1993/10/22-    

戻るホーム主張目次会議録目次


衆院・科学技術委員会 5

○臼井委員長 田中甲君。

○田中(甲)委員 臼井委員長より発言を許可されました。ただいまより質問させていただきますさきがけ日本新党の田中甲であります。

 エリツィン大統領訪日に際して発表された東京宣言においても、ロシアが行っている放射性廃棄物の海洋投棄が周辺諸国に深刻な懸念を呼び起こすものである、この認識が盛り込まれたばかりであるにもかかわらず、このような事態になりました。大変に遺憾に感ずるところであります。私は、前段者の皆さん方がるる御質問なさいましたので、かなり私なりに認識ができたという、そんな気持ちでありますから、ポイントを絞ってぜひとも一点だけ御質問をしたいと思います。

 と申しますのは、今回の投棄は、科学的に見れば確かに放射能レベルは低いもののようでありますが、この投棄が我が国国民に大きな影響と衝撃を与えたということは、やはり重要視しなければならないと感じます。ロシアには、今後二度とこのような海洋投棄を行わないように求めるとともに、我が日本においても、国民の不安の解消のために最大限の努力を払うべきである、そのように考えております。

 江田大臣は、放射能の問題に関して関係省庁の取りまとめを行う放射能対策本部の本部長でもあります。そこで、今回のロシアにおける放射性廃棄物の海洋投棄問題をどのように踏まえ、今後どのように対応していかれるおつもりか、大臣にお伺いしたいと思います。

○江田国務大臣 科学技術庁長官というのは、その職務上いろいろな職務を兼ねておりまして、原子力委員会の委員長であるとか宇宙開発委員会の委員長であるとかいろいろあるんですが、そうしたものの一つに放射能対策本部の本部長というものがございます。

 この放射能対策本部というのは、昭和三十六年に、これは核爆発実験に伴う放射性降下物、フォールアウトという、これがだんだんふえてくる、国民が大変心配になる。とにかく死の灰ですから、これは心配になるのも当たり前。田中委員お生まれになって直後ぐらいのことなんでしょうか。私どもはちょうど大学生ぐらいのときなんですが、本当に大パニックで、そういうときにできて、放射能についての対策を行っていくんだということでいろいろなことをやってきたわけですが、放射性物質の降下ということじゃなくて、海洋の汚染といいますか海洋に対する投棄といったことが今度だんだんと問題になってきておりまして、今までは核実験あるいは旧ソ連の原子炉衛星の大気圏再突入とか、チェルノブイリの灰がどうなってくるのかとか、そんなことをやっていたのですが、放射性廃棄物海洋投棄というこの新しい課題についても迅速に対応していきたい。

 とにかくこの分析をしっかりして、人体に関する影響等について十分研究を強化して、そして必要な措置をとっていくために最善を尽くしていきたいと思っております。

○田中(甲)委員 ただいま大臣より、今回の海洋投棄に関しても早急に調査を実施していきたいとの答弁をいただきました。どうぞよろしくお願いをいたします。

 特に我が国の国民というものは、放射能や放射線に対して極めて関心が高く、ある意味では神経質になっている、そんな一面もあると思います。そのため、環境における放射能の現状について常に国民に正しい情報を提供する、極めてこれは重要なことであると思います。そのために、科学技術庁長官が本部長をされているこの今お話を伺いました放射能対策本部、一層重要な役割をこれから担っていかれることである、そんな認識を私もさせていただいておるところですが、この際、簡潔で結構でありますが、放射能対策本部がどのような体制で成り立っており、これからどのような役割を果たしていくか、ここで改めて若干お聞かせをいただければありがたいと思います。

○江田国務大臣 先ほどもちょっと触れましたが、昭和三十六年十月三十一日に閣議決定がございまして、そこで設置をされました。これは当時のことを思うとなるほどなと思うのですが、内閣に臨時に設けるということでございますが、現在まで続いているわけで、私はこれはもう臨時という枠は超えておるんだろうなという感じを持ちますね。「放射能測定分析の充実、人体に対する影響に関する研究の強化、放射能に対応する報道、勧告、指導その他放射能対策に係る諸問題について、関係機関相互の連絡、調整を緊密に行なう。」そういう所掌事務が、この閣議決定によって定まっているわけでございます。「関係機関相互の連絡、調整」ということでございますが、放射能対策本部自体がいろいろなアクションもとれると私は思っております。

 科学技術庁長官たる国務大臣が主宰をする。長官に事故があれば、内閣官房副長官または科学技術庁の事務次官が代理をする。こうやって放射能対策本部員というものが決まっておりまして、副本部長が副長官、科学技術事務次官、厚生事務次官……

○臼井委員長 長官、済みません。途中で申しわけがありませんが、ほかの委員会で御質問されるということなので、ひとつ簡便に。

○江田国務大臣 わかりました。あと本部員がずらっと並んでおり、さらに幹事会というものがありまして、幹事長が原子力安全局長、さらに幹事がずらっと並んでおる。これまで、先ほど申し上げたような活動をしてきたということでございます。

○田中(甲)委員 ありがとうございます。放射能対策本部の役割をどうぞ充実強化させていただき、最大限にその機能を発揮していただきたいと思います。
 若干私のいただいた時間を余してしまいましたが、鮫島委員に譲りまして、私の発言を終わります。

○臼井委員長 鮫島宗明君。

○鮫島委員 日本新党の鮫島宗明です。時間もありませんので、やや紋切り型の質問になることをお許しいただきたいと思います。

 十月十七日にTNT27より日本海沖に投棄された放射性廃棄物の形状と数量及び放射線量について、科学技術庁がロシア側より入手しているデータについてお教えいただきたい。

○江田国務大臣 これは二種類のものがある。二種類というと変ですが、ロシアから今回の放射性廃棄物の海洋投棄の概要についてプレス発表が行われ、さらにそれに引き続いて説明を受けた、これが一つです。もう一つは、IAEAにロシアから通告が行っている。

 二種類のものがあるわけですが、IAEAへの通告によりますと、前後二回やりますよ、その二回をトータルしますと、体積は約千七百立方メートルですよ、放射能量は二・一八キュリーですよ、核種はアルファ線を出すような核種はありません、ベータ線、ガンマ線を出すものですよ、そういうものでございまして、ロシア側からの発表によりますと、そのうちの一回目は体積が約九百立方メートル、放射能量が一・〇八キュリー、核種はストロンチウム、コバルト、セシウムを含むがアルファ核種を含まない、そういうもので、二回目についてはこれが中止をされた、こういうことでございます。

○鮫島委員 いまもう一度、放射性同位元素の種類及びその元素を含む化合物、おわかりでしたら。

○江田国務大臣 核種を完全に特定されているわけではありませんが、アルファ・エミッティング・アーディフィシャル何とかというものはない、こう書いてあります。ストロンチウム、コバルト、セシウムを含むということで、その核種がどういう化合物の形になっているかということについては、私ども今の段階では情報を入手しておりません。

○鮫島委員 コバルトの放射性同位元素がガンマ線を出しているということでよろしいでしょうか。政府委員の方から。

○笹谷政府委員 そのように理解していただいてよろしいかと思います。

○鮫島委員 ガンマ線の海水中での飛距離について、おわかりでしたら。――それは後ほど調べて教えていただければいいです。

 長官は、二カ月ほど前に筑波の研究学園都市を御訪問されたと聞いております。長官の科学技術に対する大変真摯な態度、科学研究に対する深い理解が筑波の研究者の間でも大変好評を呼んでおりまして、こういう長官のもとだと日本の科学技術も大いに進むのではないかという期待をされているそうですけれども、筑波にガンマフィールドというのがあるのを御存じでしょうか。筑波の少し先の茨城県の常陸大宮というところですが、農林水産省の放射線育種場。

○江田国務大臣 科学技術は本当に素人でございまして、筑波へ行ったときも一生懸命とにかくお聞きはしたのですが、昔々高校時代に、そういえば陽子と中性子となんという話を聞いたななんというところから始まるわけですから、なかなか理解ができなくて困っております。残念ながら今のお話の施設は存じておりません。

○鮫島委員 茨城県の常陸大宮にあります農林水産省の放射線育種場というのは、半径百メートルの円形の圃場でして、真ん中にコバルト60の線源が置いてあって、そこからガンマ線が円周上に放射されるようになっている極めて特殊な、突然変異を誘発するための育種場ですけれども、そのように、ガンマ線は空気中では約二百メートル以上の飛程を持っておりまして、ガンマ線が当たることによって遺伝子の破壊を引き起こす、そしてさまざまな突然変異が出るわけですけれども、その中で有用なものを農業上利用するということで放射線育種場というのはできていると思いますけれども、トータルの放射能量が例えば一キュリーであっても、一キュリーというのは最近の単位でいえば約四百億ベクレルぐらいだと思いますけれども、たとえ一キュリーであっても、それが例えばすべてコバルト60でガンマ線を放射する形で海中に投棄されると、これは普通の同じ一キュリーの安全なものといいますか、例えば炭素14のようなものに比べて、大変海洋生物に与える影響が大きいということがありますので、どういうものが捨てられたのか、どういう化学的性状を持っていたのかということを、ある意味では投棄前に把握することが非常に重要ではないかという気がいたします。

 ロシア側が今回投棄した物質について、詳しいデータを提出するように要求するのが長官の言う科学的な態度ではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。

○江田国務大臣 委員の深い学識の前には脱帽するほかないのでございますが、私も、おっしゃるようなことなのだろうと思います。

 一般に、放射性廃棄物の正確な影響評価を行うためには、少なくとも核種、どういう核種であるのか、核種ごとの放射能量などの情報が必要であって、これは、今後、先ほど言いました専門家会合あるいは作業部会、いろいろございますので、そういうところで必要な説明を受けるなど、明確な情報入手のために努力をしていきたいと思います。

○鮫島委員 先ほどの、どの委員に対する御答弁かちょっと忘れましたけれども、きょう原子力大臣が来ておられるということですので、ぜひその大臣にも、この前投棄した成分の詳細なデータを出すように要求していただきたいというふうに思います。

○江田国務大臣 原子力省のミハイロフ大臣が成田にお着きになりました。昼の休みの間に会おうと思ったのですが、ちょっと飛行機がおくれて間に合いませんでした。この委員会が終わればお会いできるのではないかと思っておりますが、ちょっとまだ、よく、完全にセットされておるわけではございません。お会いできれば、またそのようなことも含めいろいろ、もっとも、きょうは時間がないかと思いますが、しばらくおられますので、いろいろお話をしたいと思います。

○鮫島委員 私がこだわりますのは、多分、投棄後もう既に数日経過しておりますけれども、一週間ないし二週間たって、しかも投棄した地点よりかなり離れた場所での海水のサンプルを採取して調べても、まず九分九厘何も検出できないことが大いに予想されると思います。ましてや、ただいま投棄海域内の調査も外務省からロシアの方に申し入れているということですけれども、投棄地点で調査したとしても、多分、二週間ぐらい経過した後では、恐らくサハラ砂漠にまかれたゴマ粒を探しに行くようなもので、ほとんど何もつかむことができない。多分、どんな核種を捨てたかも知ることはできないと思います。

 今度のロンドン条約についての会議等々で、ロシアの投棄方法については国際的批判が高まると思いますけれども、聞くところによると、かなり、その廃棄物がもう既に貯留庫にいっぱいになっているということもあって困り果てて、いつまた捨てに来るかわからないという一定の不安もあると思うのですけれども、もし次にロシアが強行投棄を企てた場合には、日本の政府の調査船が横づけして、できればその投棄をしている原液を、これは少しでも、一ccでも結構だと思いますけれども採取する、採取しに行くということを通告する。もし、もう一度今回のようなことをすることが事前に何らかの方法で把握できた場合は、政府としては、調査船を横づけにして投棄原液をサンプリングしたい、そういう通告をするというのはいかがでしょうか。

○江田国務大臣 先ほどもどなたかの御質問にお答えをしたのですが、私としては、これまでの経緯からして、中止をする、一年半ほどは投棄をせずにやっていける、その間に何か考えなきゃという、こういうロシアの態度でございますから、そういう態度、手のひらをひっくり返すように覆してまた強行するということを前提に、いろいろなことを考える必要はないと思っております。

 ただ、おっしゃるような方法というのは一つの方法かどば思いますが、そんなことにならないように努力をしていきたいと思っております。

○鮫島委員 それは、そういうことがあるかないかというよりも、先ほどもちょっと話題に出ていた閣僚懇談会で、国民にわかりやすい毅然たる態度をとる必要があるだろうということが閣僚懇談会で話題として出たということですけれども、これはロシアもそういうことをするかしないかというよりも、ある種の、もしそういうことをする場合は調査船を横づけにするということを通告することによる抑止力、通告することによって、ロシアが幾ら困っても捨てに来ないという、一種の抑止力を働かせるという意味で通告の価値があるのではないかと思うのですけれども、外務省の御判断をお聞かせいただけますでしょうか。

○林説明員 外務省といたしまして、調査船が直接その投棄船に横づけして採取するその他のことがどういう科学的な意味を持つか、ないしはどういう状況にあるかを判断する知識を、申しわけございませんが私たち持っておりませんので、そういうことが有効であるという意見が政府部内であるのであれば、それをロシア側と相談するということはあり得ることだと思っております。

○鮫島委員 私は、割合さっきわかりやすく、その化学的性状を把握することがいかに大事かを説明したつもりなのですけれども、液体といっても大きく分けて二種類あって、水に溶ける液体と水に溶けない液体、あるいは比重の重い液体、軽い液体。投棄されたものが例えば油状のものだったとしますと、これは表面に果てしなく薄く延びて、それがやがては沿岸部に廃油ボールのような形で集積してくるということもあるわけですので、どういう成分のものを捨てているか、また、比重が重いものでしたら下の方にたまるでしょうし、また、同じ一キュリーといっても半減期がどうかということがありまして、例えば燐酸のP32ですと十四日程度の半減期。ところが、先ほど長官がおっしゃられた中にあったストロンチウム90あるいはセシウム137というのはそれぞれ二十八年の半減期を持っていて、同じ一キュリーといっても、すぐそれが消える放射性物質と、長く、三十年、二十八年たっても半分にしか減らない放射性物質、さまざまな種類があるわけです。

 そういう意味では、何を捨てているかというのを把握するというのは科学的根拠がないと外務省の方がおっしゃるのは、私には全く理解できないのですけれども、このような説明でも、まだ外務省としては原液を採取する必要がないというふうにお考えでしょうか。

○林説明員 外務省として、原液を採取する必要がある、ないという判断をいたしかねますので、そういう判断をし得るところの御意見を聞きたいというふうに思っております。

○鮫島委員 そういう判断をし得るところの御意見をお聞かせいただけますでしょうか。

○江田国務大臣 鮫島委員のおっしゃることは、私はそのとおりだと思いますが、しかし、私自身の科学技術的な知識というのは乏しいので、政府委員から答弁をさせます。

○笹谷政府委員 今先生が御説明されたのはそのとおりでございまして、この捨てられるものがどういう性状のものかということは、その後の、この廃棄物をどう処理していくか、あるいは海水中でどのような挙動を示すか、そういうことを科学的、技術的に調査する上では必要なデータだと考えております。

○鮫島委員 時間がありませんので、一つだけ最後に御質問いたします。
 多分、今回の事件で、国民の側から見て一番印象的だったのが、あのグリーンピースのゴムボートではないか。十五メートルの近くまで寄っていってガイガー・カウンターで測定していましたけれども、その針の振れまでテレビで全国に放映されたのが大変印象的でした。グリーンピースの船があそこまで行くのに、日本の船がなぜ近づけないのだというのが、一般的に国民が感じた疑問ではないかというふうに思います。

 グリーンピースからの連絡がなければ、今回の投棄について日本政府としては知ることができなかったというのは、事実として再確認してよろしいでしょうか。

○江田国務大臣 先ほど午前中にも私ちょっとその関連で申し上げたのですが、オフィシャルとか主権とか公的とか官とか、これはなかなか、かた苦しいものでございまして、そういうかみしもをつけてできることもあるけれども、かみしもをつけているがゆえにできないということもあって、そういう役所サイドでここまでしか行けない、しかし、その先はいろいろなまだまだ情報のあるいは知識の分野がありますよ、いろいろな人たちがそういうところで活動していて、そういうものを得てくるということは、そういう役所が手の届かないところの情報というのは大変大切だと私は思っておりまして、だからこそ、いろいろな人の声も聞きたいということを申し上げていて、そのいろいろな人たちというのはグリーンピースも例外ではない。

 ただ、残念ながら、今回は私どもグリーンピースから連絡を受けてはおりません。したがって、グリーンピースの連絡で今回のことを知ったということではありません。

○鮫島委員 外務省にお聞きした方がいいのかもしれませんけれども、では、どうして知ることができたのでしょうか。少なくとも投棄を開始する前に、既に報道等で明らかになっていたと思いますけれども。外務省。

○林説明員 土曜日以降の報道は承知しておりますが、我々が投棄の事実を確認いたしましたのは、ロシア外務省からの説明でございます。

○鮫島委員 投棄の事実を確認したのはロシア外務省からの説明というと、先ほどおっしゃっていた十八日、次の日でしたかね。そうすると、放射性廃棄物輸送専用船が向こうの港を出て日本海に近づいているということは、その航行中も、外務省としては全然知らなかったということでしょうか。

○林説明員 テレビその他の報道では承知しておりますが、公式には承知しておりません。

○鮫島委員 大変何か大きな問題が最後に残ってしまったような気がしますけれども、時間ですので、最後に一つだけ、長官に。

 私も、グリーンピースのアクションがすべて正しいとは思いません。時にはかなりエキセントリックな、非科学的な態度をとることがあると思いますけれども、少なくとも今回のグリーンピースの行動は、私は、国益に沿うものではないかという気がいたします。是々非々を旨とする日本新党の党首のお気持ちも考えれば、今回のグリーンピースの行動については、ある意味では、長官から礼状を出してもいいのではないかなという気がいたしますけれども、いかがでしょうか。

○江田国務大臣 私は社民連の党首でございますが、礼状というのがいいかどうか、この場で謹んで脱帽したいと思います。

○鮫島委員 どうもありがとうございました。
 質問を終わります。

○臼井委員長 笹木竜三君。

○笹木委員 民社党・新党クラブの笹木竜三です。
 ロシアの放射性廃棄物の投棄の問題について、幾つか質問させていただきます。
 まず最初に、この放射性廃棄物の海洋投棄の結果、海洋環境に与える影響の評価について、どういうふうにお考えになっているか。報告書等は読ませていただいておりますけれども、例えば容器が腐食した場合、中期的に生物への蓄積の問題、そういったことも含めて、影響の御評価、どのようにされているか、お願いしたいと思います。

○江田国務大臣 ロシア側の発表によると、海洋投棄で約一、一・〇八キュリーですかの液体放射性廃棄物が日本海に投棄された。一方、過去、旧ソ連、ロシアが日本海において約一万キュリー以上の液体放射性廃棄物を投棄しており、これの我が国への影響というのは、液体だけではなくて固体のものも一緒にあわせ調査をいたしましたが、本年春の海洋環境放射能調査で特段の異常が見られなかった。そこで、その時点で、我が国国民に対して影響が及んでいるものではないという判断をした。

 この二つのことを前提に、常識的に判断をすれば、今回は、一万キュリーに今回一キュリー程度が追加になったということであるから、その前後で海洋環境中の放射能レベルが有意な変化、意味のある変化をするとは、常識的には考えられないであろう。

 しかし、これはロシアが言っていることを事実だと前提にしての話で、もっともこれがうそであるという疑う根拠も何もないのですが、事実を前提にしたって、それでそれほどおかしな話ではありませんが、事実だということを前提にしているわけですから、念には念を入れてきっちり調査をした上でなければいけないので、調査について何らかの予断や偏見があってはいけない、これは言うまでもない。

 ということでございますが、今回は、もう先ほどからお話にあったまさに垂れ流しですから、容器の腐食とかそういうようなことは考える余地がないと思っております。

○笹木委員 日本として、先ほどから何回かお話ありますけれども、海洋投棄について新聞等でいろいろ報道ありますけれども、今後基本的にはやらないという方向で検討されているのかどうか。

○江田国務大臣 我が国の方針としては、科学技術的見地からいえば、IAEAの基準にのっとった海洋投棄は安全上は心配ないという判断は持っておりますが、しかし、陸上での処分も随分技術的に進んでまいりましたし、関係国のいろいろな懸念もありますから、これまでも例えばロンドン条約の締約国会議におけるモラトリアム決議、二度にわたるものに反対とかあるいは棄権とかしておりましたが、しかし、関係国の懸念も踏まえて海洋投棄はやらないということでずっと来ておりますし、今後とも低レベル放射性廃棄物の海洋投棄というものはしない方針で進んでいくことができると思っております。

○笹木委員 二つ目の質問なのですけれども、今後のロシアのこういった海洋投棄について、まだ今後もやるかもしれないという不安が依然として残っているわけですけれども、そうしたことを防ぐために、例えばロシアでの処理施設あるいは備蓄施設、そういったものに対する協力、援助、これを日本からロシアに対してする考えがあるかどうか、お願いします。

○江田国務大臣 これは、基本的には自分のところで出した廃棄物はやはり自分のところで処理していただくというのがこれが基本で、ですから、第一義的にはロシアが自分の国の義務としてやっていただきたいということだと思うのですね。

 ただ、ロシアというものが今どういう困難にあるかということは、これはだれも皆よく知っているわけで、ロシアの市場システムへの移行とか、あるいは民主的な、民主主義政治体制への移行とか、こういうものを極力応援をしていこう、冷戦構造崩壊後の世界の秩序をちゃんとつくっていこうというのは、これは世界共通の課題ですから、そういう立場を踏まえて、今のロシアの窮状のもとでなかなか、おまえのところが一義的には責任だよと言ってもその責任をきっちり果たすことができないとすれば、これはロシアと協議の上で日本としても最大限の協力を惜しまない、こういうことだと思います。

○笹木委員 来年度からですか、ロシアの核兵器の解体作業について、アメリカとECと日本でお金を出し合ってということで、その備蓄とかについては日本も協力をするということになっている、備蓄施設等について協力をするというようなことがあったと思いますけれども、こういった費用を放射性の廃棄物の備蓄あるいは処理施設ということの協力に使うことは考えているのかどうか。できれば、大臣とともに外務省の方にもお答えいただきたいと思います。

○江田国務大臣 冷戦終了後、ロシアの核兵器解体あるいはミサイルの処分、こうしたことが課題になっておりまして、解体をすればいろいろな核物質が出てくるわけですね。ミサイルの場合には液体燃料が出てくるとか。それから、ロシアとか東ヨーロッパ、中部ヨーロッパの原子力発電所、これをもっと安全なものにしてもらわなきゃというそういう心配もあったりで、そうしたことについて、国際的な取り組みの中でいろいろとこれからロシアに協力をしていかなきゃいけないと思っております。

 我が国としても、一億ドルという資金を用意をしてそうした協力をしていきたいと思っておるのですが、これは先般のエリツィン大統領がお見えの際に、そういうことを話をして文書もつくったはずですが、ちゃんと約束をして今後進めることになっておりますが、具体的な進め方というのはこれからの課題だと思います。

○林説明員 旧ソ連の核兵器の解体、廃棄の支援のために一億ドルを供与するということにつきましては、本年四月にG7の外相・蔵相会議が東京でありました際に、日本の方からコミットをしたわけでございます。

 これに基づきますロシアとの取り決めが、先般エリツィン大統領が訪日しました際、署名をすることができました。旧ソ連の中で核兵器を現時点で所有しております共和国は、ロシア以外にベラルーシ、カザフ、ウクライナの三共和国がございまして、これらの国々とも取り決めの交渉を今行っているところでございます。

 したがいまして、これらの四共和国との間に取り決めをつくって、先ほど申し上げました一億ドルを利用して核兵器の解体に伴います事柄、それからそれに関連する分野、例えば環境その他の分野について日本として協力をしていこうというふうに思っておりますが、具体的に何にどう使うかということについては、ロシアとの場合にはロシア側との協議、調整をいたさねばなりません。

 早急にその会合を開くことにいたしておりますが、その場で、我々としては環境という観点からも、本件海洋投棄に関する事柄にこのお金の一部分を振り向けるということでロシア側と話し合いをしたいと思っております。

○江田国務大臣 ちょっと言葉が足りなかった点があるかと思うのですが、原子力発電所の性能の向上は、今の一億ドルの範囲には入っていないのです。それはまた別の話ですが、そういうテーマもあるということでございます。

 それから、核兵器の解体自体については、これは軍事技術になるのでちょっと慎重にということですが、解体後の核物質の貯蔵とか処分とか処理とか、いろいろなことがあると思います。

○笹木委員 新聞等の報道で、この費用を、今言った廃棄物の処理ですとか、ロシア側が軍事技術へ転用するなど、悪用されるようなおそれもあるというような、そういった懸念があるように書かれておりました。例えば、実際に核兵器の修理などの軍事的な目的、そういう施設に悪用するのじゃないか、そういったコメントが新聞報道でもありますし、そういう不安があって、今この予算をそのことに使うことに対してちゅうちょがあるのか、その点について御確認させていただきたい。

○江田国務大臣 その悪用というのは、どういう文脈かちょっとはっきりしないのですけれども、今回の一億ドルで液体放射性廃棄物の処理技術のための施設をつくる、あるいはその他のこと、こちらの方もやれないかということが検討の対象にこれからなってくるかもしれない。

 今一億ドルというものは現にあるわけですから、そのお金で何とかできる余地はないか、こういう検討をしてみなきゃという感じはあるのですが、悪用というのはそうじゃなくて、この液体放射性廃棄物の処理を日本の方でさあやりますよということになりますと、そのためにロシアが、自分のロシアの軍事予算が、自分の懐ぐあいが楽になってほかの方へ行って、軍備の拡大という方向へ行ってしまったらこれは困るなというので、これは軍事援助ということになったりという心配もあるものですから、そこはきっちりした枠組みをつくって、こういうプログラムでということをちゃんとやらなきゃいけません、そういう議論をしているところでございます。

 それから、核兵器の解体から出てくるプルトニウムをどういうふうにするかというのは、それはそのものとしてまさに重要な課題になってくると思います。

○笹木委員 最後の質問で、この核の廃棄物の国際管理に対して、現状では非常にIAEAの監視機能ですとか弱いわけですけれども、これをもっと強い調査力にするとか、そういったことを検討していくお考えがあるのかどうか。あるいはもう一つ、日本の場合は毎年、これは主にアジアが多いわけですけれども、ODAについては一兆円以上、トップ水準で援助をしているわけですけれども、昨年の政府の方針で、今後の日本のODAは環境重視にするという発表があるわけです。

 例えば、今長官のお話にもあった日本の近隣の諸国での原子力の安全性について、こういった問題もあるわけですけれども、ODAの中で、環境ODAということで、こういったことに対して日本がいろいろ注文をつけていく、そういったお考えがあるのかどうか、あるいは今検討がされているのかどうか、これも、できれば長官とともに外務省の方にもお答えいただければと思います。

○江田国務大臣 IAEAの監視機能が弱いのではないか、弱いか強いか評価はいろいろかと思いますけれども、かなりいろいろのことをやっておりますが、さらに一層IAEAの保障措置機能というものを強化をしていくという、これは日本もいろいろ協力をしていかなきゃならぬと思っております。

 それから、原子力の安全確保というのは、これは世界の共通の課題ですので、安全確保及び安全性向上のために原子力安全条約をつくろうじゃないか、この策定作業に日本も参加をしております。細かなことは省きます。

 それから、放射性廃棄物につきましては、これはIAEAで、今廃棄物管理について国際的に調和された原則と基準の作成を行うために策定作業が開始をされておる。先般のIAEA総会でも、我が国が共同提案国になって、そうした方向についての条約も検討しろという決議をしたところでございます。

 それから、ODAについて、これは例のODA四原則というものが出されまして、環境とかあるいは軍事の関係とか民主主義とかあるいは人権とか、いろいろなことにこれから配慮していかなきゃならぬということにはなってきているわけですけれども、ODA供与、ODAを出す関係の国の原子力開発利用というものは、これはいろいろテーマにはなっているのですが、いっぱい原子力発電があって、それが環境に悪影響を与えているからODAを出してという、そういう事態には今まだ至っていないので、具体的にそういうことがテーマになっているという事態には立ち至っておりません。

○林説明員 放射性廃棄物の問題について、環境対策という観点からODAを使ったらどうかという御指摘かと思いますが、もちろん、今江田長官から御説明がありましたように、ODAを我が国が供与している国々から、私、専門ではございませんけれども、放射性廃棄物の問題について我が国のODAを使用したいという要請があるかどうかつまびらかにいたしませんが、今まで私が若干経験していた範囲では、そういう要請というのは余りなかったというふうに記憶をいたしております。

 ただ、理屈の問題として、環境対策として放射性廃棄物の問題があるということがあった場合に、我が国のODAを使うということが不可能であるということは必ずしもないというふうには思っております。

 また、ロシアにつきましてはODAの対象国になっておりませんので、ODAを使うということは難しいというふうに考えております。

○笹木委員 ありがとうございました。

○臼井委員長 次回は、来る十一月二日火曜日午前十時五十分理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時十四分散会

1993/10/22-    

戻るホーム主張目次会議録目次