1992/04/14

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衆院・商工委員会

○江田委員 最後、あと二十分ですのでよろしくお願いします。
 今回のこの特定債権等に係る事業の規制に関する法律案については、全体として必要なものであって賛成をするつもりでおりますが、しかし、考えるとどうもいろいろとわからないことが出てまいります。かなり込み入った関係の法律である。法律の目的である投資家の保護、投資家というか、具体的にこの法律に係る仕組みの中で投資をした者をこの法律は一条で投資者と呼んでいるようですが、投資者の保護についていろいろ懸念があると言わざるを得ません。

 バブル経済の一万の主役であったノンバンクと言われるリース・クレジット業界は、バブル経済の崩壊の中で多額の不良債権を抱えて、中には倒産の危機にあるものもあると聞いております。また、このたびいわゆる暴力団新法が施行されましたが、近年ノンバンクの業界に暴力団の介在する不祥事がいろいろ報道される、こんなケースもあるわけですね。つい最近の報道ですと、有名百貨店が医療機器の架空取引伝票を発行してリース会社から多額の資金を引き出した、代金十億円引き出す、捏遺書類で四億六千万円などという見出しか新聞に踊る、こういうこともあるわけでございまして、カード破産あるいは偽造カードの問題、いろいろ出てまいります。このような中でこの法案が投資者の保護に十分な効果を発揮し得るものかどうかについて若干の質問をしたいと思います。

 まず、六十一条のところで、これは「小口債権販売契約等の締結についての勧誘等」というところですが、「小口債権販売業者は、小口債権販売契約等の締結又は更新について勧誘をするに際し、小口債権販売契約・特定債権等に関する事項であって、顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為をしてはならない。」これが第一項。二項は、「小口債権販売業者は、小口債権販売契約等の解除(組合からの脱退を含む。)を妨げるため、小口債権販売契約・特定債権等に関する事項であって、顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、不実のことを告げる行為をしてはならない。」こう書いてある。我が商工委員会調査室の解説ですと、「リスクのある取引であることを告げず、また絶対確実な投資であると告げる等顧客の意思決定を歪めるようなことを禁止するものである。」こう書いてあるのですが、ここで例えばこれは利回りが幾ら幾らであるとか、あるいはその保証をするとか、あるいはその利回りについてこれが達成できないときには補てんの約束をする、そのようなことは、これはいいのですか、いけないのですか。

○麻生政府委員 実際に顧客に販売いたします場合には、法律にございますように、小口販売商品の販売単位とか利回りとかあるいは満期というようなこと、さらにこれに加えまして、組み入れております債権の種類あるいはそれらの債権の過去のデフォルト率、さらにこのデフォルトに対応いたしましてこのリスクを軽減しますための銀行保証といったリスク補てん措置、特定債権の譲渡業者がどういうものであるかというようなことを開示するということでございます。この商品の場合には、ベースがリース債権でありクレジット債権でございますから、一番大きなリスクという点でありますとこのリース、クレジットのデフォルトの問題でございますが、それにつきましては、法でありますように補てん措置の内容を具体的に説明するという形で投資家の判断に資しようということでございます。

○江田委員 きょうの私の質問、ぺーパーになっていまして、そのペーパーをそのままお渡ししているのでそれに従ってお答えをいただいたのかもしれませんが、私がペーパーどおりに質問しているとは限らないので、ちょっと聞いておいていただきたいのですが、利回りについて、まあおおむね二年物の定期よりちょっといいぐらいな利回りになるのではないかというようなことじゃないかといったことがあると思うのですが、そういう利回りというものはこのぐらいです、それは保証されるのですとか、あるいはそれが実現できなかったら損失の補てんをしますとか、そういうようなことを顧客に告げて、顧客を――顧客というのは小口販売契約をするお客さんの方ですね、投資者ですね、この投資者を契約に勧誘するようなことをしてもいいのでしょうかということを言っているのです。

○麻生政府委員 実際に勧誘をいたします場合には、今言われましたように、利回りとか満期日等の内容について説明をし、またしかし、この商品の場合にはそれが一〇〇%保証されているものではなくて、そのデフォルトというのがあり得る、その場合にはどのようなリスク補てん措置がとられておるかということを説明した上で販売をするということでございます。

○江田委員 リスクについては、今の前のお答えになるのかと思いますが、昨日、実はリース・クレジット業界の方から説明を受けたときに、譲渡される債権はできるだけ優良なものを選別して譲渡するんだというお話がございました。私は、それは重要なことだと思います。どういう選別をするか、またあすにでも業界の方から説明を聴取をしたいと思っておるのです。

 そこでお伺いしますが、この法案の中でどの条文に優良なものを選別して譲渡をするということを期待できる根拠があるのか、あるいは通産省としてそのことについて何かの措置を考えておられるのかどうか、これを説明してください。

○麻生政府委員 本法の場合には、法律第三条に基づきまして譲渡計画の届け出があるわけでございます。その届け出の際には、譲渡される債権、特定債権がどのようなものであるか、あるいはそこで優良なもの、つまりデフォルト率が非常に低いものであるのか、あるいはある程度高いものであるのかというようなことがわかるわけでございまして、今度は、そのデフォルト率に見合った形でどのようなリスク補てん措置がとられるかということを通産大臣はチェックをする、そして、必要最小限度の、つまり、過去のデータから見て考えられるデフォルトの率に対応したリスク補てん措置がとられておるかどうかということを確認をするということでございます。

○江田委員 その率の判断とかということなんですが、例えば車のリース。リースでもクレジットでもありますかね、二十代の若者が買った車ですと、これはなかなかちゃんと支払われない場合も多いから、そういうものはちょっと外して、一家を構えた、子供もいる、そういう人が買っている車についてのクレジットだけを選ぶとか、そういうようなことをいろいろやられるのだろうと思うのですが、そういう、その利用者ということになりますか、それのタイプによって今のデフォルト率がいろいろ違う、そういうような統計やなんかはちゃんとしているのですか。あるいは、クレジットヒストリーを類型分けをして、こういうクレジットヒストリーはこういう危険、これならこうと、そういうような類型化というような作業はあるのですか。

○麻生政府委員 デフォルト率の予測につきましては、これは今先生もお話ございましたように、年齢別あるいは業種別あるいは地域別によって大分違いますし、また企業も、いろいろな業種なり大きさによっても違っておるというようなことでございます。したがいまして、実際のこのリスクの補てん措置を考えます場合のおのおのの対象債権のデフォルト率、これは、そのような債権を分類をいたしまして、今の年齢別とか業種別とか地域別とか、それに見合いましてその会社がずっとやってきておりますが、その会社がやってきている過去のデフォルトのデータをとっていくというやり方をしてまいる考えでございます。

○江田委員 いや、私がちょっと聞きたかったのは、抽象的にはそれはわかるのですが、具体的にそういう類型化していろいろな率の計算をしたようなものがあるのですが、どうですかということをちょっと伺いたかったのですが、まあ先へ進みます。

 我が商工委員会調査室の資料によりますと、リース・クレジット会社はペーパーカンパニーの子会社を譲受業者とし、みずから小口債権販売業者として販売することもあるというのですね。また、小口債権販売業者を子会社にやらせるというケースもあるかもしれない。ということになりますと、仮に、親ガメこけたらじゃありませんが、リース・クレジット会社が倒産ということにでもなるとこれは大変なことになる。したがって、投資家の立場からすれば、特定事業者、すなわちリース会社、クレジット会社の経営内容についても大きな関心を持たざるを得ないのではないかと思います。

 この法案四十五条では、特定債権等譲受業者は、その業務及び財産の状況を記載した書類を、営業所ごとに備え置き、小口債権者の求めに応じ閲覧させなければならない、こうなっておりまして、六十三条で「小口債権販売業者について準用する。」となっているのですが、この規定は、特定事業者、すなわちリース会社、クレジット会社についても適用をする必要があるのではないかと思うのですが、いかがですか。あわせて、「閲覧させなければならない。」というのは、これは謄写も含むんだろうと思いますが、いかがですか。

○麻生政府委員 この債権小口化商品でございますけれども、これは、リース料あるいはクレジット料が償還の原資になっているということでございます。つまりこの原資というのは、リース会社そのものあるいはクレジット会社そのものの信用ではなくて、リース利用者あるいはクレジット利用者の償還というものがベースになっておるというところに特色があるわけでございます。

 したがいまして、本法におきましては、投資家の保護の観点からは、特定事業者に対しまして、そのリース会社等の倒産リスクからこれを切り離すということが必要でございまして、このために、法律の第五条によりまして、民法その他の法令に定めるところによって、いわゆる第三者対抗要件を備えるようにしなければいかぬ、つまり、このリース会社、クレジット会社の倒産リスクから切り離すということを、この第三者対抗要件を備えることによってやっておるということでございます。

 このようなことをやりました結果、投資家のサイドから見ますと、特定事業者、つまりリース会社、クレジット会社の経営悪化、倒産というリスクというのは切り離されますものですから、債権という形で譲受業者の方に渡されますから、切り離されるということになるわけでございますが、一方で今度は、譲り受けました譲受業者あるいは販売業者との関係でリスクが存在し得るということがございます。したがいまして、この法律では譲受業者及び販売業者の業務あるいは財産の状況について閲覧を請求することができるという形の権利を認めておるということでございます。

○江田委員 謄写のことも聞いたのですが、お答えになりません。閲覧というのは、私の理解ですと閲覧した場合には自分で手で写すことは当然いいわけですよ。手で写すその作業について謄写機というものができて、これは科学技術の進歩ですから、閲覧はできるけれども、謄写はできないというのはやはり本来おかしいので、ですから閲覧できるということは当然謄写も本当は含むと考えなければいけないのだと思いますが、答えは要りません。次へ行きます。

 それはわかるのですけれども、その条文の文理的な解釈はそうでいいのですが、しかしリース会社、クレジット会社がペーパーカンパニーの子会社を譲受業者として、さらにまたみずから小口債権販売業者としてこういう業態のものを行うというようなことは当然あるだろうと思うのですね。そこは経理が分別されているから大丈夫だということならそれでもいいのだけれども、例えばこの譲受業者が元の業者の債務を連帯保証などしていたりすると、これはもう親ガメも子ガメも一緒になってしまうというようなことだって起きてくるのじゃないか。さらにまた同じ窓口でいろいろやっていたりしたら、何か事が起きたときに債権者がたっとトラックか何かで来てぼんと持っていったりしたら、こんなものわけがわからなくなってしまうわけですよね。だから、そこは債権譲渡を通知をしていますから切れているのですよというのは、単に言葉で言っているだけのことであって、現実には投資者はちゃんと保護されないということが起こるのじゃないかという心配をしているわけです。リースの場合に、元の物件の所有権がリース会社にある場合と、それから債権譲受会社にある場合と、債権の質というものは随分変わってくると思いますが、物件の所有権まで債権譲渡に伴ってちゃんと譲受業者に移しているような場合の方が優良な債権だというふうに判断をされるかどうかはどうですか。

○麻生政府委員 リースの場合の物件の所有権、これはリース会社にあるわけでございます。それで、譲渡されました場合に、リース会社から譲受会社の方にこのリースの占有につきましての管理権、これが従来のままリース会社がかわって管理をするという場合、あるいは完全に管理権も移してしまうという場合、これはおのおの契約で決まってくるということでございます。

 リース債権の内容を判断いたします場合には、そのようなこと、占有なり管理の問題というよりもむしろリースの利用者の償還能力をいうことが一番大切でございますから、むしろそちらの観点に着目して判断をいたすということでございます。

○江田委員 リースの場合には物件の所有権はリースする側に保有されておって、そして、これを賃貸する。その物件については、こういう形で債権譲り渡しか、譲受会社に渡すときにその物件の所有権も移すケースもあるというふうに聞いておるので、今のことを伺ったわけですが、さらにクレジットの場合でもいろいろな形の、所有権留保であるとか譲渡担保であるとかいろいろあると思うのですね。そういうものも譲受会社の方に移す場合と移さない場合とがあって、大体移さないんじゃないかというふうに聞いているのですが、そんなところについてもちょっときめ細かくきっちり考えてみなければいけないんじゃないかと思ったり、さらにまた、譲受計画届け出の審査、このことについてもいろいろ聞いてみたいとか、最近暴力団関係がいろいろ絡んでくるが、それについてどういう歯どめがあるか、これも聞いてみたいと思ったり、大臣には、さらに今の不況との関係でこうした仕組みをどう活用されるかということについても聞いてみたいと思ったりしたのですが、もう時間が参りましたので省略をいたします。終わります。


1992/04/14

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