1996/06/07

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衆院・厚生委員会

○江田委員 石田理事の質問時間の中から若干の時間を割いていただきまして、緊急に質問をさせていただきたいと思います。

 菅厚生大臣、日ごろの大変な御活躍に心から敬意を表し、また、本当に心から拍手を送っております。

 私と大臣とはいろいろ縁がありまして、郷里も同じで、大臣の郷里は岡山駅から北の方へずっと山の中へ入っていく。しかし、きょう私が御質問をしたいのは、そちらでなくて、岡山駅から東の方へずっと行ったところに岡山県邑久郡邑久町というところがございます。私の地元なんですが、岡山平野にゆったりと広がる田園地域で、同時に岡山市のベッドタウンでもあるわけですが、そこの小学校、幼稚園で五月二十五日ごろから食中毒事件が発生した。

 六月五日現在、おとといになりますか、小学校一年生の女の子が既に二人お亡くなりになっております。患者数が三百八十二名。邑久小学校というところではおよそ全校生徒の三分の一強になりますか、発症しておる。うち重症入院患者が十七名ということになりました、今の亡くなった二名を含んでですが。お亡くなりになったのは為房佑季ちゃん、難波里菜ちゃん、二人の六歳の女の子であります。最期の様子を聞いたり、御両親を含む皆さんの悲しみを聞いたりすると、本当に胸が痛む。心からお悔やみを申し上げるわけでございます。

 病原性大腸菌O157による細菌性中毒だ、どうも学校給食が原因ではないかとも言われているわけですが、まだ原因は不明で、地元の皆さんのみならず、報道によって全国的にも関心が強く、大変な不安を与えていることだと思います。

 そこでまず大臣に、細かなことではなくて、この事件についての総括的な現在の状況の把握と御認識についてお伺いをいたします。

○菅国務大臣 私もこの邑久町の食中毒事件、特に小さなお子さんが二人も亡くなっておられて、大変心配をいたしております。

 現在、この状況は江田さん本人からお話がありましたとおりでありますが、岡山県邑久町で発生した病原性大腸菌を原因とする集団中毒事件については、県の保健福祉部において対策本部を設置して原因の究明と対策に取り組んでいるところと聞いております。厚生省としても、本事件は二人の死亡者が出た重大な食中毒事件であると認識しておりまして、そうした報告を受けながら、岡山県に対し必要な協力をできるだけ行ってまいりたいと思っております。

 また、昨日ですが、こうした食中毒事故防止のため、全国の自治体に対して関係営業施設等の監視指導を徹底して、そうした予防に万全を期すように通知をいたしたところであります。

○江田委員 この食中毒事件は、まだきょうのことはわかりません。しかし、きのうおととい、日々患者が新しく発見をされているという状況で、広がっているのですね。けさの新聞によりますと、私もどうも地元を離れておりますので新聞報道ぐらいしかわからないのですが、二次感染が起きた。母親、これは児童の母親ですが、十五人症状を訴えて、そのうちの二人は入院をした、こういうことにまでなっているわけでございます。

 今御答弁ございましたとおり、邑久町及び岡山県当局は、原因の究明、発生拡大の防止、再発予防などに懸命に対応しておると思いますが、どこにでもある、日ごろいつでも見られる食中毒ならいざ知らず、こういうO157という比較的めったにない事例の場合に、なかなか地方自治体で対応しろといっても難しいところがあると思うのですね。

 そこで、やはり全国的な見地からひとつ対応を考えてほしい。また、厚生省を中心とした体制の中に専門知識は十分あると思いますので、ぜひ御援助をお願いをしたいのです。昨日、厚生省の担当者の方が私の事務所へ来てくれまして、説明を受けたのですが、前例のない異例の措置として、専門家の派遣も考えておられるということをお聞きをしたのですが、テレビで邑久小学校の校長先生が訴えておられました。まさに涙ながらに、助けてほしいんです、こういうことを二度繰り返しておられたので、これはもう厚生大臣にぜひ陳情したいのですが、前例のない異例の措置で専門家を派遣してくれませんか。

○菅国務大臣 現在の状況は、もちろん法律に基づいてもこういう場合は報告を受けることになっておりまして、町なり県からかなり詳しく報告をいただいております。

 しかし、今、江田委員の方からもありましたが、この事件といいましょうかへこの同じ菌において従来亡くなった例なども他の地域でもありますので、きょう朝、簡単な打ち合わせをいたしまして、まずとりあえず本日、生活衛生局食品保健課の担当者を、今回の事故の原因究明など早期に行うために情報収集ということで派遣することを決めました。

 また、来週十一日には、岡山において今回の原因究明の関係者が集まられる会議をやられるそうでありまして、岡山県からも要請が来ておりますので、十一日には、それに加えて国立予防衛生研究所及び国立小児病院の専門家、今四人を考えておりますけれども、四人をさらに岡山に派遣したい、そういう体制で現在考えております。

○江田委員 心から感謝を申し上げます。

 さて、この原因なんですが、学校給食が原因ではないか、疫学的というのですか、常識的に見て、どうもこういう広がりでこういう発症の仕方だと学校給食ではないか、こんな感じではないかと思うのですが、まだそれも実はそれほどはっきりわかっているわけではないのですね。しかし、共同調理場で調理をしていて、その給食を受けている小学校、幼稚園で発生しているということがある。ただ、一つの学校に集中しているというようなこともありますから、よく調べなければならぬでしょうが。

 さて、学校給食が原因ということになれば、どうも死亡事故が起きたというのは学校給食史上初めてだということになるようで、まだそこまで、原因特定まで至っていませんが、これは文部省、現在どういうふうに認識をしておられるか、あるいはどう対応しようとされているのか。

 特に、今後の邑久町の小学校、幼稚園、こういう児童の支援について、例えば近隣の岡山市へ、授業の再開とか給食の再開とか、こういうものが一体どうなっていくのか、こんなものも含めて文部省から岡山市へ支援の依頼をしてはどうかと思いますが、文部省、来ておると思いますが、お聞かせください。

○北見説明員 現在、岡山県の邑久町の四小学校三幼稚園のうち、二小学校二幼稚園が休園中あるいは休校中でございます。その二校二園につきましては、六月の十日、月曜日から授業を再開するというふうに聞いているところでございます。

 現在、邑久町の共同調理場につきましては、閉鎖されているわけでございます。授業の再開について、六月十日から行うということでございまして、邑久町におきましては、小学校は当面弁当の持参で対応する、それから幼稚園につきましては午前中、十一時半で一応終わるということで対応するという格好になっております。

 それから、近隣の共同調理場の問題でございますが、近隣の市町村の調理場の能力にりきまして、ちょっと余剰能力がないということで、困難でございます。また、岡山市の共同調理場につきましても、邑久町へ配送する時間が一時間以上かかるということで、協力がなかなか難しいのではないかというふうに聞いているところでございます。

○江田委員 授業再開等についても岡山市への支援の依頼をしてはどうかという御質問をしたのですが、それに直接の答えはちょっとなかったように思います。ぜひひとつ文部省としても、注意深く事態を見て、適切な措置をとっていただきたい。学校給食、今大型化しているわけですが、それに伴ってこういう危険もあるのだということですから、これは無関心ではいられないことだと思います。

 さて、「病原大腸菌(O157)による食中毒等発生事例」という資料をいただいたのですが、これによりますと、一九九〇年九月七日、埼玉県浦和市での二百六十八名の患者で死亡二名という事例以来、今回の邑久町の事件まで、全国で十一事例がある。患者のほとんどが十歳未満の子供で、最初の浦和のケースは、これは井戸水が原因と特定された。しかし、それを除けば、どうも他はすべて原因不明となっている。また、ことしはこの邑久町の例も含めて、細菌性食中毒による死亡が全部で四名になっている。例年になく多いということだそうでございます。

 現在、厚生省の食品衛生調査会の食中毒部会においても、大規模食中毒について検討をしている最中であるとも聞きました。きのうは、冒頭、大臣の方からの御答弁のとおり、全国に周知徹底の異例の通知を出したということでございますが、通知だけでなく、今後、こういう食中毒状況というのが変化をしてきているのかどうか、どうもこれも、私の地元の事件ということでありますが、それにとどまらない、現代社会の危機管理問題の一側面という、そういう側面をも持った重要な課題であると思っておりまして、厚生省、文部省初め、ひとつ迅速果敢、さらに抜本的な対応を考えてほしいと思います。

 菅厚生大臣、最後にその辺の決意を伺いまして、私の質問を終わります。

○菅国務大臣 私もいろいろ説明を聞いているのですが、この菌は、発病までに四日ないし七日程度潜伏期間があるようであります。それだけに、普通の食中毒の場合は、大体この食事のときのこれを食べたからというのが比較的特定されやすいのですが、今御指摘のとおり、この病原大腸菌の場合は、例えば過去の例でも、学校給食のようだとか保育園給食のようだということまではわかつても、その中のどの部分が原因であったかという、なかなか最後の特定ができていないケースがほとんどになっております。そういうことを含めて、今回、十一日に会議があるようですが、そういうところでもぜひしっかりした調査をして、とにかく原因をはっきりさせないと対策もなかなか打てませんので、そのことを督励したいと思っております。

 それに加えまして、先ほど江田さん本人が言われました大規模食中毒対策に関する分科会というのを食品衛生調査会の食中毒部会の中に、この四月に設置をいたしまして、この分科会には、学校給食の観点から文部省の推薦による委員にも参加をいただいて、幅広く検討を行っております。

 そういった意味で、学校給食など大規模なそうした中毒が起きる危険性をどうやって取り除くかということについても、こうした審議を踏まえて万全な対策を講じてまいりたい、このように考えております。

○江田委員 終わります。

1996/06/07

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