1983年 ’83参議院選挙

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三つの重点公約と七つの政策

 新自由クラブと社会民主連合の両党は、日本の政治を根本から変革することをめざす新しい政党です。両党はこれまで衆議院で院内統一会派を組むなどさまざまな協力関係を作ってきました。

 政権が一つの政党から他の政党に移らなくなってからずいぶんの年月がたちました。政権交代がないことは、国民の不幸です。これは、次のとおりの日本の政治の現状をみると明らかです。

 政治が大変に汚れました。政治と金のみにくい結びつきは、目をおおうばかり。国民は政治に不信感を強めています。

 特定の組織や集団のおもわくで政治が動かされ、また政党の立場が先行して争いのための争いになり、一般の市民の常識や生活の実感が無視されつづけています。

 日本は、あらゆる分野で大きな壁につきあたっているのに、政治は惰性に流れ、未来を展望していま必要なことを大胆に実行していく能力を失っています。

 このような不毛な対決の政治をおわりにし、二十一世紀をめざした新しい政治を作るため、新自由クラブと社会民主連合は、小異を捨てて大同につきます。政権を担う能力を持ったもうひとつの勢力を作る先がけとして、利権の政治をおわりにして幅広い市民の政治を作り、軍縮と緑の世界を実現するために、今般の参議院選挙を一致してたたかいます。

 こうして、「新自由クラブ民主連合」は生まれました。

 国民のみなさんに、つぎのことをお約束します。

  三つの重点公約

 政治倫理の確立
 国民の政治離れの原因は、現在の政治に対する信頼感の欠如にあります。政治倫理を確立し、国民の信頼を回復することが最も緊要な政治課題となっています。

 私たち両党はともに、立党以来“腐敗からの決別”を訴え、また、両党首を先頭に全国遊説キャンペーンの行動を展開するなど、政界の浄化に全力を尽くしてきました。今こそ金権・腐敗の政治と決別し、誰もが納得し理解できる政治を取り戻さなければなりません。

 政治倫理の確立と金がかかる政治を改革するため、情報公開法の制定、政治資金規正法の改正などを積極的に推進するとともに、政党の公的性格を明確にする法制度を検討するなど、国民に身近でわかりやすい政治を実現し、政治に対する信頼の回復に全力をあげます。

 行政改革の断行
 活力ある自由社会を建設するために何よりも重要なことは、市民の主体的な参加により、簡素で効率的な政府を確立することです。私たちは、行政改革の断行を一貫して主張してきました。硬直化した行政機構のムダを省き、老朽化した諸制度を刷新して、新しい時代の新しい行政需要に対応した政府を確立しなければなりません。

 官業はあくまで民業の補完的役割との考えから官民の役割分担を明確にし、住民に密着した行政こそ本来の行政との考えから地方分権を確立し、さらに、すべての国民に公平で公正な行政サービスを提供していきます。

 国鉄経営の民営化と合理化、健保の抜本的改革、食管の見直しなど三Kを中心とする根本的年制度・政策の改革と権限と財源の思い切った自治体移譲、省庁・特殊法人等の統廃合、巨額な補助金の整理、公務員定数の削減などを断行します。

 行政改革の断行には、政治が率先して自らの改革を進めることも必要です。私たちは、行き過ぎた国会議員の特典を是正するなど国会改革に取り組むと同時に、国会議員の定数不均衡を是正するとともに、定数の削減を図ります。

 総論賛成各論反対の動きを封じることが大切です。臨時行政調査会の基本的立場である「増税なき財政再建」路線を堅持して、最低限、その答申を完全に実施するとともに、今後も引き続き徹底した行政改革に取り組みます。

 教育立国の推進
 日本の将来は究極のところ教育の成果にかかっています。正しい教育によって情操豊かな、市民的徳性を備えた、自立した精神をもった個人を育て、その個人が連帯し合ってこそ、日本の未来をきり拓くことができます。

 教育を取り巻く課題は山積みです。まずは六・三・三・四学制を改革し、時代の流れに適した、ゆとりある学制を確立しなければなりません。さらに、偏差値教育の改革、校内暴力・非行問題の解決は緊急の課題です。社会・家庭教育を整備充実し、学校教育に勤労・ボランティア体験を導入するなど、子供達に正しい社会観とバランスのとれた情操を育みます。

 また、教員の資質向上のため任用・研修制度を改革し、義務教育課程のカリキュラムの見直しを行います。大学入試制度を改革し、育英奨学事業を整備・充実し、社会人入学などにより大学を開放し、生涯教育充実、伝統文化、芸術文化の保護・育成を図ります。

  七つの政策

 軍縮と平和外交の促進
 現在、地球上には全人類を十回以上殺せる量の核兵器が存在しています。また米ソを中心とする軍拡競争も歯止めなく続いています。

 私たちは、今こそ人類滅亡の危機を回避するために核軍縮を最優先課題として取り組まなければなりません。真の国際平和を達成するために、平和憲法を遵守し、最も重要な国是である“非核三原則”を不動のものとし、軍縮サミットを提唱するなど、国際的軍縮を積極的に推進していきます。

 世界経済の一割を占めるわが国の国際的責任を自覚し、軍縮を実効あるものにするためにも、積極的な平和外交をおし進め、緊張緩和をめざします。また、関係各国との信頼関係を強化し、相互理解・協調を深めていきます。

 環境の保全
 緑の環境を守ることは軍縮問題とともに国際的課題であり、緊急な問題です。緑は、水資源の涵養、大気汚染の浄化、また私たちに憩いの場を提供するなど計り知れない恩恵をもたらしてきました。人類の生存と安全を守るため、地球的視野から自然破壊の現状を考え、緯の環境の育成に努めなければなりません。公害先進国であるわが国によせる諸外国の期待は大きなものがあります。

 私たちは、環境アセスメントや湖沼法の制定を積極的に推進し、都市の緑の育成、山村の自然環境の保全など国土の環境整備を図ることはもとより、地球的規模の環境問題に積極的に取り組みます。

 また、緑の環境を守ることは、生活の仕方の問題でもあります。合成洗剤、食品添加物、有機農法などの問題にも積極的に取り組み、リサイクル社会をめざします。

 減税の実現と増税阻止
 六年連続の課税最低限の据え置きは、国民の税負担を重くするとともに、課税の不公平を拡大していきます。税収実績から明らかなように、所得税の実質負担増は、源泉所得税の対象者である給与所得者に集中しています。総合課税をより徹底し、公平の観点から所得税体系を抜本的に見直すとともに、大型の所得税減税を今年中に実施します。

 増税は、国民負担を増加させるだけでなく、不要不急の無駄な経費を温存させることにもつながります。増税を阻止することに全力をあげます。

 福祉社会の実現
 福祉の充実は、政治の根本的課題です。私たちは、社会的連常による活力ある福祉社会の建設に積極的に取り組んできました。本当に福祉を必要としている人々にこそ手厚い福祉施策を保障することが、今、求められています。

 高齢化社会を迎えた現在、年金、医療など今までの制度の延長では、矛盾や不合理を増長させるばかりで国民生活の向上にはつながりません。

 私たちは、老人福祉、母子家庭福祉などへのきめ細かな対策の充実、難病対策、障害者福祉への徹底した取り組み、老後保障としての年金制度一元化の推進と、医の倫理や薬価基準の問題を抱える医療保障の見直しを図ります。各種の社会保障制度を相互に連関させた総合的で安定した福祉システムの確立に努力し、縦割の福祉行政の弊害を改めます。

 活力ある中小企業の育成
 中小企業が健全に活動することは、わが国の経済社会の発展にとって不可欠の条件です。この中小企業を取り巻く不況を一掃し、新たな発展・繁栄をはかるため、産業構造の転換・消費性向の変化等に対応した中小企業政策を確立します。

 機動性のある景気対策によって、中小企業の安定成長の条件を確保し、大企業と競争条件が実質的に平等になるように独禁法の運用の強化、信用保障制度、政策金融の充実を図ります。

 また、投資減税を実効あるものに改革し、その他の税制についても中小企業の実態に配慮したものに改めていきます。

 さらに、地域の特性に根差した地場産業を育成し、地方の伝統工芸、特産品の保存と産業としての基盤の確立に努めます。

 高生産性農業の推進
 食糧・農業政策の基本は、国民が必要とする良質な食糧を、量的にも価格的にも安定的に供給し、同時に、農業従事者が安心して農業を営む環境をつくることにあります。惰性を断ち二・二世紀を展望した高生産性農業を推進します。そのためには、農政もまた、各種の制度を相互に連関させた総合的システムの確立が必要です。

 農業の育成は、すべての国民の生活環境の保全の問題でもあります。緑と水を守るという視点も重要です。

 わが国の将来にとって死活問題ともいえる食糧の自給率を高め、米を中心とした農業から、麦、大豆、飼料作物をも等しく重視した農業に転換します。経営規模を拡大し、公共事業の重点を食糧の生産基・酪強化に置き、農業技術開発をおし進め農業の収益性を高めます。わが国漁業の発展を図るため、強力な漁業外交を推進し、沿岸漁場整備開発計画を大幅に手直しするなど積極的な施纂を展開します。

 また、国土保全と森林資源の確保の両面から林業を充実させていきます。

 快適な居住環境の整備
 今後の住宅政策の基本方向は、国民の多様な要求をみたす良質で低簾な住宅供給と、緑とゆとりのある居住環境の創造にあ.ります。

 量的拡大主義を転換し、質と居住環境を重視した総合的な住宅政策を積極的におし進めます。三世代住宅など家族構成に合わせた住宅の供給を推進します。下水道の整備、車道・自転車道・歩道の分離など衛生や・安全に配慮し、民間の活力と創意を生かした街づくりを図ります。土地の持つ公共性に着目した制度改革を進め、地価高騰を抑え、都市中心部の既成市街地でも建物の中高層化を促進し、都市のオープンスペースの拡大を積極的に進め、地震災害などに強い、安心して生活できる快適な住環境を確立します。


1983年

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