (a)紙面の刷新と編集内容の充実
 (b)発行回数の増加と発行部数の増大
 (c)有料化推進による独立採算制確立

(2)発行体制の確立
 現在までの最大の欠陥は、発行体制、つまり編集、経営の主体が確立されておらず、責任体制がとられていなかったことにある。これを改善するために、常任運営委のもとに既に設置されている「機関紙委員会」の機能回復をはかるか、あるいは改組して、機関紙活動についての企画、編集、経営、運営、執行についての全責任を負うものとする。

 機関紙委員会の構成は次の通り。

 機関紙委員長 一名
 機関紙委員 若干名
 編集局長 一名
 経営局長 一名

(3)機関紙の強化と改善の具体策
(a)編集・方針
 T 性格
(1) 社民連の政治的宣伝活動(主張、方針、情報等)
(2) 党内の意見交換・情報交換(血液としての役割)
(3) 党組織拡大の道具としての機関紙
(4) 他

 U 具体的イメージ
(1) 紙面構成のモデルは(夕刊フジ)的なもの
(2) 党の政治的主張・声明・方針
(3) ニュース的なもの――国会活動・大衆市民運動・地方での活動等
(4) 情報コーナー(常設)・経済分析・政治動向・海外動向・エネルギー
(5) 文化欄的コーナー(原稿外部発注も含め)
(6) 活字以外の要素(写真、絵、カット)

(b)企画
(1) 発行ローテーション――月二回(半月刊)。当面は半月刊、一万部有料化実現、あるいは諸般の事情により、可及的速やかに、旬刊から週刊へと移行する。
(2) 紙名及び題字――社民連(仮題)
(3) 判型、総ページ数――タブロイド判八ページ、情況に応じ増ページ。一万部有料化の際は別途考慮。
(4) 発行部数―― 一万部。
(5) 定価―― 一部百五十円、月額三百円、半年千八百円、年額三千六百円、いずれも送料込み価格。
(6) 広告の扱い――広告掲載とするか、非広告掲載紙とするか。

(4)有料化計画
(a)現状の分析(別紙省略)
 五五年度に入っての紙代納入部数は千四百八十部、この部数は概ね今後とも継続確実な部数と判断できる。残余の約千四百九十部についても、ほとんど各県社民連扱いなので、さらに全党的な協力のもとに、機関紙活動を進めることができれば、これらを合計した約三千部を現在の有料部数と見なしてもよい。

(b)有料化の段階
(1) 第一段階――大会開催月より六カ月
 今年度社民連大会をめどに、刷新第一号(見本紙)を発行し、大会で論議、検討する。それまでに、未納紙代の回収 整理を行う。以後六カ月を目標に、有料基礎部数三千部を五千部に拡大する。この間の拡大は主として県社民連段階では、未購読会員、協力会員を対象とし、全国的に、会員全員購読化運動を推進する。また、本部、各級議員、役員等は、それぞれ個人購読者を開拓する。

(2) 第二段階――以後六カ月、当初より一年
 一万部の有料化を実現する。初めの五千部有料化の実績をもとに計画を策定し実施する。

以上の段階を経て、約一カ年で一万部有料化を達成するものとする。

(5)結語
 以上の通り、一万部有料化が達成されれば、機関紙の独立採算制は可能であり、さらに部数の増大にともなって収益をあげることができる。

 とりあえず当面着手すべき順序として、
(a)未納紙代の早期回収。これにより、再出発の基礎有料部数が確定し、再出発資金を保有することができる。
(b)刷新第一号刊行時期の決定。
(c)編集委員会の構成を決定、特に編集局長の人選。
(d)全党的に機関紙活動強化に取り組むコンセンサスの一致をはかる。
(e)第一段階計画(有料五千部)の完全実施。
(f)第二段階計画(有料一万部)策定、目標部数、期間を十分検討の上、実施する。

2. 大衆運動

(a) 大衆運動の位置づけ
 大衆運動は政治運動の原点であり源泉である。内外の労働運動や農民運動も、また近年の市民運動も、働く人や生活をする人が、職場や生活の場で“こまった”“おかしい”と感じたところから運動がスタートする。そこから持ち出された個別要求や個々のテーマの運動が、政策、制度、社会体制の問題として政治運動へと転化してゆく。

 こうした点からも、大衆運動から切り離されては政治運動は存在しえず、大衆運動とつながりを持たない政党は、根のない植物と同じで必ず枯れてゆくであろう。

 しかし、これまでの政党と大衆運動の関係を見ると、共産党のように大衆運動を党の方針に隷属させようとするか、また社会党のように党活動の多くを労働組合にまかせてしまうといった形態が多く、大衆運動と政党とがそれぞれの特性を生かした連携を持ち得ていない。

 大衆運動は本来、個別要求や個別テーマごとに成立しているのが普通であり、政党は共通する課題については“政策”として実現に努力する形で、大衆運動との協力・共闘関係を結ぶのが自然の形である。そして大衆運動の場合、行政の情報や国会の情報が不足していることが多く、こうした情報を国政調査権などを活用して大衆運動に提供することが、信頼関係を生む上で重要である。

(b) 情報センター機能の充実
 そこで社民連の中に、大衆運動と連絡をとり、機関紙交換購入などにより活動状況を把握すると共に、重要と思われる運動には協力するための体制を確立することが必要である。

 そのために、新たな委員会、または現存の、例えば市民委員会の下に大衆運動との交流の窓口の役割を果たす専従者を置くことが望ましい。

 そして、専従者に加えて非専従の活動家数名が、テーマごとに大衆運動との交流を担当し、必要な行政情報、国会情報は国会議員の室を利用して収集するという協力体制をつくり上げることが必要である。

 労働運動については、複数のパイプを通して積極的に交流を因ってゆくのが望ましい。

(c) 大衆運動の取り組みと運動の創造
 これまで社民連がかかわりを持ってきた大衆運動を挙げてみると、次の通りである。

 カンボジア難民救援、金大中氏と韓国民主化、情報公開法、環境アセスメント、合成洗剤追放、リサイクル、中小企業、原発問題、スモン訴訟、農民運動、労働運動、部落解放同盟。

 また大衆運動には、労働運動や市民運動のように“運動”が顕在化しているもののほか、商店街、PTA、団地自治会、生協、各種業界団体など、地域の生活や職業に日常的に関係している団体は無数に存在する。

 こうした運動への取り組みを考える時、次のような基準を考えてみたい。

 a. われわれの主導で進める運動
  例えば岐阜、京都などの同志による中小企業運動、山形の農民運動
 b. われわれが主導的役割を持つ運動
  例えばカンボジア救援運動、一部のリサイクル運動
 c. われわれと支持・協力関係が成り立つ運動
  例えば商業労連、中小企業健保、生活クラブ生協
 d. 当面の支持関係は困難だが、中・長期展望に立って進める運動
  例えば総評、同盟、中立労連、新産別、政策推進労組会議等
 e. 他政党の影響が大きいが、国民的視野で協力、共闘する運動
  例えば原水禁運動、部落解放同盟

 当面われわれは、独自の支持勢力を拡大するため、a.、b.、c.に属する運動の創造、取り組みを特に重視する。これは機関紙、財政、選挙、人材発掘の全てにかかわる基本である。またd.、e.については、政党としての影響力を拡大するため取り組むことが必要である。また当面六名の国会議員が各一つ以上の運動を提起することとし、全国の運動の豊富かつ活発化を進めることが望ましい。

3. 党組織

(a) 社民連組織のあり方
 “政党という組織はいかにあるべきか”という問題は、その政治理念、期待する支持基盤の性格とも関連して深く考えられなくてはならない。社民連は発足当初から、共産党や協会派に見られるような“民主集中制”という名の中央統制型の政党組織論はとらず、“分権・自治・連合”を自らの組織理念としてゆこうと決意し、その方向で試行錯誤を続けてきた。

 つまり社民連はまだ、しっかりした地方組織を全国にわたって作り得ていないため、一部地方組織においては、会員や支持者の把握が不十分であり、会員並びに機関紙購読者の維持拡大が困難になるという問題を生じてきた。

 こうした経験を踏まえ、候補者選びや地域活動などに関する意思決定については、分権と自治の原則を貫きつつ、会員名簿の把握、会費納入、機関紙送付等の組織管理については、地方組織が確立しているところでは都道府県社民連、組織が確立されていない地方では本部において行う。

(b) これまでの会員名簿及び会費についての取扱い
 現在、社民連会員の名簿は、入会書が全国本部に送付されてきたものなど、全国本部に把握されているものもあるが、一部では、各都道府県社民連にとどまっており、全国本部ではその人数の報告を受けているにすぎない。また会費についても二〇%の全国本部納入分を各地方社民連が、“分担金”という形で一括納入している。

 そこで、未納の分担金については地域社民連と調整し、納入を促す。また次回大会の代議員の数を各都道府県一名に加えて、結成以来の分担金納入総額に比例する代議員を認めるものとする。

(c) 大会後の会員名簿と会費納入について
 会員名簿については、都道府県組織と本部において確実に掌握しなければならない。また全国社民連の会費は、規約改正をおこない、年額千円とする。

 県や市町村に組織が全く存在しない場合、会費は地域組織による参加の場もないわけであるから、全国社民連へ納入する。この額については、この地域における組織、活動資金の面も配慮し別途定める。

4. 財 政

(a) 財 政
 専従を有する事務局を設け、機関紙を発行し、政治活動、選挙準備を進めるには、全党的、財政的裏付けがなくてはならない。同時に、政治と金の関係は、扱いを誤れば、政治生命自体に悪影響を及ぼす。政治資金規正法等の法律に違反しないことはもちろん、金の出所、扱いについては深い配慮を必要とする。

 社民連の場合、資金は潤沢とは言えず、そこで比較的少額の資金を一種の再生産につながるように、できるだけ有効に使用することが特に重要である。

(b) 実 情
 これまで経常経費は、国会議員の立法調査費供出分、分担金、事業収入等でまかなわれてきた。最近は分担金が極度に減少している。選挙時の臨時費用は、パーティー等による資金集めによっていた。

(c) 今後の方針
・選挙準備のため、全党で財政確立の体制を整える。
・機関紙会計は分離し独立採算をとる。
・全国本部の経常経費は、会費及び国会議員団の立法調査費供出分によってまかなう。
・パーティーや有料ティーチインや出版物の販売などにより、事業収益をあげ、新人候補等へのテコ入れを可能とする選挙資金確保を図る。

5. 全国本部体制

(a) 全国本部の役割
 全国本部は社民連の対外的窓口であると同時に、社民連の支持者、会員、本部役員などの間の情報交流のセンターであり、組織の維持管理や政策活動の拠点である。

(b) これまでの問題点
 結成以来、大会や選挙準備などに追われ、実務的責任体制が十分確立しないまま進められてきた。また書記の待遇についても、これまで明確な基準がないままできている。

(c) これからの方針
 執行部の指導と責任体制を整える。
 書記局活動の責任体制を確立する。
 国会議員秘書団の党務に対する協力体制を確立する。
 書記の待遇についての基準を決める。
 機能的な充実をはかるため、事務所の移転を進める。

6. 選 挙

(a) 選挙の位置づけ
 政党にとって、選挙は党勢を拡大し、政権をめざす最大の戦いである。日常の活動の総決算が選挙で問われるわけであるが、同時に、各種選挙の時期の把握、選挙区の特性の研究、そして候補者になり得る人物の物色を常におこたってはならない。

 新自由クラブが前回の壊滅的敗北にもかかわらず、今回衆議院で再度二ケタ当選を果たしたのは、何にもまして「戦える候補者が存在した」ということである。地方選は確実に当選を図り、各級選挙で新人を立てる場合、一、二度落ちてもがんばる覚悟の候補者を見つけ出し、特に参議院選は、知名度、支持団体、他党との協力関係を配慮することが重要である。

(b) 選挙準備の取り組み
 社民連が新たに伸びる可能性の多くは都市部にある。特に社会党が、都市部における地域運動では急激に力を弱めており、労働組合員の意識の多様化により壊滅状況に追いこまれつつある現実を見れば、われわれ社民連が新しい都市型の運動論に基づいて都市部から根を張ることの重要性は大きい。

 そこで都市部を中心に重点地区を選択し、候補者の物色を意識的に行うことが重要である。

(c) 二ケタ議席をめざす選挙闘争力を
 われわれが二ケタ議席を得ることに成功すれば、革新再編、連合、政治転換を一挙にゆり動かすことができる。

 今度のダブル選挙での菅直人をはじめとする新人候補の躍進、これは何を意味しているか。そしてあの致命的打撃のなかで、二ケタ議席をとりもどした新自由クラブのたたかいは何を意味しているか。

 われわれが希望と確信をもって、革新再編と幅ひろい連合をめざし、その担い手たる新鮮な使命感にあふれたよき人材を掘りおこし、一定の努力をすれば展望はひらけるということだと考える。

1 当面二ケタをめざす準備行動
(1) 人材は若さ、新鮮さを重視し、行動力、政治的資質、職能的基盤などを検討する。
(2) 公・民・新自クが候補者を立てない選挙区で協力体制が組めるか(全国四十区)。
(3) われわれ社民連が都市インテリ層に潜在支持基盤をもっているという視点

2 重点地区(二ケタをめざす当面の目標)
(1) 東京を中心とする首都圏で六〜七地区
(2) 近畿都市圏で三〜四地区
(3) 九州・四国で二〜三地区
(4) 岡山・愛知・岐阜・静岡などで四地区
(5) 東北・北海道などで二〜三地区
(6) その他二〜三地区
   計十九〜二十五地区

3 都議選をはじめとする地方選に集中
 次期統一地方選は、次の参院選の直前、その前後に総選挙が想定されるが、二ケタヘの道は、地方選の前進をかちとることで大きくひらける。当面、明年都議選をはじめ、随時行われる地方選に、見逃すことなく社民連らしい候補者を立て、社民連らしい闘い方を展開し、着実に、精力的にポイントを重ねることに努める。

 (小委員長・阿部昭吾)


1980年

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