2004/04/28 >>質問原稿

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159 参院・本会議  裁判員法案について

裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案(閣法第67号)


平成十六年四月二十八日(水曜日)

○江田五月君
 私は、民主党・新緑風会を代表して、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案につき質問します。

 まず、今の日本の裁判に国民は満足しているかどうか、政府の認識を法務大臣に伺います。

 私は、国民は今の裁判に大いに不満だと思います。裁判が遅いこと。裁判所が不親切なこと。検察官や弁護士も含めて法曹全体が国民から遠い存在で、仲間内だけでしか通用しない言葉でやり取りをして、結論を押し付けてくる。冷たい、言うことを聞いてくれない、分かるように説明してくれない。つまり、日本の司法は官僚的で、国民主権の原則にのっとっていないということです。

 我が国は、戦後、天皇主権から国民主権への大改革を成し遂げ、司法も形は国民主権になりましたが、実態はどうか。国民も司法関係者も、国民主権という実感を持っていないのではありませんか。そこを変えるのが今回の司法制度の大改革ですね。戦後改革で取り残された分野の改革という意味では、半世紀ぶりの改革です。明治維新改革でできた官僚制司法の改革という意味では、一世紀ぶりの改革です。歴史的大改革という気概があるかどうか、法務大臣の認識を伺います。

 司法制度改革は、制度だけでなく意識の改革も重要です。裁判の関係者が皆、在朝も在野も含めて、国民主権の原理にのっとって主権者に仕えるのだと、つまり自分たちは公僕だという意識を持つかどうかです。

 人の意識は、お説教だけでは変わりません。制度を変えて、公僕意識を持たないと良い仕事ができないような制度にすることです。制度改革が意識改革を伴うものになっているかどうか、これが制度改革が合格点かどうかを決める尺度の一つになると思いますが、いかがですか、法務大臣。

 意識の改革は、司法関係者だけに求められるのではありません。国民もまた、裁判の場面においても、自分たちが主権者だという意識を持つようになることが必要です。日本の民主主義は輸入品だからなどと泣き言を言う時代は過ぎました。今回の改革が、国民の主権者意識をはぐくむことになるかどうか、これが合格点かどうかを決めるもう一つの尺度になると思いますが、法務大臣、いかがですか。

 私たち民主党は、このような観点から、司法制度改革審議会に積極的に意見を申し出てきました。当初、改革の柱と考えたのは、法曹一元と陪審制度の導入です。その基盤として、法曹人口の抜本的増加も不可欠です。これらが思いどおりにならなくても、市民が主役の司法の実現という理念が生きて育っていく状態であれば、合格点を付けようと考えました。

 そして、審議会の意見書が出たとき、不満もありますが、総合的に見て合格と判断しました。さらに、理念実現に向けて、意見書より更に前進するように、また、決して意見書から後退することのないようにその実現に努め、今回の裁判員制度の導入に当たっても、その姿勢を貫いてきました。

 しかし、この改革は、これまで経験したことのない、言わば海図のない航海です。手探りでやみ夜を進んでいくようなところがあります。ですから、制度設計に本当に合格点が付けられるかどうかは、その後の試行錯誤の道筋を見ないと分からないことです。そこで大切なことは、柔らか頭と決断です。課題に直面したとき、決断は不可欠ですが、その結果の評価については、常に柔軟な頭で、いつでも過ちを正す態度、これまた不可欠です。

 そこで、法務大臣に質問します。
 司法制度改革の制度設計を決定するに当たって内閣が取った基本的な姿勢と、これから制度の構築を進めていくに当たって内閣が取ろうとする態度は、以上私が述べた方向と一致するのでしょうか、違うのでしょうか。また、政府案は衆議院で修正されました。政府は最善の法案を出したと言うのが常ですが、今回は、以上述べたような柔らか頭で修正を受け止めてほしいと思いますが、いかがですか、法務大臣。

 私は、特に今、裁判官の養成プロセスを改めなければならないと思っています。裁判官訴追委員会には、裁判官が国民の奉仕者になっていないことに起因する案件がたくさん寄せられています。裁判官以外の社会経験を何も経ずに人を裁く立場になってしまえば、のぼせ上がるのは当たり前です。私自身も、裁判官だった当時を思い返してみると、汗顔の至りです。

 こうした裁判官の意識改革を、彼らの独立した職権行使の気概を損なわずに実現するには、純粋培養された官僚裁判官とは全く異質のものを裁判の現場に深く介入させることが一つ考えられる制度改革だと思います。

 今回の裁判員制度は、多様な価値観を持った社会人を裁判に参加させることにより、裁判に社会常識を取り入れようというものですが、同時にこれにより、裁判官が裁判員も含めた評議を経て結論を得るためにする苦労が裁判官の意識を変えることにもなるのです。私は、そのことも裁判員制度で期待したいのですが、法務大臣はどうお考えですか。

 我が国では、陪審制度が一九二八年の陪審法施行により導入され、十五年間実施された後に、一九四三年に戦争の激化により停止されました。しかし、その際、停止法附則第三項で、「陪審法ハ今次ノ戦争終了後再施行スルモノトシ其ノ期日ハ各条ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム」と規定されているのです。ですから、裁判制度の改革には、この規定に従った陪審再施行という方法もあります。

 そこで伺います。
 今回の裁判員制度は、過去にあった陪審制度を手直しして再開するものではなく、裁判官制度と陪審制度をうまく組み合わせ、両者の融合により全く新しい裁判制度を作ったとの自負がおありなのだろうと推察いたしますが、いかがですか、法務大臣。

 この点は重要だと思っています。我が国最初の平民宰相、原敬首相は、枢密院での陪審法案審議の中で、「憲法実施後三十年を経たる今日に於ては、司法制度に国民を参与せしむるは当然の事なり。」「此の際陪審法を設けざれば、国家の前進の為に害多し。人民をして司法に信用を置かしめ、上下の阻隔と杜絶怨嗟の勢を絶ちたし。」と述べました。

 後に枢密院議長になる穂積陳重博士は、陪審法施行の前日、現在を将来の因、因果の因、因と見ますれば、立法における選挙権、行政における自治権と相並んで、司法参与の要望が国民全体の胸中に潜在し、潜勢力の状態において存在することは明らかであります。ゆえに過去の果、因果の果ですね、果たる現在のみに着目して国民の要望にあらずと言うは、盾の一面のみを見た偏見であると言わねばなりませぬ。すべて立法は将来のためにするものでありますと述べているのです。

 今回の新制度導入に当たって、このような人の心を揺さぶるような言葉が聞かれないのはなぜでしょう。木に竹を接いだものだから、そのような言葉が出てこないのではないでしょうね、法務大臣。

 実は、私はこの新制度が新たな光を放つ理想的なものになってほしいと願いながら、運用次第では木に竹を接いだ不細工なものになり、立ち枯れの危険もあると感じています。それは、一つには裁判官と裁判員の数のバランスが、裁判官に偏っていると思うからです。

 裁判員は素人です。法律のことは知りません。それが良いのです。法律は、法律の玄人であると素人であるとを問わず、すべての人にかかわります。そこで、国民が法律の適用対象としてだけでなく、法律の適用主体としても法律とかかわろうというのが裁判員制度の眼目です。かかわるなら、実質を伴っていなければなりません。法律のプロである裁判官と、社会生活のプロである裁判員とが、実質的な協議ができなければなりません。裁判員が何ら気後れすることなく自分の考えを述べ、そのため評議が結構手間取ることがあっていい。むしろ、なければなりません。

 そこで、私たちは、裁判官に比べて裁判員の数を圧倒的に多くし、しかも評決には特別多数決を要するということを考えたのです。私たちも政府案を了承はしましたが、実は心配なのです。実務の扱いでは、過半数が得られたから評議はおしまいではなく、極力全員一致の結論を得るように努力すべきです。その努力が貴重なのです。法務大臣に御見解を伺います。

 裁判を国民主権のものに変えるには、判決内容だけでなく、裁判のプロセス自体に対しても国民の参加を得ることが大切です。法律の素人が主体的、実質的に裁判過程に参加するためには、公判手続や証拠調べを裁判の知識や経験がなくても分かるものに変えなければなりません。そのためには、迅速で充実した集中審理のため、検察官に十分な証拠開示を義務付け、その上で準備手続を充実させること、さらに、裁判員にも分かる審理とするため、いわゆる直接主義、口頭主義を徹底するよう、例えば、供述証拠は証言を原則とし、供述録取書面については取調べの可視化を条件とするなど、制度上、運用上の工夫をすることが必要と思います。本法案ではこの点が不十分ではないか、法務大臣に伺います。

 国民の常識を裁判に反映させるのが裁判員制度ですが、現在の常識が常に正しいとは言えません。特に悩ましいのは、憲法や法律と裁判員の常識が食い違う場合です。例えば差別禁止のように、法規範は現実を正すという面があり、その場合は裁判員も法規範に従うことが求められます。法の解釈や運用の場面ですと裁判官の出番ですからよいのですが、事実認定にこれが紛れ込むと厄介です。陪審でも最も悩ましい課題なのですが、この法案ではどのように手当てされていますか、法務大臣に伺います。

 裁判員制度は国民の理解と支持なしには成り立ちませんが、そのためにはこの制度の情報が豊富に国民に知らされる必要があります。この点で心配なのは、裁判員や裁判員経験者の守秘義務です。政府案は修正されましたが、そもそも守秘義務はなぜ必要なのか、これはじっくり考えてみると結構難しい問題です。法務大臣はなぜだとお考えですか。

 裁判員が報復を恐れて自由な発言ができなくなることを防ぐためと言われます。秘密のベールで覆っておく方が裁判の権威が高まると言う人もいます。いずれもそれほど必要性が高いようには思えません。これに対し、秘密のベールをはぎ取ると実態が明らかになりますから国民に身近なものになり、事後の検証も可能になります。より良い制度に育てていくには、秘密は少ない方がいいです。

 もちろん、プライバシーの保護や風紀を乱すことの防止は必要です。多様な利益をしっかり見比べてバランスの取れた判断をするため、守秘義務の範囲をもっと具体的に記述できないでしょうか。

 この判断は具体的なケースによってまちまちですが、最後は裁判所が裁判員制度に及ぼす有害な影響の程度を判断するのですから、法定刑の下限は刑の免除とするのが望ましいと思います。

 これらの点につき、法務大臣の見解を伺います。

 細かなことは省き、最後に法務大臣に伺います。大先輩の角田義一議員が私たちの会議で、裁判員制度は裁判の革命だと喝破されました。私もそう思います。及び腰ではうまくいきません。腹をくくって大決断をやる勇気があるかどうか、法務大臣、覚悟を述べてください。
 終わります。(拍手)

   〔国務大臣野沢太三君登壇、拍手〕
○国務大臣(野沢太三君) 江田議員にお答えを申し上げます。

 まず、現在の裁判に対する国民の意識についてお尋ねがありました。

 我が国の司法制度につきましては、これまで国民のニーズにこたえるべく、司法関係者において努力が重ねられてきたものと承知しており、我が国の現在の裁判は基本的には国民の信頼を得ているものと認識しております。しかしながら、社会の複雑多様化、国際化等がより一層進展する中で、行政改革を始めとする社会経済の構造改革を進め、明確なルールと自己責任原則に貫かれた事後チェック・救済型社会への転換を図り、自由かつ公正な社会を実現していくためには、その基礎となる司法制度を、新しい時代にふさわしく、国民にとって身近なものとなるよう改革していくことが不可欠であると考えております。

 次に、今般の改革は歴史的な大改革であるという点についてお尋ねがありました。

 今般の司法制度改革につきましては、内外の社会経済情勢が大きく変容している中で、我が国において司法の役割の重要性が増大していることを踏まえ、司法制度の機能を充実強化することが必要であることから、国民の期待にこたえる司法制度とするため、司法制度をより利用しやすく、分かりやすく、頼りがいのあるものとすること、司法制度を支える法曹の在り方を改革し、質、量ともに豊かなプロフェッションとしての法曹を確保すること、国民的基盤の確立のために、裁判員制度等の導入により、司法に対する国民の信頼を高めることを三つの基本的な方針として行われるものであり、我が国の司法にとって極めて重要な意義のある改革であると考えております。

 次に、法曹の意識改革についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、制度を生かすのは一にも二にも人でありますから、司法制度改革に伴って、これに携わる者の意識改革が求められるのは当然のことであると考えております。

 今般の司法制度改革は、国民の期待にこたえる司法制度を構築するとともに、司法に対する国民の信頼を高めることを基本方針としていますから、法曹三者におきましてもこの趣旨を踏まえました意識改革が求められているものと考えております。

 次に、国民の意識改革についてお尋ねがありました。

 司法がその求められている役割を遺憾なく果たしていくためには、国民の広い支持と理解が必要であります。特に、裁判員の参加する刑事裁判の制度は、司法への参加についての国民の意識と、これに基づく協力の下で初めて我が国の司法制度の基盤としての役割を十全に果たすことができるものと考えております。

 そして、国民に刑事裁判の過程に参加していただくことは、社会秩序や治安あるいは犯罪の被害や人権といった問題について、国民一人一人にもかかわりのある問題としてお考えいただく契機になるものと考えております。

 次に、司法制度改革の制度設計と今後の制度構築についての内閣の姿勢と態度についてお尋ねがありました。

 今般の司法制度改革は、社会経済情勢の大きな変化の中で司法がその役割を十分に果たしていくために、その基本的制度を抜本的に見直すという大改革でありますので、各界各層の御意見を十分踏まえながら、その制度設計を行ってきたところであります。

 また、制度実施後におきましても、国民の声に耳を傾けつつ、その実施状況を検証し、必要な見直しを行っていくべきであることは当然と考えております。

 次に、衆議院における修正についてお尋ねがありました。

 政府といたしましては、司法制度改革審議会意見や各方面での御議論を踏まえ、最善の制度であると考えて法案を提出させていただいたところでありますが、本法案のように、我が国の刑事裁判の在り方にも大きな影響を及ぼす基本的な制度に関する法案が、衆議院における慎重な御審議をいただき、一部修正の上、与野党の御理解を得まして御可決いただきましたことは、大変意義のあることと考えております。

 次に、裁判官の意識改革についてお尋ねがありました。

 裁判員制度の下では、裁判官と裁判員が評議を通じてそれぞれの知識、経験を共有し、その成果を裁判内容に反映させることによって、司法に対する国民の理解と信頼を深めることが期待されております。

 裁判官におきましても、このような裁判員制度の趣旨を十分に理解した上で、評議の場において、裁判員に対して必要な法令等に関する説明を丁寧に行うとともに、裁判員が発言する機会を十分設けるなどすることによって充実した評議が行われるようにし、この制度の趣旨の実現に努めることが期待されているものと考えております。

 次に、裁判員制度は全く新しい裁判制度ではないかとのお尋ねがありました。

 裁判員制度は、我が国においてかつて行われていました陪審制度のみならず、諸外国の陪審制度や参審制度をも参考にしつつ、我が国の裁判制度や社会の在り方などを踏まえた上で制度設計したものであります。その結果、我が国にふさわしい独自の制度を作ることができたものと自負しております。

 次に、裁判員制度に関する言葉についてお尋ねがありました。

 御指摘の言葉は、戦前における陪審制度の導入の意義を述べたもので、誠に当を得たものであると考えるところであります。

 さて、今般の裁判員制度の導入につきましては、国民が裁判の過程に参加し、その感覚が裁判の内容に反映されることによりまして、司法に対する国民の理解や支持が深まり、司法がより強固な国民的基盤を得ることができるようになるという、非常に大きな意義があると考えております。そして、より強固な国民的基盤を得た司法は、社会経済情勢の変化の中で増大するその役割を十全に果たすことができるようになるものと考えております。こうした点につきましては、これまでも度々申し上げてきたところでありますが、今後とも裁判員制度の意義を広く御理解いただくため、努力してまいりたいと考えております。

 次に、評議についてお尋ねがありました。

 もとより、評議を尽くすべきであることは言うまでもないところであります。そこで、本法案では、評議の整理に当たる裁判長に対し裁判員が十分に意見を述べ、その職責を果たすことができるよう配慮する義務を課しているところであります。ただし、評議を尽くしても最終的に意見の一致が見られない場合も考えられますので、そのような場合には、本法案の規定に従いまして評決が行われることになります。

 次に、裁判員が裁判過程に実質的に参加することができるようにするための制度上、運用上の工夫についてお尋ねがありました。

 一般の国民が裁判員となり、裁判内容の決定に主体的、実質的に関与することができるようにするためには、裁判員に分かりやすい裁判とすることが重要であると考えております。

 そこで、第一回公判期日前から十分に争点や証拠を整理することができるよう、公判前整理手続を創設し、裁判員制度の対象事件では、これを必要的なものとしております。そして、検察官は、同手続において取調べを請求した証拠を開示するほか、それ以外の一定の証拠についても開示の必要性と弊害とを勘案して開示しなければならないものとしております。これによりまして、争点の整理と被告人の防御の準備に十分な証拠が開示され、公判前整理手続を充実させることができるものと考えております。

 このことは、ひいては、明確化された争点をめぐって当事者が活発に主張、立証を行い、それに基づいて裁判官及び裁判員が心証を得ていく公判審理の実現、すなわち直接主義、口頭主義の実質化に資するものと考えております。

 また、本法案では、裁判官、検察官及び弁護人は審理を迅速で分かりやすいものとすることに努めなければならない旨を明記しており、この規定の趣旨に従いまして、審理をできるだけ分かりやすくするための工夫が行われるものと考えております。

 なお、取調べ状況の録音、録画等については、司法制度改革審議会意見においても、刑事手続全体における被疑者の取調べの機能、役割との関係で慎重な配慮が必要であること等の理由から将来的な検討課題とされているところであり、慎重な検討が必要であると考えております。

 次に、法規範と裁判員の常識が食い違う場合の手当てについてお尋ねがありました。

 裁判が法に従って公平に行われなければならないことは言うまでもないことであります。この点に関しまして、裁判員制度では、まず、法に従った公平な裁判が行われることを担保するために、事件関係者等を裁判員から除外する制度や、不公平な裁判をするおそれを示して行う、理由を示す不選任請求及び理由を示さないで行う不選任請求の制度を設けるなどしており、冷静に判断することができない者は裁判員となることができないこととしています。

 また、裁判官と裁判員とが十分に評議を行うことで双方の有する知識、経験が合議体全体に共有されるとともに、その過程を通じ、適正な結論に到達することが予定されています。

 さらに、評決の要件としましては、単に過半数であるだけでなく、その意見が裁判官と裁判員の双方の意見を含むものであることを要するものとしています。

 これらの手当てを講ずることにより、裁判員制度の下でも法に従った公平な裁判が確保されるものと考えております。

 次に、裁判員の守秘義務はなぜ必要なのかについてお尋ねがありました。

 裁判員の守秘義務は、他人のプライバシーを保護するとともに、裁判の公正さや裁判への信頼を確保し、評議における自由な意見表明を保護、保障するためのものであります。

 このうち、評議における自由な意見表明を保障することにつきましては、裁判員が後に批判されることを恐れたりして自らの意見を述べることを差し控えることがないようにして、自由濶達に様々な意見が交換される充実した評議が行われるようにしようとするものであります。このことは、裁判において適正な結論が得られるようにする上で大変重要な意味があるものと考えております。

 また、評議において述べたことが公表されず、事後的に追及、報復されるようなおそれをなくすという点で、裁判員の負担を軽減する意味もあると考えております。

 次に、守秘義務の範囲と守秘義務違反に対する刑についてお尋ねがありました。

 この法案では、評議の秘密につきましては、評議の経過並びにそれぞれの裁判官及び裁判員の意見並びに多少の数と明確に規定した上で、守秘義務の範囲を評議の秘密その他の職務上知り得た秘密としており、ただいま述べました守秘義務の趣旨からして必要な範囲を明確に規定しているものと考えております。

 刑の免除につきましては、守秘義務の趣旨や刑の免除の制度の趣旨に照らし、秘密漏示罪に関しこれを設けるべき特段の理由はないものと考えております。

 次に、裁判員制度の導入に向けた決意についてお尋ねがありました。

 裁判員制度の導入につきましては、司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資するものであり、大変に重要な意義のあるものと考えております。

 このような裁判員制度の意義を踏まえまして、その実施に向け、全力を尽くしてまいりたいと考えております。(拍手)


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