2004年2月9日 >>PDFファイル 戻るホーム民主党文書目次

平成16年度 民主党予算案参考資料

1.高速道路原則無料化の解説 
2.一括交付金制度の解説
3.環境税/自動車関係諸税/道路特定財源の解説 
4.一般会計における政府案との比較
5.民主党予算案 主要経費算出内訳
6.省庁別 政府案との比較
7.補論「民権革命による日本再生−民主党による官製経済の打破」

>>平成16年度 民主党予算案


1.高速道路原則無料化の解説

(1)スキーム

○一部大都市地域を除き、高速道路料金を無料化とする。
○日本道路公団、本四連絡橋公団は廃止。首都高速公団、阪神高速公団は別途検討。
○道路関係4公団の債務は、国の一般会計が承継する。
○首都圏、阪神圏の高速道路については、ロードプライシングの考え方を取り入れ、当面は通行料金を徴収する(約0.5兆見込み)。

(2)無料化に伴う財政負担=約1.9兆

  1. 道路4公団からの債務承継(年間1.5兆=国債費の増額)
    ○承継に当たっては、可能な限り低利の借換債に切り替える。但し試算上は、保守的原則より全額を単純に承継したものと仮定
    ○承継する約40兆円は、国債償還60年ルールに則り償還。これによる償還負担は
    ⇒元利償還分 0.6兆 + 利払い 0.9兆 = 1.5兆

  2. 無料化高速道路の管理費用(年間0.4兆=国公共事業費より支出)
    ○現行の4公団管理費用(道路管理費用+一般管理費)は6000億
    ○政府民営化委員会の「意見書(H14.12.6)」に従い、ファミリー企業改革、外注業務における競争条件確保、入札参加資格要件の撤廃等を通じ、管理コストを3割削減し、約4000億円とする。

(3)無料化に対する財政上の対応

○償還財源1.5兆円については、公共事業を中心に歳出全体を抜本的に改める中で、償還に充てる財源を捻出
○管理費用・新たな高速道路建設費用は、道路に関する直轄事業費を維持し(直轄事業全体では3割減)、他の一般道路整備費用を見直す中で、対応する。



2.一括交付金制度の解説

(1)政府案補助金の一括交付金化
 
国から地方への補助金等(平成16年度予算:20.4兆円)及び平成16年度一般財源化分について、以下の改革を行う。

  1. 現在の補助金等のうち、現在のまま維持するもの(2.8兆)
    生活保護等国が引き続き責任を負うべき等一括交付化になじまないものは、個別補助金として継続する

  2. 現在の補助金等のうち、補助金を廃止するもの(3.9兆)
    公共事業関係補助金については、補助制度を廃止し、当該財源は地方に税源移譲する。但し農林水産業に係わる公共事業補助金については継続することとし、下記「一括交付金」に組み替える。

  3. 現在の補助金のうち、一括交付金化するもの(13.7兆)
    上記以外の補助金は、民主党の政策に基づき、5分野に区分した「一括交付金」とする。なお一括交付に伴い、総額で1割の削減を行う。

  4. 「税源移譲予定交付金」の未創設(0.2兆)で、一括交付金化するもの
    税源移譲及び一括交付金の創設を行うことによって、政府の「税源移譲予定交付金」の創設は行わないこととし、当該対象となっている補助金0.2兆については、一括交付金の対象とする。

(2)一括交付金内訳

一括交付金名称 従来の補助金を
一括化した額
(1割削減後) 
その他の事由に
よる増減額
合計
教育 2兆5396億 2兆5396億
社会保障 8兆6617億 8兆6617億
農業等・環境 1兆1660億 1兆1660億
地域経済 558億 558億
その他 1584億 6400億(*1) 7984億
 合計 12兆5815億 6400億 13兆2215億

*1=環境税の導入とあわせて、「自動車重量税暫定税率廃止」「自動車取得税廃止」を実施するため、地方税収が縮小することとなる。当該6400億円は、この減収分の補填額である。



3.環境税/自動車関係諸税/道路特定財源の解説

(1)環境税について

  1. 導入の意義
     地球温暖化を抑制することは、現在の世代に課せられた重大な課題。これを果たすためには、環境税の導入は「税収の使途のグリーン化」「国民の環境意識の向上」「化石燃料の使用抑制・効率化」の観点から有用。

  2. 課税対象・税率・税収
     石炭を含む化石燃料に対して、含有炭素トン当たり3000円(ガソリン1L当たり2円程度)の税率で課税し、約9000億の税収(一部振替分を含む)を見込む。但し他に転換不能な原料炭・ナフサ等の原材料に対しては課税しない。

  3. 税収の使途
     一般財源とするが、導入の目的に配慮し、新エネルギー、省エネの技術開発、設備投資、普及等に優先的配分を行う。

  4. 現行制度との調整
    ○電源開発促進税は、既にその使途の一部が新エネルギーの開発等に充てられていることから、その税率を据え置いたまま1/3程度を環境税に組み替える。従って環境税導入に伴う純増収額は7800億程度となる。

    ○環境税導入によって相対的に原発が有利となることを避けるため、石油税の税率を1/3程度引き下げる。(減収額見込み:1600億程度)

    ○現在の非課税である石炭については、激変緩和措置を設ける。

    ○また温暖化防止に対する企業の取り組みに対し、イギリス、ドイツなど欧州に見られる産業界と政府の協定(最大80%の減免措置)などを参考に、支援する。

(2)自動車関連諸税の整理合理化

  1. 自動車重量税の暫定税率廃止
    自動車重量税の暫定税率を廃止し、本則に戻す(減収見込み:国分=3500億、地方分=1800億)。また従来運用で道路整備財源とされていたが、これも一般財源化を行う。

  2. 自動車取得税の廃止
    消費税と二重課税となっている自動車取得税は廃止する(減収見込み:地方分=4600億)

(3)道路特定財源の一般財源化

 国における特定財源制度(揮発油税、石油ガス税)、地方における特定財源制度(地方道路税、軽油引取税)はいずれも廃止し、すべて一般財源とする。なお上記4税の暫定税率はいずれも維持する。

(参考1)税収見込み
国分  増収           
 減収 
 
環境税創設
自動車重量税暫定税率廃止
石油税率引き下げ
+9000億
▲3500億
▲1600億

国税分差引 +3900億
 
 
地方分  減収 自動車重量税暫定税率廃止
自動車取得税廃止
▲1800億
▲4600億

地方税分減収 ▲6400億


(参考2)環境税収の使途
 環境税創設による税収(9000億程度)は、その創設目的等により、地方の道路整備費用として充当可能な「一括交付金」及び太陽光発電、燃料電池等新エネルギー開発・普及の財源に充てることとする。


4.一般会計における政府案との比較

(一括交付金はそれぞれの経費区分に分類し、内数としている)
事項 民主党案
(兆円)A
政府案
(兆円)B
A−B 差額
カッコ内は増減率
 社会保障関係費 22.3 19.8 2.5(+12%)
 文教・科学振興費 6.2 6.1 0.1(+0.7%)
 国債費 19.1 17.6 1.5(+8.5%)
 恩給関係費 1.1 1.1 0.0
 地方交付税 11.9 15.4 ▲3.4(▲22%)
 地方特例交付金 0.9 1.1 ▲0.2(▲21%)
 防衛関係費 4.8 4.9 ▲0.2(▲3.1%)
 公共事業関係費 3.4 7.8 ▲4.4(▲57%)
 経済協力費 0.6 0.8 ▲0.2(▲3.1%)
 中小企業対策費 0.4 0.2 0.2(+119%)
 エネルギー対策費 0.3 0.5 ▲0.2(▲41%)
 食料安定供給関係費 0.4 0.7 ▲0.3(▲39%)
 産投繰入 0.1 0.1

0.0

 NTT償還 0.4 0.4

0.0

 その他事項 5.0 5.3 ▲0.3(▲6.5%)
 予備費 0.4 0.4

0.0

合計

77.1 82.1 ▲5.0


5.民主党予算案 主要経費別算出内訳

  政府予算額
(億円)
  削減額合計   増加額合計 民主党
予算案
社会保障 19兆
7,970億
一括交付・特殊法人
  1兆3569億
重点項目
  3兆8190億
22兆
2,591億
文教科学 6兆
1,330億
一括交付・特殊法人
    8122億
重点項目・財源補填
    8577億
6兆
1,785億
国債費 17兆
5,685億
   ― 高速無料化
  1兆5000億
19兆
685億
恩給 1兆
1,321億
   ―     ― 1兆
1,321億
地方交付税 15兆
3,886億
税源移譲・一括交付
  3兆6000億
警官増員 
    1600億
11兆
9,486億
特例交付金 1兆
1,048億
税源移譲予定交付金
未創設 2309億
    ―
8,739億
防衛 4兆
9,028億
行政経費節減
    1500億
  4兆
7,529億
公共事業 7兆
8,159億
税源移譲・一括交付
  4兆4279億
    ― 3兆
3,880億
経済協力 7,685億 行政経費節減
    1640億
    ― 6,045億
中小企業 1,737億 特殊法人
     162億
重点項目 
    2236億
3,811億
エネルギー 5,064億 特殊法人  
    2100億
    ― 2,964億
食料安定 6,748億 特殊法人
    2633億
    ― 4,115億
産投繰入 987億     ―     ― 987億
NTT償還 4,168億     ―     ― 4,168億
その他 52,784億 一括交付・行政経費
節減 7875億
重点項目 
    4466億
4兆
9,375億
予備費 3,500億     ―     ― 3,500億
合計 82兆
1,109億
12兆
189億
7兆
69億
77兆
989億


6.省庁別予算 政府案との比較

事項 民主党案(兆円)A
カッコ内はシェア
政府案(兆円)B
カッコ内はシェア
A−B 差額
カッコ内はシェア差
内閣府 5.5(7.0%) 5.6(6.8)% ▲0.2(+0.2%)
総務省 15(19%) 18(22%) ▲3.0(▲2.5%)
法務省 0.6(0.8%) 0.6(0.7%) ▲0.0(+0.0%)
外務省 0.6(0.8%) 0.7(0.9%) ▲0.1(▲0.1%)
財務省 20.7(27%) 19.3(24%) +1.4(+3.3%)
文部科学省 6.0(7.8%) 6.1(7.4%) ▲0.0(+0.4%)
厚生労働省 22.1(29%) 20.2(25%) +1.9(+4.0%)
農水省 2.6(3.4%) 2.8(3.4%) ▲0.1(+0.0%)
経済産業省 0.9(1.1%) 0.9(1.1%) ▲0.0(+0.1%)
国土交通省 2.4(3.1%) 7.2(8.6%) ▲4.8(▲5.7%)
環境省 0.2(0.3%) 0.3(0.4%) ▲0.1(▲0.1%)
その他(国会等) 0.5(0.7%) 0.5(0.7%) ▲0.0(+0.0%)
合計 77.1 82.1 ▲5.0


7.「民権革命による日本再生−民主党による官製経済の打破」
  (補論=中間まとめ)


 民主党は以下の方針に則り大胆な規制改革を進め、「自主自立」の民間主体による経済構造を構築する中で経済再生を実現すると共に、中央省庁の役割を抜本的に改める。

(現状認識)
 現在の日本経済の低迷は、自民党により形成された官製経済の行き詰まりによるものである。FTAなど世界の自由貿易に遅れを取るだけでなく、国内市場にあっては、不透明な官製ルールを嫌気し、海外投資も低く抑えられたままだ。長年にわたる超低金利政策は、金融による際限なきばら撒きと同義で、供給構造改革はおざなりにされたままである。デフレ脱却の鍵ともいうべきサービス分野の規制改革も政官業の厚い壁に阻まれて足踏みを続けている。

1.これまでの規制改革政策の限界

○規制改革の目的を狭義の経済的効果(市場規模○○円のような)に求めてきた。

特に社会的規制の分野で「規制改革で米国流の弱肉強食の競争社会になる」とか「社会福祉を企業の食い物にするな」などの反論を生み、規制改革が進められなかった。

○規制の数をとりあげてそれを減らそうとしてきた。

「無駄な規制はなくすが自分たちの規制は無駄ではない」という「総論賛成・各論反対」が積み重ねられた。

○規制改革を推進する組織に強力な権限がなかった。

総合規制改革会議は、総理の諮問機関(意見を具申するだけ)にすぎず、抵抗する各省庁に対して公開討論などの方法を除いて規制改革を推進させる強制力がなかった。また、規制改革担当の特命大臣も、内閣法上の勧告権は「伝家の宝刀」であるとして、それを行使してこなかった。

民間人のみの審議会の審議は、「特定の利益と結びついているのでは」との批判を生むとともに、実際の法令等の作成過程において官僚の独占を許し「骨抜き」や「やったふり」が横行した。

2.規制改革の新しい視点

○「規制」を、「行政が弱者を保護したり、国民の安全を担保するための公権力の行使」ととらえるのではなく、「社会的・経済的公正を極大化するための行政サービスとしてのルール」としてとらえる。

○したがって、単なる法令の条項や提出書類の様式にとどまらず、行政の執行体制、「官と民の関係」そのものが検討の対象となる。

○また、「規制は公正中立な行政が作り、執行する。民間は、それに従わなければならない」という共同幻想から脱し、ルールの作成自体は民間も関与しながら政治の正当性を得て行い、そのルールの執行はこれまで以上に厳格な倫理性、中立性、透明性を持った行政が行うことを原則とする。(ルール作成を官僚が独占すること、ルールの執行を不透明な裁量で行うことが、規制が既得権益を生む政官業癒着の自民党的政治の根源であった。)

○したがって、制度(ルール)の競争が、「グローバリズム」時代の国際競争の本質であることも踏まえ、多様な主体がルールの作成・改廃に関与できるようにし、国内のよりよきルールの作成競争を生むような環境を作り上げる。

3.規制改革の実施体制

○内閣に「行政サービス改善・民権回復本部」を設置し、特命担当大臣を置く。任命に 当たって総理は、特命担当大臣に対して、必要に応じて各省庁に勧告権を発動すべきことを明確に指示するとともに、総理の代理人(総理の政治的判断の一部を委ねる)として各大臣と調整できること、規制改革に抵抗する局長以上の官僚の更迭を総理に 具申できることを明確にする。本部のメンバーは、総理、官房長官、特命担当大臣、経済財政政策担当大臣、行政改革担当大臣、少数(3〜5人)の民間人。
《政府の全閣僚をメンバーとする「規制改革推進本部」案(重いだけで、実質的な議論ができない本部では、官僚の思い通り)に対するアンチテーゼ》

○事務局として、内閣官房に行政サービス改善・民間回復推進室を設置し、室長として特命担当大臣を補佐する総理補佐官を民間人又は官僚からの公募により登用する。

○事務局員は、各省庁からの公募による官僚を半数、企業、公認会計士、弁護士等の民間人を半数で構成する。

4.具体的政策

 以下を内容とする基本法を直ちに制定し、3.の本部を推進母体として、それぞれの具体的な政策を強力に実行する。

(1)「業法」の全廃による官製市場の開放と行為規制の強化

○事業の許認可は、「役所に認められなければ事業ができない、役所に気に入らないことをやれば事業ができなくなる」という官製市場の社会主義的国家の現れであり、官僚と既得権益にしがみつく政治家の権力の根源となっているため全廃し、安全の確保や公正な取引の確保のための行為規制を強化する。学校法人、医療法人、社会福祉法人といった個別法に基づく「法人」については、廃止も視野にそのあり方を検討する。

○規制の新設、改廃については、各省庁が原案を作成して、本部において決定するものとし、行為規制の執行については、経済的規制については、金融、電気通信、電力・ガスなども含めて公正な取引をチェックする拡大「公正取引委員会」で、安全規制については、原子力、医薬、食品、産業保安、消防なども含めて国民の安全について技術的なチェックを行う「国民安全委員会」で行う。それぞれの委員会には、高度な学識を持った専門家を、既存の事務官・技官、キャリア・ノンキャリアと違った採用・人事形態によって雇用し、政治からの独立、完全な身分保障を与えるとともに、情報公開の徹底、公務員倫理法の厳格な適用を行う。

(2)「ノー・アクション・レター」の法制化、ADRの充実

○上記2委員会が法令に基づく権限を執行する前に、事業者等が法令の運用について文書で明確化することを求める「ノー・アクション・レター」制度を法制化し、一定期間内の文書での委員会からの回答を法律で義務付ける。

○上記2委員会が法令に基づく権限を行使したことに対して不服を持つ事業者等が、行政訴訟を起こす前に、不服審査請求を行うことができる組織を内閣府に設置する。当該組織は、不服審査請求を求められた場合、ただちに事実関係を調査し、必要に応じて当該権限行使の取り消し・変更等の勧告等を行う。

(3)通達等による上乗せ規制の禁止

○法律及び法律に基づいて定められる政省令以外のいかなる通達の発出等の行政上の行為も、民間の自由な行動を制限するものではないことを法律で明確化する。

○不当な行政指導等があった場合には、3.の本部に苦情申立てができ、そのために行政による不利な取扱いや不当な差別がされないことを法律上担保する。

(4)行政サービス改善要望の受付

○現在の規制改革集中受付月間のように、本部は幅広く民間から規制の改廃・新設、行政サービスの改善を求め、各省庁にその実施を検討させる制度を法律上明確にし、行政に特区による先行実施も含めた実現の可否、実現しない場合の理由の明示を義務付ける。

○実施することになった規制改革事項については、法令等の条文段階で骨抜きとならないよう、本部のリーガルスタッフがチェックする体制を整備する。

(5)正当な「ロビー」業務の容認

○上記(4)の規制の改廃・新設を求める事業者等をサポートする事業、政と官との橋渡しをする機能としての「ロビイング」が透明で適正に行えるようなルールを整備する。(これまでの政治資金等が絡んだブローカーから、正当な業へ。)

(6)規制のコストの明示

○行政に提出する書類等については、すべて標準記入時間を明記させ、国民が規制のコストを把握できるようにする。また受理した書類に対する行政側の回答予定期限を明示することを義務付ける。

○行政は、書類に記載が必要な事項について、なぜ必要なのかを文書等により示さなければならない。

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