1991/02/18

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120回 衆・商工委員会

○江田委員 中尾通産大臣の所信に対する質疑を行います。
 大臣は、通商産業行政については大変造詣も深くていらっしゃるので、今回の登板、まさに満を持してのことだと思います。ひとつぜひ大活躍して、すばらしい通産行政を行っていただきたいと思います。私どもも意見の違うところはいろいろ注文もつけさせていただいたり、しかし今、通産行政、大変与野党とも共通の土俵が随分広がっているんじゃないかという気もいたしますし、応援をさしていただくところは大いに応援もしたいと思っておりますが、この所信で私は大変共感を覚える部分もございます。ただ、共感を覚えながら、あるいはひょっとして違うことを思っているのかなと思ったりするところもありまして、二、三ただしておきたいのですが、大臣が冒頭に、世界は大きな歴史の転換期を迎えておる、変化はきしみを伴うものであるが、同時に躍動の源にもなるんだ、こういうことをお話しになっておられるわけです。歴史の転換点、確かに今いろんな意味で歴史の転換点ですが、大臣のおっしゃる「転換点」というのは一体何か、「きしみ」というのは一体何か、「躍動」というのは一体何か、ちょっと大きな話になってしまうのですが、できるだけ短く要約してお教えをいただきたいと思います。

○中尾国務大臣 一つ一つの言葉の解釈というよりは、全体のグローバルな見地として言わせていただいた、こうお考えいただくことが最初かと思いますが、江田委員に率直に申し上げますと、まさに今までの権力的対立思考であるとか、思想的対立思考であるとか、特に権力的対立思考というのは、あすに自分に不利であり、またあすに自分に有利であるという場合には妥協が行われる場合もございますが、今までの経緯からいきますと、思想的対立思考というものはなかなか雪解けが起こらない。お互いに原点の違う世界観、歴史観、倫理観、国家観というようなものに閉ざされておったような弊もないわけではございません。それがある意味においては一昨年ごろからそういう世界的な激動期を迎えてくると、今まで七十有余年という歴史的過程を経たあの革命的ソ連の中における歴史観も大きく変動を余儀なくされてくる。また、生き方自体も、イデオロギー自体も変動を余儀なくされてくるというような嫌いが見られてまいりました。中国といえども閉ざされた社会の中から開かれた社会に移行ということが急激に高まりますると、ある種の変動も余儀なくされるというようなことも各所で見られるように相なってまいりました。

 そうすると、ヨーロッパはそのままの形態でいいのか、こう言いますると、ヨーロッパ自体も一国中心主義的に生きられるのではなく、ミッテランが主導していったあのヨーロッパ型の民主主義経済あるいは市場経済というものは、今やドイツが主導的に、ある意味においては東ドイツをも席巻して、そしてECが九二年に向かってある種の躍動をつなげていく。こういう形になりますると、今までの一つ一つの局面でアメリカ、日本ということを核にした二つのポールは、そのままECという一つの統合体の中で、この間まではイギリスもやや遅疑逡巡しておるところがございましたが、今や一緒になって躍動していこう、進んでいこう、前進していこう、こういうことからイギリスも中心になって、やはり九二年の変革はヨーロッパの一つの大きなポールとして生きていくことも事実でございます。というような世界的な躍動というものはそのような形で大きく変わってきております。

 同時に、人種的な大きな面におきましても、これもあらゆる形で、偏見という言葉が出ておりますように、これまた大きな意味で蠢動を迎えておることも事実でございましょう。

 それからまた、アジア一つを見ましても、アジアの中における考え方もパシフィックリムみたいな、APECみたいな、こういう大きな躍動感とECとは違う形における道のりも生まれてきておる。それを私はとらえながら、現在の転換期というものをあるいはきしみというものも含めて述べた、こう御解釈賜りたいと思う次第でございます。

○江田委員 大臣に大演説をやっていただくような質問をしてしまいまして、どうもお答えが長くなってしまって、私の質問時間は二十分ですので、ひとつテンポの速い質疑をやっていきたいと思うのですが、確かにおっしゃるような転換点であろうと思います。

 今例えば、きょうも原発の問題、ECCSの作動というところまでいって本当に大丈夫なのかということとか、あるいは大店法のことであるとか、いろいろな議論がございました。また湾岸戦争、これも大変な事態であって、私どもは、しかし木を見て森を見ざるということではいけないので、これらが木であるから軽視していいということではありません、木も大変に重要ですから、一つ一つの木を十分見てそれへの対応を考えなければなりませんが、同時に、大きな歴史の流れというものがある。冷戦後という世界の構造の変化、冷戦後というのは決して軍事対立が終わったというだけでなくて、体制の違いというものが乗り越えられようとしている。そして、その中で対立的契機がなくなっていき、イデオロギーも大きく変化をしていって、大臣は今七十年余続いたソ連の体制というものが変化をしてきたということをおっしゃいましたが、私は、もっと長く、一七八九年のフランス革命から始まるいわば人類の近代史というものが終わって、新しい二十一世紀という時代に入りつつある、その意味では二百年ぐらいのタイムスパンで考えるような大きな転換期だという気がいたしております。

 その中で、きしみというのはもちろん湾岸戦争であるとか、私たち毎日の社会の中におけるいろいろな問題もありますが、躍動の源、これはやはり今までの産業社会、産業重視型の歴史の発展モデルが大きく変わっていわば生活重視型といいますか、あるいは効率重視型のモデルから大きく変わって自然と人間であるとか男女であるとか、すべてのものがともに生きていく、ともに生かされていく、そういうモデルへの大きな転換である。そういうモデルに大きくこの九一年から二〇〇〇年までの十年の間に私たちが変わっていければ、そうすると二十一世紀はまさに経済ではなくて人間というものが躍動する、そういう世紀へ移っていけるのではないかということを考えておりまして、その意味では通産行政は、人間の、私たちの毎日の生き方あるいは社会のタイプ、こういうものを変えていくという点で非常に重要だと思っておりますが、一言、そういう点について大臣のお考えを聞かせてください。

○中尾国務大臣 簡単に申し上げます。
 一時期豊かの中の貧乏というような言葉もはやりました。まさに豊かの中にも必ずしもそれが実りある豊かさ、実意のある豊かさにつながらない貧困の場合もございます。それは心にもあらゆる形にもつながりましょう。そういう意味におきましては、私どもは実意のある、実のある豊かさというものを健全に育てていくということが二十一世紀の課題である、先生と全く同一な見解でございます。

○江田委員 そこで、今世界の大きなきしみとしては湾岸戦争がございます。一体どういう推移をたどるのか、これは世界が今大いに関係しているわけで、私たちも決して部外者ではない、当事者であって、当事者として一体何ができるかということを真剣に考えなければならぬわけですが、ここは外務委員会ではありませんし、通産行政ということで考えますと、私は、この湾岸戦争に際して私どもが、こういう言い方をしていいか悪いかわかりませんが、これをチャンスとして、ひとつ我が国のエネルギー構造というものを変えるきっかけをつかむ必要があるのではないか。省エネルギー政策ということが課題ですが、もっと具体的に私は、石油の消費を少なくしていく。今石油の備蓄も現実にはふえている、しかし、国際的にはむしろ石油の備蓄を減らしていこうじゃないかというような方向にもあるわけで、省石油という、言葉としてはなじんでいないかもしれませんが、省石油という、そんなことをやらなければならぬ時期が来ていると思うのです。

 そこで、ちょっと具体的なことを聞きますが、八月二日のイラクのクウェート侵攻以来、我が国の石油消費量というものは一体どういう推移をたどってきているか、これを教えてください。

○黒田政府委員 石油消費の動向でございますけれども、昨年の四月から九月まで、年度の上期におきましては、石油製品全体で前年同期比で七%の伸びでございました。これに対しまして十月以降、最新のデータでは十二月まででございますが、いわば年ベースの最後の四半期でございますけれども、この段階では暖冬の影響等もございまして、前年同期比で二%の減ということになっております。特に十一月、十二月が前年同月に対比いたしまして減少いたしているのが実情でございます。

○江田委員 石油消費が減っているということですが、しかし、これは暖冬というわけで、湾岸戦争というものが多少でも国民の毎日の生活に心理的な影響を与えて省エネルギーあるいは先ほど言いました省石油、そうしたことに効果が上がった、そんなようなことがあるのかどうか、逆に言えば湾岸戦争が終わったら石油消費はまたもとの状態に戻ってふえていく、そういう見通しになるのか、そこはどうですか。

○黒田政府委員 ただいま私の答弁の中で、暖冬の影響等もございましてと申し上げたわけでございますが、石油製品の種類別に見てみますと、非常に需要が落ちているのが灯油あるいはA重油ということで、恐らくその影響が大きいということで申し上げたわけでございます。ただ、例えばガソリンでありますとか軽油でありますとかほかの油種についても伸び率は若干鈍化しているように統計上はあらわれてきております。ただ、それが今おっしゃいましたような省エネルギーというような効果であるのかどうかという点についてはもう少し推移を見きわめていく必要があろうか、こういうふうに考えております。

○江田委員 石油の消費の、ちょっと数字で言って多少中長期の見通しを伺いたいのですが、一九八八年度が二億七千六百万キロリットル、八九年度は二億八千九百万キロリットル、九〇年度は一体どの程度の石油消費の見通しになりますか。

○黒田政府委員 私どもが昨年発表いたしております石油供給計画におきましては、燃料油、石油製品全体で二億二千万キロリットルと見込んでおります。前年度同期比四・一%増、こういうふうに見込んでおりました。

○江田委員 私は昨年の秋、通産省の方から総合エネルギー調査会の長期エネルギー需給見通しの説明を受けましたが、これによると、八八年度の石油消費実績二億七千六百万キロリットル、しかし二〇一〇年度には石油消費見通しが三億六百万キロリットル。この三億キロリットルという数字は今の四・一%増ということですと今年あたりには湾岸戦争がなければもうとっくに、とっくにではありませんか、ぎりぎり超えてしまっているような、そういう数字なんですね。そこで、こういう湾岸戦争という機会にもっと省エネルギーを進める、あるいは代替エネルギーの開発も進める、CO2排出量の削減も進める、原子力発電をどう位置づけるかというのは、これはなかなか難しい問題がありますが、石油の消費を減らしていかなければならないいろいろな施策を構ずべきだと思います。具体的に数字で見ると、どうもこういうきしみの時期に、そのきしみを禍を転じて福となすというような社会構造の変革あるいは生活パターンの変化、こういうものに生かし切っていない。生かし切っていないどころか、実は何も政策的な知恵を発揮していないような気がいたします。

 政府の広報がありまして、最近、もう週刊誌どれを見ても出ている。もっともこれは環境庁の広報だといえばそうですけれども、地球が悲惨である、少しずつですが人類の一人一人が対策を考え、行動を起こし始めているので、だから地球と人類の幸せな未来のために私たちはまず身の回りのことから改善を続けていくつもりだから、人類に失望せず、かけがけのない地球、あなたに対する私たちの真心を、愛を信じてください、こういう広報をやっているのですが、こういう広報に対応するような通産行政というものがないという感じがするのですが、最後に大臣からこの見解そして御覚悟のほどをお伺いをしたいと思います。

○中尾国務大臣 総合エネルギー調査会が昨年六月に中間報告で、国民生活におけるゆとりと豊かさというものを追求しながら、資源制約の懸念及び環境保全とあるいはまた持続的経済発展の両立というエネルギーをめぐる課題の克服を目指す総合エネルギー政策の推進の必要性というのを提言されました。そこで私どもは、本中間報告では未利用エネルギーの活用等徹底的にエネルギー利用の効率化を一つの柱として位置づけている次第でございます。したがいまして、通産省としましては、総合エネルギー調査会中間報告の実現に向けまして全力を挙げて総合的なエネルギー政策の推進に最大限の努力を払うということをお誓い申し上げたい、こう思っておる次第でございまして、江田委員が先ほど来言われておりますことの意はよく体して頑張っていくつもりでございますから、よろしく御指導お願いしたいと思います。ありがとうございました。

○江田委員 そういう御覚悟のほどを伺いまして大変心強く思っている次第ですが、簡単な仕事じゃありませんが、やはり非常に重要な仕事だと思いますので、ひとつよろしくお願いします。
 終わります。


1991/02/18

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