2005年4月5日

戻るホーム主張目次会議録目次


162 参院・法務委員会

13時から3時間ほど、法務委員会で、不動産登記法改正案の質疑を続けました。まず参考人質疑で、日弁連副会長の益田哲生さん、日本司法書士会連合会会長の中村邦夫さん、日本土地家屋調査士会連合会会長の西本孔昭さんから、各15分ずつご意見を伺い、委員からの質問に答えていただきました。私も15分、司法書士の代理権、筆界特定制度の将来展望、境界問題相談センターの拡充につき質問しました。センターは、土地家屋調査士と弁護士とが共同して境界問題を解決するADRで、現在のところ全国で6ヶ所ですが、全国展開が望まれます。


○江田五月君 今日は三人の参考人の皆さん、お忙しい中、本当にありがとうございます。
 そうですね、まず簡単なところからというとおかしいですが、先ほど益田参考人から上訴の関係について若干の懸念のお話ございました。

 これは中村参考人にお伺いしたいんですが、民訴規則によると、上訴状に理由も書けと、しかし認定司法書士さんについては上訴の提起の代理権しか認めていないということなんで、この点は何か、今後、認定司法書士さんに対する指示なり御指導なりというようなことは考えておられますか。

○参考人(中村邦夫君) 元々、上訴の提起について私ども要望したのは、いわゆる、先ほど申し上げましたけれども、時間的な非常な制約があるということでございます。そういう制約の中で依頼者を、どのようにしてその権利を守るかという観点からこういうお願いをしているわけでございまして、そもそも、元々、上訴の内容についてどうこうすることはできないということはもう当然のことでございます。

 ですから、ただ、一方で法律の規定でそういったものは書かなきゃならないということになっているということは非常にじくじたるものがありますけれども、そこのところは一つそういう状況でこういう代理権をお願いしているということで御理解をいただきたいということが一つでございます。

 と同時に、もう一つは、例えば、今までもそうだったんですけれども、私どもが代理権ないときには、例えば地裁であれ高裁であれ、本人支援訴訟というのはできるわけでございまして、その場合には代わってそういった訴状なども書いてまいりました。その場合には、当然のことながら今言った理由なども書いてきたわけでありまして、仮に能力という点からもし御指摘されたんだとすれば、その辺は十分今までもやってきたとは言えます。

 ただ、あくまでも、今回お願いしておるのは、そういった時間的な制約があるので、そういった観点から是非御考慮いただきたいということでございますので、御理解賜りたいというふうに思います。

○江田五月君 私は今十分理解できるんです。それは判決の送達を受けてもすぐに本人と連絡取れないというような場合だって極端に言えばあるでしょうし、とにかく上訴だけはしておかなきゃと。

 ただ、今伺ったのは、今つくろうとしている制度というのは上訴の提起だけの代理権ですから、認定司法書士の皆さんにそのことは徹底するように会として何かお考えですかということです。

○参考人(中村邦夫君) 当然のことながら、この今の御審議いただいている法案が仮に可決、成立したとしたら、我々としては、当然、本来の業務の範囲というものをもう一回厳格に認識してその業務を行うようにということは当然のことながら指導してまいりたいというふうに思っております。

○江田五月君 そこで、益田参考人、そのような措置もおとりになるでしょうし、また元々、いろいろ理由を書いてあってもその分については代理権がないわけですから、したがって、これは後で何らかの措置をとらないと、仮に否認すべき要件事実について自白の記載があったとしても、その書面が出ているからというだけで本人に不利益ということにはならないわけですよね。

 ですから、今のおっしゃったような懸念は懸念として、司法書士の皆さんによくそこは注意していただくとして、弁護士さんとしてこの上訴だけに限った代理権に反対ということではないですよね。

○参考人(益田哲生君) そういうことではございません。
 先生御承知のように、認定司法書士には控訴審、上訴審での代理権が認められてないんですが、これは先生御案内のように、一審判決が不服でなお争うという事件というのは相当に深刻な事案であるとか困難な事案が多いわけです。そういう事案についてはやはり従来訴訟してきた弁護士さんにゆだねようというのが精神だったと思うんです。

 上訴理由についてはやはりそういう立場で、一審判決を受けた後、本人の意見もよく聞き、法律的にどういうふうに構成すればいいのかというようなことをきっちり確認した上で上訴審での主張の構成をする、それがやっぱり法の趣旨だということを申し上げているだけでございますので。ありがとうございます。

○江田五月君 もう少し中村参考人に伺っておきます。

 認定司法書士の権限、今回はかなり限定的に、しかし若干この権限を広げるということですが、司法書士さんの場合には登記はこれはもう専門でございまして、私なんかも昔裁判官やっていても、とても登記所の皆さんや司法書士の皆さんにはかなわない。それだけの専門的な知識経験持って、しかも認定司法書士という形で一定の手続的なことについての素養も持っておられる方々ですから、幾つか、例えば今度のこの筆界特定制度の場合の百四十万、百四十万というこの算定の方法はいろいろあるにしても、というような制限とか、あるいはそのほか、仲裁ですかね、それから相続とか遺産分割とかの関係のこととか、そういうときの金額の限定というのは余り実は神経使わなくてもいいんじゃないか。神経というのは我々の方、立法者の方が神経を使わなくても十分やっていただけるんじゃないかなという気持ちを持っているんですが、どうですかね。

○参考人(中村邦夫君) 今先生おっしゃっていただけたとおりなんですけれども、確かに、登記申請事件をやる場合に、その金額は当然のことながら百四十万とかそういった問題ではないわけでございまして、その登記申請をする前提として、いろんな依頼を受ける場合に、問題ない場合は別に申請だけですからよろしいんですが、今お話しいただきました、例えば相続の遺産を分割をどうするかとか様々な問題がある。今の境界紛争なんかもそうだと思うんですけれども、様々な問題がそこには存在しております。

 私どもとしては、そういう相談にはまず我々の持っている範囲でいろいろなアドバイスを差し上げなきゃならないわけでありますけれども、当然ながら、我々には認定司法書士といえども限定があるわけでございますから、ある一定以上のことは当然できなくなってくるわけであります。非常にその辺のところは難しい点が、本当のことを申しますと、難しい点と申しますか、やりにくいところのあることは確かでございますけれども、しかしそれは、今それをどうこうという問題ではございませんし、私どもといたしましては、まず、認定の範囲における実績を積んで信頼いただくということがまず第一だというふうに考えています。

 と同時に、恐らくそういった百四十万を超えるような問題という、相談というのはこれからも恐らく来るんだろうし、現実の問題としては、それは入口まだ分からないわけでございますから、当然あるわけでございますが、それについては、どういうふうな形になるか分かりませんけれども、使い勝手のいいものにしていただければなということはいつも考えておるところでございます。

○江田五月君 今後の課題ですよね。

○参考人(中村邦夫君) そうです。

○江田五月君 先ほどからのお話聞いておりますと、この筆界特定制度について、益田参考人と西本参考人と御意見の違いがあるように聞くんですが、つまり、西本参考人の場合はもうちょっと、どういいますか、レベルの高い紛争をここで解決するという、そして、境界を確定できるような特定制度の方が良かったんではないかと、ちょっとレベルダウンしたという、そういう言葉でしたかね、ちょっと言葉忘れましたが。益田参考人の方は、いや、それでは国民の裁判を受ける権利を侵害することになるので今回のところまでレベルダウンして良かったという、こういうお話だったように伺うんですが。

 これ、実は私も一九九八年に参議院にもう一度戻ってくる前に一年半ほど弁護士をやっていたことがあって、そのときに境界紛争を依頼されまして、先ほど西本参考人おっしゃったようなことで、長い歴史の中でいろんな理由があったんだろうけどもう分からなくなっていると、あるいは洪水か何かか分かりませんけど、土地の形状も、側溝などがあったところもどうも土地じゃなくなったとか、いろんな地図がたくさんその間に現れて、その地図がどれが何を意味して、どういう機会に作られているものであるかがよく分からないと。これを調査士の皆さんにもう丸投げじゃありませんがお願いをすると、見事に解析をしてくださって、この地図はこういう事情でこういうときに作られているからここは信用できる、ここの部分はちょっと違うんだとか、そういうのが誠に鮮やかという感じで大変助かった経験があるんで、こういう土地家屋調査士の皆さんが筆界調査委員になって、さらに筆界特定登記官制度がちゃんとできて、こういうものができてくれば、これをただ単に登記官の土地の境界についての認識の表明だというふうに言ってしまうのはちょっともったいないんじゃないかという気がするんですが、これはどちらから、まず西本参考人、どうですか。

○参考人(西本孔昭君) 私は、現在は上程されておる法案でもちろん早期実現をお願いしたいんですが、先生が勇気付けてくださいましたように、やはりこれをきっかけにしまして、関係する者お互いがやはり切磋琢磨しまして、より一歩進んだものを目指すべきではないかなという気はします。はい、ありがとうございます。

○江田五月君 つまり、今私がちょっと触れたような、高い専門性でもって仕事をしているから、単に登記官の人が認識の表明をしてもらうためのお手伝いというよりも、もっともっと自信持っているんですよという、そういう自負はおありですか。

○参考人(西本孔昭君) はい、ありがとうございます。そのとおりでございます。

○江田五月君 益田参考人、そういうような仕事をやっているので、裁判を受ける権利といっても、これは行政処分性を与えて、その処分に対する行政事件訴訟法での争訟という道を空けておけば、ここまでレベルダウンしなくてもいいんじゃないか、何か中途半端というとあれだけど、ちょっと煮え切らない制度をつくらせてしまったなというような感じもするんですが、いかがですか。

○参考人(益田哲生君) 将来、この制度がどういう形で育っていくのかという問題はあろうかと思うんです。ただ、従来なかった全く新しい制度でスタートするわけですから、やはり国民の側が持つ不安というものに対して目配りもやっぱりしておく必要があるのではないかなと思っております。

 私は、この制度でなされる筆界特定がそれほど軽いものになるとは思っていないんです。先ほど言いましたように、ADRの話合いにおいても裁判手続においても、この筆界特定登記官が調査委員の意見に基づいて行った筆界特定については、実際上はかなり裁判を左右する大きな要素になろうと思います。

 そういう意味で決して軽視するものではありませんし、土地家屋調査士さんが持っておられる自負心であるとか情熱であるとか、そういうものに流れにさお差すつもりは全くないわけなんですが、ただ、出発点の制度といたしましては、先生御案内のように、これ行政処分だと、しかも職権で開始されるということになりますと、寝た子を起こすような紛争もそこには出てきますでしょうし、それから行政処分でありますと、それは登記官が行った処分が正しいかどうかということだけを判断しますから、そこで間違っているということになりましてもまた一からやり直しという、ぐるぐる回りみたいなことにもなりかねませんし、執行停止もなかなか難しいというような問題もありますし、私は今この段階でスタートする制度としてはこの制度が極めてバランスが取れた制度ではないかと、将来、これが定着していく中で将来の制度としてはまた考えていくことがあるのではないかと、そのように思っております。

○江田五月君 なるほどね。これも将来の課題だと。しっかりこの制度を育てていきたいという、そういう姿勢ですよね。

○参考人(益田哲生君) はい。

○江田五月君 時間もそろそろですが、最後にこの境界問題相談センター、これを弁護士会と調査士の会とでおつくりになっている。これは私は非常におもしろいといいますか、うまく運用していけば大変いい制度になっていくんじゃないかと思うんですが、これはあれですよね、ADR基本法で言えば将来、まだまだですが、将来認定ADRになると伺っていいんだと思いますが、それならば今の一、二、三、四、五、六ですか、もっと全国各都道府県にきっちりつくるような、そういう、これも将来の課題ですが、取組をされてはいかがと思いますが、これは益田参考人と西本参考人に結論だけ伺って、私の質問を終わります。

○参考人(益田哲生君) 結論だけということで、江田先生おっしゃるとおり、今後ともこれをずっと広げていくことが肝心なことだというふうに思っております。

○参考人(西本孔昭君) どんどん拡大したいと思っております。弁護士の先生方の応援を是非よろしくお願いいたします。

○江田五月君 終わります。


2005年4月5日

戻る会議録目次