1986年5月6日

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選挙に向けての政策

 外 交
 日本ほど政治的にも経済的にも国際平和への依存度の高い国はない。この基本認識が外交政策の前提である。

 日本が国際平和に貢献する太い道筋は、まず平和憲法の理念を実質化し、世界に拡げていくことである。これを具体化するために経済と技術の力量を躯使して積極的な経済外交を展開していかねばならない。とりわけ海外援助については仕組の抜本的見直しを踏まえて、質量両面における飛躍的強化を図ることが急務である。

 また外交は、政府の専管領域ではないという認識が重要である。そこに市民の意見をより強く反映させる工夫が必要であるだけではなく、NGOなど市民の外交努力を正当に位置づけ、民間と政府の適切な連携関係を形成していかねばならない。


 防 衛
 平和憲法から派生している非核三原則、武器輸出禁止三原別、防衛費GNP一%といった原則=国是の堅持を内外に明確化すべき時である。

 中曽根政権が加担するレーガン流の核抑止による平和ではなく、極東における非核武装協定などの実現を積み重ね、軍縮による真の平和への努力を続けねばならない。

 とくに日米関係については、経済摩擦のツケを防衛費増強によってごまかすという危険な方向ではなく、日米経済の補完関係を強める等の本格的な経済協力を推進し、ここにおける責任を果たすことを通じて、むしろアメリカの防衛戦略の転換を迫るといった発想と戦略の転換が必要である。

 軍事大国化を阻止するために(「市民の革新政党をめざして」)
(1)非核三原別の堅持
(2)海外派兵の禁止
(3)徴兵令及びこれに類する一切の行動の禁止
(4)武器輸出禁止三原則の堅持
(5)専守防衛の能力と範囲を超える攻撃専用兵器の不保持
(6)核兵器を含む国際的軍縮の推進
(7)シビリアン・コントロールの厳守


 経済政策の基本
 国際経済の相互依存関係がますます深まる中で、日本の経済政策は内外のバランスに特に留意しなければならない。まず、国内で高い貯蓄率にみられるような潜在成長力を適切に生かしつつ、中程度(四・五%)の安定した経済成長を実現していく必要がある。

 大切なことは、どのような筋道による成長か、そしてその成果がどう配分されるかということである。それは、従来型の土建屋的発想に基づく内需振興ではありえず、生活に近接した住宅環境の整備、それを支えるような社会資本投資でなければならない。

 国際的には、思い切った市場開放などの制度・構造改革を進め、いわば「第二の開国」をめざし、日本を世界で最も開かれた経済社会にしていくべきである。


 円高対策
 日本経済が今日ほど国際化したなかで、為替レートの急激な変動は、大きな衝撃をもたらす。現行の自由な変動相場制の再検討を含む通過制度の安定化のための国際協力に、積極的に取組むべきである。

 円高は長期的にみれば、円の購買力、日本の労働生産物に対する国際的評価の高まり、つまり経済力の強化ということである。直接的にも輸入製品が安くなるというメリットがある。この円高差益は十分市民に還元されねばならない。

 しかし、急速な円高、しかも投機による行き過ぎた円高は、輸出産業とりわけ中小企業、従ってその雇用に大きな打撃を与える。ここに対する緊急的な対策は急務であり、中長期的にもスムースな産業構造転換のための適切な政策を欠くことはできない。


 財政と税制
 財政再建に当っては、経済の中成長によって増収を図りつつ、不公平税制の是正による歳入構造の改革と行政改革による歳出構造の改革を基本とするべきである。政府が準備を進めている大型間接税は、税制や歳出の欠陥を曖昧にしたまま、増税による財政再建を図ろうとするものであり、反対である。

 とくに改革を迫られていることは、負担の公平性と合理性という税制の原則を再確認し、再生させることである。サラリーマンと事業所得者の捕捉率の顕著な差が、税制全体に対する不信感をまねいていることからいっても、この課題の重要性は明らかである。

 こうした制度改正の前提として、大幅な所得税減税をただちに断行することによってサラリーマンの過重な税負担を緩和すべきである。


 農 業
 今日、農業には食料の安定供給と国土の生態系の保全という二つの課題が担わされている。
 前者については、食料自給力の維持・向上をめざしつつ、生産性の向上をはかるとともに、国際貿易関係にも配慮する必要がある。そのため、農業補助金の適切化や意欲ある農業経営者が力を発揮できるような条件整備が急務であり、輸入等については、自給率の目標を設置すべきもの、国内生産と輸入を並行するもの、輸入に依存せざるをえないもの等の区分を生産者と消責者の間で詰めていくことによって明確に政策化すべきであろう。

 後者の農業の維持・発展による緑の保全については、農業者自らのイノベーションを促進するような条件整備によって農業経営の経済性と安定性を保障しなければならない。とくに都市農業が存続するように都市地域の生産者と消費者の協力体制づくりを促進しなければならない。


 福祉と医療
 高齢化時代を迎えて、高齢者や障害者の自立を支える地域福祉社会づくりが急務である。生きがいや働きがいを生む地域事業の多様な創出に向けて、市民の技量や資金が生かされねばならない。自治体も必要な支援、制度的準備を積極的に行うべきである。

 その前提として、年金、医療保険の整備はいうまでもなく、地域福祉のための施設の充実、ホームヘルパー、保健婦など専門職員の確保、在宅介護を可能とする住宅環境の改善などの条件整備が必要である。

 また、医療についても治療にばかりに偏った現状を改め、予防、リハビリまで含む包括的な体制を築く必要がある。


 行政改革
 行政改革は、国と地方にとって絶えざる課題である。とくに高度成長時代に膨張し硬直化した行財政の改革は焦眉のことでありながら、十分には進捗していない。

 行政改革の最重要課題は、過度に中央に集中している行政事務や補助金の権限と財源を地方に思いきって委譲することである。行政サービスは住民や地域により近い行政機関が担うことによって、適切で効率的なものになる。

 したがって、行政改革は、単に効率第一主義ではなく、日本社会の分権的再編成への契機として位置づけられるべきである。そのため行政改革の手法は、中央政府が「地方行革大綱」を毎に地方に押しつけるというものであってはならず、自治体と住民の主体性を保障するものでなくてはならない。


 選挙制度
 一票の重みの不平等を是正することは議会制民主主義の大前提である。今回の暫定改正はきわめて不十分であり、われわれは格差2倍以内がぎりぎりの許容範囲であると判断している。従って国勢調査の確定値が出たのち、直ちに抜本改正に取組むべきである。

 長期的には、絶えず格差が是正されていくようなシステムや制度が設けられ、有権者の選挙権の行使が政治的取り引きや惰性によって侵されることがないようにしていくべきである。こうした国民の基本的権利を守るという重大な任務を担う第三者機関の設置を提案する。


 政治倫理
 今回の解散−同日選挙に至る過程は、国政の運営準則、議員の行動準則が市民の常識や倫理観といかにかけ離れたものであるかを端的に示した。

 国政全体の倫理水準を高めることは急務である。とりわけ自民党の長期一党支配が政治倫理を摩耗させる最大原因になっている。政権交替と政治過程のガラス張り化を実現し、市民の常識と倫理が政治を規制することをめざさなければならない。

 また撚糸工連事件のように職権にからむ汚職の構造はいまだ克服されていない。その克服の第一歩は、社民連が率先して行っている議員の資産公開を、全ての議員に拡げ、その内容もより実質性のあるものに拡充し、市民の十分なチェックを受けていくことである。


 教 育
 教育問題は、競争や利潤と効率を第一とする今日の社会全体のゆがみの一凝集点であり、安直な解決を求めるわけにはいかない。しかし、少なくとも生徒や教員に対する管理を強化する方向が、問題解決にならないどころか、一層悪化させることははっきりしている。

 「個人の尊厳と個性の尊重」という教育の根本理念からいって、解決の第一歩は、現行の文部省を頂点とする中央集権的な教育システムを思いきって分権化し、教育の多様を保障するものに改めていくことである。そうして、地域の市民自治水準の全般的な高まりを背景として教育における地域の王権を回復していくことが、さしあたりの基本の目標になる。

 われわれは教育改革を二一世紀までの「一五年ムープメント」と認識し、すでに当面の課題として、以下の提案を行っている (一九八六・四・十三)。

 極端な管理教育の是正、家庭科の男女共修の推進、教育委員会の活性化(準公選の推進など)、高校入試の改善、学校の週五日制など。


 国鉄改革
 日本の交通・運輸体系全体の近代化と多様化のなかで、国鉄が単に生き残るだけでなく、市民のニーズに積極的に応えていくためには民営化し、分割することが望ましい。民営化は企業体としての経営権を回復し、その分割=分割化は地域ニーズに応えることを可能とし、適切な企業努力を促進する。

 ただし、国鉄が今日の困難に立ち至った原因の中には、戦後の復員対策による過剰雇用や、たえざる政治の介入等があったこともたしかである。したがって、この国鉄の大転換=再生に当っては、職員の雇用面などに十分な配慮がなされる必要がある。


 憲 法
 日本国憲法の制定過程をめぐる議論がどうあれ、その内容からみれば、第二次大戦という惨禍を経た人類の叡知の結晶であるといわねばならない。

 その後の歴史過程の中で、憲法理念を実質化できていない点が多々あるとしても、それらはわれわれにとって目標として存在しつづけるべきものであり、またこの憲法が非核三原則などの形で多くのチェック機能を具体的に果たしてきた意義はきわめて大きい。

 今日の内外の情勢にあっては、日本国憲法の意義はむしろ一層高まりつつあると判断される。外交における平和主義、国内における福祉を根拠づける社会権や生活権はその一例である。

 いずれにせよ、憲法は国民の間にしっかりと定着しているのであって、改憲を党是とする自民党議員のなかにさえ非改憲派が増加してきているのである。

 われわれば憲法の今日的意義をたえず確認しながら、改憲の動きと闘っていかねばならない。


1986年

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