1993/10/29-6

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参院・ 科学技術特別委員会  6

○市川正一君 長官とは参議院当時からの長いいろいろのおつき合いがございましたので、私はこの機会に率直にお伺いいたしたいと思います。

 午前中、志村理事の質問にも答えられて、長官は自己の信念を貫くことの重要性などを述べられました。ところで、これは十月十六日付の読売新聞の報道でありますが、民社党の米沢書記長が講演の中で細川政権発足時の内幕を披露したというのでありますが、それによりますと米沢書記長は、「江田五月科技庁長官については、『もともと入れるつもりはなかったが、殿の方から』」、原文のとおりであります、「何とか、と言うので日本新党の枠でポストに入れることにした」と披露している。さらに、「エネルギー政策についてあの人はいい加減なことを言ってきたので、」、これも原文のとおりですよ、「夜中の二時、『今まで言ってきたことを言い続けるならこのポストをやれない』と言ったら、(江田氏が)OKと言うのに二秒もかからなかった」と、こういう講演をしているんです。これは事実でありますか。また、事実とすると、あなたの政治理念とどういうかかわり合いを持つんですか、伺いたい。

○国務大臣(江田五月君) もともと入れるつもりがあったとかなかったかとか、あるいは殿がどうとかいうのが事実であるかどうかは、これは私は知りません。組閣のいきさつというのは、それはいろんなことがあっただろうと思いますけれども、それぞれが断片的に自分の知っていることを知っているというだけの話ではないかと思っております。

 ただ私は、ここは事実と違うというところを申し上げておきたいのは、私自身は米沢書記長から電話をいただいたというようなことは、まあ考えてみて、おっしゃる件も含めて今まで一度もないんではないかと思いますが、少なくとも今そこで御指摘になられたような電話をいただいたことは全くございません。

○市川正一君 私は、事実関係をここでせんさくするつもりはないんです。また、まさしく連立与党内部の問題ですから、それに介入する意図は毛頭ありません。ただ、いろいろ午前中からの議論やまた長官御自身の見解を承って、私は、問題はあなただけの問題じゃなしに、またエネルギー政策だけのことじゃなしに、そういう論理というのは、結局ジキルとハイドの論理だと私は言わざるを得ぬのです。

 例えば、AWACSの導入について、党としては反対だが閣僚としては導入を含めた予算案に賛成するというようなことがもしあるとするならば、それは私は国民に対して誠実でない。やっぱりそれは国民への欺瞞だと言わざるを得ぬと思うんです。先ほど来の人形峠をめぐる問題やら、あるいはまた例のプルトニウムの輸送問題などをめぐって、一時はそう思っていたとかあるいは今にして思えばとかいうことを、過ちを改むるにはばかることなかれということでもって次から次へ行くと、それこそライト寄りのセンターじゃなしにライトへ行ってしまうことにならぬとも言えぬじゃないかということを、私、まず二人の仲だから率直に指摘させてもらって、主題である海洋投棄の問題に入らせていただきたいと思うのであります。

 我が国の国民は、もう言うまでもありませんが、海洋に貴重なたんぱく源を依存している。それだけに、今国のロシアによる核廃棄物の日本海への不当な投棄は、国民の健康や命にかかわる問題として重要なものであるということは一致した認識だと思うんです。
 そこで伺いたいのは、八月三十日に、これまでの海洋投棄については調査を前提に影響なしという安全宣言を放射能対策本部幹事会で出しておられる。しかし、そのことと今月十六日に行われた日本海への海洋投棄について、長官はどういう認識、見解をお持ちなのか。また、その根拠は何なのかを簡潔にお答えいただきたい。

○国務大臣(江田五月君) 市川委員とは本当に長いおつき合いでございまして、もうお人柄がよくわかっていますから、何を言われてもそれほど腹も立たずに、ああそういう御指摘はありがたいと思って聞いておるんですけれども、それはそれとして、海洋投棄の問題について申し上げますと、五九年から九二年までですか、長い間ロシアが海洋投棄をやっていた、その影響はどうだろうというので、これは実は現に海洋投棄をされたその海域へ行って調べるというようなことはやっぱり不可欠なことだと思うんですね。

 そこで、ロシアと共同で調査をしなければなかなかそれができない、しかしそれがすぐにできるという体制になかなかならない。そこで、日本独自にということで、この白書をいただいて、この放射能対策本部の幹事会の決定に基づいて調査をしたわけでございます、水産庁とか海上保安庁とか気象庁とかと合同で。その調査の結果を、中間報告を一度し、そして八月の終わりでしたか、この幹事会で結論を決めて、それを国民の皆さんに発表させていただいた。

 その結果が、直ちに国民の健康に影響があるというものには至っていないという、そういう文言。正確には、「現在までの調査によれば、本件海洋投棄により我が国国民の健康に対して影響が及んでいるものではない」という判断になったということなんですが、ただ先ほども言いましたとおり、我が国独自でできる調査だけに基づいているものですから、さらに一層調査をしなきゃならぬというので共同調査を今進めている、調査といいますか調査の取り組みを進めているということなんですね。

 そこで、そういう事実が一つあって、さらに今回海洋投棄があったと。これまでの投棄というのは量としてざっと一万キュリーとかというようなもので、今回は……

○市川正一君 二万と聞いておるんやけれども、どうでしょう。

○国務大臣(江田五月君) 一万九千キュリー。

○市川正一君 それはまあ二万や。

○国務大臣(江田五月君) 済みません。ということで、今回は九百立米、一・〇八キュリーということだったんですが、ロシアのその後の説明によると、いやそれは間違っておって〇・三八キュリーだということですから、そういうロシアの説明を正しいものと仮定をし、これまでのこの調査の、その調査も必ずしも十分とは言えないかもしれませんが、その調査をもとに常識的に推論をしてみると、今回のもので直ちにまだ国民の健康に影響が出てくるということはないであろうと、こういう感じは持っていることは事実です。しかし、これはやってみなきゃわからぬことですから、そういう予断を持たずに、今我が国独自の調査もしておりますし、また共同の調査もきっちりやるということでございます。

 それともう一つは、やはり先ほどもお話しのとおりのことはございますから、これだけで、だからいいという話にはならない。

○市川正一君 そうなんですね。ラウンドナンバーで従来は約二万キュリー、一万九千キュリーですか、今回は一キュリーそこそこだ、だから安全だという、もしそういうロジックで安全宣言を出されるということならば、これは極めて問題であり、非科学的だとあえて私は言いたいんです。

 しかも、この調査というものは三カ月という短い期間の調査でして、調査地点も限られております。肝心の投棄場所からはるかに離れたところでやられているわけですね。ですから、必要にして十分な適切な調査とは言えないわけです。とすれば、私は、核廃棄物が直接投棄された海域の調査をどうするのか、やっぱり速やかに調査を行うべきだと思うんですが、この点どういう御見解ですか。

○国務大臣(江田五月君) これは速やかに調査を行うべきものと思いますし、委員御指摘のとおりのようなロジックで安全宣言を出すようなつもりも毛頭ないのでございます。

○市川正一君 出ちゃっているんだよ。

○国務大臣(江田五月君) いやいや、今回のことについてですよ。速やかに調査をするために今、日ロで作業が進んでいるということでございます。

○市川正一君 確かにこの安全宣言は八月三十日の対策本部幹事会です。しかし、長官御自身が二十五日にロシアのミハイロフ原子力相と会談なさいました。そのときの報道が伝えられておりますけれども、新潟県の柏崎刈羽原発の年間放出量より少ないというふうに相手が言いよりました。あなたは確かに反論しています。しかし、常識的に見て影響は恐らくないだろうが国民は神経質になっている、きっちり調査して国民に影響がないことを伝えたいというふうにおっしゃっているんですね。私は、この態度というのは非常にあいまいだと思うんです。

 実際に報道機関も、例えばこれは朝日新聞ですが、「迫力欠ける対日抗議」という報道もなされております。したがって、私は、やっぱり調査もしないうちから影響がないということを国民に伝えたいというふうな言い方でなしに、もっと毅然とした態度を江田さんとるべきだと思うんですが、長官の存念のほどを伺いたい。

○国務大臣(江田五月君) 一部の報道で委員がおっしゃるようなことが出ていることは私も承知をしております。しかし、これは事実とは異なりますので説明をさせておいていただきたいんですが、ミハイロフ大臣はモスクワでもあるいは日本に来てすぐもでしたかね、とにかく一キュリーだから大丈夫なんだと、日本の方はどうだというようなことをしきりに言われたわけですね。

 私は、それは困ると。困るというのは、日本国民というのはそういうあなたのような説明でそれで納得するような国民じゃないですよ、広島、長崎の経験もあるしということで、日本に来てそういういろんなことを言ってもらっても、それは日ロ関係の前進にとっていい日ロ関係をつくっていくことには何のプラスにもならない、むしろマイナスになる。私どもはちゃんと調査をしようとしているんで、日ロの共同調査をやって、その結果をはっきりと国民の皆さんにお知らせをしたい、そのときにそれが大丈夫というなら大丈夫で、危ない、というなら危ないでと。そういうミハイロフ長官のようなことを言ってもらっては困るということをここで申し上げたのであって、恐らく影響はないだろうとか、国民にそう言いたいとか、そんなことを私は言ったことはありません。

 むしろ明確にこの点は遺憾であることを抗議をし、さらにその報道によりますと、放射性物質の種類などの公表すら要求できずというようなことも解説で書いてあるようですが、それも事実と違って、私どもは明確に物質の種類とか性状、そういうことを明らかにするように求めましたし、またできるならばモニターもさせてほしいとかサンプルもくれとか、そういうことまで申し上げたわけでございます。

○市川正一君 としますと、今旧ソ連、ロシアの核廃棄物の海洋投棄に関する報告書、通称ヤブロコフ報告というのがございます。それによりますと、投棄された廃棄物の放射能について「ストロンチウム90の等価量」という記載にとどまっているんですね。伺いたいのは、こういう放射性核種の内訳もない、こういう報告の仕方は適切と思われるのか。また、政府としてはこれで十分な対策がとれるんですかどうですか。

○国務大臣(江田五月君) そのようなもので適切な情報であるというふうには思っておりません。

 そこで、今回の投棄については、これは昨日、昨々日、モスクワで専門家の会合をやりまして、そこでロシア側から明らかにされたものによると、今回の液体廃棄物に含まれている核種はすべてベータ、ガンマ核種であって、セシウム137が〇・二九キュリー、セシウム134が〇・〇〇二キュリー、ストロンチウム90が〇・〇八キュリー、コバルト60が〇・〇〇二キュリー、そういうことが明らかにされてまいりました。しかし、我が方は、これは数字だけを示しておられるのでさらに分析資料の提供も求めました、先方の方からはガンマスペクトロチャートなどの資料を今後提供するというような約束もいただきましたというような折衝をやっております。

○市川正一君 その一部が明るみに出てきたわけでありますが、私はやっぱり、今のデータも含めて放射性核種の内訳とそれぞれの量がわかってこそ影響評価が可能になりますし、また対策も可能になってきます。ですから、引き続きロシア政府に対して詳細、具体的にはこれまで投棄した放射能廃棄物の種類、濃度、量、そういう詳細なデータを必ず出させる。同時に、さっき長官もおっしゃいましたが、投棄された海域に対する直接の調査、こういうことも共同で行うとか、そういうところへこの問題を詰めるべきであると思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(江田五月君) そのように思います。

○市川正一君 ロシア政府はそういう態度に対して逆に勝手なことをぬかしておるわけですね、例えば援助をよこせとかなんとかという。だから、そこは毅然と頑張ってほしい。

 それで、ロシア政府は日本海への二回目の投棄は中止するということを言っていますけれども、海洋投棄それ自体をやめるとは約束をしておらぬのですね。こういうロシアの残念ながら事態というのは、あの核軍拡競争のもとで処理処分について考慮することもなしに原子力潜水艦や核兵器を大量生産してきたその姿勢の結果が、矛盾が、破綻が露出してきたものであるというふうに私は思います。

 そこで、最後にお聞きしたいのは、国民の命と健康にかかわるこの問題について、政府は、放射性廃棄物の海洋投棄を即時全面禁止するということ一及び今回の問題について言えば、短期間のスポット的な調査ではなしに長期的な常時監視体制をつくること、また効果的な観測地点の設定など徹底的な海洋環境放射能調査を実施すべきである、こう思うんですが、こういう提起に対して長官の決意のほどを承って質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(江田五月君) 我が国としては、この放射性廃棄物の海洋投棄を今後とも行う意思はありません。国際的にはロンドン条約締約国会議においてということでございまして、これまで申し上げたようなことでございます。

 そしてその次のことですが、長期的かつ効率的な監視を続ける必要、これはあると思います。このために、日本周辺の海域を網羅した放射能調査定点を設定するとともに、従来の調査海域を広げた日本海周辺海域の広域的な海洋放射能調査の実施及び海産生物調査の実施等について計画をしておりまして、平成六年度の予算では、例えば日本周辺海域の放射能監視体制の充実として一億百万円、あるいは海産生物調査等の充実について五千九百万円、広域海洋調査の実施、これは日本海だけでなくてオホーツク海、カムチャツカ沖等すべてを含むということでございますが、これで一億二千四百万円、その他関連ということで全部で三億六百万円の概算要求をしているところでございまして、ぜひ委員も御支援を賜りたいと思います。

○市川正一君 終わります。

○永野茂門君 まずもって、大臣が哲学のある科学技術政策を構想し、そして強力に推進していく御努力をなさっていることに敬意を表しますとともに、中長期的にその成果に期待したいと思います。

 質問は二つございます。
 その第一は、我が国のプルトニウム利用技術の確立は我が国のエネルギー政策上極めて重要なものであります。ところが、恐らくこれは特殊な平和グループの声が多いと思いますけれども、海外から我が国が兵器開発へ移行していくんではないかということが何度か疑惑を投げかけられております。平和利用に徹し、そして適切な管理をやっている我が国の状況を透明化して外に示すことは極めて重要なことでありまして、それによって国際的また国内的な世論に支えられてスムーズな技術の確立が可能になると思います。国際的にも先ほどからいろいろとお話がありましたプルトニウム及び高濃縮ウランの国際管理の制度について検討が始められ、そしてまた、我が国においてもプルトニウムの国際管理検討委員会が具体的提案を検討しておると聞いております。

 そこで、これらを含みまして、この海外からの疑惑を解消するためにどういうようなお考えでどういうことをなさろうとしているかということをまずお伺いしたいと思います。

○国務大臣(江田五月君) プルトニウム利用技術の確立のエネルギー政策上の位置づけ、これは触れません。プルトニウムというものの兵器転用について、あるいはプルトニウムを利用した兵器開発について日本がいろいろ疑惑を持たれていて、それについて一体どうかというところに限っての御質問だと思いますので、これをお答えいたします。

 確かに、今北朝鮮の核開発疑惑というものがいろいろ言われているとか、日本の国際社会の中で置かれている位置からすると、例えばヨーロッパなどの普通の物の見方で言えば、日本にこういう技術があります、ここでこういう核開発の疑惑があります、それならば日本もオプションとして核兵器開発をするのは当たり前です、そうするんじゃないですかというふうに見られるという、そういう事態はあるだろうと思うんですね。

 しかし、これは先ほども言いましたとおり、それは全く日本としてはそういう意図は毛頭ないし、技術的にもそういうような技術開発はやらないということでございますので、そこのところの世界じゅうの誤解を解いていかなきゃいけない、あるいはそこのところを世界に正確に認識をしていただかなきゃならぬ。その上で日本の科学技術の発展、プルトニウムのこれからの展開、そういうものについて世界の理解や協力をいただかなきゃならぬ。これはこれから日本がとるべき非常に重要な政策だと思っております。

 もとより日本は昭和三十年の原子力基本法制定以来、原子力の利用というものは平和目的に限るという、しかも国際協力でやっていくという、こういう立場を確立しているわけで、しかも従来から非核三原則、これも国是として堅持をしてきたところでございます。これをこれからも大切にしていくと同時に、国際的に核兵器の不拡散に関する条約、いわゆるNPT、これを批准し、また国際原子力機関、IAEAの厳格な保障措置、これは相当日本にとっても負担ではあるんですけれども、しかしこれを全面的に受け入れをする、こういう非核兵器国としての責務を忠実に果たしているわけでございます。

 今後とも原子力基本法及びNPTの精神にのっとり、またNPTについては、つい先日、無期限延長ということを支持する。同時に、それはもちろん現在の核兵器国が核兵器をそのまま保有していくことを認めるということではないですよ、核軍縮に努力しなきゃいけないんですよということもあわせ言明をする。そういう態度をはっきりさせて、世界の核不拡散体制の維持強化に貢献をしていくとともに、我が国の原子力開発利用については厳に平和目的に限って推進をしていく、この態度を堅持していきたいと思います。

 また、我が国のプルトニウム利用の平和目的ということ、これは私自身も先日のIAEAの通常総会で政府代表として申し上げました。その際には、我が国は唯一の被爆国であるから、だからこの点は本当に真剣に思っているんだ、こういうことも強調させていただいたところでございまして、そういうあらゆる機会をとらえて国際理解を図ってまいりたい。

 さらに、単に言葉だけではなくて、プルトニウム利用の透明性をより高める、そのためにプルトニウム国際管理体制というものをつくっていくために我が国が役割を発揮していきたいということで、国際的な検討を重ねるということも申し上げたところでございます。
 まだ政府として中間取りまとめという段階で、これから各省庁にもたたいていただいて、あるいは外国の意見もいろいろ伺って、日本の提案というものをつくっていきたい。こんなことを考えておりまして、委員おっしゃる点は厳にこれから守ってまいりたいと思っております。

○永野茂門君 第二の質問はロシア社会の安全意識に関することでありますけれども、チェルノブイリを初めとして原発の事故がいろいろと続いて起こっておりますし、本日も放射性物質の海中投棄について同僚の方々がいろいろ御質問になりました。また、テレビ等で拝見するところによりますと、原爆の試験場、核兵器の開発試験場等の周辺においては大変な被害が出ているようでありますが、こういうのを見ますと、どうも私はロシア社会の安全意識が、いいとか悪いとかは別にして、我々にはちょっと理解しがたい面があるのではないかということを感ずるわけであります。

 今、例に挙げましたような原発の安全でありますとか、核兵器あるいはミサイル兵器等の解体その他に伴いまして、安全確保について、我が国に影響する安全要素だけではなくて、地球の安全というようなことの観点に立っても、ぜひロシアの関係当局と共同していろんなことを調査し、そしていろいろと対話をし、どういうことが必要なのかというようなことについて発見をして、対日支援の重要な一つとして、この安全性の確保について何らかの援助、支援を行う必要があるんではないかと、こう考えるものであります。

 これはもちろんすぐれて外務省的な面もあるわけでありますけれども、科学技術庁としては、あるいは長官としてはどういうようなお考えをお持ちか、お伺いしたいと思います。

○国務大臣(江田五月君) この原子力というものの開発利用についてやはり一番大切なことは、安全文化といいますか、原子力というものは一歩間違えば核兵器にもなる、核兵器でなくても非常に危険なものである、したがって安全に安全を重ねてやっていかなきゃいけないんだ、やる以上は。そういう安全文化というものの確立というのはこれはもう大変大切で、安全文化がしっかり確立していないところでみだりにこの原子力の開発利用をやってもらっては困る、そういう立場を私どもは貫いていきたいと思っております。

 ロシアについてはその点でいささかどうなのかなと思うようなことがございます。実は先日、十月二十七日でございますが、このロシアの原子力発電所の安全性ということについて、科学技術庁とIAEAとの共催で東京でシンポジウムを行いました。そのシンポジウムに来賓としてミハイロフ大臣がお見えくださったということでございますが、ロシアからも技術者を呼び、IAEAの専門家も来、日本の学者も入ってみんなでそういう議論をしたところでございます。

 ロシアの原子力発電所の安全性確保及び核兵器の廃棄等、これはもう一義的にはもちろんロシアがやることですけれども、やはり委員おっしゃるように、国際的、地球的な問題ですから、科学技術庁としてもこれまでの安全確保の経験を生かして、すぐ隣のことですからこれは支援をしていきたいと思っております。また先日、日ロ間で協定も結ばれましたわけですが、核軍縮の進展が国際社会の平和と安定にとって重要な課題であるという観点から努力をしていきたい。

 具体的には、原子力安全の支援はロシアの原子力技術者に対する研修事業、こういうものもやらなきゃならぬ、あるいは原子炉配管からの冷却水漏えいを検知するための運転中異常検知システム、これをロシア型原子炉へ設置する、こうしたこともしていかなきゃならぬ。これで今、予算もちゃんと組んで、委員会もつくってやろうとしているところでございます。

 さらに、核兵器の廃棄等については、この廃棄に伴って生ずる核物質の貯蔵管理のための厳格な監視体制の整備等に関する支援方策、あるいは核物質をエネルギー源として平和利用をするそういう方策、保障措置制度の確立のための支援方策、こうしたことについて技術的観点から検討を行っておりまして、今後とも原子力の平和利用という大原則にのっとって我が国の支援が効果的なものとなるよう努力をしてまいります。

○永野茂門君 ありがとうございました。
 まずまずの御健闘、御活躍をお願いいたしまして、質問を終わります。

1993/10/29-6

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