2012年9月13日

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児童虐待防止のための民法等の一部改正法の成立(2011年)    

児童虐待による子どもの死亡が67人(2008年度)にのぼり、児童相談所における児童虐待に関する相談件数も全国で4万4千件を超えて(2009年度)過去最多となるなど、近年、児童虐待が深刻な社会問題となっています。
  児童虐待に対しては、平成12年に児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)が制定され、さらに、児童虐待防止法や児童福祉法の数度にわたる改正により、色々な手立てが講じられてきました。しかしながら、私が親権者であるから、あるいは、私の子どもだから世間の者は口を出すなといって親権の不当な行使により子の利益が害される事例が後を立ちません。そこで、親権は子の利益のために行われるべきものであって、親の勝手ではいけないのだということをなんとか法律の形にしたいということで皆さんの英知を集めて、本年3月に、児童虐待の防止を図り、児童の権利利益を擁護するという観点から民法や児童福祉法等を改正する法案を国会に提出しました。そして、この法案は、本年4月に衆議院で、また、5月には参議院で審議され、いずれも委員会も本会議も全会一致で可決され、5月27日に成立しました。

 全ての政策決定というのは、子の利益のために行われなければならないというチルドレン・ファーストという大原則があります。今回の民法改正では、親権というのは、あくまで子の利益のために行使されるべきものなのだということを明示する一方で、父母がそれを踏み外して子の利益を害した場合には、その父母の親権を制限するということも明確にしました。現在の民法には、親権を制限するものとして、親権喪失という制度があるのですが、喪失ではやはり効果が大きすぎて使い勝手が悪く、鶏を割くに牛刀をもってするというようなところがありました。そこで、一定の期間を決めて、親権を停止して、その間に、児童福祉関係の専門の皆さんに活動しやすいようにしてもらうことが、子の福祉に資するのではないかということで、改正法では、家庭裁判所の審判により、2年以内の期間に限って親権を行うことができないようにする親権停止の制度を創設しました。 また、父母の親権が喪失又は停止された結果、親権を行使する人がいなくなったような場合には、未成年後見が始まり、子やその親族等の請求によって家庭裁判所が未成年後見人を選ぶことになります。これまで、未成年後見人は一人に限られ、しかも個人(自然人)しかなれないとされていましたが、未成年後見人となる人の負担感を軽減し、未成年後見人を少しでも引き受けやすくしてもらうという趣旨から、改正法では、家庭裁判所が、複数の未成年後見人を選んだり、法人の未成年後見人を選んだりすることもできるようにしました。このほか、改正法では、離婚をするにあたって面会交流や教育費の分担について取り決めることを促すために、これから離婚をする際に定めるべき事項の例示として明示するとともに、この取決めにあたっては子の利益を最も優先して考慮しなければならないという理念も明らかにしました。

 今回の改正法の成立によって、直ちに児童虐待が少なくなるというほど現実は甘くはなく、やはり、いろいろな関係の皆さんがこうした制度を使いこなして、子の福祉のために頑張る必要があると思っております。また、虐待を予防していくには、やはり社会一般の虐待はいけないという理解、そしてみんなで虐待をなくしていこうという認識、これをどこまで深めていくかということが重要であり、今後、親の子育て意識の涵養に役立てるように、改正法の施行に向けて、いろいろな準備をしていきたいと思っております。

 このほかにも、家族法の分野においては、平成8年に法制審議会から答申された選択的夫婦別氏制度の導入等の課題があります。私は、これらはやはり必要なことだと思っておりますので、さまざまな御意見があることを踏まえながら、引き続き検討してまいりたいと思います。

 今後とも、皆様のご支援をどうぞよろしくお願い申しあげます。


2012年9月13日

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