1999/12/07

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参院・行革税制等特別委員会  

○江田五月君 今回、独立行政法人化が提案されている八十六の事務事業、これはいずれも非常に大切な分野であるから、国がその権限と責任でしっかりした行政サービスを国民に提供しなきゃならぬ、それなのに独立行政法人というようなものにするのはけしからぬ、こういう見方もあります。

 しかし、私どもはそういう見方はとっていない。大切な事務事業である、したがって国がそこまで言い張ることはできないだろう。大切なものであっても、それぞれの事務事業の性格によって民間で行うもの、あるいはいろんな別の形をとるものがあっていいだろうと思うんですが、しかし、私たちは私たちの別個の視点から、今回のこの独立行政法人化の個別法について反対という立場でいるわけです。

 私は、実は民主党の行政改革プロジェクトチームの座長として、ことし五月に民主党の行政改革に対する基本方針をまとめました。それに基づいて民主党は、政府の中央省庁等改革法案、それから独立行政法人通則法案、これはただの看板の書きかえにすぎない、行政改革の名に値しない、こうして反対をいたしました。そして、対案として独自の首相府設置法案、内閣府設置法案、こうしたものを提案して、内閣総理大臣の強力なリーダーシップのもとで真の行政改革を実現していく、そういう手順を明らかにいたしました。

 今回の政府の一連の行政改革がすべて実現したとしても、これは行政改革の名に値しない、したがって、その結果登場する新しい行政体制というのは、私たちが政権をとったらそのときに行政改革の対象になるものにすぎない、そういうことを私たちは言っているわけです。

 ちなみに、地方分権一括法については、これはいろいろ不十分な点はあった、しかし、全体として国と地方自治体の関係を従来の上下関係から対等な関係にするという理念に基づいて改革を行っている点は評価をして賛成をした。

 さて、私は、ことし七月七日、本委員会で中央省庁等改革法案への締めくくり的な質問をいたしました。その際、政府の法案を評価する場合に、評価というのは評価の判断をする場合に、この法案が成立して施行されたらどれだけ行政が減量化されるのか、スリム化するのか、これが重要な判断基準になると。これは基本法の一条の中にも、あるいはその基本法の前提となる行政改革会議の最終報告の中にもきっちりそういうことが書かれているわけです、どれだけ減量化されるのか、スリム化していくのかと。

 そこで、当時の太田総務庁長官から引き継がれた続総務庁長官にも、まず端的に伺います。
 この中央省庁等改革法、できているわけですが、これが施行されれば、国の権限と財源と人間は一体どれほど減りますか。

○国務大臣(続訓弘君) 江田委員は、かつて国務大臣を経験されました。したがって、その際に恐らく行政改革に対しての考え方も持っておられたと思います。しかしながら、何がベターであり何がベストであるかということに対しては、なかなか実現はできなかったと存じます。同時に、私どもは、新進党の時代にいろいろ教えていただきました。そんな思いがあって、行政改革を断行しなければならない、こんなふうに我々は教えをいただいたわけです。ともに汗をかいたわけです。その一つが私は今回のこの行政改革だと存じます。

 ただ、ベストではなくてベターである、入り口である、これから少なくともスキームができる、そのスキームの上に魂を入れるということだと存じます。

 ただ、お尋ねの、しからば今回、こういう改革を通じて具体的な幾らの節減が図られるかといえば、私は金額は出せません。ただし、先ほど申し上げたように、少なくとも今まで親方日の丸という状況の中であぐらをかいていたと言われる研究機関等々が新しいスキームの中で活力を生み出し、そして同時に、先ほど来申し上げているように、その長が運営の妙をちゃんと図れれば、国民の期待にかなうような研究成果が上げられ、同時にそれぞれの研究機関あるいは事務事業がそういう意味では効率的な運営が図られると。したがって、これから具体的な金額のいわば国民に対する還元、そういうのが図られるというふうに思います。

○江田五月君 いろいろお褒めをいただいて大変恐縮ですが、私に対するお褒めの言葉は結構ですから、質問に対する答弁をひとつ端的にお願いしたいと思うんです。
 太田前総務庁長官は、こういう答えをされたわけです。今の続さんのお答えも同じ趣旨なのかなという気もするんですが、中央省庁等改革法の場合は直接スリム化をするということが目的ではないと思っておる、スリム化をみずからするような仕組みをビルトインすることが改革の目的である、数字を出すことはできないと。

 数字を出すことができないというのは、要するに国の権限、財源、人間は全く減らない、数字で言えばゼロだということだと思います。しかし、これから権限、財源、人間を減らしていく、そういうスリム化の仕組みがビルトインされたんだと、これはそういう理解でよろしいんですか。

○国務大臣(続訓弘君) まさにそのとおりだと存じます。

○江田五月君 そうしますと、今回の独立行政法人五十九法案、これはビルトインされたスリム化の仕組みがここに出てきたということにならなきゃいけませんが、それでいいんですね。

○国務大臣(続訓弘君) 御案内のように、五十九独立行政法人化する、そしてそのことは国会の場でも、そしてまた国民監視の中に置かれるということですから、私はいわばそれぞれの独立行政法人が運営の妙を果たさない限り、場合によっては、先ほど質問もございましたけれども、淘汰される場合もあり得る。しかし同時に、運営の妙を果たして国民の期待にこたえれば、むしろ発展をする可能性もある、こういうふうに思います。

○江田五月君 どんどん時間がたちますので、端的に行きましょう。
 この五十九法案で、国の権限、財源、人間はどれだけスリム化されますか。数字で答えてください。

○国務大臣(続訓弘君) 具体的な数字はお示しできないと、先ほどから申し上げております。

○江田五月君 前の中央省庁等改革法と独立行政法人通則法のときには、それは数字であらわせない、しかしスリム化のシステムはビルトインされるんだと、こういうお答えであって、そして今回の個別法がそのビルトインされたものが姿をあらわす法案なんだと言われているんです。それなのに、今回また数字は示せないと言うんじゃ、これはどういうことですか。まさに羊頭狗肉としか言いようがないじゃありませんか。

○国務大臣(続訓弘君) 要するに、これは平成十三年度四月一日から発足するわけであります。そういう意味ではまだ発足前であります。したがって、発足をした後に主務大臣が少なくとも三年ないし五年間の事業計画を立案し、そしてそれが具体的に動き出す、その時点でないと私は、今江田議員がせっかくの御質問ですけれども、具体的な数字は出せない、こんなふうに思います。

○江田五月君 やはりそういうことだろう。私たちは政府のこの行政改革は行革の名に値しないとずっと言っておるわけですが、まさに今のようなことで看板のかけかえだけ、まやかしの行政改革。本来なら、官から民へとか国から地方へとか権限と財源と人間をちゃんと移して、国の権限、財源、人間を半分以下にする、その上で残った国の事務を企画部門と実施部門に分けて実施部門を独立法人化する、こういう手だてをきっちり講じていかなきゃならぬ。しかし、国の権限、財源、人間を全く減らしていないという点がまず第一のまやかし。そして、特殊法人を含めて本来の実施部門に手をつけていない、今回の五十九法人のように周辺の研究機関だけ手をつけている、これが第二のまやかし。次に、この五十九の法案をずっと個別に見ると、第三のまやかしが見えてまいります。

 続総務庁長官、独立行政法人通則法によれば、これはよくおわかりのこと、二条の一項と二項です、独立行政法人には非公務員型の独立行政法人と国家公務員型の特定独立行政法人がありますね。今回の五十九法人の総人員は約二万人だそうですが、五十九法人のうち非公務員型の独立行政法人というのは、これはもう聞いて答えてもらうと時間がかかりますから私の方で言いますが、国立青年の家が三百十六名、国立少年自然の家が二百七十一名、経済産業研究所が三十九名、日本貿易保険が百九十六名の四つしかない。その総人員は八百二十二名だそうですね。つまり、国家公務員の人数の純減というのはこの八百二十二人だけ。二万人を独立行政法人ということで移すと言いながら、あとの五十五法人はすべて国家公務員型の特定独立行政法人。これが本当にいいと思われますか。まさにまないたの上の魚に包丁を持たせて自分で自分を刺身にしなさい、こう言っているような。これはやらないですよね。

 私は、行政改革にあれだけ熱心だった公明党の皆さん、これはまさにざんきにたえぬ思いをされているんではないかと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(続訓弘君) 私どもは新進党時代にすべての特殊法人を廃止すべしとかいろんなことをやりました。しかし、結果としてできませんでした。それは御案内のとおりだと存じます。そういう中で、いわば先ほどのような仕組みをつくったわけです。仕組みをつくった。もちろん国権の最高機関である皆様方の議決がない限り難しいわけですけれども、仕組みをつくることすら私は大変な作業だと存じます。そういう意味で仕組みはできた、したがってこれから魂を入れる、こんなふうに思うわけであります。

 そういう意味では、先ほど公明党の話をされましたけれども、私ども公明党もこれに対して汗をかいているわけですから、私は入り口をつくることがまず先決だと、こんなふうに思います。

○江田五月君 来し方を振り返って今お話しになったわけで、大変なことであることはもうよく皆わかっているので。ただ、大変なことでできませんでしたじゃ済まないので、まだまだこれからやることですよね。私どもはいろいろ批判を持っておりますが、公明党の皆さんがせっかく与党になったんですから、これはもう命がけでやっていただかなきゃならぬと思います。

 誤解があっちゃ困るんですが、私たちも独立行政法人の職員は公務員とするという考え方なんです。ただ違うのは、私たちの場合には、いろんな手だてをずっと講じて全体の国の行政というものをスリム化させて、そしてその中でもどうしても公務員で行政としてやらなきゃならぬもの、それをさらに企画部門と実施部門に分けて実施部門を独立行政法人とするということですから、この五十九のものがすべて独立行政法人でというのと私たちは違う。根本に構想の違いがあるということだけは申し上げておきたい。

 そこで個別の質問ですが、厚生総括政務次官、ようこそおいでくださいました。
 独立行政法人通則法の第二条一項によれば、独立行政法人というのは、これはもう言うまでもなく、「国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるもの」、これが一つの要件になっておるわけですが、国立健康・栄養研究所はこのどの要件に当たるのか、具体的な根拠も含めて説明してください。

○政務次官(大野由利子君) お答えします。
 国立健康・栄養研究所でございますが、糖尿病とか高血圧とか、生活習慣病と食品の栄養摂取の関係などの研究をやっておりますし、食品の栄養成分が人体に与える影響など食品の安全性対策の研究、それから国の保健、医療、食品衛生施策に密着したこういう研究をやっておりまして、公共上の見地から、継続的かつ確実に実施をする必要に迫られております。国がこれらの研究をみずから主体となって直接実施する必要はない。しかしまた、民間に任せると採算性が極めて低いので、ゆだねた場合は必ずしも実施されないおそれがある、このように考えております。

 この国立健康・栄養研究所の研究そのものが、今、委員の御指摘のとおり、通則法にかなっているということで、今回独立行政法人化をするというふうになった次第でございます。

○江田五月君 今の御説明ですと、国が直接やる必要はないが、しかしその後段の方の二つの要件のうちの前段、民間にゆだねたら必ずしも行われないかもしれない、採算性がとれないからと。ただ、採算性がとれなくても、そこはいろんな方法で民間に行ってもらうやり方はあるんですね。そして、こういう研究をする者が複数あればそれがお互い競争しながらいいサービスを全体として国民に提供できる、民間の中で、そういうことは十分あり得るわけだと思うんです。

 次に進みます。
 労働大臣、同じ質問で、産業安全研究所と産業医学総合研究所、これはこの通則法の二条一項のどういう要件にどういうふうに当たると思われているのか、具体的な根拠も含めて説明してください。

○国務大臣(牧野隆守君) 労働省は、産業安全研究所と産業医学総合研究所について公務員型の独立行政法人ということで御審議をお願いいたしております。

 わかりやすく、御了解いただけるように申し上げますが、例えば産業安全研究所につきましては、平成八年十二月、長野県で土石流が発生いたしまして、作業中の労働者十四名が死亡、九名が負傷するという重大災害が発生いたしました。このため、災害原因の究明及び再発防止対策について調査研究を行った次第でありますが、行政施策への反映として、労働安全衛生規則を改正し、土石流による労働災害防止措置を義務づけた次第であります。

 また、産業医学総合研究所。平成五年七月、福島県の亜鉛製錬工場で亜硫酸ガスが発生いたしまして、作業中の労働者三名が死亡、三十三名が中毒となる重大災害が発生いたしました。この災害原因の究明及び再発防止対策について調査研究を行い、行政施策といたしまして、特定化学物質等障害予防規則を改正いたしまして、特定化学物質等の製造設備の改造等の作業にかかわる労働災害防止措置を実は義務づけた次第でございます。

 このような事例でわかりますように、この両研究所は事業場で発生する災害の予防のための調査研究及び労働者の健康障害の予防のための調査研究を行っている機関でございまして、民間に委託等々はなかなか難しい、国の責任において調査研究をなすべきである、このような判断をいたしまして、公務員型独立行政法人の御審議をお願いしている次第であります。

○江田五月君 いろいろ御説明いただいたんですが、よくわからないんです。
 今の大臣の御説明ですと、これだけ大事な、これだけ重要なことだから国がやらなきゃいけない、そういう説明になっているんですが、この独立行政法人通則法二条一項は「国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもの」というのが要件になっているので、ちょっと狂っているんです、その説明が。しかも、今特定独立行政法人である必要をあわせ御説明いただいたんですが、一項の要件と二項の要件は違っていて、一項で大きく網をかけて、さらに二項で特定独立行政法人、そういう法の仕組みになっているのに、そこを一緒にして説明されるというのはどうも納得がいかない。

 そこで、もう一度厚生総括政務次官に伺いますが、今度は先ほどの国立健康・栄養研究所、これも特定独立行政法人ということになっているんですが、この要件は「業務の停滞が国民生活又は社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認められるものその他当該独立行政法人の目的、業務の性質等を総合的に勘案して、その役員及び職員に国家公務員の身分を与えることが必要と認められる」、こうなっているわけです。これは日本語の文法をずっと分析して考えますと、業務の停滞があったら困る、そこで職員に国家公務員の身分を与えることが必要だと。すなわち、これは団結権、団体交渉権はあっても、争議権があっては困る、そういう仕事だ、こういうことを言っているんじゃないんですか。

○政務次官(大野由利子君) 今回のこの国立健康・栄養研究所の業務でございますが、毎日の国民の実際の食事の内容等々、大変国民のプライバシーにかかわる情報を取り扱うことから、国民の信頼確保が大変不可欠であるということが一点。もう一点は、この国立健康・栄養研究所の調査をもとにして、食品等々、病人の食べる食品だとか、そういう特別用途表示の許可を厚生大臣がおろす、こういうふうなことで公権力の行使の前提になる試験という大変重い試験を行うことになっておりまして、極めて高い客観性と信頼性が必要ということで国家公務員の資格を与えた次第でございます。

○委員長(吉川芳男君) 江田さん、時間でございます。

○江田五月君 時間になっていますが、どうも大野さんににこっと笑われると追及しにくいんですが。やはり業務の停滞が国民の生活に著しい支障を及ぼすと言いますが、これは独立行政法人になると、団結権、団体交渉権、交渉でいろんな労働条件、勤務条件が決まってくるわけですから、そういう皆さんに争議権を与えないという、そのために公務員の特定独立行政法人にするというのは私はまだ納得できません。
 終わります。(拍手)


1999/12/07

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