平成14年2月7日 >>会議録

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第154回通常国会代表質問原稿

民主党・新緑風会   江田五月

おはようございます。私は、民主党・新緑風会を代表して、小泉首相に対し、質問と提案をします。

(はじめに)
小泉内閣の支持率は、一気に急落しました。小泉首相、あなたは先の外相らの更迭につき、「誤算だった」と言われましたね。何が「誤算」だったのでしょう。あなたは、田中真紀子外相を更迭しても、支持率にさほど影響はないと思っておられた。ところが、何と30ポイントもの下落。これは、あなたにとって予期せざる出来事だった。そこで「誤算」。そうですね。まず、あなたの感想をお尋ねします。

(国民の期待への裏切り)
小泉さん、あなたは、先日までの高い内閣支持率の理由は何だとお考えですか。私は、やはり国民は政治に何かを期待しているのだと思います。今のままで将来がうまく行くとはとても思えない。何とか変えて欲しい。小泉さんという人は、「変人」らしいが、それでも目は国民の方を向いている。期待してみようというわけです。しかしあなたは国民の期待を裏切った。少なくとも、国民にはそう写った。そこで、思わざる支持率の下落となった。原因はそこですね。お答え下さい。

(田中外相の更迭)
田中真紀子外務大臣は本気で外務省改革をしようとしていました。あなたが先日、本院予算委員会でおっしゃったとおり、外務省は特定の政治家の言うことを気にし過ぎる。それを田中真紀子さんは変えようとした。国民は田中真紀子さんのこの姿勢を応援していた。しかしあなたは、その田中真紀子さんの首を切った。これは三方一両損ではありません。非のある2人と一緒に、正しいことをした人まで首を切った。理非曲直が正されていないのです。正義に反するやり方です。しかも事実隠蔽なのです。これでは、国民があなたを信頼できるはずがありません。しかも小泉さん、あなたは国民に、今までとは違うぞと期待を持たせていただけに、余計にこの裏切りは罪が深い。あなたは、そのことがいかに国民に失望を与えるか、考えていなかった。この瞬間、あなたの目線は、国民から離れて、永田町の派閥政治家や霞ヶ関の官僚の方に移っていた。これでは小泉政治も、結局は旧来型の自民党政治のひとつに過ぎない。国民はそう思ったのではありませんか。伺います。

(国会の混乱は口実)
小泉さん、あなたは、3人を辞めさせたのは、国会の混乱を収めるためと言われますが、それはあなたの口実です。参議院では私たち民主党をはじめ野党は、予算委員会出席方針を固めて、質問の準備をしていたのですよ。それに私たち野党は、今回のNGO参加問題で正しい行動をとった田中真紀子さんの更迭など全く求めていません。あなたには、どういう情報が入っていたのですか。お尋ねします。もともと田中真紀子さんを更迭しようと、機を伺っていた人たちがいて、国会を混乱させ、これを利用したのではありませんか。あなたも、そのことを知りながら、この機会に乗じて、田中真紀子さんを辞めさせたのではありませんか。答えてください。

(更迭すべきは武部農水相)
あなたは大きな間違いを犯しました。今回更迭すべきだったのは、特定の政治家の横槍を排除して、アフガン支援会議へのNGOの出席を決めた田中真紀子さんではなく、BSE、つまり狂牛病対策の失敗で国民に2000億円もの損害を与え、国民の怨嗟の的になっている武部農水大臣なのではありませんか。目線を国民の方に向け直す気はありませんか。お尋ねします。

(日本の未来について)
さて、昨年は新世紀のスタートでした。しかし、祝福されたスタートとはとても言えません。逆ですね。世界は9月11日の同時多発テロとアフガン空爆。これをきっかけに、世界各地に緊張が広がっています。国内も、不良債権とデフレ、心の荒廃。特に子どもたちが危ない。大変です。

何より大変なことは、世界も日本も、人々が理想や目標を見失っていることです。日本は特にそうです。勿論、国家目標を一つに定めて、国民総動員で、という時代ではありません。逆です。一人ひとりが自分の夢や理想を持って自分の人生を生きる。それを国も社会も応援する。20世紀型ではない、21世紀らしい理想や目標をみんなが持てるようにしないと、日本も世界も漂流状態になります。行き着く先は、戦争やテロの横行、地球環境の破壊。みんなで協力して社会を作っていく力量を持った「市民」が、いなくなってしまいます。小泉首相、あなたは今、国民にどのような未来を作ろうと呼びかけられますか。

(教育改革)
特に子どもたちに、何を呼びかけられますか。「人づくりなくして国づくりなし」。「教育は未来への先行投資」。ご同意いただけるでしょう。しかし現場は大変なのです。小泉さん、あなたは日本の未来のために、教育をどのように充実させていきますか。奨学金制度はどうしますか、30人学級はどうしますか、伺います。

(将来推計人口)
先日、衝撃的な将来推計人口が発表されました。1人の女性が生涯で産む子どもの数を表す合計特殊出生率が、1・39で長期安定し、日本の人口は2006年をピークに減少を始めて、50年後には今より2500万人以上減るという推計です。これは、日本の未来像を根底から考え直さなければならない、重大な数字だと思います。小泉さん、あなたはこの推計をどのように受け止め、どのように日本の未来像を展望されますか。お答え下さい。

(政治とカネ)
国民に理想や目標を持とうと呼びかけるのは、政治です。政治にしかできない仕事です。しかし、その政治を、国民が信頼しなければ、何を言っても聞く耳を持って貰えません。政治を信頼できないことは、国民の不幸です。しかし、政治の側が手を拱いていて、国民に信頼してくれと言っても、無理というもの。政治の側から、身を正さなければなりません。そこでお尋ねします。あっせん利得罪の処罰対象に、口利き行為を行って利得を得ようとした全ての私設秘書を加えましょう。ずばりお答え下さい。

(ブッシュ演説)
さて私は、やはり一番大切なことは、世界の平和だと思います。もちろん、平和だけが私たちの課題のすべてではありません。しかし、平和がなければ、すべてはありません。昨年を表す漢字が「戦」、戦争の戦だったことは、よく知られています。今年も「戦」ではいけません。そこでお尋ねします。先日、アメリカのブッシュ大統領が、一般教書演説をし、イラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」と名指しで非難しました。これは、世界中に波紋を広げています。ところが小泉さん、あなたの施政方針演説では、このことについては何も触れられていません。それどころか、日米の「戦略対話の強化」を強調しておられます。これでは、日本はブッシュ大統領の路線に追随するというメッセージを、世界に発してしまうことになります。このことだけでなく、テロ対策でも経済・金融政策でも、小泉内閣はアメリカ一辺倒、つまりアメリカの言うことは何でもOKだという批判があります。イランは、日本、アメリカ、EU、サウジアラビアが共同議長をつとめたアフガン復興会議の参加国ではありませんか。そのイランをあなたは敵視するのですか。答えてください。

北朝鮮については、韓国の金大中大統領がいわゆる太陽政策で対話の努力をしています。そのことを尊重すべきではないですか。ブッシュ大統領の一方的な敵視政策は、あなたが演説で2度も触れられたワールドカップ・サッカー大会にも悪影響を及ぼします。そうは思いませんか。あなたは近々ブッシュ大統領にお会いになるのですから、直接、「悪の枢軸」という敵視政策・戦争政策をたしなめてください。いかがですか、はっきりお答え下さい。

(集団安全保障)
昨年の同時多発テロを目の当たりにして、私たちは、この地球上からテロを一掃するには、国際社会が一致協力しなければならないと決意しました。私たち民主党も、激しい党内議論を経て、戦時に初めて自衛隊を海外に派遣することに同意しました。国際緊張の激化は、私たちにとって大変なピンチですが、ピンチはチャンス。今こそ国際社会は、テロや紛争を戦争によらずに解決するシステムを築くための大きな一歩を踏み出すときだと思います。日本は何が出来るか。私は以前から、PKOや将来の国連軍や国連警察軍といった、国連を中心にした集団安全保障の活動には、日本も自衛隊とは別組織の待機部隊を作って、国際公務員として積極的に参加すべきだと主張しています。小泉首相は、どうお考えですか、伺います。また、国際安全保障については、日本はあくまで国連中心主義で行くことが基本だと思いますが、いかがですか。伺います。

(国際刑事裁判所規程)
国連中心の国際秩序の構築のために、具体的提案があります。国際刑事裁判所の創設です。そのための国際規程の批准が昨年秋から注目を浴び、秋だけでイギリスをはじめ9カ国が批准し、批准は47カ国、署名は139カ国となりました。日本はこの国際規程の提案国なのに、未だに署名も批准もしていません。何故ですか、お答え下さい。

(東ティモール・NGO・ペシャワール会)
もちろん私は、軍事力で出来ることは小さいと思っています。アフガン復興や東ティモール建国支援では、特にNGOの力が最大限発揮されるように、政府が支援すべきだと思います。アフガンの5億ドルと比べると、東ティモールの建国支援は今のところゼロ。真実和解委員会のための53万ドルを決めただけですね。どうしますか、伺います。

アフガンや東ティモールの陰にかくれて、自分のところの援助が大きく削減されるのではないかと、不安に思うアジア・アフリカの国がたくさんあります。ODAは、一律にカットではなく、メリハリをつけて、これらの国々の不安を招かないようにすべきだと思いますが、いかがですか。ちなみに、あなたの施政方針演説には、NGOという言葉が一度も出て来ませんでしたね。何故ですか。

NGOについては、今回は政府がお金を出し政府と協力して活動するNGOがクローズアップされましたが、本来は、政府とは全く別に、独立して活動している団体が多いのです。アフガンでは、17年にわたる中村哲医師が中心のペシャワール会がよく知られています。ご存じでしょう。小泉さんは、その活動をどのようにご覧になりますか。緒方貞子さんと並んで、中村医師とペシャワール会も、日本の宝だと思いますよ。お答え下さい。

(東アジア諸国との関係)
平和な国際秩序を築くためには、なんと言っても東アジア諸国との友好関係が何より大切です。しかし日本はこの諸国の人々に対し、先の戦争で大変な痛手を負わせています。だから、友好関係を築くために、日本がしなければならないこと、また日本がしてはならないことがあるのです。小泉さん、あなたは今年の靖国神社参拝をどうするつもりですか、伺います。誰もが気持ち良く参拝できる新たな国立の慰霊施設をつくることに、今年前半にも結論を出しましょう。また、歴史教科書の共同研究は、いつスタートさせるのですか。この3点について具体的にお答え下さい。

(京都議定書)
今後100年で、最大5・8度も気温が上昇し、異常気象も増えると、地球温暖化が懸念されています。昨年11月のCOP7で、やっと京都議定書の細かなルールにつき合意が出来ました。日本は、COP3の議長国としての一層のイニシアティブが、世界から求められています。リオから10年、今年の9月のヨハネスブルグ・サミットで、京都議定書発効まで持って行くには、6月上旬をめどとしたわが国の締結が欠かせません。あなたの決意をお伺いします。

(言葉だけの構造改革)
小泉政治の目玉は、言うまでもなく「構造改革」です。自民党を壊しても、やり抜くと言われました。しかし、小泉さん、あなたに本当にこれをやり遂げる決意があるのですか。あなたは就任時の所信表明演説では、「構造改革なくして、景気回復なし」と言っておられました。最近は、「改革なくして成長なし」ですね。この看板の書き換えには、何か意味があるのですか。前の看板は下ろされたのですか、お答え下さい。

あなたの決意に大きなクウェスチョンマークがついたのが、先日の更迭劇です。昨年秋には、道路関係4公団改革の不徹底もありました。道路公団については、昨年末に13の工事発注を中止した件につき、自民党橋本派の有力幹部の「鶴の一声」で中止が撤回されたと言われています。あなたは、この事実関係について、どのようにお考えですか。道路公団や国土交通省も、このような政治家の干渉をはねつけるべきだとは思われませんか。一般論でなく、この件につき、はっきりとお答え下さい。特殊法人改革は、163の特殊法人・認可法人の内、大半が結局は看板のかけ替えです。公務員制度でも、民主党の提出した天下り禁止法案は、与党の抵抗で店晒し。小泉さん、あなたは天下り禁止をやる気があるのかないのか、はっきりさせて下さい。道路特定財源の一般財源化は、施政方針演説の中では全く触れられていません。どこへ行ったのでしょう。これもきちんと答えてください。先日の更迭劇で、あれっと気がつきよく見ると、実は改革は言葉だけ。実行は先送りのオンパレードなのです。

(「改革なくして成長なし」)
私たちは、本気で構造改革を成し遂げる決意です。しかし構造改革は、当面はデフレ効果を伴うことも明らかです。ですから、構造改革なくして景気回復なしというのは、論理的に繋がりません。小泉首相、これは認めますか、伺います。

私たちは、構造改革と同時に、デフレを阻止し経済を安定成長に軟着陸させるための経済政策がぜひとも必要だと思います。改革しさえすれば成長するというほど、私たちの社会のモデルは単純ではありません。改革と経済政策と、政策目標は2つ必要なのです。政策手法を多様に組み合わせ、息長く懐の深いいきいきとした政策運営が必要なのです。しかし小泉さん、あなたの政策手法は、経済無策です。株価下落は、市場の悲鳴なのです。あなたはこの声を聞く気がないのですか。一本調子の政策手法では、政治の可能性はひからびてしまいます。多くの手法を総動員することによって、政治は柔軟性と多様性を備えた豊かな可能性を取り戻せるのです。あなたはどうお考えですか。

(国民の痛み)
昨年、あなたの言葉でもっとも印象に残ったもののひとつが、夏場所優勝した横綱貴の花に優勝カップを授与する際のものでした。「痛みに耐えて、よく頑張った。感動した。」でしたね。その貴の花関は、今なお、土俵に上がれずにリハビリにつとめています。痛みに耐えて頑張るだけがよいのではありません。あなたのデフレに対する経済無策で国民の痛みは限界に達しています。ホームレスは、大都市だけの話ではありません。今や地方都市でも、明日はホームレスかという恐怖が広がり、そこにつけ込む新手の商法まで出てきているのです。その一方で、狂牛病対策失敗の最大の責任者である前農水事務次官は、8900万円の退職金満額支給でお構いなし。高級官僚には甘く、国民にだけ痛みを押しつけるのはおかしいとは思いませんか。答えてください。

民主党は、ホームレス自立支援法案を提出し、継続審議になっています。これには与党の中にも賛同者がたくさんおられます。ご存じですね。賛成してくださいますか、伺います。

あなたは国民に対し、就任早々「改革に立ち向かう決意」を、昨年秋の臨時国会では「変化を恐れない勇気」を、そして改革の痛みが現実のものとなりつつある今、「希望を決して失わない強さ」を求められました。そしてついには、戦後の国土の荒廃に立ち向かった先人たちのように、「雄々しく」立ち向かえと鞭を入れられます。人は雄だけではありませんよ。円安、株安、債券安。週明けに、あなたの言葉を聞いた市場の反応です。失業率はとうとう5・6%。毎日100人もの人が自殺しています。これにあなたの支持率急落を加えて、「小泉スパイラル」と言われています。国民は貴の花ほど痛みに対し体を鍛えていません。痛みを和らげる方策を何故考えないのですか。伺います。

(デフレ阻止)
小泉さん、あなたは経済情勢は厳しいと予想し、デフレ阻止に取り組むと言われました。しかしあなたの処方箋は、予算の切れ目なき執行のほかは、「細心の注意」「日銀と一致協力」「強い決意」くらいしか見あたりません。そして他方で、改革断行を強調されます。注意深い金融政策で円安誘導さえしておれば、本当にデフレ阻止が出来ますか。国民は不安です。私はこの際、与野党共同で「デフレ阻止共同宣言」を行い、超党派の「デフレ阻止政策協議会」といったものを設置することを提案したいと思います。あなたはどうお考えでしょうか。

今あなたが取り組んでおられるのは、戦後50年余の努力で築いた繁栄の仕組みが、いささか古く非能率で、新たな発展の障害になっているので、これを壊し更地にしようというものだと思います。しかし、人が住んでいるのに建物を壊しては、居住者はたまりません。雇用政策が大切です。さらに、更地の上に何を作るのか、この国のかたちをどう構想するのかが示されなければなりません。あなたは、「構造改革と経済財政の中期展望」でこれを示したつもりなのでしょう。しかしこれは、具体的処方箋のない言葉の羅列に過ぎず、まさに「絵に描いた餅」です。ムダなダムでなく、緑のダム構想があります。自然破壊の干拓でなく、白砂青松を回復する公共事業もあります。京都議定書に基づく経済社会のあり方は、立派な中期展望になるのです。従来型の延長ではない、新しい発想の中期展望をつくる気はありませんか。伺います。

(雇用政策)
イギリスでは、鉄の宰相・サッチャー夫人でさえ、改革と同時に雇用対策として大規模なセーフティーネットを張っていたといいます。あなたは、製造業や建設業などでの就業者の減少に見合うサービス業での就業者の増加があると言われますが、数字でつじつまが合っていても、実際にハローワークへ行って見て下さい。一緒に行きますか。そこに並んでいる皆さんに、なんと言われますか。明日にも倒産しかねない中小企業の経営者や従業員は、あなたの「万全を期してまいります」という言葉は、空虚に響くだけです。私たち民主党は、4兆円規模の雇用対策を提案しています。不良債権の処理のためには必要不可欠な措置です。この提案をどうお考えですか、伺います。

(ワークシェアリング)
さらに、今後の雇用政策の大きな課題として、ワークシェアリングがあります。これは、単に労働政策だけでなく、社会のあり方、家庭のあり方、人々のライフスタイルの変更に関わる壮大な社会の構造改革という課題です。仕事さえあれば、大黒柱の収入が下がるようなことがあっても、配偶者やお年寄りや子どもたちの収入でこれを補い、世帯としての収入は確保できます。これを嫌々ながら受け入れるのでなく、むしろ全ての人が能力に応じて労働という形で社会参加するのです。さらに、これにより生活時間にゆとりが生まれますから、仕事人間も家庭参加が出来るようになります。

今後、人口減少が予想される日本の経済を大きく成長させることは、全体としては困難な課題かも知れませんが、女性や高齢者の働く機会を増やすことによって、6362万人の就業者数を増やすことは出来るし、生活水準やクオリティー・オブ・ライフの向上は、必ず達成できます。そのためのキーワードは、さまざまな形の労働力が、極力均等に扱われ保護されること、つまり「均等待遇」だと思いますが、小泉首相は、基本的にどのような考え方で、このワークシェアリングという課題に臨まれるのですか。伺います。

(NPO支援税制)
「官から民へ」、「中央から地方へ」という言葉は、お題目だけではいけません。例えば、NPO税制です。福祉システム、文化活動、町づくり、途上国支援などでは、官ではかゆいところに手の届くサービスが提供できません。地域の皆さんのやる気を支援し、地域社会を再構築するためのキーワードが、NPO、特定非営利活動法人なのです。

支援の枠組みとして、税制ははずせません。役所のコントロ−ルを離れ、同時に公的役割をきちんと担うようにするため、政府も野党も、パブリック・サポート・テストを取り入れた具体案を、昨年つくりました。しかし政府案は、実際には利用不可能。私たちはこれを「羊頭狗肉」だと批判し、修正を求めました。あなた方は、NPOの重要性の理解については、一見私たちと同じ立場に立ちながら、あれこれ言って私たちの修正案に耳を貸しませんでした。今、認定NPO法人は僅かの2件。2件ですよ。そう言えば小泉さん、あなたの施政方針演説には、NPOという言葉も、一度も出てきませんでしたね。NPOについての理解がないのではありませんか。多くのNPOが利用しやすい支援税制に改めるつもりはありませんか。伺います。

ついでにひとつ。NPOでもNGOでも、重要なのは政府との信頼関係ではなく、彼らの自主性なのです。ところが先の外相更迭劇では、政府を批判するNGOとは、政府は信頼関係を持てないとの外務省の態度が明らかになりました。あなたは、あなたの政府を批判する団体とは信頼関係を持てないのですか。なぜ、これらの自主活動までコントロールしたがるのですか。そんなにご自分たちのやり方に、自信があるのですか。市民の知恵や力を信頼できないのですか。伺います。

(地方財源)
次に、地方のことを伺います。小泉内閣のもとで、すさまじい中央集権と地方破壊が進んでいます。今や地方自治体の財政は、軒並み破綻寸前です。それでもなお地方自治体によっては、財政改革の取り組みよりも、補助金に手を伸ばすことに、精力を使っています。補助金に自己資金を足して箱ものを作り、これが市民にとって魅力皆無で、見向きもされず金食い虫になって困り果て、客寄せのためと称して、次の箱もの作りのために補助金を求めるという、悪循環にはまりこむのです。このくらいの知恵しか出せないのは、地方の財政権限が弱いからなのです。思い切って財源移管をしては如何ですか。また私たち民主党は、地方財源強化の第一歩として、補助金を一括して地方自治体の一般財源とする「一括交付金制度」を提案しています。小泉さんはこれを実現する考えがありますか。伺います。

(地域金融円滑化法案)
地域経済や地域金融をどうするつもりですか。地域の経済は、もともと不況のところに、目前に迫ったペイオフに備え、地域金融機関に対し不良債権処理を強く求めていますから、本来中小企業を支えるはずの金融機関の融資が激減し、地域経済は危機的状況です。地域の赤字企業を黒字にするための「地域企業再生法」といったものが必要だと私は思いますが、小泉さん、あなたはどうお考えですか。また、地域の中小企業を支えている地域金融機関が、地域の実情に応じた役割を正しく果たせるようにするため、私たち民主党は、昨年与党の反対で廃案となった地域金融円滑化法案、略称金融アセスメント法案を、昨日再び本院に提出しました。既に全国で中小企業家を中心に50万人もの署名が集まり、211の自治体で意見書が採択されています。小泉さん、あなたも、多くの国民の声を無視するのでなく、ぜひこの法案の成立にご協力下さい。答弁を求めます。

(官僚政治・機密費)
小泉さん、あなたは口では官僚に厳しいことを言っておられますが、実は小泉政治は官僚に大甘の政治で、もっとはっきり言えば、実は官僚政治ではありませんか。税制改革も、結局は財務省主導の増税策ではないのでしょうか。少なくともプライマリーバランスの赤字解消は、歳出削減で行うべきではありませんか。お答え下さい。前農水次官への退職金満額支給で、消費者や畜産農家の怒りは頂点に達しています。外務省については、あなたは体制を一新したと言われますが、それは見せかけで、田中真紀子さんも手こずった機密費上納問題に完全に蓋をし、改革放棄をしたのではありませんか。そういえば、今回のあなたの施政方針演説から「聖域なき構造改革」という言葉が消えました。やはり機密費問題は、あなたにとって聖域だったのでしょうか。外務省と内閣官房の機密費問題の真相解明は、もうお終いではないでしょうね。はっきりとお答え下さい。

(農業)
今、日本の農業は危機に瀕しています。長く食の安全の問題を放棄し、農薬漬けも平気、季節無視も平気。とにかく収量優先。農家は、土地改良と機械化で借金に追われています。しかし大規模化も機械化も中途半端で、何より後継者がいません。気がつけば農業は崩壊寸前。農業土木偏重の従来型農業政策をやめて、所得政策中心の政策体系に移行し、環境や国土保全などの、農林業の多面的機能を重視した政策を進めるときが来ているのではありませんか。伺います。

(食の安全)
食の安全のことになると、やはりBSEの失敗から学ばなければなりません。私はこの際、農林水産省と厚生労働省に分かれている「食の安全行政」を統合して、内閣府に、アメリカのFDA(連邦食品・医薬品局)やEUの「食品安全庁」のような「食の安全」のための包括的行政機関を作るべきだと思いますが、小泉さん、あなたはどうお考えですか。さらに、食の安全を害する行為を厳しく罰し、消費者本位の食の安全行政を実現するため、JAS法と食品衛生法の抜本改正を行うべきだと思いますが、お考えを伺います。

(司法制度改革)
司法制度改革について伺います。施政方針演説の中に、コンパクトに言及があります。私たち民主党も、「市民が主役の司法」の実現のため、これまで司法制度改革の提言もし、審議会意見書に賛意を表してきました。司法改革与党のつもりです。小泉さん、あなたも「市民が主役の司法」とか「国民主権の下にある司法」という理念に賛同していただけますね、伺います。しかし、あなたはあまりご存じないでしょうが、問題はこれから。ここでも抵抗勢力はかなり強力なのです。あなたは、司法制度改革推進本部の本部長なのですから、ぜひともリーダーシップを発揮して、本部の活動の情報公開、会議のリアルタイム公開など、プロセスを国民に開かれたものにしてください。さらに、予算措置が必要です。人を養成するのですから、おろそかには出来ません。大丈夫ですか、伺います。

(人権救済制度)
人権救済制度についても、議論の真っ最中です。救済機関の独立性は、国内で、これでよろしいと言うだけでは済みません。パリ原則という国際社会のルールがあります。同じ作るのなら、世界中何処に出しても恥ずかしくないものを作りましょう。私たち民主党は、内閣府に人権委員会をつくることを提案しています。どうお考えですか。

(国民共通番号制)
小泉さん、施政方針演説であなたは、「世界最先端のIT国家」や「電子政府・電子自治体」を実現すると言われました。おおいにけっこうですが、それが「世界最先端の国民管理国家」となってはいけません。今年の8月5日から、すべての国民に11ケタの番号がつきます。小泉さん、あなたは、この国民共通番号制が、個人の自由とプライバシーを侵害しないものだと約束できますか。お答え下さい。

この国民共通番号制には、ジャーナリストの櫻井よしこさん、作曲家の三枝成彰さん、長野県の田中知事、杉並区の山田区長はじめ多くの人々と119の地方自治体が反対しています。総務省は、住民基本台帳の4項目のデータにしか使用しないと言っていますが、経済産業省はじめ各省庁は、すでに拡大利用の研究をはじめています。行政が個人を支配するような、拡大利用を認めてはならないと思いますが、いかがですか。伺います。

(男女共同参画)
昨年末、私の大変尊敬する大先輩・加藤シヅエさんが、104歳で永眠されました。「愛」をテーマに、女性の健康と地位向上のために生涯を捧げられた加藤さんの精神を、私たちはしっかりと引き継いでいく責任があります。

(児童扶養手当)
今国会で政府は、母子家庭に対する児童扶養手当の削減をしようとしています。まさに小泉首相のおっしゃる「痛み」に直撃されている母子家庭を、あなたはさらに狙い打ちしようというのでしょうか。お答え下さい。
働く意欲を増す効果があるなどと言われているようですが、働く意欲があっても、働く場がないのです。病児保育や夜間・休日保育も十分でない日本社会では、子どもの都合によって働き方を左右される一人親世帯は、最も職場から遠ざけられてしまいます。生活保護世帯になってしまうのなら、結果として国庫負担が増すだけだし、労働力はますます封じ込まれるのではないでしょうか。どうお考えですか。

小泉さん、あなたは、女性の涙については差別的な認識をお持ちのようですが、児童扶養手当を削減されて成長権を脅かされる子どもたちの涙についてはどう考えられるのでしょうか。この計画を断念するつもりはないのか、お答え下さい。

(民法改正)
昨年の内閣府の世論調査を受けて、今国会で政府は、選択的夫婦別姓を認める民法改正案の提出を検討しています。女性の人権という観点からも、また、多様な家族にそれぞれのあり方を認め、愛をはぐくむ環境を提供するためにも、民法改正は長年の懸案であり、私たち民主党も、積極的に取り組んできました。現在も私たちが提出した法案が衆参ともに継続中です。

民法改正案を提出しようとする政府に対して、与党の根強い反対があると聞いていますが、この程度の改革もできないようでは、日本を立て直すことなどできないでしょう。断固として法案を提出する決意が、小泉さん、あなたにおありかどうか、伺います。

(DV法)
DV、ドメスティック・バイオレンス、つまり家庭内暴力の被害者の自立支援について伺います。昨年成立したDV法は、主として女性の被害者の保護と加害者の行動制限などについて定めるだけで、被害女性が加害者から逃げた後の生活再建や自立支援については、不充分です。今後、被害者の自己決定を尊重しながら、地域で支援する仕組みを作ることが重要です。特に、地域福祉の観点からの取り組みの強化が必要ですが、小泉さん、あなたはどうお考えですか。

(天皇の政治利用・皇室典範)
ところで小泉内閣総理大臣、あなたは演説の冒頭、愛子内親王のご誕生に言及されました。私も愛子さまの健やかなご成長を楽しみにしています。しかし、最後に昭和天皇の和歌を引用されたのは、ちょっといただけません。あなたはお分かりにならないかも知れませんが、施政方針演説はあなたの政治的意思の表明なのです。そこにまだ影響力の強く残っている天皇の和歌を、あなたのメッセージの説得力を補強するために使うのは、やはり天皇を政治に利用したことになるのです。慎んで下さい。どのように答えられますか。私はこの際、むしろ皇室典範の改正を提言します。女性の天皇を可能にしようではありませんか。お答え下さい。

(最後に)
最後に。小泉さん、あなたは憎めない人だと思います。しかし、抵抗勢力に支えられて、構造改革を行うという絶対矛盾の政権では、あなたの目指すものは、いずれ必ず行き詰まります。もう行き詰まっているとも言えます。あなたの一番いいところは、率直に、思い切って自分の思っていることをはっきり言うところです。行き詰まりが分かれば、どうぞ、恐れずひるまずたじろがず、「もうお手上げだ。代わってくれ。」とおっしゃって下さい。私たちはいつでも代わります。終わります。


2002/02/07 >>会議録

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