2004年5月17日

戻るホーム主張目次会議録目次


159 参院・法務委員会 大阪地方公聴会    >>江田質問

 ・ 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案(閣法第67号)
 ・ 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(閣法第68号)
 ・ 総合法務支援法案(閣法第69号)


大阪地方公聴会速記録
 期日 平成十六年五月十七日(月曜日)
 場所 大阪市 新大阪ワシントンホテルプラザ
   〔午後一時開会〕

○団長(松村龍二君)
 ただいまから参議院法務委員会大阪地方公聴会を開会いたします。
 私は、本日の会議を主宰させていただきます法務委員会理事の松村龍二でございます。よろしくお願いいたします。
 まず、私どもの派遣委員を御紹介いたします。
 私の右隣から、自由民主党の陣内孝雄委員でございます。
 同じく自由民主党の小泉顕雄委員でございます。
 次に、私の左隣から、公明党の木庭健太郎理事でございます。
 民主党・新緑風会の江田五月委員でございます。
 同じく民主党・新緑風会の樋口俊一委員でございます。
 次に、本日御出席いただいております公述人の方々を御紹介申し上げます。
 日本司法書士会連合会常任理事の山本一宏さんでございます。
 主婦・「開かれた裁判を求める市民フォーラム」事務局員の大東美智子さんでございます。
 大阪府更生保護協会常務理事・三和住宅株式会社代表取締役の前田葉子さんでございます。
 弁護士・日本弁護士連合会副会長の宮崎誠さんでございます。
 検察審査協会関西連合会専任理事・大阪検察審査協会常任理事の遠藤一清さんでございます。
 弁護士・日本弁護士連合会司法改革実現本部事務局次長の西村健さんでございます。
 この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 当委員会におきましては、目下、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案及び総合法律支援法案の三案の審査を行っておりますが、本日は、三案について関心の深い関係各界の皆様方から貴重な御意見を承るため、当大阪市及び仙台市において公聴会を開会することとなった次第でございます。
 皆様には、御多用のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。皆様から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、今後の審査の参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、議事の進め方でございますが、まず、お一人十分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し添えますが、御発言の際は、その都度、団長である私の許可を得ることとなっております。
 また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたします。
 なお、公述人の方の意見陳述及び答弁とも、着席のままで結構でございます。
 それでは、山本公述人からお願いいたします。山本公述人。

○公述人(山本一宏君) はい、よろしくお願いします。
 私は、日本司法書士会連合会常任理事の山本と申します。よろしくお願いします。
 私からは、総合法律支援法につきまして、意見陳述の要旨に従って述べさせていただきます。
 まず、地方に、地域における現状というところから入らせていただきます。
 私は、三重県の四日市市という地方のところで開業をしております一司法書士でございますけれども、ここ数年、相談件数が相当増加してまいりました。これは、県民センターとか消費者センターなどで受けられたその相談の中でも、センターで対応がし切れない、あるいは困難だという事案につきまして私の方が相談を受けるという、まあセンターとの連携を図っているということでございます。
 しかし、現在、その相談の多くは、早期に相談を受けていれば比較的簡易に解決が見込める事案が多うございます。また、相談が遅れたばかりに事態が非常に深刻になり、あるいは感情的になり、解決に向けても時間や労力を多く負担しなければならない、また、それどころか解決が見込めないというようなものも少なくありません。
 例えば、私が実際に経験した事例、一つ申し上げます。消費者センターの方で多重債務の方が相談に来られた。その方は、暴力団関係の金融業者に食い物にされている、思い悩んでセンターの方に相談に来られたという方です。そこで、私の事務所の方が紹介を受けたということです。その方とは電話連絡を取りまして、相談日時等を決めました。しかし、この方は将来を悲観されて自殺に至ったというものでございます。そのために、当然に私のところへ相談に来るということはあり得ない、なかったということです。この相談がもっと早い段階でどこかの司法の窓口に達していれば自殺に追い込まれることというのはなかったであろう、そして法的な措置も受けられたのではないかというふうに考える次第です。
 私は、相談に来られた方がいつも言われるんですけれども、もっと早い段階で相談に来ればよかったということを必ず言われます。また、その後で必ず言うことが、法的な助言やアドバイスを受けたい、けれども、どこへ行っていいのか分からないということもおっしゃります。そうこうしているうちに、もういいやなんという考えであきらめてしまう、泣き寝入りをしてしまうということが相当に多いということもここで申し上げます。
 そこで、私どもの有志で早い段階で相談を受けようということで、自治体等が行っております毎週一回の相談会に直接に参加をしようということで参加をしています。しかし、この相談会につきましても、毎回盛況で相談の枠が足りなくなるほどで、今現在ではその対応に苦慮しているというのが現状でございます。
 以上から、私どものような専門家がボランティアなどによってこの問題を解決するにはやはり限界が来ているというふうに考えます。特に、地方では司法へのアクセスをもっと容易にしなければなりません。また、法的な紛争解決のための情報がだれにでも得られるような制度を作らなければならないということです。そこで、総合法律支援法による司法のネットワークへ掛かる期待はすごく大きいものだというふうに思い、また、早期にこの司法ネット構想が実現あるいは整備していかなければならないというふうに考えています。
 次に、司法書士会、私どものリーガルサービスの実情ということを御説明いたします。が、これは資料を提供しておりますので、簡単な説明とさせていただきます。
 法務大臣から、今回、簡易裁判所の訴訟代理能力に対する認定を受けた司法書士が、現在、全国で六千三百六十六名、達しています。これは近い将来一万人を突破するというふうに我々は考えております。
 それから、司法アクセス支援の活動につきましては、法律相談会、常設相談所あるいは巡回相談というものにつきましては、地域の実情に合わせまして全国各地で工夫をしながら活発に取り組んでいるということでございます。
 次に、少額裁判サポートセンター、これは国民の裁判を受ける権利を擁護しよう、あるいは司法への道案内をしようということで、全国の都道府県に一つ以上、要するに今現在五十以上が、このセンターが開設をして活動を行っているという現状です。
 司法過疎地域への対応につきましては、我々が行っている訴訟等に関する問題につきましては、簡易裁判所を管轄する部分につきまして司法が過疎地域になっているところというところでこのセンターを開設しております。これは巡回相談等を繰り広げながら展開をしているということでございます。
 次に、法教育、これにつきましては、子供さん方が社会に出る前に最低限度知っておかなければならないというような契約等の知識につきまして、我々司法書士が高等学校へ赴きまして、消費者教育というような観点で授業を持たせていただいております。これにつきましては、前年度、全国で五百校以上が我々のところへ依頼をしてきているという現実がございます。
 次、民事法律扶助事業につきましては、先ほどの簡易訴訟代理認定を受けた司法書士は、代理援助、法律相談援助という新たな民事法律扶助の事業が加わり、また書類作成援助につきましては、資料を参照していただけるように、着実にその件数は増加しているということでございます。
 次に、成年後見制度、これにつきましては、司法書士を正会員とする社団法人成年後見センター・リーガルサポートをいち早く設立をしました。ここにおきましては、地域との連携を図りながら、この制度の啓蒙活動や、あるいは後見人、保佐人、補助人などを就任できるような体制を取り、人材の供給源として今後も活発に取り組んでいくこととなります。
 最後に、司法ネットと司法書士というところでございますが、私どもの先ほどのリーガルサービスの実情から、結果から、国民はあらゆる場所で同じような法律問題を抱えているということがよく分かります。そして、その解決へ向けての道筋を求めています。しかし、司法サービスの現状においては、リーガルサービスを提供している機関あるいは組織の連携が不十分、そういうことが指摘されています。
 そこで、司法ネットでは、従来の縦割り行政の枠にとらわれることなく、司法書士会、弁護士会、行政機関などが有機的なあるいは横断的な連携を取る必要があります。この意味で、司法ネットの総合調整機能としての働きが最も重要になるというふうに考えています。
 しかし、留意すべき点としまして、既存の団体、機関やあるいは各資格者の独立性については最大限やはり尊重されるべきであり、これらの活動を不当に制限、制約することのないような配慮が必要であろうと考えます。
 最後になりますが、司法ネットが国民の司法へのアクセスを容易にし、自己責任、事後救済型の基本的なインフラとして機能するためには、地域に根差した制度として広く地域住民に利用されなければならないです。そこで、形だけのネットワークではなく、血の通ったネットワークとするために、総合法律支援法による日本司法支援センターが掲げる業務、そして設置を予定している司法アクセスポイントと十分な連携を図らなければならないと思います。そこで、私ども日本司法書士会連合会では、リーガルサービスはもとより、全国に多くの司法書士によるアクセスポイントを設けて、この制度構築に向けて協力体制を進めていく予定であります。
 最後に、司法ネットが真に国民の司法へのアクセスの拡充に役立つものとするため、私どもは積極的に対応していくということをお約束して、私の意見とさせていただきます。
 以上です。

○団長(松村龍二君) ありがとうございました。
 次に、大東公述人にお願いいたします。大東公述人。

○公述人(大東美智子君) 皆様、こんにちは。
 ちょっと、ずっと声をからしておりますので、お聞き苦しい点があるかと思いますけれども、御辛抱願います。
 私は、一九九一年から二〇〇二年まで十年余り、京都で、「開かれた裁判を求める市民フォーラム」、通称裁判フォーラムと言いますけれども、市民フォーラムという市民運動を通して、裁判をより分かりやすく、市民が参加できる裁判の実現をと、模擬陪審裁判、影の陪審など様々な活動を行ってまいりました。
 今回、国会で審議されている裁判員制度については、私たちの活動の一つである市民が裁判に参加するようになったという点では、私たちの目標に一歩近づいたと評価しております。これから、その制度の内容について私なりの意見を述べたいと思います。
 まず、裁判官と裁判員の構成についてですが、裁判官三名に対し裁判員六名というのには疑問があります。広く一般の市民の意見を裁判に反映させるには、様々な職業、年代の人たちの参加が必要と思われます。そして、当然、裁判員は男女半分ずつというのが私の頭の中にはありますので、二十代から六十代まで、男女一名ずつにしても十人にはなります。裁判官は一人か二人でもいいのではないかと思います。そして、評議のときには、裁判官は市民が自由に自分の意見が言えるような雰囲気作りに努めていただきたいです。できれば、法服は裁判長だけにしていただいて、あとの二人は平服で、市民と同じような立場で意見を述べていただきたいと思います。
 次に、評決の仕方についてですけれども、今回の法案では、裁判官及び裁判員双方の意見を含む合議体の過半数の意見によるとありますが、私は、原則として全員一致、それが無理なら四分の三以上の一致が必要だと思います。この法案では、裁判官三人、裁判員六人の合計九人で採決することになります。そうすると、九人のうち五人が一致すればよいことになります。もし、裁判官三人の意見が早々に一致すれば、あと裁判員二人の意見が一致すればよいことになって、あとの裁判員四人の意見はどうでもよいことになってしまいます。それでは十分に審議を尽くしての採決とは言えないと思います。評決には、少なくとも九人のうち七人の意見の一致が必要と思います。また、五対四で評決するということになりますと、一人だけの意見で、一人の意見が変わればそれで結果が変わってしまうという可能性もあり得ます。そういうことで、私は、評決には四分の三以上の人の意見の一致が必要だと思います。
 そうして、裁判員が参加する裁判ですから、裁判を迅速にする必要があります。裁判員をいつまでも拘束するわけにはいきませんので、後から証人の申請とか証拠の提出などがないように、すべての証拠開示はもちろんですけれども、裁判が始まるまでに入念な準備が必要だと思います。
 私たち裁判フォーラムが一九九三年から九七年まで行った影の陪審というのがありますけれども、それは、一般市民十二名が一つの刑事事件をずっと傍聴し続けて評決するといったものでした。それほど重罪な事件ではなかったのですが、論告求刑までに丸四年も掛かったという苦い経験を持っています。裁判は長く掛かるというのは、今までの裁判に対しての市民のほとんどの人が持っている感情だと思います。なるべく迅速な裁判にしていただけるよう、努力をお願いしたいと思います。
 それから、本案では、裁判員への秘密漏えい罪が盛り込まれていますが、評議の場で知り得たプライバシーやほかの人の意見に対して守秘義務があるのは当然で、守秘義務違反に対して懲役とか罰金を科すのは、裁判への市民の参加意欲を失わせるものであると思います。最高裁長官も先日、感想を述べるくらいならいいのではというふうな談話が新聞に載っていました。守秘義務については、裁判員の選定のときとか評議に入る前の裁判官の説示をきちんとして、あとは裁判員の良識にゆだねた方がよいと思います。
 次に、市民が裁判員として裁判に参加しやすくするために社会の体制作りが必要だと思います。各企業は、従業員とか雇用主が裁判員に選ばれたら進んで裁判に参加するよう、裁判所側も啓発する必要があると思います。裁判員裁判が施行されるまでに、国や都道府県の協力はもちろんですが、学校教育の場でも、裁判を受ける権利とか裁判員になる義務などを教える必要があると思います。
 それから、女性の立場で言わせていただくなら、子育て中のお母さんとかお年寄りを介護している主婦の方が安心して裁判員になれるよう、ベビーシッターの派遣とかホームヘルパーの派遣とか、裁判所の中に保育室を設けるなど、ハード面、ソフト面での整備が必要だと思います。
 次に、裁判員になるのは素人なのですから、聞いていて分かりやすい裁判をしていただきたいです。私は何度も裁判の傍聴に行きましたけれども、訳の分からない裁判が多いです。あれでは市民が裁判所に行きたくないと思うのは当然で、自分たちだけで分かる用語のやり取りが多かったです。裁判傍聴は専門用語が多くて何を言っているのか分からない、それと非常に聞こえにくいというのが私たちの感想で一番に挙がったものです。専門用語を極力控え、私たちにとって分かりやすい裁判を心掛けるよう、検察官、弁護人、裁判官は努力していただきたいと思います。
 最後になりましたが、この制度が施行されて三年を経て検討を加えるとありますが、この間に裁判員になった人の意見を聞いたり、不備な点はそれぞれのところを見直すなど、この裁判員制度がより良い制度になるよう検討されることを希望します。そして、市民の間に裁判員になって良かったという気持ちが根付くよう期待して、私の意見発表を終わります。
 御清聴ありがとうございました。

○団長(松村龍二君) ありがとうございました。
 次に、前田公述人にお願いいたします。前田公述人。

○公述人(前田葉子君) 前田でございます。
 大阪市内で不動産関連の会社を経営いたしております。法律におきまして私は全くの素人でございまして、このような立場でここにおりますのが少し場違いの感はしておりますが、本業の傍ら、大阪府更生保護協会の常務理事の立場におり、あわせて、地元で幾つかの地域振興のための役職を仰せ付かっていることなどから、市民の一人としての位置付けで発言の機会を賜ったと理解しております。
 それでは意見を述べさせていただきます。
 まず、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案について述べます。
 今回、司法制度改革の大きな柱として、裁判官と市民が対等に合議して有罪無罪を決め量刑を出すという、世界にも例のない裁判員制度を創設するということでございますが、参加による司法に対する国民の理解増進、民意の反映による司法への信頼の向上、裁判の迅速化という意義やねらいの実現に大きな期待を寄せております。
 多様化し変化することが常態化した時代の中で、発生する各種事件については、その背景や事情、関係者の意識といった判断材料を的確に理解することは、法律を学ぶだけではなく、幅広い知識や経験が必要であろうと思います。そういう意味で、新たな裁判員制度が実施され、国民が司法判断に参加することにより、信頼性がより一層高まることになると期待しております。
 一方で、選挙人名簿から無作為抽出された素人の裁判員が公正な判断を下せるかどうか、また法律の専門家である裁判官に伍して期待される役割を果たせるかどうかという点につきましては、簡単なことではないだろうという気がいたします。
 法案審議中で気の早い意見になるかもしれませんが、実施に当たっては、計画段階で予想されたこととは異なることもいろいろ起きてくることと思います。新しい制度を実効あるものとし、その大きなねらい、意義を実現していくために、制度に携わる現場の方々の真摯な御努力だけでなく、制度を定着させ育てるという、制度発足後の関係機関の継続的な努力も必要かと思います。
 テレビや小説といったフィクションではなく、実際の犯罪事件に裁判員として、当事者としてかかわる国民が増えることは、犯罪事件の悲惨さや、加害者、被害者双方の現実に触れることであり、裁判員の方々の御心労、御負担も大変なものになると思います。
 他方、更生保護に関与する者として、昨今の犯罪事件の増加、低年齢化、再犯者の増加という問題に頭を痛めており、本制度の実施により犯罪事件への国民の当事者意識が高まり、犯罪発生の抑止等への一定の副次効果が期待でき、加えて地域社会における犯罪意識の向上にもつながると考えております。
 また、経営者としては、自社の社員が裁判員として指名を受けた場合の対応も考えておく必要があります。私のような中小企業経営者にとりましては、タイミングによっては困る場合もあると思います。しかし、裁判所からの呼出しに恐らくは驚いている社員に対して、国民の義務を適切に果たせるように指導、支援することが経営者の義務だと考えます。
 以上のような観点から、今後は裁判員制度に対する国民の理解を促進し、国民が裁判員に選ばれることを前向きに考え、国民の側からも制度を定着させ育てようという機運が高まっていくことが重要と考えます。
 続きまして、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について述べます。
 刑事裁判の充実及び迅速化を図る目的での改正であり、オウム事件や和歌山カレー事件といった国民の関心の高い重大事件の裁判が結論を得るまでに大変長い時間を要していることに疑問を抱く国民感情に配慮した、時宜にかなったものと思います。
 また、裁判員制度の実効性を担保し、刑事裁判の充実及び迅速化を図るための方策として、公判審理に先立ち、十分に争点及び証拠を整理するため、公判前整理手続等を創設、連日的開廷の確保、即決裁判手続の創設等の改正が織り込まれており、刑事裁判の充実及び迅速化に資するものと期待しております。また、公的弁護制度の整備等、人権面における前進という意味でも意義あるものと理解しております。
 次に、総合法律支援法について述べます。
 紛争社会と言われる時代の要請にこたえ、中核となる日本司法支援センターの創設により、一般国民にとって、弁護士、司法書士など専門家のサービスをより受けやすくなり、法律による紛争解決がしやすくなるものと期待しております。
 以上のように考え、三法案の意義の大きさを理解し、賛同いたします。
 最後に、一言所見を述べさせていただきます。
 このような機会をお与えいただいたことで、法案についての御説明を承り、短時間ながら勉強することで、法や制度の趣旨、意義などについて理解することができました。
 しかしながら、地方公聴会のお話があるまでの私の理解程度は、誠にお恥ずかしい次第でありますが、新聞、テレビからの情報やアンケートの結果を見て、裁判員制度というものが新しく始まって一般市民が裁判官の役割を担うということになるらしいけれども、素人が、例えば私に本当にそんなことができるのだろうかといった程度のものでした。
 法律は国の根幹を成すものであり、国民として法律を知らないでは済まされないという原則の一方で、法律は難解で専門知識がないとなかなか理解しにくいというのが一般国民の現実かと思います。
 今後、素人でも理解しやすい、参加しやすい形で広く国民に知らしめることができれば、関心を持って国民としての義務等を考える時間が増えるように思います。ひいては、法秩序は国民みんなで支えていくものであるという公共精神が醸成されるのではないでしょうか。
 専門家の皆様にとりましては、意見というよりは恐らく感想程度の内容にとどまるものであったこと、また理解不足の点が多々あったかもしれません。至らぬ部分につきましては、団長様始め皆様方の御指導をお願いしたいと存じます。
 以上で発言を終わります。
 ありがとうございました。

○団長(松村龍二君) ありがとうございました。
 次に、宮崎公述人にお願いいたします。宮崎公述人。

○公述人(宮崎誠君) 私は、大阪弁護士会の会長並びに日弁連副会長を兼務しております。日弁連では日本司法支援センターを担当しております。
 本日は、総合法律支援法案、支援センター構想について意見を述べる機会を与えていただき、大変名誉なことであり、感謝しております。
 本法案は、事後規制型社会へかじを切りつつある我が国において、法による紛争解決を重視し、国民の司法アクセスを確保する体制の整備が、公共性の高い民間の事業という観点から、はっきり国の責務であることを認めた画期的な法案であり、さらに被疑者国選の導入を図る極めて重要な法案であります。
 本法案には、財団法人扶助協会の経験や、これまでの日弁連における検討が、すべてとは言えませんが、ある程度取り入れられた内容となっています。例えば、日本司法支援センターが非公務員型とされ、民間人たる弁護士などが、扶助協会と同様、運営に参加できる体制となること、検察と対立する刑事弁護、国を相手とする行政訴訟などを扱うがゆえに不可欠である弁護士等の職務遂行の独立性が法文上明記されたこと、独立性担保の機関として中立的な審査委員会が設置されること、事業に地域の声を幅広く反映させるため地方協議会が設置されること、公的団体からの委託により自主業務を行うことが可能となること、さらに衆議院で、二十九条、三十五条中の弁護士に対する懲戒文言が削除されたことも、誤解を生まない重要な修正であったと考えます。
 私としても、本法案については積極的な評価をし、今国会での成立をお願いするものです。
 その評価の上で、与えられた貴重なこの機会に、今後の御審議の中で是非検討いただきたい課題の中で、四点に絞り要望を述べさせていただきたいと考えます。
 第一に、本センターが法務省所管法人であることから、本部組織においても支部においても弁護士の職務の独立性が目に見える形で実現され、弁護士の独立性について国民の信頼が揺るがない体制とされるべきことです。
 業務方法書、国選弁護人との契約約款、事務取扱規程などに職務の独立性の観点が反映されることは当然ですが、それらは内部的な運用であり、例えば理事や支部長を始めとする人事その他の運営において国民に目に見える形での弁護士会の関与が確保される必要があります。
 大阪支部でも、現実の業務を担うのはほとんどが弁護士です。大阪支部の運営についても、大阪弁護士会が関与する仕組みこそが多くの弁護士の協力を得、かつ永続的に独立性を担保する上で必要ですし、職務の独立性なくしてセンターに対する大阪府民の信頼は得られません。
 最高裁の関与は、実に法文上十一か所も記載されているにかかわらず、残念ながら弁護士会の意見を聞くとの規定は一か所もありません。法務大臣は、衆議院における御答弁で日弁連の意見に配慮すると明言されていますが、貴院の審議を通じ更に明確にされることを希望しています。
 第二に、このセンターが機能するためには、言うまでもありませんが、十分な予算措置が不可欠です。
 法案の第十一条では、国は必要な法制上又は財政上の措置を講じなければならないとされました。日本では、民事法律扶助予算が国選弁護を含めても百十億円程度にすぎず、国民一人当たり九十円弱という金額は、アメリカ、イギリスの一人当たり数千円の予算規模と比較し、余りに貧弱であることは国際的に有名です。
 しかも、困ったことに、日本ではサラ金のコマーシャルがテレビにはんらんしています。無防備な若者や過疎地の気の良いお年寄りが悪徳商法のえじきになっています。窓口に来る多くの市民は法律相談だけでかなり救済されています。少しの予算で多くの国民が悪徳商法で丸裸にされたり一家離散の憂き目に遭うことから救済されるわけです。制度に魂を入れるため、是非予算獲得への応援をお願いいたします。
 第三に、自主事業が今後とも本部で行われるもの、支部独自で行われるもの、いずれもが従来どおり行える柔軟な運用が確保される必要があります。
 法的サービスは国民の需要とともに流動的、可変的であり、今まで弁護士は、社会のニーズにこたえ臨機応変かつ積極的に取り組んできました。日弁連は全国的に当番弁護士、少年付添いなどの自主事業を展開してきましたし、大阪支部独自の自主事業としては、犯罪被害者支援、過労死などの労災保険請求支援、高齢者障害者出張法律相談、ホームレス支援など先進的な業務に取り組んできました。自主事業がまず先行し、それが熟した段階で本来業務に取り込まれる道が何とか確保できたことは喜ばしいと考えています。
 しかし、今回、自主事業は本来業務に支障がないことが要件とされました。これを硬直的に解釈されると自主事業ができず、かえって司法アクセスを阻害する結果となりかねません。
 さらに、資金的な面も看過できません。日弁連の自主事業は贖罪寄附あるいは弁護士らの扶助協会への直接寄附による資金約九億円を利用してきましたが、直接寄附は今後は本来業務にのみ充てられるため、その寄附を弁護士会にいったん誘導する必要があります。しかし、弁護士会は特定公益増進法人でないため、弁護士会への寄附は税務上のメリットがなく、日弁連も、さらに大阪弁護士会も寄附を集めることができるか、今までどおり自主事業が継続できるかの不安を持っています。法律の施行までに周辺の法整備が望まれます。
 第四に、業務範囲について、本来業務の範囲については、仮に法案が成立しても引き続き拡充が検討される必要があります。
 司法改革審議会意見書も、平成十四年三月に閣議決定された司法制度改革推進計画にも、民事法律扶助については、対象事件、対象者の範囲、利用者負担の在り方、運営主体の在り方について、更に総合的、体系的な検討を加えた上で一層充実すべきであると述べています。さらに、司法制度改革推進計画では、本部設置期限、今年の十一月ですが、所要の措置を講ずると述べています。
 対象業務でいえば、例えば今の時代、民事扶助業務を裁判業務に限るのは余りに狭過ぎるのです。少なくとも行政不服手続に拡大すべきですし、社会的弱者については厳し過ぎる資力要件の緩和も不可欠です。現在、与野党で検討されている犯罪被害者支援の充実、さらに当番弁護士、少年付添いについても本来業務としての拡充が検討されるべきです。
 最後になりますが、日弁連はもちろん、大阪弁護士会としても、新たな被疑者国選を近畿圏のどこでも円滑に実施できる体制、過疎地での法的支援サービスを充実させるための体制など、支援センターの業務の円滑な発足とその後の業務の充実を目指し、全面的な協力を惜しまないつもりですし、既に会内ではその体制作りを検討中であることを併せ申し述べ、本日の私の意見といたします。
 御清聴ありがとうございました。

○団長(松村龍二君) ありがとうございました。
 次に、遠藤公述人にお願いいたします。遠藤公述人。

○公述人(遠藤一清君) 私は、検察審査員を経験したOBとして、今回の裁判員制度と検察審査会制度について少し、ちょっとお話をしたいというふうに思っています。
 私は、かねがね裁判員制度と検察審査会は車の両輪であると。検察審査会制度が先に先行したわけでございますが、その実情を少し知っていただくと、これから発足するその裁判員制度がこういう形になるんではないかというのがかなり見えてくるというふうに考えております。
 そこで、まず最初に、より身近に検察審査員というのはどういうような活動をしてどういうふうに思っているかということで、別添の資料の一に検察審査員を終了後のレポートをまとめたものを、私が勝手に要約したんですが、付けております。後ほどごらんいただきたいんですが、実は、このレポートを付けた意味は、選任届を受け取ってからと、それから検察審査員は六か月ですが、半年間を過ぎてその後どういうふうに変わったかと、その変化と成長を見ていただきたいということでございます。
 それで、第一項でございますが、この成長は、市民感覚での法律の尊守や社会のルール、人権を守ることの大切さ、言わばこれは小学校や中学校で私たちが習ったことなんですが、それを審査会で審査を行うことによってそれを再認識をしたと、こういうことが一つと、それからその基盤に立った、その基盤に立った審査活動を通じることによって各自の達成感とか自信とか、それから審査員同士の連帯感が醸成されてきた、そういう喜びから生まれてきたのがこの半年間の成長であろうというふうに考えております。
 次に、今度導入される裁判員制度と検察審査会制度は、審査から決議に至るプロセスは私は基本的な部分では一緒だというふうに考えております。ということは、審査会制度の動きを見れば裁判員、先ほど申しました裁判員制度が予測されるということですが、それを一部ちょっと、現実問題としてちょっとお話をしたいというふうに思っております。
 まず、裁判員制度を報道されるときに、最近ネガティブな質問が少し多いように思っています。例えば、素人にできるんだろうかとか、仕事はどうなるんだとか、それから専門用語は分からないんじゃないか、プロの裁判官と対等に話ができるんであろうか、守秘義務違反は罰則規定があるよ、こういうような報道がなされるわけですが、これは実は審査員が選任されたときに持った心配であったり不安であったりと全く同じだということです。
 そういうレベルの審査員が、実は平成十四年度までに十四万九千件の申立て案件を処理をいたしております。その中で一万六千件の起訴相当等の決議を行っており、私たちが最も注目しているのはここ三、四年の起訴率でございます。これが三〇%に上がっております。これは、取りも直さず司法参加の原点である民意の反映というのが実際問題になされてきておると。発足してから五十六年になりますからちょうど半世紀、やっと民意の反映が出てきたというふうに理解をしております。
 裁判員の方が仮に五年後に卒業されて、終了されて感想文を書かれると、多分冒頭の感想文のような内容になるというふうに理解をしております。重要なことは、裁判員のこういう真摯な活動が裁判に反映されることと、それが積み重なっていく、これが、そういう行為が真の国民参加であるというふうに私は理解をしております。
 次に、審査法の一部改定の決議に対するいわゆる法的拘束力の付与でございますが、これは実は私たちが非常に大歓迎をしている大改正だというふうに私たちは位置付けをしております。これで頼りがいのある分厚い検察審査法になったというふうな理解をしております。
 そこで、一つお願いがあるんですが、平成二年の十月に検察審査法に関する世論調査というのを実施をしております。これは、犯罪の発生とその後の経過、それから認知、もし検察審査員に選ばれたらどうしますかというような三つのセクションに分かれた質問だったと思うんですが、今回はこれだけやはり法的拘束力の付与という条項が加わって非常に分厚くなったわけですから、是非利用していただきたい、国民に是非利用していただきたい、そういう意味においての調査、どういうふうにしてこれを認知させていく、広報、知らせていくかという、そういう活動を行うための調査を是非お願いをしたいというふうに思っています。
 それから、守秘義務の問題ですが、今回、検察審査会制度も裁判員制度と同じような守秘義務に格上げされたわけですが、発足以来五十六年間、私たちの知る限りにおいては検察審査会で守秘義務違反というのは発生をしていないというふうに思っています。これは、その任務を遂行してきた人たちがその間に培った正義感みたいな、法の尊守というか、正義感というか、そういうものをいまだに持ち続けている、そういうことだと思います。ですから、守秘義務が別になくても、全然心配することは、あっても守秘義務違反を犯すことはまずないと思うんですが、裁判員制度が導入されますと、扱う事件が非常に予期もせぬ大事件を扱うということにもなりかねないわけですから、被疑者や被害者の人権はもとより、私たちは裁判員とか審査員の人権を守る意味においても、この守秘義務というのはあった方がいいです。少し、弁護士会の先生方とはちょっと意見が違うかも分かりませんが、私はそういうふうに思っております。
 それから、私が一番期待しておるのは、裁判員が将来日本を変えていくんではないかという期待を実は持っておる一人でございます。
 昨年の十一月の九日に日経さんのコラムがちょっとございまして、その中で、「NEWSな数字」という毎週日曜日に出る小さなコラムなんですが、そこに「百七十四人に一人」という記事が載っておりました。これは日経さんの試算による、将来五十年間で、法律施行から五十年間で何人の人が裁判員に当たるかという確率です。百七十四人に一人という記事が載っておりました。今回、総事件数が二千八百、裁判員が六、補充員が二と仮にした場合、その当たる確率というのは、日経さんのベースで計算しますと七十九名に一人、五十年間で当たるということになります。
 私は、問題にしておりますのは、期待をしておりますのは、この裁判員をされる年間の人の数でございます。これから計算していきますと、約二万二千四百名の方が一年間で裁判員の経験をされます。それに検察審査員の終了者を入れていきますと約三万一千人の方が、いわゆる法をきちっと守っていこうやないか、それから社会のルールを大切にしていこう、人権を尊重していこう、そういう活動を続けた人たちが三万一千人ずつ世の中に出てくる、こういうことでございます。
 私たちの社会は、地縁、血縁、上下社会というような関係の中で生活をしてきたわけです。それがだんだんだんだん、少子化であったり、住宅事情がマンションになって変わったり、それから年功序列型の賃金が崩壊したり、いろいろなリストラ、いろんな問題が積み重なってきて、結局、やはり今現在は自分若しくは自分たち中心主義の社会になってきておると思います。そういう中で、そういう司法を、きちっとだれかのためにそういう正義を行ったという人たちが三万一千名ずつ出てくるということになりますと、これだけ地域ボランティアが全く発達していない日本の社会でも、そういうものも生まれてくる可能性もあるし、犯罪件数も減ってくる可能性もあるわけで、そういう面で新しい世の中が生まれるのではないか、そういうことを期待をしております。
 それから、最後になりますが、司法参加を実感として国民全体が共有していくためには、やはり裁判員をされた方がその自分の経験を話をしていく、これは守秘義務とかに当たる項目を話せと言っている意味ではないんですよ。体験したことを話していく、それから自分が感じた改善を、こういうふうに改善をすべきだという点が感じられたものはどんどん発言していく、そういう民間のボランティア団体みたいなものを作っていく必要があるんではないかなというふうに思っています。
 個人ベースであれ行政であれ企業であれ、そういうところをサポートしていくサポーター的な活動ができるような環境整備も是非お願いをしたいと思います。サッカーのサポーターはフィールドでプレーをすることはありませんが、裁判員制度のサポーターは必ず、フィールドでプレーをすることになる可能性が非常に高いわけでございますので、そういう面で、発足後にはそういうような活動もやはり彼らに是非期待をしたいと思うし、私たち協会もそういう人たちのやっぱりサポーターでありたいというふうに思っております。
 以上でございます。
 ありがとうございました。

○団長(松村龍二君) ありがとうございました。
 次に、西村公述人にお願いいたします。西村公述人。

○公述人(西村健君) 弁護士の西村健といいます。
 本日は地方公聴会で意見を述べるという貴重な機会を与えていただき、ありがとうございます。
 私は、一九八八年に大阪弁護士会の調査団の一員としてアメリカの陪審制度を調査して以来、裁判への市民参加制度に強い関心を持ってまいりました。いずれも短期間ですが、アメリカ以外にも複数の国の陪審・参審制度を見てまいりました。市民参加や刑事手続に造詣の深い学者や実務家からの話も聞いてまいりました。そのような者として、今回の裁判員法及び刑訴法改正について意見を述べたいと思います。
 私個人としましては、結論的には、幾つかの制度を比較してみますと、現在の日本においては陪審制度が最も望ましい制度と考えています。今回の裁判員法はこれとは異なっておりますけれども、主に二つの観点から、基本的に支持しております。
 第一には、民主主義という観点です。
 多くの民主主義諸国においては、形態は様々であるにせよ、裁判への市民参加がごく当然であると考えられ、実施されています。選挙制度と裁判への市民参加が多くの民主主義諸国の車の両輪となっております。
 最近では、この三月に韓国に訪問させていただきました。韓国でも、現在司法改革が進められていますが、その一環として、裁判への市民参加、特に陪審制度の導入の是非が重要課題とされていました。公聴会も開催されていましたし、公聴会では司法への市民参加の必要性が熱く議論されていました。
 私たちが生きていく社会の問題は私たち自身が解決していくというのが民主主義だと思います。裁判員制度は、司法に市民が参加することによって、そのことを改めて確認し、実現するものとして重要な意義が認められると思います。
 第二は、手続の改革につながるという点です。
 市民参加が実現している諸国の裁判手続では、数多くの見習うべき点があります。例えば、分かりやすい法廷活動です。裁判のプロではない市民が参加する以上、プロの言葉でなく、できる限り分かりやすい言葉で裁判を進めなければなりません。また、法廷で見て、聞いて、分かる裁判にするために、直接主義、口頭主義が徹底され、それを実現する様々な工夫がなされています。
 さらに、集中した裁判を行うための十分な証拠開示など、諸制度も整備されています。日本ではこれらの制度やその運用が不十分でしたので、裁判員制度の導入を契機として手続改革が着実に進んでいくと思いますし、そのように期待しております。
 このような観点から、私は、今国会での裁判員法の成立を望んでおりますが、三点ほど危惧している点を指摘したいと思います。
 第一点目は、評議の在り方です。
 一般の国民が裁判官とともに議論する制度においては、国民が十分に意見を述べることができるのかが懸念されています。各国では、例えば若い人から話す、裁判官は最後に意見を述べるなど様々な工夫がなされていますが、それらを参考にすべきです。
 また、全員一致が目指されるべきと思います。アメリカの陪審研究では、全員一致、十二人中十人、十二人中八人の三つの多数決制あるいは制度を比較したものがありますが、全員一致制において最も議論が充実して行われ、参加者の満足感も高かったとされていますので、それらも参考にすべきだというふうに思います。
 裁判員制度で危惧している第二点目は、守秘義務です。
 守秘義務については、衆議院で一定の修正を経た点は評価しております。しかし、いまだにその範囲が明確になっておらず、不安視されております。
 裁判員に守秘義務を設ける立法趣旨は、一、他人のプライバシー保護、二、裁判の公正さや裁判の信頼を確保する、三、評議における自由な意見表明を保障することにあると衆議院法務委員会で法務大臣が答弁されておられます。とすれば、その立法趣旨が阻害されない事項は守秘義務の対象外とされるべきと考えます。
 具体的には、他人のプライバシー、発言した他人を特定する形で意見を紹介すること、これは守秘義務の対象とはなり得るでしょうけれども、それ以外については基本的には守秘義務の対象外とすべきです。殊に、評議の進行状況や雰囲気などは、話しても問題ないとされている感想との区別がとても困難ですし、また多くの場合、話しても問題ないと思います。
 さきに述べましたように、裁判官と市民の評議の在り方が問題とされていますが、評議の進行状況や雰囲気などが明らかにされませんと、より良い評議の在り方の工夫が困難になるかと心配しております。
 第三点目は、裁判員制度実施までの間の準備、殊に、実施後、国民が裁判員として主体的、実質的に参加しやすい諸制度の準備が十分行われるかどうかということです。
 裁判員法廷や裁判員控室の設置など裁判所設備の充実、裁判員が参加しやすい諸制度の整備、連日的開廷を前提とした裁判員に分かりやすい裁判を実現するための立証方法の整備などが必要です。これらの実現のためには、国民の声を十分に聞くとともに、相当額の予算確保が必要であると思います。その際、戦前の陪審制導入における予算措置を参考にしていただきたいと思います。その準備を精力的に行う何らかの部署の創設、そしてそれを検証する国民も関与した検証機関の設置なども必要だと思います。
 次に、刑訴法の改正ですが、連日的開廷を前提とする今回の法案について、結論的には支持したいと思います。しかし、被告人の防御権の確保が重要であると思います。現在の実務では、不十分な証拠開示や人質司法などと言われているように、被告人の防御権は必ずしも十分に保障されていないと私は考えます。連日的開廷になれば、これらの実務を改善する必要が特に高まります。改正刑訴法の解釈、運用も被告人の防御権という観点が重視されなければなりません。この観点から三点ほど指摘したいと思います。
 第一点目は、証拠開示です。
 私個人としては、検察官手持ち証拠のリスト開示が必要であると考えています。そこで、今回の制度では不十分だと思いますが、一定の場合に検察官に開示義務を認め、裁判所が開示について判断し、不服申立てもできるということで、現行法よりは進んでおります。ただ、条文の解釈、運用次第では、全面的証拠開示に近いものになる可能性と、他方、狭い証拠開示になる危険性の双方を秘めております。証拠開示が起訴後早期に十分に行われなければ、争点整理が進まず、連日的開廷もできません。十分な証拠開示となるような解釈、運用とすべきです。
 第二点目は、開示証拠の目的外使用の禁止規定です。
 法文を形式的に解釈すれば、現在全く問題ないとされている使用方法も禁止することになりかねません。その意味で、衆議院で二百八十一条の四の二項という条項が追加されていますが、被告人の防御権を重視し、現に弊害が生じたかどうか、公判期日で取り調べられたかどうかなどの点を重視した解釈、運用とすべきです。
 第三点目は、被告人の防御権の確保という点から見た連日的開廷を行うための諸条件の整備です。
 十分な証拠開示がなされ、十分な準備期間が保障されることはもとより、被告人と弁護人の間の十分な打合せ、すなわち接見が可能となるような制度の運用や環境整備、公判での証言記録の即日交付、取調べの可視化、すなわち録画、録音など新たな立証方法の整備、公判での証言のビデオ化などが必要です。これらの中でも、保釈制度及びその運用の見直し、土日・夜間接見や裁判所内での接見の確保、取調べの録画、録音が重要だと思います。
 被告人の主張や反証を十分最大限行うためには、弁護人と被告人間の打合せが十分行えることは不可欠です。国の政策の一環として連日的開廷を行う以上、国の人的体制の制約などを理由とした接見の制限は不合理だと考えます。
 また、取調べの録画、録音は、遅くとも裁判員制度実施までの間に実現すべきだと思います。そのことを通じて、不要な争点が減って、迅速化に役立ち、争点になった場合も裁判員の判断も容易になると思います。取調べの録音は、欧米諸国だけのものではございません。台湾では弁護人立会いや録音が実施されています。韓国でも弁護人立会いが認められていますし、録画についても試験的に実施される予定と聞いております。今や、可視化は世界の常識だと考えます。
 最後に、裁判員法に関して一言述べたいと思います。
 私を含め、今を生きるほとんどすべての日本人は、選挙制度が存在することをごく自然に受け止めています。しかし、終戦直後の六十年前まではそうではなかったと思います。戦前の普通選挙制度導入に際して時期尚早だという意見もあったように思います。また、現在の選挙制度にはいろんな問題点が指摘されています。しかし、現在、選挙に行かない人も含めて、選挙制度そのものをなくそうという意見の人はいないと思います。
 今回、司法参加制度が議論されていますが、それに対して否定的な意見も存在しています。また、様々な問題点も危惧されています。しかし私は、近い将来、市民が参加する裁判制度も選挙制度と同じくごく自然に受け止められ、改善は図られていくけれども、廃止することはおよそ考えられない社会になると信じております。
 以上で私の意見とさせていただきます。
 ありがとうございました。

○団長(松村龍二君) ありがとうございました。
 以上で公述人の方々の御意見の陳述は終わりました。
 これより公述人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
 なお、質疑及び御答弁は御着席のままで結構でございます。

○陣内孝雄君 自由民主党の陣内と申します。
 今日は、公述人の先生方、大変御多用の中に貴重な陳述をお聞かせいただきまして、感謝申し上げますとともに、敬意を表したいと思います。
 我が国の経済社会を取り巻く環境、これは、規制緩和が進み国際化が進む中で、これまでの事前の規制とかあるいは調整、そういう形から事後のチェックあるいは救済型に進んできたと、こういうことで、司法の果たす役割というのは極めて重要になってきておるわけでございます。
 政治改革とか行政改革にやや後れてこの司法制度改革というのが始まったわけでございますが、ここでしっかりと国民が参加し、国民が利用しやすいような制度を確立していかなければならないというふうに思うわけでございます。
 ただいま御意見をいただきまして、大変、司法制度について御見識を伺い、これまで法科大学院もスタートしたし、これからいよいよ司法、裁判員制度を含めた大きな改革の段階に至って、大変参考になりました。
 せっかくの機会でございますので、それぞれの先生方に少し補足的にお尋ねをさせていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
 まず、山本先生に対してでございますけれども、法教育の必要性についてお触れくださいました。
 やっぱり裁判員制度の導入については、まず多くの国民が進んで参加できるようにすること、それから重い責任を十分果たすことができたと、こういうふうに思えるようにすることが大事だと思います。
 この関係では、まず裁判員制度を国民に周知徹底させるための措置、これは学校とか社会とかいろんな場における法教育の大事さがそこにあろうかと思いますが、この点について改めて御所見を更にお聞かせいただければと思います。

○公述人(山本一宏君) 私どもの方で十五年ほど前からこういうことをやっていこう、要するに主権民たる国民をどういうふうに育成するのかという前提で、初等中等教育というところから法教育を始めたということでございます。
 今後につきましても、やはり法教育というものを今後の一つの司法へのアクセスの拡充という部分から考えても必要であろうというふうに考えております。
 以上です。

○陣内孝雄君 この司法ネット法案というのもまた別な意味で大変大事だと思います。既に多くの取組をしておられて、早期にどこでもこの司法ネットを通じて支援できるようにすることが大事だという御指摘がございました。そのとおりだと思います。
 これから更に総合調整機能を発揮する上で、加えてどういうことが望ましいのか、御発言お願いしたいと思います。

○公述人(山本一宏君) 司法ネットの中におきまして、当然、予防司法の観点というものがございます。これにつきましては、予防司法と言われましてもすぐにどうのこうのできるわけではございません。それであれば、理想から言いますと、小学校低学年辺りから法教育というものをなじませていくというのが現在の一番いい方法であろうというふうに考えています。
 ただ、我々につきましては、高等学校の社会科あるいは家庭科におきまして、その授業の一環として今後も司法ネット等含める形の方がより良いネットになっていくようなふうには考えております。
 以上です。

○陣内孝雄君 ありがとうございました。
 次に、大東先生にお願いしたいと思います。
 裁判員制度、これは豊かな経験を持ち、あるいはまた的確な判断力を持った国民が主体的に参加していただくということでもって国民の司法に対する理解と支持が得られるということでございますが、一方、最近、二月に行われたNHKの世論調査によりますと、導入に賛成される方が四六・五%、反対が三四・一%で、裁判に参加したいかという問いに対しては、できれば参加したくないが四二・五%、絶対参加したくないが一九・八%、こういうふうに数字が出ておるわけでございます。
 参加したくない割合が六二・三%にも上がっているということでございますが、この裁判官と裁判員の構成について、より多くの裁判員が自由に発言できるように、そういう構成が望ましいというふうに御発言くださいましたけれども、この辺の国民の意識についてどういう具合にお考えでございましょうか。

○公述人(大東美智子君) 今までの裁判に対する国民の意識は、なるべく裁判は起こしたくない、裁判所は敷居が高いというのが一般的な人の感覚だと思うんですね。
 それで、裁判というものは、裁判を受ける権利があるということが国民の中にそういう教育として徹底されてなかったということが非常に重要なことだと思います。学校教育の中で裁判所を見学に行ったことがあるとか、そういうことがほとんどの人が皆無で、私も、この裁判フォーラムに入って裁判傍聴とか模擬陪審裁判とかするまで傍聴とかも行ったことありませんし、なるべく行きたくないという感覚の方が強いので、これからの教育の中でやっぱり裁判傍聴をするとか、それから今まで模擬陪審裁判を私たち七回してきたんですけれども、一般公募で、それで、陪審員を経験した方はもうみんなやっぱり熱心で、非常にちゃんと討論ができるんですね。だから、自分はそんなのできないとか、そういうのは裁判官に任せればいいという、今までの風潮をまず変えていかなければならないと思います。

○陣内孝雄君 更にお尋ねさせていただきたいんですが、裁判官の判断の方が信頼できるというふうな答えをした人が全体の一七・八%、誤った判決につながるからというふうな懸念を持っている方が四五・九%と、こういうふうに裁判員制度への信頼に疑問を投げ掛けるような調査結果も出ているわけでございますが、そういう点についてどのようにお考えでございましょうか。

○公述人(大東美智子君) 裁判員制度そのものを余り深く理解していないということがまず第一点。外国の陪審裁判とかを余り、ドラマとかテレビでしか知らないという方がほとんどだと思うんですね。それで自分に自信がないと。
 裁判官は偉い人。まず、裁判官は偉い人、非常に難しい司法試験を通って裁判官になった人だから絶対的な信頼が置けるというふうに考えている方が多いと思うんですけれども、戦前の陪審裁判が、戦前、昭和三年から十八年まで十五年間、陪審裁判が実際に日本でも行われていまして、その間の冤罪率が非常に低かったというふうな統計が出ているんです。
 それで、今、ほとんど有罪率が九九・九%というふうなことから考えて、陪審裁判を行えば冤罪率がやっぱり低くなるんじゃないかなというふうに私は考えておりますので、裁判官の方が私たち一般市民よりも信頼ができるということはちょっとどうかと思っています。

○陣内孝雄君 ありがとうございました。
 引き続いて、前田先生にお願いしたいと思います。
 国民が司法判断に参加することにより信頼性がより一層高まることになるというふうに期待していらっしゃるということでございますが、そういう点で国民の参加を促すにはどのようなことに留意した方がいいのか、更にお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。

○公述人(前田葉子君) 先ほどからもいろいろお話が出ておりますが、まず国民の皆さんに分かりやすい方法で広く知らしめて、そして裁判員制度というものの理解ができるようになれば、それによって、犯罪をすればこういう結果になるという意識が高まってきて、犯罪の抑止にもなってくるかなと思っております。

○陣内孝雄君 ありがとうございました。
 時間もなくなってまいりましたので、次は宮崎先生にお尋ねさせていただきたいと思いますが、司法支援センターの業務について、弁護士あるいは弁護士会のお立場から大変貴重な御意見をいただきまして、よく分かりました。
 なお、この際、法曹のみならず、広く人材を求めた体制がこの司法支援センターの機能を十分発揮する上には必要だというふうな意見もございますが、先生のお立場からそういうことについてどのようにお考えになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

○公述人(宮崎誠君) 今おっしゃったとおりだと私どもも考えております。
 やはり、最近の法律の領域あるいは紛争の広がり、さらに様々な法際、法律の、法律と法律の間の様々ないろいろな業務がございますし、またさらに行政手続でありますとか、そのようなことの支援もやはりしていかなければならないと、このように思っております。
 したがって、私どもも、地方自治体あるいは消費者相談センターなど、幅広い方々との情報交換並びに支援が必要だと、このように考えております。

○陣内孝雄君 ありがとうございました。
 遠藤先生にお願いいたします。
 私も検察審査協会の方から話を伺う機会がありました。今日、遠藤先生がおっしゃった、いろんな認識をこれまで持ってきておったわけでございますが、検察審査会というのは六か月の任期をもって、しかも三か月で半数が交代していくという中で、最初の考え方が次第に理解が深まってすばらしい業績を上げていかれるような形になっておられるということで、使命感を十分に達成しておられ、満足しておられるように聞いておるわけでございます。
 そういう意味で、一言だけお尋ねさせていただきたいのは、この裁判員制度を定着するためには、罰則によってそういう裁判員になっていただくような措置を講じようということになっておるわけでございますが、そうじゃない、積極的な参加を促す意味でどんなことがあり得るのか、お考えがおありでしたらお聞かせいただきたいと思います。

○公述人(遠藤一清君) まず、私が、過去、調査に関しましては何件かの調査が発表されております。実はその数値が基本的には私は決して低くない、悪くないという理解をしております。
 先ほど、平成二年に、十月に内閣府の政府広報がされた世論調査では、今からですから十四年前、ですから五十二年ぐらい、ちょうど半世紀を過ぎたぐらいのときの調査ですが、検察審査会ということを知っていますか、見たり聞いたりしたことがありますかという答えに対しては、三一%ぐらいの方がイエスという答えが出ております。しかしそれは、その検察審査会というのが検察官が不起訴にした事件を扱うということを知っていますかというレベルまで審査会が知っていますかとなりますと、八・一%にすとんと落ちます。その当時で、例えばそういう審査会にあなたが選ばれたら参加しますかという質問に対しては、一七%ぐらいは是非参加したい、参加してみたい、あとはううんというような回答でございます。
 今回、まだこれから五年間を掛けていろいろ法が国民全体のものになるように、なじむように今から調整していくわけですから、今、単に新聞報道でなされているだけの情報でこれくらいのスコアというのは非常に私は高いと思います。ですから、特にこの五年間が非常に大切な時期であろうと。いろんな規定を設けるんじゃなしに、真に理解をしていただく、そういうような広報、政府広報のやり方が、是非うまくやっていただければ、全くすんなり、検察審査会で何も問題ないわけですから、すっと入るというふうに私は確信をしております。

○陣内孝雄君 ありがとうございました。
 終わります。

○小泉顕雄君 自由民主党の小泉と申します。どうぞよろしくお願いをいたします。
 先生方には、大変お忙しいところをお出ましをいただきまして、これまでの大変貴い御経歴に基づいて貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございました。
 本日のこの公聴会のテーマは多岐にわたっておるわけでありますけれども、時間もありませんので、特に私が関心のあります一点について、これは私だけではなしに、今回の国会では司法制度改革関連の法案が十本ほど提出をされておるわけですけれども、その中でも一番関心の高い、あるいは制度改革の目玉とも言われているのがこの裁判員法案でありますので、この点について先生方の御意見をちょうだいをしたいというふうに思います。
 裁判所というのは、近寄りたくない建物の最右翼、代表格のように今言われました。また、裁判官というのは、どちらかというと純粋培養をされて世間の常識を欠いておられる方が多いとかいうような評価がある中で、国民の感覚というものが裁判の内容に反映されることによって、司法に対するこういった国民の偏見といいましょうか、というものを解消するとともに、更に信頼を深めるということで、また裁判の迅速化とか、あるいは国民にとって裁判そのものを分かりやすくしていくということでこの裁判員の法案というのができたわけでありますけれども、先生方は既にただいまの御意見でこの制度についての肯定的な見解を持っておいでになるということはよく分かったわけでありますけれども、しかし、先ほども議論がありましたけれども、一方では、この制度に対しまして、裁判にかかわる方についてはやはり公正中立で、しかも豊かな見識、あるいは専門的な知見を持っておられる方ということがどうしてもイメージされるわけでありまして、そういう中で、適正な裁判を行っていく上で裁判員という方の信頼性をどう確保していくのか、それらについての心配は非常に多いように聞いております。
 私も京都の弁護士会の方から、事前に勉強しなさいということで、弁護士会が作られたビデオを見せていただきました。非常にすばらしく編集をされておる内容で、きれいにまとめられておるわけでありますけれども、納得、改めて納得した部分であるとか、あるいはいささか疑問が大きく、不安が大きくなったような印象も持ったりしたわけでありますけれども。
 そこで、ここでは、裁判に対する信頼性というものを確保という、そういう観点からこの裁判員制度というものをそれぞれの先生方がどういうふうにおとらえになっているのかをお聞かせをいただきたいと思います。
 前田公述人は先ほど、裁判員というのが期待される役割を果たせるかどうかという点については簡単なことではないだろうというふうにおっしゃっておるわけですけれども、とすれば、その辺はどう克服をしていくのかということについても併せてお話をいただきたいと思います。
 また、遠藤先生は、先ほどもありましたけれども、検察審査員の制度についても非常に深くかかわっておられるということで、この方々も一般の国民から選ばれるという点で今度の裁判員と同じ仕組みで選ばれてこられるわけでありますけれども、同じような、やはり審査員の方々がいかに信頼性を確保していくかということについてもいろんな御議論があったかと思うんですけれども、その辺も併せて、この裁判員の方々についての御見解というものを御紹介をいただけると有り難いと思います。
 お一人ずつ、よろしくお願いいたします。

○団長(松村龍二君) それでは、全員の公述人からそれぞれお願い申し上げます。

○公述人(山本一宏君) 裁判員制度における信頼性ということでございます。
 先ほど、少し観点が違うかも分かりませんけれども、今回行われる裁判員制度につきましては、やはり裁判員に対して分かりやすいという部分がなければならないと思います。そして、今言われているような守秘義務等々につきましての信頼性というのも当然必要になってきます。
 ですから、一つ違う観点から、やはり今後、法教育というものをどんどん取り入れて、そこでのレベルアップといったらおかしいですけれども、きちんとした形の国民による裁判員というものを構築していく必要があるというふうに考えます。
 以上です。

○公述人(大東美智子君) 裁判員というのは、普通の、一般の市民を選挙人名簿で選ぶわけですから、特別な人じゃないわけですね。ですから、やっぱり初めの裁判官からの説示とかそういうのをきっちりするということ。それと、裁判所をもっと身近なものにするように、やっぱり裁判所側の方から寄っていくという努力が必要だと思います。
 裁判官は、私たちが今までの傍聴で感じるのでは、非常に高い壇の上に立って、法服を着て、余り要らぬことはしゃべらぬというような、そういうかしこまった存在であるんですけれども、裁判官も一人の人間だということで、フラットに話ができるということをやっぱり努めていただきたいと思います。そうすると一般の市民も裁判官も同じような壇上で話ができると思いますので、裁判官、先ほども純粋培養されたとかおっしゃっていましたけれども、今は割と裁判官も裁判官ネットワークとかでどんどん発言をされてきていますので、やっぱり私たちともっと交流をするような機会を持っていただきたい。
 そして、一般の人たちがどういう感覚で、やっぱり被害者に対してどういう意識を持っている、加害者に対してどういう意識を持っているという、一般の人の気持ちをより酌むという意味では、裁判官だけの裁判よりは裁判員が中に入って裁判をした方がより信頼性はあると思っています。

○公述人(前田葉子君) 一般の二十歳以上の方が無作為に抽出されて、そこに裁判員として出廷しましたときに、やはり裁判、法律というものに対して無知であるということがまず頭にありますので、そういう点で非常におっかなびっくりという点が出てくると思います。
 ただ、裁判官だけで判断しておる今の裁判よりも、やはり裁判員で出ましたそれぞれの方が、各々の仕事の分野においては専門家の方が出てくると思いますので、判断の仕方が非常に幅の広いものになると思います。そこに、裁判員制度は非常に信頼性が高まってくるんではないかと思います。
 ただ、やはり出る方のフォローというのを十分にしないと、やはり引っ込み思案だけが残ってくると思っております。
 以上です。

○公述人(宮崎誠君) 今まで言われたような意見というのは、私の方も共感いたします。法教育でありますとか分かりやすい裁判でありますとか、そのようなことを推し進める必要があろうかと思います。
 今回の法律でも三十六条で理由を示さない不選任の請求という形があって、検察、被告人それぞれ四名までが理由を示さないで裁判員を排除できると、このような規定がありまして、一応、ある程度問答した上でとんでもない人は排除するというのか、そのような一応法律上の規定も設けられているのではないかと思います。
 また、法廷に本当に呼び出された裁判員につきましては、裁判官が適切な指示、あるいはそのような分かりやすいビデオにしろ、いろいろな教示方法を工夫しなければならないと、このように思っています。
 またさらに、分かりやすい裁判を心掛けなければならないと思います。もちろん、弁護人がテクニカルタームばかりを並べる、裁判官がテクニカルタームばかりを並べる、こういう裁判はやはりやめていただかなければなりません。もちろん、素人でできるかということはありますが、アメリカでも高度な特許裁判を陪審裁判でやっている。このような場合は、やはり模型を使ったりビデオを使ったり、このような形でいかに素人に分かりやすく説明するかということが弁護士の腕であり、あるいは検事のこれからの腕になろうかと思います。我々法曹関係者も、このためには今後とも更に大分努力をしなければならないなと、こう考えております。
 以上です。

○公述人(遠藤一清君) まず、素人で裁判員が務まるかという、その議論を正しいというところからスタートすることに私は少し問題を、抵抗を感じておるわけです。
 基本的には、争点がはっきりし証拠がはっきりしたものをどう判断するかと、一言で言えばそういうことです。専門的な、量刑の何ぼがいいかとかいうようなことはやはりある程度裁判官に任せていかなくてはならないということは発生するにしても、一番大切なのは、物事の、一つの事案、事件に対して、それのお互いの弁護人、検察官からの聴取なりを見て、それが果たして国民が、レベルで判断できないかといったら、そんなことは決してないと思います。
 ただ、できないのは、余りにも法律用語が難しかったり、法解釈が余りにも多岐にわたっていたり、それを、前例がどうだったかとか判例がどうだったかというたぐいの議論は非常に難しいということだろうと思います。
 特に、例えば、明日GDPの発表がありますが、実質で何ぼだというような、それが裁判の世界だと思うんです。それで、私たちは名目で生活しているんやというような世界であろうと。一言で言うたらそういうことになろうかなというふうに思いますが、まず、やはり民意を反映をしていくということが一番大切で、先ほど宮崎先生もおっしゃったように、素人で大変やということに立脚するならばアメリカの陪審制度なんというのは元から成り立たなくなってくるわけですから、そういう面では全く私は心配をしていなくて、もう、よりやはりきちっと、広報活動をきちっとやっていけば、皆さんはそれは分かってくる。
 裁判というのは難しいということが一つは前提にあると思うんですね。先ほど検察審査員の卒業レポートの中に、最後に、二行目に、大阪地裁という言葉には親近感を感じますと、半年間したら。今先生がおっしゃったように、裁判所というのは一番嫌いな言葉や。違うんですね、検察審査員をやった人は、大阪地検で何々の案件が持ち込まれたと、もう親近感を持つんですね。それくらいということですから、そんなに私は難しくは考えていません。
 以上です。

○公述人(西村健君) 私は、今回の裁判員が選任が無作為抽出である、そこから一定の関係者が除外していくと、そういう制度に基本的にそもそもの信頼を置くことができるんではないかと思います。例えば、選挙制度におきまして国民一人一人が一票を持っている、それと似たような形で裁判員制度が実施されるというところに基本的な信頼の源があるというふうに思います。
 ただ、信頼をより増していくということはいろいろ必要だと思います。それにつきましては二つほどあると思いまして、一つは、今までいろんな公述人が話しされていますように、分かりやすい裁判をするということです。法廷でプロの言葉ばっかりしゃべっていて本当に裁判員が分かるんだろうかという疑問を持たれては、これは若干信頼性を害していくということになると思いますので、分かりやすい法廷活動をしていくことによって裁判員裁判の信頼性を高めていくということが必要だと思います。これは主に当事者である検察官、私も含めた弁護士の責任だと思っております。
 もう一つは、評議の方法です。裁判官と裁判員が一緒に評議していくわけですけれども、裁判官が例えば自分の意見を強引に押し付けるとか、あるいは裁判員の意見を聞かないというようなことがもし起きるとすれば、それは裁判員の意見が十分に反映されないということで、信頼性を欠いていくということになっていくと思いますので、そういう意味からすれば、裁判官の役割というのが重要で、そのことが信頼性を高めていくということになっていくんではないかと私は思います。

○小泉顕雄君 ありがとうございました。

○江田五月君 民主党・新緑風会という会派の江田五月でございます。

 今日は、六人の公述人の皆さん、参議院における法案審査のために貴重なお時間を割いていただきまして、本当にありがとうございます。

 今日、テーマになっておるのは、もう御承知のとおり、裁判員法案と刑事訴訟法改正案と総合法律支援法案の三つで、山本公述人と宮崎公述人はこの総合法律支援法案についての御意見、そのほかの皆さんは主として裁判員法案について御意見をいただいたと思っておりますが、しかし、今お聞きしまして、前の委員の方からの質問に、山本公述人も宮崎公述人も裁判員法案についてもプラスの評価をいただいているということでございまして、大変心強く思っております。

 ただ、これ不思議な、不思議なといいますか、面白いことに、裁判員法案、先ほど陣内委員の御質問のときにも御紹介ありましたが、国民の意見はまだ疑問の声がかなり強いんですよね。国会の中でも、それぞれの政党、与党の中でも、私ども民主党の中でも、裁判員法案については非常に多くの疑問も出されました。しかし、最終的に、衆議院においては全党派、全議員、だれ一人反対なく、全員の賛成で可決をされたということになっているんで、その辺りの、ひょっとしたら国民の今の気持ちと私ども審議をしている者との間に多少の食い違い、隔たりがあるのかなと思いながら今日は公述人の皆さんの御意見を伺いに来たわけですが、皆さんそろって前向きのお答えなので、ある意味では大変心強くも思いながら、しかし、それでこちらが安心していてはいかぬなというような思いも持っているわけでございます。

 最初に一つ伺いたいんですが、実は日弁連が、今でき上がった法案の形とはちょっと違うんですけれども、「裁判員」という映画を作って、どのくらいでしたか、一時間ぐらいでしたかね、もうちょっと短いですかね、これをビデオにして大いにみんなに見てもらおうとやっているわけですが、六人の公述人の皆さん方、ごらんになったかなってないか、別に答えはどちらでも構わないんですが、それだけまず聞かせてください、順番に。

○公述人(山本一宏君) きちんと見たということではないんですけれども、見させてはいただいております。

○公述人(大東美智子君) 私も、できてちょっとして、京都弁護士会の方で見せてもらいました。

○公述人(前田葉子君) 残念ですが、見ておりません。

○公述人(宮崎誠君) 見ております。

○公述人(遠藤一清君) 大阪の弁護士会館で見ました。

○公述人(西村健君) 繰り返し見させていただいています。

○江田五月君 いろんな鑑賞の仕方があるようですが、見ておられない前田さん、是非ごらんになってみてください。いろんなことを、どういいますか、学べる。ただ、もちろん、現実の裁判員の裁判というのは、あそこで石坂浩二さんが演ずるような裁判官ばかりじゃない、いろんな裁判官が恐らくおるので、問題はいろいろ出てくると思うんですがね。

 陪審の場合にも言われる一つの哲学というか物の基本的な考え方なんですが、先ほどからもお話出ていますが、裁判官と一般の国民と。もちろん、裁判官は法律についてはそれはちゃんと勉強しているので専門家です。普通の国民は法律について専門家ということでは当然それはありませんよね。ただ、事実の認定という仕事は、法律をしっかり勉強した人なら的確にできて、そうでない人なら的確にできないのか、全然違うだろう。法律を勉強を幾らしていたって、事実認定というのは法律の論理でできるものじゃないんで、ある意味で、ある意味で素人の、もちろん論理的に考えるところはきっちり考えますが、それでも直観的な判断、これが大勢集まって、そしてある一つの集合体がこうだという認定をする方が、少数の人間の論理的な思考から得られる結論よりも正しいという場合があるんじゃないかと。したがって、陪審というのは、決して専門裁判官の論理的な帰結による事実認定よりも間違いが多いなんてことはない、むしろ逆の面も多いんじゃないかというようなことが言われます。

 そういう意見、遠藤公述人の先ほどの話はむしろそういう意見を是認される意見かと思うんですが、公述人の皆さん方で、いや、しかしそれはちょっと違うという御意見がもしあれば、ちょっと手を挙げてお答えいただければと思うんですが、どなたかおられますか。──挙がらなければ、じゃ、それはもうそういうことでということで、次へ行きます。

 順次、余り時間がないので簡単に伺いますが、山本公述人に伺います。

 先ほどちょっと御紹介ありました簡裁の訴訟代理能力認定の人数ですね。同時にお配りいただいた資料によると、全国の簡易裁判所の数が四百三十八あって、そのうち簡裁訴訟代理能力認定司法書士所在の簡易裁判所の数が幾つということになっていますか。お答えください。

○公述人(山本一宏君) 四百十二ということですね。

○江田五月君 九四・一%。

○公述人(山本一宏君) 九四・一%。

○江田五月君 したがって、今も恐らくこの簡裁の数のうち弁護士のいない簡裁が非常に多いと思いますが、その訴訟の代理能力を認定された司法書士は大部分の簡裁の管轄内にいるということになりますね。

○公述人(山本一宏君) はい、そうです。

○江田五月君 そうすると、この司法ネット、いわゆる総合司法支援センターの業務は、弁護士さん方がもちろん独立の機能を持ってこのセンターに関与することは当然必要なことですが、むしろ実際の仕事としては、司法書士の皆さんに相当頑張っていただかなきゃならぬ。それだけの司法書士の皆さんのある種の仕事についての気概を持ってもらわなきゃならぬと思いますが、今、司法書士の皆さんの中にそうした、これをやるぞという気概は横溢しているんでしょうか。

○公述人(山本一宏君) 我々の方の日司連、日本司法書士会連合会の方でこの司法ネットに対する対策部というのを作らせていただきまして、各都道府県に、そこにおけるリーダーというものを作らせていただいております。それはリーダー一人だけではございませんで、要するに司法ネットに対する、あるいは我々の簡裁代理業務に対するチームという形で編成させていただいております。

 そこで、一番分かりやすいのが、先ほども説明をさせていただきました少額裁判サポートセンター、これは元々、要するに裁判関係、法律関係等々の道案内という役割を考えています。ですから、我々のところで今現在ですと百四十万円という範囲ですけれども、これを超えるものにつきましては弁護士さんに、あるいは税務相談については税理士さんにというような形で振り分けも行っているような現状でございます。

○江田五月君 同じく司法ネットについて宮崎公述人に伺いますが、先ほどのお話で、これちょっとよく分からないんですが、民事法律扶助予算が国選弁護を含めても百十億円程度と。国選弁護はもちろん刑事ですよね、これは。

○公述人(宮崎誠君) 民事法律扶助予算と国選弁護合わせてという趣旨でございます。

○江田五月君 という趣旨ですよね。

○公述人(宮崎誠君) そうです。

○江田五月君 大阪の支部の独自の自主事業として犯罪被害者支援事業をやっておられると。これを、簡単で結構ですけれども、どういう仕事をされているのか、お教えください。

○公述人(宮崎誠君) 犯罪被害者の方々からの相談に応じる、あるいは警察への事情聴取に付き添う、裁判所への証人調べに立ち会う、裁判手続を教える、検察官への事情聴取に立ち会う、その他いわゆる民事的な損害賠償等のアドバイスを行う、このような業務を行っています。

○江田五月君 犯罪被害者支援というのは、そういうある種の法律手続の中での支援ももちろん大切だし、被害の回復などの場面での支援もあるけれども、あわせて、どういいますか、心の傷をいやしていくというような、寄り添って、その人が負った毎日の生活上の、日々の生活がうまくできなくなるという、そういったところをどういうふうにサポートするかということも大変大切な、むしろそれが非常に大きな仕事になるかと思うんですが、そうしたことはどういうようにお考えですか。

○公述人(宮崎誠君) そういう面が極めて重要であるということは江田委員がおっしゃるとおりでございまして、大阪弁護士会でもそういう犯罪、支援に取り組むNPOの方々と協力して、そういう面は一緒に作業をしていると、こういうように聞いております。

○江田五月君 なるほど。そうすると、そうした仕事はむしろNPOのそうした皆さんが例えば大変ダメージを受けた被害者の方に常に付き添ってということはやっておられて、そういうところへ法律専門家として連携を、そういうところと連携を持ってサポートしているという、そういう理解でよろしいですか。

○公述人(宮崎誠君) そういうスキームに間違いないと思います。
 ただ、やはり犯罪被害という特殊性にかんがみまして法的な側面が結構多い、先ほど申し上げましたように、という形で、弁護士の果たす役割は大きいと考えています。

○江田五月君 ありがとうございました。

 前田公述人にちょっと伺うんですが、この更生保護協会、これはどういう仕事なんですか。

○公述人(前田葉子君) 更生保護事業をバックアップするといいますか、保護司がいろいろ活動をするについて資金面ですね、資金面を管理したりとか、あるいは犯罪を犯して出てこられた方の金品の支援とか、そういうものを主として更生保護法人更生保護協会として行っております。

○江田五月君 じゃ、検察審査協会の方は、これは検察審査会の委員の皆さんのまあOBの会ですよね。それとちょっと同じような関係かなと思ったんですが、そうじゃなしに、むしろ更生保護事業をいろいろとやっていらっしゃる、例えば更生保護法人とか、あるいは保護観察中の皆さんを受け入れている企業であるとか、そういう皆さんのお集まりというように理解していいんですか。

○公述人(前田葉子君) はい、そうです。

○江田五月君 なるほど、分かりました。

 さっきの遠藤公述人の、素人に裁判できるだろうかというもう前提自体が実は違うんだ、もう裁判なんというのは素人がやることなんだと、法律の、というようなお話だったんですが、前田さんのは、本当にそんなことができるだろうかと思っていたけれども今はできると思うというようなことですが、もし裁判というのは素人がやるんですよと言われたら、どう思います。

○公述人(前田葉子君) 先ほど検察審査会のお話を、二ページ目見せていただいて、やはり素人の方ができるということを言っておられますので、いろいろとフォローがあれば素人の方でも選ばれればできるようになるのかなと思っております。

○江田五月君 フォローはもちろんなんですが、フォローをして素人の人にやってもらう方が実は裁判というのは面白くなるよという、そんなことだと思います。

 遠藤公述人に最後に伺いますが、先ほどのこれ確認ですが、五十年間やってみると、国民、二十歳以上ですかね、七十九人に一人が裁判員を経験することになると、そういう数字でしたかね。

○団長(松村龍二君) 遠藤公述人、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

○公述人(遠藤一清君) そのとおりでございます。

○江田五月君 裁判員あるいは検察審査会ね。裁判員又は検察審査会、裁判員だけ、どちらですか。

○公述人(遠藤一清君) 三万一千人の件でしょうか。

○江田五月君 はい。

○公述人(遠藤一清君) 三万一千人は裁判員プラス検察審査員。

○江田五月君 で、五十年で七十九人に一人というのは裁判員だけか……

○公述人(遠藤一清君) 裁判員だけです。

○江田五月君 だけ。ああそうですか。

○公述人(遠藤一清君) 二千八百件として、それから裁判員が六の補充員二という計算でいけばそうなりますよということです。

○江田五月君 終わります。

○樋口俊一君 江田五月委員と同じ民主党・新緑風会に所属させていただいております樋口俊一でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 実は私は、一月に行われました大阪府知事選挙、江本孟紀参議院議員が御出馬されて参議院議員を自動失職され、繰上げ当選をさせていただいたのが私でございまして、まだ五か月しかたっておりません。一生懸命いろいろと勉強をさせていただいておりますが、的外れなことを質問するかもしれませんけれども、どうぞよろしく御容赦いただきまして、お答えいただければ有り難いなと、かように思っております。
 それでは最初に、山本公述人にお伺いをいたします。
 小泉総理がよく改革というときにおっしゃるのが、官から民へと、こういうことをおっしゃっておられます。この裁判員制度を含め、あるいは司法ネットも含め、正に司法の大改革と、こういうふうに言われているわけでありますけれども、その中で、今回の司法ネットの中枢となります司法支援センター、この位置付けが独立行政法人ということで、いわゆる法務大臣の監督管下にあるということでありますけれども、これについてのお考えをお聞かせいただければと思います。

○公述人(山本一宏君) 本来、独立行政法人というものは、今までですと行政の切り出し機関のような形を取られていたと思います。ですが、今回のこの日本司法支援センターというのは、現場を持つ、要するに独立行政法人に準じた法人という形になります。
 当然、そうなれば、準じたという言葉が入るのもよく分かるんですが、今後はやはり現場を持つというこの独立行政法人に準じた法人という考え方、要するに新たな法人ができるんだという考えの下、この制度を構築していくというふうに考えております。

○樋口俊一君 ありがとうございます。
 それでは、大東公述人にお伺いをいたします。
 今日は、国会議員、松村団長始め六名参加させていただきました。すべて男性であります。公述人の皆様方は六名のうちお二人が女性と、こういうことでございます。
 世の中、半分は女性、半分は男性。最近は男女参画社会を構成していかなきゃならないと、こういうふうにも言われています。そういう意味では、いろいろな意味で社会的な支援、働く女性のための支援ということが考えられていっているわけなんですけれども、先ほど大東公述人の方からも、女性が裁判に参加しやすいように裁判所内に保育室の設置を希望すると、こういうふうな御意見もちょうだいをしました。
 法曹界の男女比も若干事前に調べさせていただいたんですが、裁判官あるいは検察官、弁護士の方々、日本の女性の比率というのは一〇%台ということで、まだまだ低いというふうな感じを持っているんですけれども、今回のこの裁判員について、男女比どのぐらいが適正なのかというふうにお考えでしょうか。

○公述人(大東美智子君) 当然、半分ずつだと思っております。
 今まで私たちが陪審、模擬陪審とかそれから影の陪審とかを、模擬陪審は全部で七回、影の陪審は二回、それから模擬裁判員裁判を二回ほどしましたけれども、すべて男女同数で審議をしております。女の人だからってもう最近は全然遠慮しませんので、特に女性の方の発言が活発なような感じがしております。

○樋口俊一君 ありがとうございました。
 それでは、前田公述人にお伺いします。
 私も中小企業の経営者なんですけれども、先ほどお話ございました、中小企業、日本の九五%、法人の数があるということでありますけれども、今、経済は、政府の発表では大分持ち直しているとはいえ、中小企業はまだまだ厳しい環境下にあると思うんですね。そういう中で、やはり人を切り詰めながらお仕事をなさっておられる企業もある。
 そういう中で、突然裁判員に社員さんが指名されたということで、経営者としても大分悩ましい部分があると思うんですが、この辺に関しての御意見と、中小企業に対して特別の何か助成的なものをお考えなのかどうか、お聞かせいただけますでしょうか。

○公述人(前田葉子君) 後の問題ですが、特に中小企業に働く方に裁判員が当たりましたときに特別の考えが要るかということは、これは大企業であろうが中小企業であろうが同じに考えてよろしいかと思います。
 それからもう一点、私も、企業をやりながら大阪市中央区関係のいろいろな町内会長とか女性会の会長とかそういうのをやっておりまして非常につくづく感じますのが、皆さん、公のそういう場にはもう出ないという方、もう自分の生活さえあればほかのことはどうでもいいという方が非常に多くなってきておるように思います。ですから、こういう裁判員制度ができまして、やはり民間が公のことにもタッチしていくというような考えが進んでくれば非常にいい方向に進んでいくのではないかという、そういう感がしております。

○樋口俊一君 ありがとうございます。
 それでは、宮崎公述人にお伺いをします。
 先ほど民事法律扶助事業のお話が触れておられました。景気の話、先ほどさせていただきましたけれども、まだまだ厳しい環境下にあるわけでありまして、言わば自己破産事件も相当あるんではないかな、経済事案も多いんではないかなと、こういうふうに思っているわけであります。それに伴って扶助の申請件数も増大していくと。
 今回の法案では、実施主体が支援センターに統合されるわけでありますけれども、今後の扶助事業の在り方についてのお考えをお聞かせいただければと思っています。

○公述人(宮崎誠君) 在り方といいますのか、現在の扶助事業、やはり予算がないために、多くの自己破産をしたい、例えば自己破産のお話が出ましたけれども、という方も法律扶助が受けられずに夜逃げをするとか、そういうような形で随分法的救済を受けられずに悲惨な思いをされている方がいらっしゃいます。
 したがいまして、法律扶助業務につきましては、予算の面で十分配慮をしていただくということが何に増しましてもまず一番肝要かと思います。またさらに、先ほども私の話を引用しましたけれども、審議会意見書でも、法律扶助を裁判業務に限るのではなく、対象事業を拡大すべきだと。行政手続であるとか、あるいは先ほどの犯罪被害者保護の事業でありますとか、あるいは生活保護の受給が分からない高齢者、障害者の方の支援等に事業範囲を広げていくべきではないかと我々も痛切に思っています。
 今回の審議会意見書、多くは取り上げられましたが、民事法律扶助の拡大だけはすぽっと抜け落ちて改革から取り残されています。今回のいわゆる扶助事業、司法支援センターの発足を機にこの点についても見直しが図られればと思っております。

○樋口俊一君 ありがとうございます。
 それでは、遠藤公述人にお伺いします。
 遠藤公述人は、検察審査員ですか、私も初めてその言葉を耳にしたんですけれども、もっとやっぱり司法についていろんなことを学ぶべきだなというふうに思っていますし、逆に言えば、やっぱりPRもなかなかされていないんではないかなと、こういうふうにも思っています。
 今回の裁判員制度については、相当マスコミも取り上げておられますし、それなりの意識は国民の皆さん方に徐々に醸成されつつあるとは思いますけれども、一般市民から選ばれた検察審査員という経験をされておられるわけでございますので、そういった経験を踏まえてちょっとお聞かせいただきたいんですが、一般の方々というのは、最近いろんなところで情報を得る機会はあります。しかし、一番大きいのはやっぱりテレビの影響というのが結構大きいんじゃないかと。いろんな事件が取り上げられます。その中で、どちらかというと一方的なセンセーショナルな取上げ方をしているマスコミもなきにしもあらずということが考えられるんですが、そういう意味で、裁判員の方に対するそういった影響度というものをどのような感じでお考えでしょうか、お聞かせいただけますでしょうか。

○公述人(遠藤一清君) 一つの事件があって、それがいろんな報道がされてくる、それはもう既に裁判員に選ばれた段階でいろんな情報が入っている。先ほど江田先生の、「裁判員」、映画の「裁判員」を見たかという御質問がありましたが、正にその中に出てまいります、そういうシーン。ですから、極端な、そういう既にもう情報で、もう自分としてこいつはもう犯人、殺人間違いなしという人まで裁判員に選ぶというわけにはいかないと思うんですね。ですから、それぞれ検察官や弁護士が自分の、どの程度裁判員としてこの人であれば適切かどうかということは、これは選んでいかないかぬと思います。

 審査会は、一件の事案審議に大体五時間から十二時間ぐらいで一件を処理いたします。裁判員となりますと、一週間って、そんな終わる裁判もあるんでしょうけれども、大きな事件になるとやはり一か月、二か月、場合によっては三か月というふうにならざるを得ぬのと違うかなと思います。ですから、そういうすべて、くじで当たったからそれを適正とみなすんではなしに、その人たちのやはりそういう、事裁判員についてはそういう審査、聞き取りというのは是非やらなくてはならないと。
 検察審査員は、入ってから今日この事案を審議しますということで、ぽっとその日に出てくるわけですから、全くそういう自分で先入観を持つということはあり得ないわけですから、その辺がきちっと機能してもらえればいいんではないかなというふうに思っています。

○樋口俊一君 ありがとうございます。
 済みません、もう一点だけ。西村公述人に、あともう一分しかありませんので。
 西村公述人のお話では、今回、裁判員制度のお話なんですけれども、陪審制のことを結構触れておられましたし、それがどちらかといえばベターなことではないかなというお話でした。また、戦前の陪審制を若干参考にした方がいいよという御意見もありましたので、その点について最後、お聞かせいただければと思います。

○公述人(西村健君) 私が陪審の方が望ましいと思っていたのは、陪審の方が手続的にピュアなものになっていくこと、それから手続の改革がより進むだろうと、この二点から陪審制度の方が望ましいというふうに考えていました。
 手続的にピュアというのは、裁判上の手続を進行していくプロの裁判官と事実認定をしていく市民とがきちんと手続が分かれて問題なく行えるだろうということからです。
 もう一つの手続改革が進むというのは、分かりやすい裁判とか分かりやすい言葉などについては陪審制度の方がより進むんではないかなというふうに思う観点から、陪審制度の方が望ましいと考えていました。

○樋口俊一君 ありがとうございました。

○木庭健太郎君 公明党の木庭健太郎でございます。
 今日は、六名の公述人の方々、貴重な御意見をありがとうございます。
 まず、山本公述人にお聞きをしたいと思います。
 一つは、今回の司法ネット構想の中核は、もう言うまでもなくこの支援センターの問題でございます。先ほどから御指摘あっているように、特にこの支援センターが行う相談窓口業務、これについては皆さん方、司法書士の皆さんにもいろいろお願いすることも多くなると思うんですけれども、例えばこの司法支援センターの相談窓口業務について、更に国民のアクセスを容易にするために、例えば夜間とか休日利用を実現した方がいいんじゃないかとか、具体的な訴訟費用に関する情報提供をもちろんそこで行うんですけれども、また各アクセスポイントですね、これについては専任職員を数名配置するなど、体制整備を図る必要があるといったような指摘がいろんなところでもあるんですけれども、こういった指摘についての御所感を伺うとともに、よりもっと具体的な御提言があれば伺っておきたいと思います。
○公述人(山本一宏君) 窓口という形での御質問だと思います。これは、支援センターの方ではアクセスポイントというものを、これは財政上の問題でどれぐらいできるのかということがちょっと私らには分かりませんけれども、それプラス司法過疎への窓口という問題も出てくると思います。そして、これは一つの問題としまして、利用できなければ意味がないというところで、夜間あるいは休日という問題が出てきているんだと思います。
 そこで、我々が考えているアクセスポイントというものは、司法支援センターの方から振り分けを待つというような考えではございません。我々自身で、先ほども言いましたように、全国に相当数のアクセスポイントを作って、そことの連携強化を図っていく、そのような考えでいるというのがまず一点です。
 それから、司法過疎につきましては、我々のできる範囲におきまして、先ほども江田委員の方から言われましたように、簡易裁判所管轄におきましては相当数の認定者が出ておりますので、そこの部分からどういうふうな形でアクセス、司法アクセスの過疎地域ですかね、過疎地域の方へ協力をしていくかというのは、今後の我々にとっての大きな検討課題だというふうに考えております。
○木庭健太郎君 次は、大東公述人にお伺いしますが、先ほど御意見の中で、裁判員というのは少なくとも十名ぐらいというのが良かったんじゃないかという御意見を申されておりました。我々も、この裁判官と裁判員どうするか、もうさんざんいろんな論議をやってまいりました。その中で、この十名という御意見もいろいろあったんですけれども、やはり十名というと少しこれ多過ぎて、いざいろんな評決するなりやるときに個々の意見をきちんと言えるだろうかというような御意見、もっと絞った方がいいという御意見があったことも事実です。その一方で、裁判官の人数の問題についても、先ほどどれくらいかなというお話をし掛かったような感じもありましたが、御意見は多分お一人なんだろうと思いますが、今回は三人になっておるんですけれども、そういったことについても併せて御意見があれば伺っておきたいと思います。
○公述人(大東美智子君) 今回の裁判官が三人で裁判員が六人というのには非常に不満を持っております。私たちは、やっぱり陪審制がベターというかベストだと思って、ずっと陪審裁判の復活をというのを目標にしてきておりまして、それで司法制度改革審議会の地方公聴会のときも、陪審制の早期復活、戦前、実際に陪審裁判が行われていたんですからね、今陪審法というのがあるんですから、それは、まだ陪審員になるのは三十歳以上の男子だとか、税金を幾ら納めている者とか、そういうふうな規定がありましたので、それを今の憲法に照らし合わせて、それで民主的に改革をすればいいわけで、何も新しく裁判員法というのを作る必要はないというふうには思っていたんです。
 それで、陪審裁判では基本的に十二人の一般市民が評議するということが原則になっておりまして、それで十二人だと、いろんな職業の方、年代の方、それぞれがいろんな評議をするということで、いろんな意見が多分出尽くすと思うんです。そういう意味で、十二人を基本に思えば、裁判員は私は、裁判員の人数比のことをいろいろ検討をされていたときに、東京で市民の裁判員制度つくろう会というところがパネルディスカッションとか公聴会とか開いたときに、私は裁判官一人、裁判員十一人というのを主張しました。裁判官はあくまでも司会進行とかいろんな人の意見をまとめるというふうな役に徹して、評議そのものは市民に任せるべきだというふうに今も考えておりますので、それで、基本的に十二人を基調にすれば、十一人と一人。
 だけれども、男女を半々にするなら、それと、さっきも言いましたけれども、二十代、三十代、四十代、五十代、六十代、本当は七十代の人も入っていただきたい。だけれども、七十代の人は何か自分から断ることができるというふうな法案がありましたので、せめて六十代までの人はみんな義務がある。それで、男女一人ずつだと最低十人にはなるということで、十人を主張させていただきました。
○木庭健太郎君 前田公述人に。
 先ほどから、参加しやすいようにどうしていくかという、整備もしていく。これは衆議院で実は附則で少し法律を修正したんですよね。その中で何かというと、やっぱりみんなが、国民がより参加しやすいようにということで、国は積極的に環境整備を努める義務があるということを明確にしているんです、今度の法案は。そこで、例えば雇用関係の問題でいえば、今、一つの提案、そこまで至ってはありませんけれども、裁判員の休業制度、こういうものを創設してあげれば企業との関係としてもやりやすいとか、幾つかの意見が既に出てきております。
 だから、前田公述人、そういった参加しやすい、こんなことをちょっとやってみるとよりやりやすいけれどもなというような御意見あれば、お伺いをしておきたいと思うんですけれども。
○公述人(前田葉子君) 参加しやすいようにするには、やはりその雇用主の頭の改革がまず第一だと思います。
 経営者が、これは国民の義務であり、やはり公の裁判を国民が一緒に持ち上げていくという考えを持つようになると、やはり出る方にも、どうぞ、御苦労さんです、行っていらっしゃいと言えるんでしょうが、そんなの当たって勝手やから、もう給料はその日減らすよというようなことになるとちょっと大変になるかと思いますので、やはり経営者に対するアピールも必要かと思います。
○木庭健太郎君 本当は、制度作りよりも意識改革が本当にある意味では一番大事なんじゃないかなと御意見聞きながら思いましたが、宮崎公述人にお伺いをしたいんですけれども、今度、支援センターの業務の中にいわゆる犯罪被害者の支援ということも行うことになりますね。これは具体的なまだ施策内容、決められていません。定めありません。
 要するに、犯罪被害者の支援関係の団体とか警察と連携も強化することも想定されますけれども、これ、どんな具体的に業務を行っていくべきか、この犯罪被害者支援のですね。どうお考えになっているかということとともに、従前、当番弁護士制度ありますよね、この関係。公的弁護の問題もこれから体制整備が図られるわけで、この当番弁護士制度の問題とどんなふうに整理していけばいいのかなと、そんなことも含めて御意見をいただいておければ有り難いと思います。
○公述人(宮崎誠君) 犯罪被害者の支援につきましては、今、日弁連でもいろいろ協議会を設けて、どのような形が望ましいのかということで意見をまとめようとしています。
 具体的な業務としましては、私が先ほど江田委員のお尋ねに対して答えさせていただいたような内容、さらに、NPOその他、周辺のそういう援助団体との関連等が問題になっていくのかと思いますし、また、こういう犯罪被害者、もう一種の社会的な弱者として、余り厳しい無資力要件を付けないで、やはり間口を広げてあげる、広げて受け入れるというような対応を検討していただきたいなと、このように思っています。
 それから、あと、当番弁護士の件ですが、これは、当番弁護士が犯罪被害者支援としても被害者のところに行く制度はどうかということの御提案と、もう一つ、本来の当番弁護士の役割ということの二つのお尋ねがあったかと思うんですが、被害者支援につきましても、今ボランティアでやっている弁護士は、できるだけ早く犯罪被害者のところに駆け付けると、ほとんど手弁当で活動しています。このようなシステムが広がることを、今回の司法支援センターの本来業務に、を改正していただいて、是非こういうようなこともできるようにしていただきたいと、このように思っています。
 それから、当番弁護士の、従来の当番弁護士でありますが、これから公的弁護につながります、被疑者段階への公的弁護につながります。そのつながるときに、いろいろ制度を説明したり権利を説明したりするために今まで以上に当番弁護士の役割が重要になってくるのではないかと、このように考えておりますので、これにつきましても、できれば本来業務に取り入れるなり、もっとやりやすいような形で御支援をお願いしたいと考えております。
○木庭健太郎君 さらに、今回、被疑者に、被疑者段階から弁護士付けられますよね。ただ、今政府から出している法案というのは、その弁護士さん、対応がなかなか難しいだろうから、ある意味では重い罪からということに今なっているんですよね。体制さえできれば全体にという、もう全部できるようになればいいなと思うんですけれども、やはり現実の問題として、今そこまですぐに、ロースクールができ、弁護士が増え、体制ができないとなかなか難しい状況ですかね。済みません。
○公述人(宮崎誠君) やはり我々の対応体制が苦しいというのは一部ございます。大阪などは問題がないわけですけれども、やはり旭川、具体的な地名を挙げて悪いのですが、あるいは稚内、この辺り、警察まで片道五時間掛かるとか、このような地域があります。
 したがって、これらについては、過疎の事務所を設置するなどして、やはり今後、三年間の間に我々としても精一杯頑張って枠の拡大に広げたいと、このように思っております。
○木庭健太郎君 遠藤公述人に。
 今度の裁判員というのはどんな評決を下すかというと、有罪無罪ということだけでなく、その量刑まで一応決めるわけですよ。それで、検察審査会で御経験のとおり、検察審査会がやる仕事というのは、事件に対して不起訴不当ということも起きる、不起訴相当を出すときもあるでしょうし、一つの判断をするわけですよね。
 そういう意味では、裁判員の方にそういう量刑までさせるということについてどうお考えかなと、一言、御意見あれば聞いておきたいと思います。
○公述人(遠藤一清君) 非常に難しい御質問だと思うんですけれども、基本的には、その量刑の判断というのはある程度裁判官にイニシアチブを取ってもらって、ただ民間の感覚として、民間の感覚としてそれはもっと厳しくていいんじゃないのとか、もう少し軽くてもというような、その民間のレベルを評決の中に組み込んで、協議の中に組み込んでいただければそれで十分やというふうに思います。
○木庭健太郎君 一問だけ。
 同じ質問、西村公述人からも、その裁判員が量刑まで決めることについてどうでしょうかと。今度は専門家の意見から一言だけ伺って、終わりたいと思います。
○公述人(西村健君) 私は、基本的には量刑に関与するというのも賛成でございます。
 全く量刑についてどうなるだろうかという不安視、確かに私たち専門家の間でも議論をされておりますが、ただ、基本的には裁判は当事者主義というシステムを取っております。ですので、例えば検察官が求刑を何年というふうに言いますので、それが一つの目安になってくると思います。それに対して、弁護士の方が現段階ではどのぐらいの量刑が正しいのかというのがやや不十分な状態にありますので、そこは私たち弁護士がしっかりこれからやっていかなきゃいけないと思っています。
 そして、それ以外に、裁判官が判決のこれまでの例とかいうのを持っておりますから、検察官の求刑、弁護人の意見などを踏まえて、前例などを参考にしながら決めていくので、ある程度妥当な判断になっていくんではないかなというふうに私は思っております。
○木庭健太郎君 終わります。
○団長(松村龍二君) それでは、最後に私、松村が質疑を行わせていただきます。
 本日は、裁判員制度という、戦前、陪審員制度があったということですが、事実上立ち消えになっていた、しかし法律そのものは生きておるというような陪審員制度に関係するような、また、新しい時代の行政、立法、司法、それぞれに民意が代表されることでなければならないということで、司法制度改革推進本部におきまして検討した結果、このような裁判員制度を取り入れようということで、今法律として具現化しようとしておる。また、それを遂行するために刑事訴訟法も改正する必要があるんではないか。また、司法制度全体を検討している中で、司法ネットワーク、これを国も関与して作った方がいいというようなことで、今その法案を審議しているわけです。
 参議院といたしましては、衆議院では地方公聴会等も行わなかったようですが、参議院の独自性といいましょうか、より専門的な突っ込んだ審査をするという観点で、今日、大阪と仙台で公聴会を行っているわけですが、せっかくの機会でございますので、またあしたも委員会が行われまして審議が行われますので、それに参考にする、したいという意味でお伺いいたします。
 三人寄れば文殊の知恵ということで、もう幅広く意見を集めた方がいい知恵が出る。そして、専門の裁判官では、一つ一つは現在の法律につじつまが合っているようでありながら、オウム真理教の事件とか和歌山のカレー事件とかですね、いつまでも結論が出てこないということになりますと、国民、日本人の法的秩序というか法感覚からしますと何か逸脱したものを感じるわけで、そういう意味で今度の裁判員制度というのは非常に面白い制度だなというふうに思います。
 それから、参審制度、ドイツとかフランスとかは、有識者、例えて言いますと、ちょっと恐縮ですが、今日公述人が来られまして、それぞれの有識者の方々でございます。そのような方に裁判に参加してもらって裁判するのがいいのか、あるいは全く抽せんで出てきていただいて裁判に参加していただくのがいいのかということの差があるわけです。しかし、今の時代、だれが有識者かということは、神様でない人が選ぶということはできない。
 また、私も昨日、中学時代の同級会があったんですけれども、そのころは高校へ進学する人が三割ぐらいしかいなかった時代でしたけれども、そういう中学だけ出た人の同級会へ出ますと、やっぱりそれだけ世の中の辛酸というか実情、実態に触れているわけですから、単に一流会社すっすっと行ったとか公務員やった人に比べると、世の中の常識というものをよく身に体しておられるなというような感じもするわけでして、そういう意味で抽せんによる裁判員の選任ということも意味があるのかなというふうに思うんですが。
 そこで、時間も限られておりますのでお聞きしますが、宮崎公述人、大阪弁護士会の会長もしておられるというようなことでお伺いするんですが、今の裁判官がちょっと、民意が十分反映しない、こういう制度ではちょっと、専門、プロの裁判官ではちょっとまずいなと、刑事事件裁判においてそういうことを感じられたことがあればお聞かせいただきたいと思います。
○公述人(宮崎誠君) 具体的な事件でということでこれこれの判例ということを挙げるわけにいきませんが、私がやはり裁判に携わっておりますと、やはり世の中の事情について疎い、裁判の法律のことは大変よく知っておられますけれども、世の中の経済の仕組みであるとかあるいは会社の仕組みであるとか、意思決定、民間の意思決定の仕組みであるとか、そういうことについて大変疎いということはもう再三感じるところであります。
 したがって、そういう意味で、日本の職業裁判官は清潔であるとか、そういうメリットがあるということは認めつつも、やはり幅広い判断あるいは世情にたけた判断というためには、やはりこのような制度導入が必要ではないかと考えています。
○団長(松村龍二君) あしたから審議する中で、私どもは、裁判官というと完璧かなと。時々、憲法裁判なんかで、せっかく高速道路はできたのにこれは憲法違反だみたいなのが出るとどうかなと思いますけれども。まあこれは私の独り言ですが、今の宮崎公述人のお話聞いて、大変心強く思うわけです。
 それから、西村公述人にお伺いするんですが、この陪審制度というのがアメリカとかイギリスで定着している制度であると。キリスト教的な風土と、あるいはアメリカにおいては、もうしょせん西部において寄せ集めの人しかいなかったというような中において、ともかく有罪か無罪か判断して、それで地域を回る裁判官が具体的に量刑とかなんかを決めようというようなことから発足があったんでないかなというふうに思いますが、日本人の特性とか、それから、先ほど大東公述人も、アメリカのような制度が理想的な制度なんだとおっしゃいますけれども、日本人は非常に完璧性、完璧性を追求する国民でありますので、やっぱり無罪判決が出たりすると、決して、陪審だからかえって出ないんだと、こういうことになろうかと思いますけれども、無罪事件が出たりするともうすべて否定してしまうというような潔癖性があるわけですけれども、早くからアメリカの陪審制度等をごらんになりまして、日本人の国民性とか日本の在り方と比較しまして、何か感じられたことはございませんか、西村公述人。
○公述人(西村健君) 日本人の国民性が何かということについてはなかなか難しいところがあるかと思いますが、私が先ほどの陪審制の方が望ましいということは、樋口先生の方から御指摘いただいた二つの理由からでございます。
 それで、アメリカでキリスト教と陪審制と結び付いているか、そこは必ずしもはっきりしてないとは思いますが、まあ民主主義諸国で陪審とか参審とかを導入されていて、その制度のどちらが望ましいかといったときに、私は、先ほどの二つの制度で陪審制度の方が望ましいということを考えております。
 日本人の国民性に合うかどうかということでございますが、戦前の陪審も定着、導入されて一定の成果を与えております。これがだんだん事件数で減ってきたというのは戦争が原因でありまして、当時の政府は、戦争終了後にこれを再施行するものとするとわざわざ法律で書いております。そして、戦後もその条文を変えているとかいうところもあります。
 これから考えますと、少なくとも当時の政府は、陪審制度は望ましい制度で、日本人にとってもいい制度であったというふうに考えていたと思います。現在の日本でも私はそれは当てはまるんではないかなと、私自身は考えております。
○団長(松村龍二君) 大東公述人に今の問いに関してお伺いするんですが、私どもも、今の日本において女性が非常に、もう就職試験、公務員試験等を見ましても、もう非常に優秀であるというふうなこと、それから、それぞれ社会に参画しておられる女性が立派であるということは十分承知するんですが、ただ、私ども、北陸の福井県ですけれども、隣近所での町内会のような集まりありまして、男の人も交じっているところで何か政治について意見がありませんかといいますと、周りに男の人がいる場合ですね、絶対に発言しないというようなことを最近経験しまして、女性が裁判員になったときに、土地柄その他、若さとかによると思いますが、その辺については保証していただけますでしょうか。
○公述人(大東美智子君) 今までの日本の風土が非常に強く残っていると思うんですね。それは、やっぱし女のくせにだとか女が出しゃばるんじゃないとか、そういう、女の子は女の子らしくという育てられ方、それはやっぱりジェンダーハラスメントだとは思っています。そういう、今の若い人にそれを言うと、何のことかよく分からないと思うんですね。
 だから、私たちの世代より上になると、ほとんど、PTAの役員で会長さんは男の人とか、副会長は女の人なるけれども、会長さんは肩書は男の人でとか、町内でも取りあえず何とか委員長は男の人というふうに、男の人を立てるようなそういう習慣がずっと、あしき習慣だと思うんですけれども根付いてきていますので、やっぱりそれを打ち破っていくには、やっぱり国会議員も女の人をもっと出ていただきたいし、委員の皆さんも女性どんどん入っていただきたい。
 それと、職場でも今非常に就職難で、特に女子学生の就職率が非常に悪いんですけれども、かえって就職活動をしているのは女子学生の方が非常に活発なんですね。優秀な学生が非常に増えておりますので、各企業も女性をどんどん取り入れていただきたい。いい意見持っている女性たくさんおります。ベンチャー企業とかも女性が立ち上げているのもたくさんありますので、そういうのは評価していただきたいと思います。
 それと、今までの男性の中にあるそういう女性べっ視みたいなものをもう取りあえず取り除いていただきたいというふうに思います。
○団長(松村龍二君) どうもありがとうございました。
 以上をもちまして公述人に対する質疑は終了いたしました。
 公述人に一言御礼を申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。もっと時間をいただいてお聞きしたいというような気持ちでございます。派遣委員を代表して厚く御礼を申し上げます。
 また、本地方公聴会のため種々御尽力を賜りました関係者の皆様に厚く御礼を申し上げます。(拍手)
 これにて参議院法務委員会大阪地方公聴会を閉会いたします。
 どうもありがとうございました。
   〔午後三時三十三分閉会〕


2004/05/17

戻るホーム主張目次会議録目次