ホーム総目次日誌に戻る

司法制度改革審議会
会長 佐藤幸治様

行政訴訟改革について(申し入れ)

2001年4月13日
民主党・司法制度改革WT
座長   江田五月

 日頃貴審議会が、精力的なご審議をに取り組んでおられることに、心から敬意を表します。
 行政訴訟の改革を審議しておられると聞いております。そこで、次のとおりの観点に立ち、行政事件訴訟法の抜本改正に取り組まれるよう、申し入れます。

以上

1.改革の必要性 

 行政に対する司法審査は、国民主権の基本的な柱の一つである。しかし現実には、行政訴訟の原告勝訴率はきわめて低く、この結果は市民感覚と遠くかけ離れており、改革を要する。

 アクセス障害は、まず司法審査が(1)処分でなければ、(2)違法でなければ、できないこと、さらにこれに伴って、(1)管轄、(2)訴えの利益、(3)当事者適格といった数多くの要件が設けられていることにある。

 司法審査を、処分の違法性に限ることとする理由として、3権分立の原則が上げられるが、3権分立だと、必然的に処分の当否は行政の専権となるものではない。国民主権の大原則が、すべての制度の基礎にあることを忘れてはならない。国民主権を阻害するアクセス障害は排除しなければならない。

2.改革のポイント

(1) 処分性要件の排除
 行政行為は、「処分」になって初めて争いうるとされる結果、処分前にかけた準備費用が無駄となるのを回避しようと思えば、行政の指示に従わざるを得なくなる。これは、市民を行政に従属させる制度であり、国民主権と相容れない。行政立法の段階でも訴訟提起を認めた方が合理的である。

(2) 不当処分に対する司法審査の導入
 国民主権の下では、司法と行政が対等なのではなく、少なくとも市民と行政を対等とし、危険負担は行政が負うこととすべきである。そこで、行政訴訟をそのような制度として見直し、訴訟提起に執行遮断効を認め、さらに義務づけ訴訟(prohibition, mandamus)の類型を認めるべきである。

(3) 管轄
 既に情報公開訴訟は、高裁所在地の地方裁判所に管轄を認めている。被告住所地だけでなく、民事訴訟法の管轄の定めを参考にしながら、処分の名宛人の住所地などに管轄を拡大すべきである。

(4) 訴えの利益、当事者適格等
 これらの点についても、国民に訴訟の機会を広く提供するよう、制度改革をしなければならない。

3.改革の方法

(1) 「行政法総論」について
 行政法の基本構造は、行政の優位を大前提とした「行政法総論」の理論に依っているので、取りあえずこれを念頭から外し、国民主権の下では、市民は司法審査の場面でも、少なくとも行政と対等の立場に立つことを大原則とし、これを基礎とした制度を設計する。

(2)行政事件訴訟法改正
 その上で、行政事件訴訟法の改正に取り組む。そのポイントは、(1)処分性の撤廃、(2)処分が不当である場合の司法審査の導入、(3)管轄の拡大、(4)訴えの利益の緩和、(5)当事者適格の緩和等である。

 


ホーム総目次日誌に戻る