1986年 ’86衆参同日選挙結果

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衆・参選挙総括

 同日選挙の結果は、自民党が三百四議席を獲得、圧勝に終わった。一方、社会党は、二十五議席減の八十五、民社党は十一義席滅の二十六議席となり、惨敗であった。その他は公明、共産党がほぼ現状維持、新自クが後退した。参議院の方はとくに大きな変化はなかったと言ってよいが、自民党の優勢は衆議院と同様である。

 このような結果を生んだ小状況的(主として短期的、技術的)要因としては次のような点があげられよう。

一、何といっても大政党に有利な同日選挙であったこと。このため自民党は、業界組織、行政権力をも巻き込んだ卜−タル的集票機構をフル回転させることによって大規模組織選挙に取り組み得た。他方、労組の全国組織に依拠する社会党や民社党にも一定程度同様のことが言えるにもかかわらず、後に述べる大状況的要因によって彼らは成功することができなかった。

二、自民党は、中曽根首相の“空人気”(具体的実績を欠く人気)づくりに成功した上、“次期首相”の幻想をまき散らしてきた、いわゆるニューリーダーの競演と中曽根延命に国民の目を向けさせる作戦を展開してきた。

三、不況、増税、福祉、教育、全体主義指向など、重要な政治・政策課題での論戦を、自民党が巧妙に回避した反面、野党側の政策提起が不充分であった。また野党は全般的に、中曽根批判に決定打を欠き、国民への浸透不足を露呈した。この際、中曽根批判にのみ終始した印象はあるが、これは上すべりであって中曽根批判自体が悪かったのではないことは、最も痛烈な中曽根批判を展開した社民連が勝利したことで証明されている。

 その他、野党側の一部に準備不足等の敗因もあるであろうが、これらの要因よりも重要な大状況的問題を真剣に検討しなければならない。即ち、今日の日本の政治的状況全般を直視し、野党勢力の長期的・構造的敗北について論ずる必要があるのである。

一、社会・経済の全般的構造変化に自民党(「保守」)の守備範囲がオーバーラップして投影してしまう状況が出現するなかで、野党側が柔軟な対応能力を欠き、国民の新しい生活感覚にますます合致し得ない傾向が進んでいる。

二、政治分野での野党は、まだまだ無用なイデオロギー性にとらわれており、その結果野党内の対立を増幅させてしまっている。このことによって野党はいつまでも体制外又は非体制的存在にとどまる反面、単なる自民党補完的な没主体的イメージを固定化させることにつながっている。そして真面目な世界観、使命感、新しい発想の欠如、さらには致命的な人材の欠如を生み出している。

 こうしていまや、政界は自民党の独走体制、自民党どうしの紅白試合。観客はシラケて帰り支度を始めている。当分の話題に野党が登場する機会が失われようとしている。野党が結集の方向に大胆な転換を成し得ない限り、観客参加の民主的ゲームは存在しなくなるという、最大の危機にいま、直面しているのである。

 社民連は、現職三名の全員当選と、楢崎弥之助顧問の復帰で、初の衆議院四議席を獲得、野党唯一の躍進を果たした。これは、

第一、再建大会以来の党一丸となった活動の成果であり、全体の新鮮な意気込みの勝利である。

第二に、わが党が一貫して訴えてきた社・民・連と無党派市民層の結集による、政権担当能力を備えた野党連合の形成という主張が国民に受け入れられつつあることの証明である。

第三に、わが党が基本的に他の野党と異なる考え方、即ち生産力・生産関係中心の思考から生活点・人間関係を重視する発想が、新しい国民感覚に合致しつつあるという展望を切り拓いたものである。

 一方、まだまだ組織的・財政的欠点など、政党としての脆弱さを克服するために、今回の勝利を足がかりに、来年の統一地方選挙などを初めとする諸活動への取り組みを強化しなければならない。


1986年

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