1992/02/26

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衆院・商工委員会

○江田委員 御苦労さまでございます。渡部通産大臣と野田経済企画庁長官、お二人の所信を伺わせていただきました。お二人とも練達の有力経済閣僚で、景気後退が言われる中で、バブル崩壊後の健全な経済運営と社会生活の実現そして実質経済成長率三・五%実現のための力強いリーダーシップをぜひ発揮していただきたいと思います。私も両大臣と問題意識として共通するものが多いと思っておりまして、ひとつぜひ頑張っていただきたいと思います。

 きょうは二十分という短い時間なので、両大臣おられますが、通産大臣の方に絞って御質問したいと思いますので、長官の方はどうぞ御退席ください。

 さて、私の質問ですが、ガットの問題について伺いたいと思います。ガットといいましても、必ずしも今緊急の事態になっていることではなくて、もう少し幅広く伺ってみたい。ガットと環境問題ということで大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

 所信の中で、大臣は環境問題の重要性を指摘されて、「人類共通の課題である地球環境問題については、本年開催される国連環境開発会議の成功に向け、我が国は世界の主導的役割を果たしていかなければなりません。」こう述べられておるわけでございます。実は、私は今月の三日と四日、ワシントンで開かれましたある国際会議に出席をしてまいりました。もちろん、院のお許しをいただいたわけでございますが、GLOBEという国際会議、これはGLOBEという単語自体も地球ということですが、GLOBE、グローバル・レジスレーターズ・オーガナイゼーション・フォーア・バランスド・エンバイロンメント、こういいまして、日本とECとアメリカと旧ロシア、これは今変動の中におりますからちょっと浮動的ですが、こういう先進国の議会に籍を置く者が地球環境についてどういう役割を果たさなきゃならぬか、これをみんなで議論しようという環境問題に熱心な議員、全部で七十名ぐらいで組織をしております地球環境国際議員連盟という会議です。日本のこの会議は、地球環境国際議員連盟日本支部というのか、グローブ・ジャパンというのが十八名の超党派の衆参の議員がメンバーで、会長が原文兵衛元環境庁長官、最高顧問が竹下登元総理、今回は小杉隆、愛知和男そして私、三人の衆議院議員、広中和歌子、堂本暁子、二人の参議院議員が出席をいたしました。会議のテーマは、地球サミット、六月のUNCEDへ向けての提言が中心で、特に焦点となりましたCO2削減問題でアメリカの国務省の担当官と各国の議員との間で激論になりました。本当に激論になりました。アメリカの代表格のアルバート・ゴア上院議員などは、アメリカの政府の態度を恥ずかしく思うというようなことまで言われ、民主党の大統領候樹全員に、西暦二〇〇〇年までにいわゆる一九九〇年レベルで安定させる、こういう約束を大統領候補全員に取りつけてブッシュ大統領にも迫っていくということで、アメリカの議員も全員賛成して、CO2削減目標を明記するという決議がなされました。

 私たちのそういう動きもあってアメリカの態度が動いてきた。今私はここにUNCED情報その一、これは外務省のUNCED準備事務局がつくっているものですが、持っております。そこに、米国の態度のある程度の柔軟化の可能性が見られるのが新しい点、こう書かれるような、そういう態度の変化が起きてきた。残念ながら、どうもその後またもとへ戻ったようで、最終的にはなかなか難しいということになっている。大変残念でありますが、しかし、やはり国際世論をつくっていって、その中でいろいろ難しいことも皆それぞれ乗り越えてもらう、そういう活動を我々具体的にそうやってやっていかなければいかぬというので努力してきたわけでございます。

 もう一つ焦点になったのがガットと環境。実は私は二日目に、のんびり聞き役に回っていようと思っていたら、ふとしたことで議長役を務めるというので、英語もいろいろあってなかなか聞きにくい英語も、そんなことを言うと差別になるのかもしれませんが、現実にあって、私はそれほどできるわけじゃありませんので議長を逃げ回っていだのですが、務めました。ガットと環境について大変に厳しい議論が行われた。となり合い、これは議長をやるのは大変だったのですけれども、ゲストで招いたガットの事務局に対してアメリカとECの議員たちから、ガットが環境保護を妨害しているのじゃないか、環境に対して敵対的ではないのかという観点からの指摘が相次いだ。私も、確かに環境保護というのが保護貿易主義の隠れみのになってはならないと思いますが、しかし、ガットと環境問題というのは重要な課題だと考えております。

 その場で、確かに三〇年代の大不況、そして世界じゅうが保護貿易主義に逃げ込む、そして世界がだんだん緊張が増してとうとう第二次大戦に進んでいった、ああいう愚を繰り返さない、そのために自由貿易というのは大切なんだ、こうしてガットが生まれてきたわけですが、しかし今、環境保護派からガットというものに対する信頼が揺らいでくる、こうなりますとこれはいけないので、やはりガットというものが世界の確信に支えられてこの自由貿易体制というものを運営をしていかなければならぬわけで、そうなりますと、世界の、こういう世界がいいんだという確信に支えられようと思うならば、今環境保護派は、世界のことにかかわりなさんな、こうは言えないわけですから、世界が環境のことについても大いに議論しなければならぬという時代ですから、ガットも環境の問題というのをその原則の中に、起こってくる問題として考えなければいかぬ、そういう時代に来ていると思うのですね。現にガットも環境問題について、貿易と環境に関するレポートをつい最近、二月になって出したりしているようでありますが、今後のガットの動向について、日本政府はどういうふうに今の環境との関係でお考えになるか、大臣から政府の考え方、あるいは大臣個人の考え方をお伺いしたいと思います。

○渡部国務大臣 江田先生御指摘のように、これからは地球規模あるいは宇宙と言っていいかもしれませんが、その中で環境と経済をどう両立させていくか、これが私どもに与えられた大きな課題でございます。

 今ガットについてのお話がございましたが、昨年の秋から貿易と環境に関する作業部会による検討が開始されたところであって、これは通産省としてもこのような検討に積極的に参加をして国際的な協力の中で自然を守り、地球を守り、さらに経済の発展を両立させていくための努力をしてまいりたいと存じます。

○江田委員 繰り返すようになるかもしれませんが、地球環境保護という大目標が保護主義の隠れみのになってはいけない。それはそうなんですが、しかし、世界の良好な貿易状況というのは決して地球環境の悪化に対立するものじゃないんだ。むしろ資金が良好に分配され、資源が良好に地球上に行き渡ることによって環境保護に資する、そういう世界的な貿易秩序をつくっていかなきゃいかぬという意味では、ガットと環境は敵対じゃなくて、むしろガットがしっかりと環境保護を支えるということは私は十分可能だと思うので、これからの知恵の出しどころだ、日本がそういう知恵を出していかなきゃいけないと思うのですが、大臣の決意を聞いて心強く思っているところです。

 ところで、現在ガットのウルグアイ・ラウンドの交渉が行われている。もしこの三、四月に合意できずに相当時期がおくれるというようなことになれば、むしろ環境問題とかあるいは安全性の原則、こうしたものをガットのルールの中に積極的に取り込んで、それでガットの信頼性をむしろ高めていく、そういうことをやった方がこの現在の交渉の合意のためにも、ちょっと回り道のようだけれども早いんじゃないか。本来ガットは、自由貿易のルールを確立することによって世界の消費者、生活者の利益を図るべきものであるわけだから、そういう世界の消費者、生活者が重視する環境や安全性の問題を無視していいはずがないので、こうしたことをガットのルールの中に打ち立てることに日本がリーダーシップを発揮するということは一つの手ではないかと思いますが、今のこのウルグアイ・ラウンドについてということで、先ほどの質問とダブっておりますが、ちょっと観点を変えた質問ですが、お答えください。

○渡部国務大臣 ウルグアイ・ラウンドは、私ども一日も早く成功裏に終わらせるために今も全力を尽くして努力をしておるところでありますから、これが延びた場合ということに対してどうこうというお答えは適当でないと思いますけれども、基本的な今先生のおっしゃる考え方、これは私も同感であって、地球規模での環境保全というものは、保護主義を助長するというよりはむしろ自由主義経済が発展して世界全体が協力していくことによって環境保全ができるので、私は国際貢献の大きな柱がこれは環境問題だと考えておりますし、先般サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウエート等の産油国に参りました。砂漠の大地に水と緑を求めて頑張っておるあの国の人たちに、石油によって今日の発展をした我が日本が、あの産油国をすばらしい緑と水に恵まれる国にするのにどれだけの技術的な協力をでき得るかというような話をしてまいりましたけれども、まさに基本的な考え方は先生おっしゃる考え方と同じでございます。

○江田委員 ありがとうございます。
 もう一つ、先ほど言いましたGLOBEの会議で話題になったこととして、シベリアの針葉樹林帯の問題が討議されました。私も余り深く認識していなかったのですが、この地球の温暖化ということに関係して、炭酸ガスが出てくる、この炭酸ガスをもう一度取り込む、固定化させる、その機能を果たしているものに植物がありますね。この植物が非常に大規模にあるところが、一つは熱帯雨林、ジャングルですね。雨がどんどん降って、どんどん木が伸びている。もう一つ、シベリアとか、ああいう亜寒帯というのですか、ああいうところの針葉樹林帯というものがあるというわけです。確かにそれはそうです。大変な針葉樹林がずっと続いているわけですから。このシベリアの針葉樹林の伐採が実は今問題になっていて、これが実は第二の熱帯雨林問題になるおそれがある、こういうことが指摘をされた。

 ロシア共和国から来ておられる代表の人が、これはロシア共和国環境大臣のアレクセイ・ヤブロコフさん、こうおっしゃるわけですが、今ロシアも激変の中ですからどういう立場にある人か詳しくはわかりませんけれども、シベリアの針葉樹林が違法伐採を含めた急速な破壊によって危機に瀕している、韓国や日本のさまざまなアングラマネーも関与をしている、北朝鮮の刑務所をシベリアにつくって受刑者を伐採労働者として使っているというようなことが言われて、これは私は確認できないのでここでそうだと言っているわけではないですが、そういうようなことがロシアの人から話題として出された。

 それだけの前提なのですけれども、しかし確かに、考えてみるとこの針葉樹林帯が保護されていくということは大変日本にとっても重要なことでございます。そこで、シベリア針葉樹林について、これを壊すことのないように注意を喚起するそういう手紙をロシア共和国エリツィン大統領にGLOBEとして出しました。これはどうですか。どうも私ども調べる方法も何もないのですけれども、通産省としてどうお考えになりますか。そういう指摘について、やはりこれは何らかの方法で通産省としても関心を持たなきゃならぬそういうテーマだというふうに私は思いますけれども、いかがでしょう。

○渡部国務大臣 今、江田先生からお話しの件は、これは私も全く初めて耳にすることでございますけれども、先ほども申し上げたように、環境問題、自然保護、これは地球的規模に立って考えなきゃならないというのが我々の国際貢献、その中で環境問題が大きな位置を今後占めていくだろうという私の基本的な考え方でございますし、またこれは対ソ支援の問題、今ロシア共和国ということになって非常に苦労している中で、七十年の社会主義よさようなら、自由主義によって新しい国づくりをしようと今努力しておるあの国のために、私どももお役に立つことがあれば役に立ちたいというのが通産省の基本的な姿勢であれこれとやっておるわけでありますから、そういった考え方の中で今後勉強してまいりたいと思います。

○江田委員 通産省は、旧ソ連の経済支援についてはこれは大きな責任を持っておられると思います。我々も応援をしなければならぬと思いますが、ぜひ今おっしゃったような観点から、その際シベリアの針葉樹林が乱開発、乱伐されるようなことのないように、その他の点についても同じですが、環境問題について十分な配慮をして取り組んでほしいと思います。この点は、大臣から既にお話がありましたので、お答え要りません。
 以上で私の質問を終わります。


1992/02/26

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