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第143回臨時国会 参議院予算委員会 1998/08/21

   午後一時開会
○委員長(倉田寛之君) ただいまから予算委員会を再開いたします。
 予算の執行状況に関する調査を議題とし、休憩前に引き続き質疑を行います。江田五月君。

○江田五月君 総理を初め閣僚の皆さん、このたびは御苦労さまでございます。おめでとうございます。なかなか大変な時代で、私も二年ぶりに国会に戻ってまいりまして、お久しぶりでございます。

 実はいささか戸惑いながら質問の準備をしておりまして、かなり用意したんですが、きのうからきょうにかけていろいろな事態が激変をしておりまして、どうしてもそのことにまず触れなきゃいけない。参議院選挙の結果を受けての参議院での首班指名のことなどいろいろ聞いておきたいんですが、それは全部もうこの際やめまして、緊急の課題に早速入りたいと思います。
 総理、アメリカの今度の空爆、アフガニスタン、スーダン、これはいつお知りになりましたか。

○国務大臣(小渕恵三君) けさ午前四時ちょっと前だったと思いますが、報告がありまして、しかしまだ正式に詳細な状況がわかりませんでしたので、直ちにテレビのスイッチを入れまして、その後CNNあるいはまたNHKその他の報道をずっと見ておりました。

○江田五月君 総理にぜひこれは答えてほしいんですが、おわかりにならなきゃならないでいいんですが、国連事務総長がこの事実をいつ知ったか、あるいはまだ知っていないか、そのことについて総理、御存じですか。

○国務大臣(小渕恵三君) 何らかのコメントをしたという報告といいますか情報はお聞きをしましたが、今のお尋ねには実はすべて承知しておりません。

○江田五月君 私の手元にインターネットでとった国連事務総長のプレスリリースがあるんですが、これによりますと、国連事務総長は、ミニッツ・アフター・ゼイ・トゥック・プレイス、直ちにと言えるんでしょうけれども、事後報告、事前の国連事務総長に対する報告はなしに行われている。
 外務大臣、それでよろしいですか。

○国務大臣(高村正彦君) 国連に対してもあるいはいかなる国に対しても事前報告はしていなかったと承知しております。

○江田五月君 我が国に対しても事前報告もないし、事後の報告はいかがですか。

○国務大臣(高村正彦君) 事後の報告はありました。

 ロス国務次官補から在米大使館の小林公使へ、そして二十一日九時半から柳井事務次官に対して在京米国大使館グリーンウッド公使から説明が行われております。

○江田五月君 どういう説明であったか明らかにしてください。

○政府委員(竹内行夫君) ワシントンにおきまして、ロス次官補から我が方大使館公使を呼びまして詳細といいますか説明はございました。
 それは、この事件の経過、経緯、背景等につきましておおむねクリントン大統領が発表され、またコーエン国防長官、シェルトン議長が述べられて報道されているような内容でございますが、正式の説明がございました。
 それから、けさ九時半に在京米大使館の臨時代理大使が柳井事務次官を来訪しまして、同様の説明がございました。

○江田五月君 ということでございますが、事案の内容自体の報告はまた後ほどゆっくり聞くことにいたしますが、総理大臣、これは日本政府としてはどういうふうにお考えになりますか。このアメリカの行動を支持するのか、反対するのか、見守るのか。どういうお考えですか。

○国務大臣(小渕恵三君) テロというものに対しましては、これはその態度に対して国際世論あるいはまた国際政治の面で毅然とした態度をとらなきゃならぬというのは基本的な方針であり、これはサミットのときでも、主要国の首脳がこのことをお互いに責任を持って努力をするということでございます。

 そこで、今回の問題につきましては、実はまだ私自身も詳細なアメリカ側の対応について十分把握をいたしておりません。したがいまして、現時点におきましてはどう対応するか決定しておりませんが、いずれにしても、アメリカとしてこのテロに対して厳然たる態度をとられたということについては理解を示しておるところでございます。

○江田五月君 各国首脳がそれぞれ責任を持って対処するとおっしゃいましたが、私は、もちろんテロは強く非難されるべきことであり、そしてそういうものはなくしていかなきゃならぬ。これはいわば国際社会の共通の要請でして、やはり大切なことは、テロがあった、だからといってすぐどこかの国が独自の判断で国境を越えてそれをやっつけに行くというような、報復をするというような対応じゃなくて、国際社会共通の対処でそういうものをなくしていく努力をするということが基本でなきゃならぬ。それが戦後の国連憲章の基本的な考え方。なかなか五十何年たってまだそこまできっちりできてはいませんけれども、やっぱりそういう方向でなければならぬと思うんです。
 今回も、先ほど確認したように、国連の事務総長に対する事前の報告さえなしに行われているということで、私はこれは、もちろんまだこれからの事態の推移を慎重に見きわめていかなければならぬけれども、すぐ理解をするというような態度を示すことはさてどんなものかなという気がいたしますが、どうですか。

○国務大臣(小渕恵三君) ですから、申し上げましたように、今回の対応について理解をするというよりも、テロに対して、厳しくこれに対する対応をされるというこの姿勢については理解をしておる、こう申し上げておるわけでございます。

○江田五月君 厳しく対応するという姿勢は理解をする、しかし、今回の行動自体についてはまだ態度表明をする時期ではないということですか。

○国務大臣(小渕恵三君) さようでございます。

○江田五月君 私はやはり、アメリカの国内政治というものもいろいろありますし、クリントン大統領、御承知のようないろんな事情もあるわけですから、そこはよく見きわめなきゃならぬことだと。手段、手続について少なくとも今の段階では大いなる疑問があるので、どうもこの行動は、アメリカンスタンダードではあってもグローバルスタンダードとちょっと言えないのじゃないかという感じもするので、さらにまた日米ガイドラインに基づく周辺事態法案の審議、こんなことともかかわってくると思うので、今後とも事実関係を十分私どもも見きわめながら議論していきたいと思っております。

 次に、もう一つ大きなニュースがございました。これはぜひまず冒頭、小渕総理に率直にお答えいただければいいと思うんですけれども、長銀の話なんです。

 いろいろときのうまで新聞報道がございました。御承知のとおりです。超法規的措置で資金投入するとか、公的資金五千億から一兆円入れるとか。我が党の今井委員がきのうの午前これは尋ねた。まだ議事録は私直接見ておらないんですが、総理は、承知していない、金融監督庁が懸命に検査しているが私のところに中間的報告も来ていない、報道された事実はないと理解しておると。新聞の要約ですけれども、そういう趣旨の答弁をきのうされたように要約されているんですが、これは後で議事録を見ればわかることですが、ちょっとそれだけ確認させてください。いかがですか。

○国務大臣(小渕恵三君) 長銀の現在の経営内容、たしかこういうことで問われていたかと思いますけれども、その点につきましては、現在金融監督庁で検査に入っておりますので、その報告をまだ聞いておりませんので、私が個々の金融機関の状況についてその内容を的確に把握しておるわけではございませんので、そのように答弁をさせていただいたと、こう思っております。

○江田五月君 新聞報道は長銀の経営状況についてもいろんなことが書いてありますが、それだけじゃなくて、日本長期信用銀行と住友信託銀行の合併話とか、あるいは長銀の経営の健全化のためでしょうかね、資本注入するとか、そういうことが検討されておる、そういう具体的ないろんな記事が出ているわけですね。

 金融監督庁の検査の中間報告を受けているかどうかという話じゃなくて、長銀を救済するいろいろな手だてが検討されているということを承知しておるのかどうか、そういう質問であったはずなんですが、それは承知していない、報道された事実はないと理解しているというふうに答弁されたと新聞に出ているんですが、それは新聞の要約の間違いですか。

○国務大臣(小渕恵三君) たしか長銀に関しましての種々のマスコミ報道については、私もこれは拝見をさせていただいておるということは申し上げました。それと、救済方法であるかどうかは別にいたしましても、長銀と住友信託とが合併につきましてそうした話し合いをされておられるという事実は承知をしているということを申し上げたと思っております。

○江田五月君 話が進んでおることは承知している、しかし、資本注入の検討などをしているということはきのうの午前中までは知らなかったんですか。

○国務大臣(小渕恵三君) 従前、資本注入したことは承知をしておりますが、今般のことについてそうしたことは承知をいたしておりません。

○江田五月君 今は御存じなんですか、御存じではないんですか。今回ですよ、今回。三月のことじゃありませんよ、その後に。

○国務大臣(小渕恵三君) この件については恐らく関係者から正式な申請等があってその作業を進めるんだろうと思いますが、私はそういうことは承知をいたしておりません。

○江田五月君 報道ですが、長銀と住信との合併支援のために長銀に新たに公的支援で資本注入するという関係のニュースで、昨夜、首相公邸で、総理、蔵相、官房長官が住信社長と会談をしたという報道、この報道についての事実関係は、これは総理、明らかにしてください。

○国務大臣(小渕恵三君) 長銀が思い切ったリストラ案を提示されたことを受けまして、長銀の合併の予定行であります住友信託銀行の高橋社長と面談をいたしまして、その内容を、金融監督庁長官も同席をいたしておりましたが、その状況を御報告されました。
 私といたしましては、そうした合併の話が今日まで行われてきたことは承知をいたしておりましたので、政府といたしましてその支援もいたしていくことをお伝え申し上げたと、こういうことであります。
 提示の予定でございますので、それを受けまして、長銀がリストラ案というものを提示される予定であるということを金融監督庁長官からお聞きしましたので、そういう予定につきまして、金融監督庁から住友信託にそのことをお話をされたということでありまして、そこに私も同席をいたしておりましたので、かねて来、合併のお話がございましたので、政府としては支援申し上げたいと、こういうことを申し上げた次第でございます。

○江田五月君 リストラ案の提示があって、それを住信の方に伝える、そこへ総理もおられた、そして支援をしますと言われたと、こういうことですね、ちょっと確認します。
 これは大蔵大臣も、それから官房長官もおられたわけですか。

○国務大臣(宮澤喜一君) 私は、今、所管事項ではございませんけれども、総理を補佐するのは閣僚の役目と心得ておりますので、おりました。

○国務大臣(野中広務君) たまたま夜、宮澤大蔵大臣が、時間があいておるのでもろもろの最近の問題について懇談をしようと、予算委員会等で連日お会いをしながらもお話しする機会がないのでということでお伺いをいたしました。私もちょうど時間があいておりましたので、陪席をしておりました。
 先ほど総理から申し上げたお話は、私も承っておりました。

○江田五月君 それから、金融監督庁長官がおられたというんですか。

○政府委員(日野正晴君) 江田委員よく御存じだと思いますが、これは合併でございまして、銀行の合併、特にこの場合は異種の合併でございます。この合併は、法律、銀行法それから金融機関の合併及び転換に関する法律、これはすべて内閣総理大臣が認可することになっております。
 ただ、金融監督庁の長官に法律上、委任されていることでございますが、大変大きな合併でございまして、私といたしましては、必要に応じ随時総理大臣に報告しなければならないというふうに考えております。

○江田五月君 リストラ案を示されたと。どういうリストラ案ですか。

○政府委員(日野正晴君) これはまだ正式に私どもの方に届いているわけではありませんが、いろいろこれまで、六月二十六日に合併の構想が発表されて以来、両行の間でそれぞれ自分の資産を整理するという観点から、長期信用銀行においてはリストラを進めてこられたものというふうに理解しております。
 その内容は多岐にわたりますのでここで一概に申し上げることはできませんが、例えば海外拠点からの撤退などが含まれているものと理解しております。

○江田五月君 新聞の報道ですが、役員の更迭ですか、それから海外取引からの撤退。減資というのもありますが、これもあるんですか。

○政府委員(日野正晴君) 減資は聞いておりません。

○江田五月君 そういうことがあってこれを支援するということを申し上げたというんですね。どういう支援ですか。

○国務大臣(小渕恵三君) 具体的に今申し上げることではありませんが、精神的にこの合併というものは、日本の金融のそれぞれの姿の中で両行が合併することによりまして金融秩序というものが維持できるということであればそれは望ましいことである。こう考えまして、政府としてもどういう支援ができるか、今検討しているわけではありませんけれども、そうした……(「出任せで言ったんですか。しゃべっていることと違うんじゃないか」と呼ぶ者あり)基本的に両行が合併されるという今までの方向について、先ほど申し上げましたように金融監督庁として、長銀としてそういう案を検討しつつあるということのようでございましたので、その説明も相手方に申し上げて、そして政府としては支援をいたしていくという気持ちをお伝えした、こういうことでございます。

○江田五月君 結婚式に出ていってお祝いを言うんじゃありませんからね。精神的でいいことです、望ましい、それが支援、そんなことが支援なんですか。(「祝儀袋は要らないんだよ。中身が欲しいんだから」と呼ぶ者あり、その他発言する者あり)

○委員長(倉田寛之君) 御静粛に願います。
○国務大臣(小渕恵三君) それは、相手の方々の御意見もお伺いをしなければ、一方的にこういう支援策がありますというようなことを申し上げる立場にはありません。
 しかし、重ねて申し上げますように、この合併というものは日本の金融システムの中で極めて重要なことである。こう考えておりましたので、この合併に当たりまして、金融監督庁からこうした方々や、長銀の方のリストラ案その他につきましての今日までの動向について相手方にも御説明して、両者の話を私お聞きをしておりまして、どういう支援ができるかということを考えていかなければならない。しかし、政府として私が金融監督庁の長の上にあるという立場でございますので、私が立ち会ってその間の双方の状況についてお聞きをさせていただいて、できる限りの支援をいたしてまいりたい、こう申し上げたわけでございます。

江田五月君 そのできる限りの支援、しかしそれは精神的、中身は検討していない。検討していなくてできる限り、何かわからないんですがね。
 ちょっとその前に、先ほど予算委員会では会うけれどもお話しすることがないから、たまたまいたからと官房長官おっしゃったりするんですが、まず、それじゃいつどこで会ったんですか、会った場所。総理。

○国務大臣(宮澤喜一君) 私は、総理を補佐するのが閣僚の務めと存じておりますので同席をいたしましたんですが、昨晩総理公邸で総理のところへ住友信託の方が来られ、また所管の長官であります……(「たまたまね」と呼ぶ者あり)たまたまではございません、監督庁長官、それから官房長官、私が同席をいたしました。
 それで、お話は先ほど総理の言われたとおり、それ以上のことを総理がおっしゃるのは、あるいはお求めになるのは私無理だと思うんですが、つまり、監督庁長官から、長銀が徹底的なリストラ計画をほぼ完成した、そのことを監督庁にやがて報告をしてこられる、それとの関連で恐らく、これは想像でございますけれども、政府に対しても何らかの支援を求めてこられるであろう、そういう状況になりましたので、総理がその様子を聞かれ、そして、相手方の住友信託の方から合併の話はその後どういうふうに進行していますかというふうなことを聞かれたと。それで、どういう支援要請があるかということは、リストラはまだ発表されておりませんので、当然のことながらわかりません。
 しかし、想像をしますと、リストラの発表というものはかなり長期信用銀行としては犠牲を払うものでございますから、その後の何らかの支援について恐らく申請をされるであろう。しかし、それは申請がされておりませんので、何がどうということを総理の口から申し上げることは今の段階ではできない。申請がございましたらまた違うかもしれません。

○江田五月君 大蔵大臣のお話はわからぬわけでもないんです。わからぬわけでもないんですけれども、やっぱり率直に言ってもらうところは言ってもらわなきゃいけないし、それから今、事態が事態ですし、やはり可能な限りいろんなことは明らかにしていただかなきゃ困ると思うんですね。
 ちなみに、ちょっと話が違うんですが、大蔵大臣は大変英語が御堪能で、十九日のフィナンシャル・タイムズはごらんになりましたか。

○国務大臣(宮澤喜一君) 読んでおりません。

○江田五月君 日本のことが出ているんですよね。
 それで、これもインターネットなんですが、現実にペーパーを私、見ているわけじゃないんですけれども、総理の検査結果の公表に関しての御発言があって、それでかなり手厳しく批判をされているんですよね。
 一番最後のところには何が書いてあるかというと、金融秩序を正常にしていくためには日本は経済が上昇基調に戻ることが非常に大切だと。バット・ウイ・ニーディド、しかしと書いてあるんです。しかし、日本は政府がシースズ・ツー・ファッジ、あれこれごまかすということをやめる必要が同じ程度に必要があると、そう書いてあるんですよね。これまでの限りはどうもこう言えるんじゃないかと。ミスター小渕は、ダズ・ノット・インスパイアー・コンフィデンス・オン・ディス・スコア、どうもこういう点については信頼をつくり上げようというそんな気持ちにはなかなかないようだという、そんな趣旨でしょうか。
 日本だけじゃないんです。世界じゅうがここで総理がおっしゃることは注目されていまして、そのニュアンスに至るまでみんなが見ていて、これはマーケットはもちろん見ているわけです。ここにもマーケットのことも書いてあるんですね。やはり、可能な限り率直におっしゃっていただく、おっしゃれなければおっしゃれないで、なぜおっしゃれないのかということまでちゃんと説明していただくということがなければこれは大変だと思いますよ。
 総理、そこでもう一遍伺いますが、さっきの、きのうの夜の公邸での会談ですね、これはだれがセットしたんですか。

○国務大臣(小渕恵三君) 私自身が行いました。

○江田五月君 官房長官にも来てくれとおっしゃったんでしょうか。

○国務大臣(小渕恵三君) 官房長官にも私からお願いをいたしました。

○江田五月君 まあまあ官房長官、いいですよね。そうですよね。総理から来てくれと言われたんですよね、たまたまじゃなくて。
 その支援の内容は、それは確かに今はまだ申請がないから言えないという、しかし全然知らないという話はないと思うんですがね。今は知っていても言えないことなんですということはそれはあると思います。だけれども、承知していない、知らないということはないと思うんですけれども、いかがですか。事前のいろんな相談は受けてはおられるんでしょう、総理。

○国務大臣(小渕恵三君) この問題は、私もこの仕事につきまして最も重要な問題である、現下における不良債権問題の解決なくしては今日のこの日本経済の復活はあり得ない、そういう意味で、もちろん就任をする以前から問題意識を持っておりましたが、この責務を負ってこの問題に対して強い関心を有しておったことは事実であります。
 ただ、毎日この両院の予算委員会に出席をいたしておりまして、なかなか現在の状況につきまして金融監督庁長官からも詳細な説明を聞く機会に必ずしも恵まれなかったということでございまして、そういった意味からも、金融監督庁長官からできれば夕刻この問題についてお聞きをいたしたいということもございました。そういう話の本題として大蔵大臣、官房長官をお呼びしたわけではございませんけれども、私自身もこの金融全般あるいはまた国会の問題等々すべての問題につきまして大変深い理解を示されておる大蔵大臣にもお聞きしたいし、またこれからの国会の運営その他につきましても官房長官にもお聞きしたいということもございまして、そして席を同じゅういたしました。
 その後、監督庁長官にもおいでいただきまして、私自身がその経過について十分承知しておった方がよろしいと思いましたので、実は御両者にお残りをちょうだいいたしましてその話を御一緒に聞いていただいた方がよろしいということになりました。そこで、高橋社長にもそうした現在の長銀の状況について私に報告をしていただいたことと同様のことを相手方にもお話をして、その状況のいきさつを私自身が責任者としてお聞きいたしておりまして、そして私自身がいかように対応したらよろしいかということでございまして、そのことにつきましては冒頭申し上げましたようにそのいきさつをお聞きして、しかも合併のお話をかねて来両行ともしておられましたので、どういういきさつに相なっておるかということと同時に、もし所感がありましたらお聞きもいたしたいということで率直な意見の交換を行った、こういうことでございます。

○江田五月君 今ちょっとフィナンシャル・タイムズのことを出しましたが、その関係で、別に英字新聞がどうというんじゃありません、この金融問題、まあ金融問題だけじゃないんですけれども、国民がみんな物すごい不信を今持っている、マーケットも大変な不信感。そんな中で、しかしこれは日本も世界も、金融秩序を崩壊させてはいけませんので、ありとあらゆる知恵を絞っていかなきゃいけない。
 だから、一番大切なのは国民との信頼あるいは世界の信頼、それをどういうふうにもう一度つくり上げていくかということだと思うんです。その根幹には情報開示といいますかディスクロージャー、これがあると思うので、先ほどもちょっと申し上げましたように、もちろんどこかの限度はあるでしょうが、可能な限りこの国会はもちろん国民にもその方法についての説明をしながら進めていく、そういうことはいかがなんですか、それはそれでよろしいんですか、総理大臣、まずお伺いします。

○国務大臣(小渕恵三君) 自分の性格を申し上げるつもりはありませんが、もともと極めてあけっ広げでございますので、できる限り世の中にお話しすべきことはお話ししなきゃならぬ、そしてこのことは同時にあらゆる面でもクリアリーに、そしてすべての情報の開示ということはその方向性でなきゃならぬというふうに思っております。
 ただ、事金融の問題につきましては、これは私の少し思い過ごしかもしれませんけれども、こうした立場で不用意な発言というものが起こったことによって、かつて片岡蔵相がその発言から昭和の恐慌を招いたというようなことも歴史的事実として私も学ばせていただいておりますので、こうした点につきましてはより慎重に、またより誤解をいただかないように、その情報の開示におきましてもそうしたことをしていかなきゃならぬというみずからの戒めとしてそうした考え方は持たせていただいておる、こういうことでございます。

○江田五月君 大蔵大臣はいかがですか、情報開示、ディスクロージャー。

○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどフィナンシャル・タイムズの記事を御引用になりましたが、少し外国の特派員諸君がせっかちだと思いますのは、この内閣が発足いたしましてまだ何週間でもございません、正直を申しまして。税制の問題があり、予算シーリングの問題があり、そして今御指摘の問題があって、ですから小渕首相を評価するのには時間は実はほとんどまだたっていない。そのうちにきっと連中もわかるだろうなと私は思って余り気にしておりませんのですが、確かに情報はできるだけ開示した方がいい。
 今のお話にいたしましても、総理大臣は今随分明快に言っておられるように思います。報道がございましたけれども、しかしまだ長期信用銀行からは何の意思表示もありませんし、リストラ案も発表されていない。しかし、そういうことをいろいろ報告を受けられたから、それに備えて相手側の銀行の話も聞いておきたいということを御自分のイニシアチブでやったと言っておられるわけでございますから、そうしますと次の段階は、報道は別といたしまして、政府としての段階は長期信用銀行から何かのリストラ案が発表され、それについて何かの要請があったときに政府はどうするのだと、こういう御質問があって、その段階でなら総理大臣はお答えになるのだと思いますので、ちょっと御質問が早い、答えろとおっしゃるのは少し私は無理なような気がします。

○江田五月君 情報開示、透明性について、日銀総裁はいろいろと積極的なお話もされておりますが、この際確認をさせていただきたいと思います。

○参考人(速水優君) 金融機関の不良債権の自己査定、自己開示、早期償却ということは、私かねてからの持論でございまして、去る六月の新聞記者会見のときに、情報開示の一層の徹底を図る上で自己査定の内容についても自主的な開示を進めていくことが選択肢の一つではないかということを示唆いたしました。それをかなり大きく新聞は伝えたわけでございますけれども、これは市場における不信感を払拭するには個々の金融機関が自主的判断に基づいて創意や工夫を凝らしながら情報開示の内容を一層充実していくことが有用であろうという考えを申し述べたものでございます。
 自己査定の内容の開示というのは、こうした自主的な開示の一つの選択肢として示したものでありまして、そのような積極的な対応を通じて不良資産の内容とその処理の道筋をはっきりしていくことが個々の金融機関に対する信頼の回復、顧客に対する信用の回復、我が国金融システムに対する内外市場の信認回復と金融の再生への展望を明確にしていくものではないかというふうに考えております。
 たまたま昨日も東京三菱銀行から今九月からの自己開示について、SEC方式を一歩前進させてもう少し情報開示の範囲を広げていくということを発表されたようでございます。これなどは、そのスタンスについて私は高く評価したいと思っております。こういう方向で進んでいけばいいがというふうに考えています。

○江田五月君 申しわけありません、日銀総裁もう一つ。
 今の自己査定の結果を自分で公表していく方向について好ましいことだというお話、わかりましたが、その自己開示には第U分類のものも当然入るんでしょうね。

○参考人(速水優君) やはり第U分類がかなり広い範囲でございまして、公表している銀行もないではないんですけれども、今のところ各銀行がこれが第U分類であるというふうには自行のものは発表しておりません。全体としての数字が監督官庁から発表されているだけでございますので、その辺のところをもう少し分析して、自分の判定でいいものと悪いものとをはっきり分けて、悪いものについては引き当てを置き、あるいは償却を早めるということにしていっていただければなというふうに思っておる次第です。

○江田五月君 情報開示、ディスクロージャー、どうしてもこれは国民に透明性を高めた手続の中で今の金融再生をしていかなきゃいけないんで、可能な限りやっていかなきゃと思います。
 そこで、ぜひこれは資料要求をいたします。
 今年三月に公的資金による資本注入を実施した二十一行について九八年三月期における自己査定結果ほか、それから日本長期信用銀行について過去六カ月間の資金繰り表ほか、その他破綻した金融機関の大蔵省検査結果あるいは全特殊法人の不良債権の状況をペーパーにしておりますので、これはぜひ委員長の方で、理事会で検討いただきたいと思いますが、これどうしましょう、紙をお渡ししておきましょうか。

○委員長(倉田寛之君) 理事を通じてお出しください。

○江田五月君 では、理事を通じて出します。

○委員長(倉田寛之君) ただいまの江田君の要求につきましては、後刻理事会で協議いたします。

○江田五月君 しかし、総理、きのうの朝は今の長銀のことを承知していない、報道された事実はないと理解していると、その夜にはもう会談をセットされる。どうも国民から見ると、それはきのうの朝はやっぱり承知していたんじゃないかという気がしますが、どうですか、ここは。もう一遍、くどいようですが。

○国務大臣(小渕恵三君) 承知しておらないというのは先ほど申し上げましたけれども、新聞その他で報道された事柄について私は承知を、それをよく読ませてはいただきました。しかし、国会が始まる前でございましたので、詳細、すべての記事の端々にまでわたって私が拝見したわけではありません。しかし、見出しを見まして、そういうことが取り上げられておるということの事実は承知をしておると、こういうことを申し上げたわけでございます。
 その後、金融監督庁長官からも、長銀につきましてのリストラ案等につきましていろいろとお聞きをしておるというような状況もお聞きをいたしました。
 本問題につきましては、朝ほどのそういったお尋ねも含めまして、今日の状況につきましてはまさに刻一刻新しい事態が起こってくるわけでございますので、そうしたことについては責任者としては当然十分な神経を払っておくべきことではないかと、こういうふうに思っておりました。しかし、なかなか一日こうした場所におりまして、状況につきまして、そこに金融監督庁長官おられますけれども、話し合いをするという機会がございませんでして、昼食その他のときにこういう状況になっているというようなお話を聞きましたので、それなればこの問題についても相手方に状況についてお話をされることは望ましいのではないかということで先ほど来の経過をお話ししたとおりになった次第でございますので、御理解をいただきたいと思います。

○江田五月君 金融監督庁長官、もちろんまだ今回の検査、途中経過だと思いますが、長官は長銀が債務超過ではないと国会で言明をされましたですね、いかがですか。

○政府委員(日野正晴君) 十九行検査の一環といたしまして今検査をやっている最中でございますので、まだ私の手元には債務超過であるといったような証拠といいますか、そういう報告は受けておりませんということを重ねて申し上げていると思います。

江田五月君 長銀のこの検査はいつから始まってどの程度まで行っておるか、それからその他の調査はどこまで始まってどうなっているか、その経過を御報告ください。

○政府委員(日野正晴君) お答えいたします。
 長期信用銀行への立入調査開始は七月十三日でございます。それから、第一勧業銀行など八行への立入検査の開始が七月二十四日。それから住友銀行など五行への、これは日銀の考査でございますがこれは八月二十四日。残りの五行がまだ残っておりますが、これはこれから検査に入る予定でございます。
 いつまでに終了するかというお尋ねですが、従来の大蔵省の金融検査部の検査の実績といいますか、それを拝見いたしますとおおむね二カ月ぐらいかかっていたようでございます。ただ、ことしの四月からは新しい検査方式が導入されまして、それに基づいて検査を今やらせていただいておりますが、いろいろやりたいことはたくさんございます。例えばコンプライアンス、法令遵守状況などについての検査もやりたいのですが、とにかく不良債権の問題が大変喫緊の課題でございますので、この資産査定を中心に今やらせていただいておりますが、やはりそのくらいの日数はかかるのではないかなというふうに考えております。

○江田五月君 長銀だけがちょっと早目にスタートした、これはなぜですか。

○政府委員(日野正晴君) 十九行に対する検査につきましては金融再生トータルプラン、これは七月二日に開かれまして、ここで緊急的対応として、「主要十九行に対し、集中的な検査を実施」するということが盛り込まれたわけでございますが、私どもがその当時の市場の推移というものを見まして、これはやはり一番最初に長銀に検査に入るのがいいかなということで入ったわけでございます。

○江田五月君 市場の推移、株価のことですかね。

○政府委員(日野正晴君) お説のとおりでございます。

○江田五月君 そして、その他第一勧銀を初めとするところに入って、次の残り五行は第一陣が終わってからスタートするというようにきのう説明を受けましたが、それでよろしいですか。

○政府委員(日野正晴君) 残り五行でございますが、これは最初の九行の検査終了後に改めて検査予告をする予定でございまして、実際は今月の末から九月の初めぐらいに検査に着手したいというふうに考えているところでございます。

○江田五月君 九行が九月の初めぐらいに終わって、それから残り五行。そうしますと、その九行については検査結果通知書というのは九月の初めにお出しになるんですか。

○政府委員(日野正晴君) お答えいたします。
 検査結果通知書といいますのは、結局最終的にこれはさまざまな分類債権についての評価になりますので、私どもが、例えばこれはその貸倒引当金を五〇%積むべきではないか、こういうことを言いましても、当該の金融機関は、いや自分たちが査定したとおりこれは三〇%でいいじゃないか、こういうことを言われますと、直ちに、いやそうじゃなくて、これは五〇%にすべきだと言うことができるかどうか、若干疑問があります。
 そこで、そこは多少ネゴシエーションが出てくる場面になるかと思いまして、そこは若干、最終的な検査の確定といいますのは必ずしも物理的な検査が終了した時点をもって完全に終了したというふうには言えないかなと考えております。

○江田五月君 結果通知書は、きのうの御説明ですと、九行と五行ですから、十四行全部が終わってから一斉に出すんだというような御説明だったんですが、検査が終わった後ネゴシエーションして、全部ぐるぐるっと丸めてしまって、それから、ではこういう結果通知書でいいですね、はい、いいですというので出す、そういう趣旨ですか。

○政府委員(日野正晴君) 先ほど貸倒引当金のお話をいたしましたが、例えばA銀行が三〇%と、同じ債務者が仮におりましたとしまして、今度はB銀行が同じ債務者に対して仮に四〇%という貸し倒れ引き当てをしていたと仮定いたします。そういたしますと、私どもは五〇%ということを主張いたします。ただ、そうするとAとBとが三〇と四〇と、こう違ったような結果ではやっぱり困るわけでございまして、同じ物差しでそこは評価するということになろうかと思います。
 そういたしますと、やはり十九行全体をやってみませんと、一体どういう物差しが最もこの資産検査に対してふさわしい物差しであるかということが出てこないのじゃないかというふうに考えておりますので、ある一つの銀行だけの資産検査が終了したからといって、もうすべての銀行はこの物差しでいくべきだというふうにはならないのではないかと考えますので、先ほど委員が御指摘になりましたように、ぐるっと丸まってといいますか、そんな感じになろうかというふうに思います。

○江田五月君 なるほどね、検査というのはそういうものなんですか、ちょっとびっくりしました。
 あらかじめ物差しがあって、それで検査に行くんじゃなくて、検査した後で物差しをつくるという話ですか。

○政府委員(日野正晴君) もちろん、大蔵省時代にさまざまな物差しがつくられておりますが、ことしの四月から新しい検査方式が導入されましたので、それに基づいた新しい物差しを私どもは今つくらなければならないと思いまして、実は来週から若手の弁護士、公認会計士あるいは商法学者などの方々に集まっていただきまして、検査マニュアルといったようなものをこれからつくりたいというふうに考えております。
 その検査マニュアルはいずれ、ことしの十二月の末に公表したいと考えておりまして、結局その公表される、今準備をしているわけですが、そういったものが将来的には一つの物差しとして皆様方にお示しできるものになるのではないかというふうに考えております。

○江田五月君 どうも疑問ばかりどんどん出てきて、これは時間が幾らあっても足りないぐらいです。
 この長銀のリストラの検討の項目として海外取引からの撤退というのがあると言われましたね。これはなぜですか。

○政府委員(日野正晴君) 十九行は全部が国際業務を展開しているとは申し上げられませんが、かなりの金融機関が国際取引、国際業務に従事しておりまして、資産の内容に占める国際的な取引がかなりの部分を占めているという金融機関もあると思われますので、それを抜きにして全体の資産の状況を把握することができないからだというふうに思えるからでございます。

○江田五月君 ことしの三月の資本注入の際に経営健全化計画を提出させましたよね。そのときに、長銀のものを見ますと随分すばらしい。「当行は、すでに従業員一人当たりの収益性・効率性では日本の金融機関の中でトップクラスの地位にありますが、より強靱な収益体質・財務体質を目指し、資産内容の一層の効率化を推進しています。」などというようなすばらしいことを書いてあって、この当時が自己査定で自己資本比率が一〇・一一でしたかね。しかし、海外取引からの撤退というものが今度のリストラ案に入る。八%をクリアできないんじゃないですか。

○政府委員(日野正晴君) お答えいたします。
 現在、八%は国際基準、バーゼル委員会で決められた八%でございまして、国内行につきましてはその半分の四%ということになっておりまして、仮にもう国内行に徹するんだということになれば四%の基準で十分ではないかというふうに今考えております。

○江田五月君 この三月が一〇・一一、それが四%というようなことが取りざたされる。三月期決算のときのリスクアセットは、長銀は十九兆七千二百七十一億。四%ですと自己資本が七千八百九十一億必要。三月に千七百六十六億円入れた。今回六千億入れればちょうど四%。一〇・一一という自己資本比率は全くの粉飾などというような心配がどんどん出てくるんですが、時間になりましたので、私の質問はここで終わります。──それを聞いておきましょう、その今のこと。

○政府委員(日野正晴君) 何か最後は、仮に今回注入すればという仮定の御質問でございますので、これにはちょっとお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

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