2003/07/17

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156 参院・法務委員会  

10時から、法務委員会で45分間、質問。前回に続き、司法制度改革一括法案の質疑ですが、長崎事件につき、鴻池祥肇防災担当大臣の「親は市中引き回しの上、打ち首に」との発言を質し、(1)少年院法改正で14歳以下も少年院での処遇を可能にすること、(2)14歳以下の事案についても捜査を可能にすることを、当面の対策として検討するよう提案しました。

さらに、規範意識の揺らぎに、政治家の無責任発言が加担しているとの視点から、太田誠一さん、福田康夫官房長官の発言、土屋義彦知事の事件などを取り上げ、最後に、外国法事務弁護士の件にも触れました。11時15分過ぎに採決。国会議員などへの弁護士資格付与条項を削除する修正案を提出しましたが、否決され、原案には反対しましたが、多数で可決。附帯決議を附しました。


平成十五年七月十七日(木曜日)

○委員長(魚住裕一郎君) 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○江田五月君 随分少ないですかね。定足数はいるんでしょうね。大丈夫ですね。

 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案でございますが、前回に引き続いて質問をいたします。

 司法制度改革の範囲に入るかどうか疑問もあるかもしれませんが、広い意味で日本における司法制度というものがどう機能していくかという観点から、国民の規範意識といいますか、刑事の、あるいは少年保護の関係について一体どっちを向いていくのかと、こういうことが今大きく国民の中で議論になっているので、まず先日の長崎の幼児殺害事件の関係についてお伺いをいたします。

 法務大臣に伺います。

 七月の十一日午前の閣議後の記者会見で、鴻池祥肇防災担当大臣がこの事件について、今の時代、厳しい罰則を作るべきだ、親なんか市中引き回しの上、打ち首にすればいいと発言をしたと、こういうことです。これは、その後のてんまつはいろいろありますが、まずこの発言自体、これは森山法務大臣は批判的なコメントをされているようですが、ちょっとこの場でもう一度伺います。この発言についてどういうふうに思われますか。

○国務大臣(森山眞弓君) 鴻池大臣は非常に大きなショックを受けられまして、被害者の方は本当に気の毒だという考えと同様に、加害者の少年の親たちにもよく考えてもらいたいという気持ちをおっしゃったんだと思いますが、もし報道されているとおりの言い方であったとすれば、ちょっと表現が行き過ぎではないかというふうに思うわけでございます。

○江田五月君 表現が行き過ぎというよりも、私は、まあ表現も行き過ぎですけれども、その基にある考え方ですね、子供の犯罪について親に刑罰を科すという、刑罰を科すという、こんな考え方のような感じもするんです。

 最近、被害者の人権と加害者の人権ということが議論になって、どうも加害者の、まあ加害者の人権という言い方も変なんですけれども、まあ余りくどくどしい説明はちょっとのけて、加害者の人権がじゅうりんされれば被害者の人権が保護されると、何か逆もまた同じという、そういう加害者の人権と被害者の人権がはかりに掛けられて、どっちかが下がればどっちかが上がるという、そんな議論が横行しています。

 まあ、そういう部分が全くないとは言いません。全くないとは言わない。それは、刑罰に応報的な機能があるということも確かです。しかし、被害者の人権ももちろん守っていかなきゃならぬ。国連で被害者の人権の決議がありますよね。被害者というのは社会からしっかり支えられなきゃならないんだという、これはそのとおりで、我々もこの犯罪被害者についての法案を提出をしたり、政府の方もまたいろいろと工夫を凝らしてこられました、これまで。しかし、被害者の人権を守るためには加害者をやっつけなきゃいけないんだという、これまた違うんで、加害者に適切な刑罰を科す、適切な保護処分を与えていくということ、これは両方がてんびんに掛けられているんではなくて、両方共々にということではないかと思いますが、その辺りは、まさか法務大臣、間違った見解を持たれてはいないと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(森山眞弓君) 鴻池大臣の発言は、先ほど申し上げたような感じで私は受け止めたわけでございますが、鴻池大臣もその後反省されて、例え話にしても、これから十分発言には気を付けたいということをおっしゃっておりますので、十分気を付けてほしいと私も思っております。

 また、今度の事件につきましては、まだまだ解明しなければならないことがたくさんございまして、いろいろな真相が明らかになった上で、まずはそれらを冷静に分析し解明していくということが重要でございまして、これらを通じて、このような悲しいことが二度と起こらないようにしなければいけないというふうに思います。

 被害者、加害者の人権というお話がございましたが、被害者ももちろんでございますし、加害者もあのケースではまだまだ若い子供でありますから、これから先の長い人生ということを考えますと、そのことを配慮した上で十分に人権を尊重されるべきであるというふうに思います。

○江田五月君 今のお話、今の答弁にあるいは尽きているかと思いますけれども、十二歳の子供ですよね。確かに、それは自分のやったことの意味というものはよく分からさなければいけないし、そしてそのことについての一定の社会的な制裁、それは子供なりにですね、これは受けなきゃいけないと思います。そのことによって社会の厳しさというものも子供にも教えなきゃならぬし、世間もまたそれは理解をしていかなきゃならぬ。

 しかし同時に、この子もこれから大きくなって育っていくわけです。長い長い人生があるわけですね。その十二歳の子供にとってやっぱり一番大切なのは親ですよね。親がどんなに、まあいろいろ困った親であろうとも、やっぱり親ですよね。たとえ、例え話といえども、親を打ち首にしたら、一体この子はだれがこれから守っていくのか。そういう親もまた足りないところがあるなら、親にもいろんなことを分かってもらって、この大切な子供を育てていける、育てていく、そういう親になってもらわなきゃいけない、そういう観点が一番大切だと思うんですが、どう思われますか。

○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおりでございまして、私はその親がどういう方か存じませんけれども、しかしその子供にとって非常に大切な存在であろうと思いますので、親にもこのことを十分認識していただいて、そして子供が順調に生育していくように親として努力してもらいたいというふうに思います。

○江田五月君 親はなくても子は育つとか、親がない方が子がよく育つとか、いろいろあるのかもしれませんが、やっぱりまずいですよね。法務大臣のそういう発言を聞いて安心いたしましたが、鴻池大臣はああいう人柄ですから、やんちゃなんですが、やっぱり大臣はやんちゃだけではちょっと済まないので、私も、彼、面白い人間だから、もうしょっちゅう、また一杯やろうやと言っているんですけれども、やっぱりそれでもちょっとやんちゃが過ぎたときには、少年じゃないんだから、やっぱりちょっと考えてもらわなきゃならぬと思います。

 もっとも、御本人も後に、これは閣僚懇、十五日の閣僚懇談会で発言を撤回して、その後、記者会見をされたということですが、そしてまた、昨日は衆議院の方の委員会でも呼ばれたようですが、しかし陳謝はあったのかもしれないけれども、謝罪はない。メールが一杯来ていて、そのうちの、テレビのインタビューでは八割が自分に賛成、昨日の委員会では八割五分が自分に賛成と。それは、そういう事実はあるでしょうが、それを得々として国民の皆さんに説明をするという、そこらがどうもやんちゃのやんちゃたるゆえんだけれども、やんちゃじゃ済まないという気がいたします。

 鴻池大臣の、その十五日、閣僚懇後の記者会見で、政府の青少年育成推進本部の副本部長として、七月末に出すことになっている青少年育成施策大綱について、スローガンばかりでは国民から批判が上がると述べて、大綱はまとめない、青少年犯罪問題だけを取り上げる検討会を設置をすべきだと主張して、大綱を出せと言うなら辞める、出したかったらおれの首を取れと息巻いたというわけです。

 この前段の大綱についての発言、これは閣僚懇で発言したということですが、閣僚懇のことについてそのとおりであるかどうか、閣僚懇でそういう発言があったのかどうか。これはどうですか。

○国務大臣(森山眞弓君) 確かに、閣僚懇において似たような趣旨の発言をなさったというふうに記憶しております。

○江田五月君 そして、少年犯罪対策を取りまとめるための関係省庁局長級による検討会、これは七月十五日、おととい立ち上げたというんですが、ちょっとこの少年非行対策のための検討会、これは一体どういうことで立ち上げられて、どうスタートしているのかを御報告ください。

○国務大臣(森山眞弓君) 先ほどの閣僚懇における発言がありましたときに、官房長官が、まあそう言わないで、大綱も重要なんだから、それはそれで出したらいいんじゃないですかと、しかしそれと別に非行対策のための検討会というものもやりましょうよということになりまして、七月十五日に発足いたしました。

 その趣旨は、最近、少年が加害者となる重大事件が続いて発生していることを踏まえ、このような緊急の課題に対応するために総合的な少年非行対策について早急に検討を行うということでございまして、構成は、関係各省庁責任者及び専門家をもって構成するということになっております。

 関係各省庁というのは、内閣府の政策統括官、警察庁生活安全局長、法務省刑事局長、文部科学省スポーツ・青少年局長、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長、それからオブザーバーとして最高裁判所の事務総局家庭局長などでございます。そのほか、内閣がお願いする有識者の方が何人か、数人集まられて第一回が行われたと聞いております。

○江田五月君 そうすると、この今月末に予定されていた青少年育成施策大綱、これは先送りされるんですか。

○国務大臣(森山眞弓君) 大綱は、今申し上げたこの検討会の方の検討結果を見まして、それと調整しながら出すということで、当初の予定よりも遅れるということになっております。

○江田五月君 鴻池大臣は当初、座長となることは遠慮したいということのようだったんだけれども、まあそう言わずにと。そう言わずにというのも変ですが、結局、座長になられたようですが、そして大綱の方は先送りをされて、この検討会の方の施策取りまとめの方が先行すると。これでは鴻池大臣が閣僚懇で言われたことがそのまま通ったということですね。ちょっとおかしいんじゃないですかね。鴻池大臣が閣僚懇で言ったことは、これは、大綱を出すなら辞める、出したかったらおれの首を取れというようなことを息巻いて、結果として、まあそう言うなとはいうものの、同じ主張が通ったということですから遺憾に思いますが、こういうスタートを切られたと。

 専門家というのは、これはどういう人を予定をしているんですかね。

○政府参考人(樋渡利秋君) 私もこの検討会のメンバーに入っておりますので、第一回の会議が七月十五日に開かれまして、その専門家の構成はこれから考えていかれるところだというふうに聞いております。

○江田五月君 今回の事件については、これは非常に私も重大な問題を含んでいて、それは一人の幼児、一人の中学一年生の事件ですけれども、しかしその事件はやはり今の社会の病理現象といいますか、持っている問題というのを象徴的に表している部分があるだろうと。こういうところから私どもは最大限の教訓を得て、この社会の病理を治していくために取り組んでいかなきゃならぬと思いますけれども、それにしても、鴻池大臣が座長になって、市中引き回し、首切りという、それに八割五分の人が賛成だったというような、これに勇気付けられて、行け、進めで、非行少年、触法少年など全部、家族も含めて退治をするんだという、そういう少年非行対策を作られたんじゃ見当外れも甚だしいと思っております。

 今、刑事局長から答弁いただいたんですが、そして、伺うと、この検討会は法務省からは刑事局長だけが入っているようですが、確認します。それでいいんですか。

○国務大臣(森山眞弓君) そのとおりでございます。

○江田五月君 樋渡刑事局長は大変いい人だと思います。しかし、少年保護の関係のことを議論するのに刑事局長だけでいいんですかね。私は、やはりこれは保護局長辺りは入らないと議論にならないんじゃないかと思いますよ。

 法務大臣、どうお感じですか。今、確定的なところまで答弁はなかなか難しいでしょうが、ちょっと問題意識、分かりますかね。

○国務大臣(森山眞弓君) 先生のおっしゃりたい意味は分かると思います。確かにそういう考え方もあると私も思いますが、それは必要に応じてその関係の他の局長が出席する、あるいは意見を述べるという機会はあると考えております。

○江田五月君 私は、むしろ必要に応じてというよりも保護局辺りは中心になっていかなきゃいけないんじゃないかという、中心の一人になっていかなきゃいかぬのじゃないかと思います。

 今回は、小泉首相も前の池田小学校事件のときと違って冷静な対応でしたし、もちろん森山法務大臣は冷静で慎重に発言をしておられる。そこで、むしろ私の方からやや暴走族風に踏み込んで、少年院法の改正を考えなきゃいけないんじゃないかと。これは御存じですよね、十四歳以上でなければ初等少年院、医療少年院といえども子供を預かることができない。しかし、触法少年は少年法の対象になっていて十三歳以下であっても保護処分はできる、保護処分の範囲が狭められているわけですよね。

 今、子供の成長過程というのも随分昔と違っていますから、十四というところですぱっと線を切ってしまうので本当にいいのかと。もっと弾力的で現実に適用できる、そういう運用をしようと思うと、やはり例えば医療少年院の持っているいろんな機能というのを十三歳以下の少年にも適用できるような、そういう仕組みが要るのではないかということで、少年院法の改正を検討してはどうかということを申し上げているわけですが、これはどうお感じですか。

○国務大臣(森山眞弓君) 先生の先日の御指摘もうなずけることではないかというふうに私自身はそう思っておりますし、いろいろと様々なこと、まずこの事件そのものの解明をし、かつ、その理由あるいはその背景等を研究いたしました上で、あるいは世間全体の少年非行というものについても十分分析いたしました上で、十三歳以下の少年を少年院に収容して矯正教育を行うことの効果、あるいは様々な影響について配慮して検討してみたいというふうに考えております。

○江田五月君 官僚答弁の前向きにというのでなくて、本当に真剣に検討していただきたいと思います。

 私は、ついつい思い余って、今ここで議員立法で少年院法を変えればあの加害少年を医療少年院というところで処遇できるかなと。保護処分だから確かに泥縄の典型ですけれども、正に泥縄ですけれども、それでも事後法といったようなことはないかなと思ったりしたんですが、やっぱりそうもいかぬなと。今日は弁護士さん方の傍聴も多いようですが、弁護士さんの賛成は得られないなと思ったりして、それはちょっとやめておきたいなと思いますが、思いますが、やっぱり本当に真剣に検討しないといかぬ。

 あの少年は児童自立支援施設で、まあ少年のことはまだ何も分かっていないですから、保護処分が必要ないかもしれませんけれども、しかし恐らく何か要るだろう。今すぐ、あるいは短期の間に社会に戻すと、どうせ地域社会ではもう知られていることですから、なかなか少年の自立にとってそれは険しい道にほうり出すことになってしまう。やっぱり保護の観点からもいろんな知恵が要るだろうと思いますね。今の制度の中では自立支援施設にかなり長期間置いて、その後、少年院に移すとか、しかしそれもちょっと長くなり過ぎるといいますか、ちょっと法が予定しているやり方じゃないですよね。調査官による試験観察で、補導委託先に預けてかなりの期間、補導委託という手で施策を講ずるということもあるかもしれませんが、いずれにしてもそういうことも考えていただきたい。

 それから、捜査ができないんですね。この駿ちゃんの殺害の事件を児童相談所に送致した時点でこの事件は終局処分が終わっていて、警察としては捜査ができない。しかし、家裁の調査などによってはなかなか解明できない部分があるかもしれない。ないかもしれません、この事件については。しかし、一般的に言うと、やっぱりそれはいろんなことがあるかもしれない。刑事訴訟法が予定しているいろんな捜査の手だてを十三歳以下の少年の事件の場合であっても動員しなければ事案の解明ができない場合というのはあるだろうと思うんですね。

 それで、十四歳未満について刑事処分はできないと、これはそれでもちろんいいんですけれども、しかし刑事責任年齢というものをある年齢でぱっと切ってしまって、そこから上でなければ捜査の権限はありませんと、そこから下はもう捜査当局としては年齢が分かった途端に全部お手上げですというのも、ちょっと一般の納得というのは得られないのかなと。

 そうすると、例えば刑事責任年齢というものでなくて、刑事責任能力、これはもちろん必要、責任能力がなくて刑罰科すことは、これは当然できない。しかし、それを年齢で切るというのはちょっと硬直過ぎて、妥当な解決に資さない場合が出てくるんじゃないかという感じを持っておりますが、問題意識はお分かりでしょうか。

○国務大臣(森山眞弓君) 先生のおっしゃりたいことは私は理解できるつもりでございますが、お尋ねのことについては、現行法におきましては、犯罪を認知した後の初動捜査や刑事未成年者と判明した後の調査、これは実は触法少年であると判明した後でも警察においては強制権限はありませんが、事案の真相解明のための調査の権限はあると解されておりまして、少年警察活動規則にもそれを前提とした規定があるそうでございますが、そのような調査、それから児童相談所における調査と措置、家庭裁判所における調査と審判などの事案の真相を解明するための手続があるというふうに理解しております。

 したがって、まず現行法上の制度において真相解明のための証拠収集等の手段が十分かどうか、調査等への協力を得るなどの点を含めまして問題点はあるか、これに対して委員御指摘の手法を含めましてどのような検討が必要か、対策が必要かなどについて十分な検討が必要だというふうに考えております。

○江田五月君 任意の、任意の調査ができると、これはもうそれは当然。今、この少年については、駿ちゃんの事件と別に幼児を裸にしたという事件があって、この点は捜査をしている。それはだれが犯人だか分からないという前提で、まだ十二歳の少年の犯行かどうか分からないという前提で調査を、捜査をしている。しかし、犯人と結び付いて、その犯人が十二歳と分かった途端にもう捜査はできない。

 調査はいいんですけれども、やっぱり、捜査というのは別に加害者を懲らしめるという話じゃないんで、捜査というのは例えば令状を取って捜索、差押えをやるとかいろいろそういう話ですから、そしてそれは令状を取るということは捜査される、加害者以外のところもいろいろ捜査するわけです。そういう人たちに対する人権上の配慮から司法チェックを入れておくと、その代わり、司法チェックを受けた場合にはかなりの強制権限を持って証拠収集などができるということで、それは余り年齢でもうすぱっと切ってしまうということが妥当なのかなという感じです。

 それは個別の事案のことです。しかし、冒頭にも申し上げましたが、そういう事案が我々に与えているいろんな警鐘、これをやはり考えていかなきゃならぬと、今の社会の持っている問題点。

 それは、現代社会というのはなかなか複雑でいろんな問題を抱えています。私ども政治家ができること、できないこと、いろいろあります。政治家ができないことをやろうといってもそれは無理な点もある。しかし、政治家ができることもあります。一番できることは何かというと、まず政治家自身が身を処すことですよね。政治家が勝手なことを言っておいて、子供に対していろいろ言うというようなことができるかどうかで今、政治家の責任、最近、自民党有力議員のとんでもない発言が目立つ、ちょっとひどいです。

 森山法務大臣にこの責任を問うのも気の毒なんですけれども、やはり法務大臣としてこれについてどういうことを、どういう見解をお持ちになるかは国民にメッセージとして発していただかなきゃならぬと思うんですが。自民党行政改革推進本部長で元総務庁長官太田誠一衆議院議員、人はいい人ですけれどもね。しかしやっぱり、六月二十六日、鹿児島市内で行われた全日本私立幼稚園連合会九州地区主催の公開討論会で、少子化問題について、男性にプロポーズする勇気がない人が多くなっている、集団レイプする人はまだ元気があるからいい、正常に近いんじゃないか。これ、どう思います。

○国務大臣(森山眞弓君) 太田議員がどのような意図でおっしゃったのか、その発言された言葉だけでは十分分かりませんので難しいんでございますけれども、しかし一般論として申しますと、集団レイプなどというのは重大な犯罪でございまして、被害者の心身に耐え難い苦痛をもたらすという大変な犯罪でありますので、これを正当化するような発言というのは甚だけしからぬと私は思っています。

○江田五月君 甚だけしからぬですよね。

 福田官房長官、この人も人はいいですが。何か一々そう言うのも嫌になるけれども、決して人が悪いと言っているんじゃないんですが、やっぱりその立場にある人がどういう発言をしていいかということは考えてもらわなきゃいけないんで。男女共同参画担当大臣ですよね。六月二十七日のオフレコ記者懇談で、男はクロヒョウ、裸のような格好をしている方、でいる方が悪いというような発言をしたと。各方面から抗議を受けている。これはどう思われます。

○国務大臣(森山眞弓君) これは、御本人もそういう発言はしていないというふうにおっしゃっているそうでありますので、私としてはここでコメントは差し控えたいと思います。

○江田五月君 オフレコ懇談でどうも言ったことは確かのようですけれども、オフレコだから、オフレコというのはないことだからないということで、だれがばらしたというのを一生懸命犯人捜しをやっているというようなこともあるようですが、品がないですよね、幾らなんだって、ちょっと。

 森元首相、同じ、太田誠一さんと同じ公開討論会で、子供を一人もつくらない女性が自由を謳歌して、楽しんで、年取って税金で面倒見なさいというのはおかしいという発言。これはどうです。

○国務大臣(森山眞弓君) これも、本当の意図がどういう気持ちでおありになったのか、この発言の言葉だけではよく分かりませんけれども、私は、女性が子供を産んだかどうかということは老後の年金給付には全く関係がないことだと思っています。

○江田五月君 そうですよね。女性が子供を産んだかどうかって、男性がいなけりゃ子供は生まれないんで、それじゃ子供を一人もつくっていない男性はこれはどうなるんですかとか、そうすると、いやいや、あっちの方へつくっていますとか、もう何を言っているのかというひどい話になってしまうわけですよね。そういう問題とは違うだろうというふうに思います。

 私は、それは人それぞれに自分のいろんな本音の気持ちというのはあるだろうと思いますよ。あるだろうと思うけれども、本音という、いわゆる、いわゆるこの本音がそのままストレートに出ていくのがいいのかどうかということはやっぱり考えなきゃならぬので。

 全部本音でいくというんだったら、それこそ動物の食物連鎖ですよね、一番上に猛禽類というのがおる、鳥の。ああいう社会に人間社会がなった方がいいのかというと、そんなことはないんで、そうじゃないんで、人間を人間たらしめているのは、火を使うとか二本足で歩くだけじゃないんです。

 やっぱりそれぞれの人はそれぞれ皆、人権を持った尊重される個人なんだという、そこは男も女も、あるいはお年寄りも若い者もという、皆同じだという、そういうある種のこれは建前です。しかし、その建前というのがあって、それが規範になって社会を成り立たせているわけですよ。その規範の意識がまるっきりなくなって、みんな本音でやろうというのを、それは面白おかしく言う人たちが面白おかしくそういうことをはやし立てたっていいけれども、政治家が、しかも重要な職責にある政治家がそういう本音で、建前ということのルールということの規範ということの重要性をどんどんどんどん掘り崩していったら社会は成り立たなくなる。

 法務大臣、それは同感していただけますよね。

○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおりだと思います。

○江田五月君 我が参議院にもそういうことがあった。今ではないけれども、前の参議院議長、埼玉県の土屋義彦知事が辞職となりました。これは事案はどういうふうに把握をされていますか、簡単に御報告ください。

○政府参考人(樋渡利秋君) お尋ねの件につきましては、東京地方検察庁において、平成十五年七月十日、市川桃子外一名を、政治資金規正法違反、収支報告書虚偽記入罪により逮捕したものと承知しております。

 被疑事実の要旨は、被疑者は、埼玉県知事土屋義彦の資金管理団体、地方行政研究会の資金管理を統括する者であるが、同会の事務担当者と共謀の上、自治大臣又は総務大臣に提出すべき同会の平成十年分ないし同十四年分の収支報告書の本年の収入額欄に五期合計で約一億一千三百万円分過少に虚偽の記入をし、それらを、各翌年三月中旬ないし下旬ごろ、埼玉県選挙管理委員会を経由して自治大臣又は総務大臣に提出したというものであると承知しております。

○江田五月君 この長女さんの規範意識のなさ、驚くほどです。こういうことがどんどんあるとやっぱり今の日本社会の規範意識の低下につながってくると思いますが、大臣はこの土屋知事の事件をどうごらんになりますか。

○国務大臣(森山眞弓君) 私も長い間、参議院に置いていただきましたものですから、土屋先生が議長をしていらしたときのことはよく存じておりますし、知事になられてからも何度もお目に掛かって、大変ざっくばらんな、それこそいい方だというふうに思っておりました。

 ですから、このような事態になったのは本当に残念だなと思いますが、しかし知事がどのようなお気持ちから辞職をされたのか、その真意について特に承知しているわけではございませんので、私から所感を述べることは差し控えたいと存じます。

○江田五月君 参議院は良識の府だと言われておるわけで、ところがどうも参議院の議長経験者がいろんなことが起きますね。参議院議員として恥ずかしいと思っています。国民の皆さんに申し訳ないと思っております。

 がらっと話変わります。

 司法制度改革法案、弁護士の綱紀委員会に弁護士以外の委員を加えるという、これはどういう理由ですか、御説明ください。

○政府参考人(山崎潮君) 今回の改正の趣旨でございますけれども、現在の綱紀委員会でございますけれども、弁護士会の所属弁護士によって構成されているわけでございます。中に、裁判官、検察官、学識経験者の方が参与として入っておられるようでございますけれども、表決権はないという状況で運営されているということでございます。

 こういうような構成でございますと、やっぱり同僚のみによる調査ではないか、手心を加えかねないのではないかといろいろ指摘もございまして、弁護士以外の外部委員を加えることによって、より一層公正な調査、判断が行われるように客観的に担保をしようと、こういう趣旨に出るものでございます。

○江田五月君 日弁連の皆さんとの意見調整は十分できた上でこういう制度をスタートさせようと提案されていることと思います。

 私も、自分自身も弁護士で弁護士会にももちろん所属をしているんですが、しかしまあ手心を加えているんじゃないかと疑われるなんてものじゃない、手心なんてものじゃない、そういうような場合も実際あります。本当に、弁護士というのは本当に何様だと思っているんだというような感じを中にいる我々が思うこともあるので、是非とも外の風を弁護士会に入れるということは、十分弁護士会員の皆さんにもその意味を分かっていただくように努力をしてほしいと思います。

 外国法事務弁護士と弁護士又は弁護士法人との共同事業及び収益分配、それから外国法事務弁護士による弁護士の雇用、これを禁止をする規定を削除をしたと。で、特定共同事業制度を廃止すると。この規定は、この趣旨、内容をもう少し、前回ちょっと、全然伺う時間なかったんですかね、詳しく説明してください。

○政府参考人(山崎潮君) この問題に関しましては、改革審の意見書におきまして、日本弁護士と外国法事務弁護士等との提携、協働を積極的に推進すべきであるというふうに位置付けられておるわけでございます。

 これを受けまして、私どもの方で検討したわけでございますけれども、まず第一に、利用者のニーズにこたえるため、提携・協働関係をできるだけ多様なものにする、こういうことが必要であるということが一つの理由でございます。それから、もう一つの理由は、これまで外弁が、制度が導入されまして十五、六年になるわけでございますけれども、その間、外弁が権限逸脱行為によって懲戒処分されたという事例が一件もないと。こういうような実績に照らして、雇用禁止、共同事業、収益分配禁止などの事前規制の撤廃によって外弁が権限逸脱行為に及ぶおそれが高くはないというふうに考えられたということでございます。

 こういう理由からこの規定を削除いたしまして、その提携関係の内容を当事者の自由意思にゆだねる趣旨で改正を行うことにしたということでございまして、言わば事前規制型から事後チェック型に移行をすると、こういう趣旨でございます。

○江田五月君 警察庁の皆さん、本当に済みません。来ていただいたんですが、ちょっと質問できなくなってしまいまして、お帰りくださって結構です。済みません。

 外国法事務弁護士が日本弁護士を雇用して、そしてその日本弁護士を通じて外国法事務弁護士が日本法の事務を行うということはこれはいけないんだと、これは変わらないんでしょう。

○政府参考人(山崎潮君) 御指摘のとおりでございます。外弁のできる権限、この範囲は全く変わっておりません。

 取りあえず、それでよろしゅうございますか。

○江田五月君 そこは全く変わっていないと。しかし、もう少しフレキシブルにいろんな雇用形態などが、事務所の経営などができるようにしようと。で、それは事後チェックにすると。事後チェックにするということになると、やっぱりチェックのときのルールがしっかりしていなきゃいけない。外国法事務弁護士に雇用された弁護士の業務、報酬について、何がルール違反で、何がルール違反でないのか、ここのところの基準ですね、これを、もう時間が余りないんですが、具体的に明確に説明してください。

○政府参考人(山崎潮君) この改正案の中でも大きなルール、二つ掲げております。

 一つは、雇用される弁護士ですね、日本の弁護士ですけれども、これに対して業務上の命令を行うこと自体を禁止するということが一つでございます。もう一つは、雇用される日本の弁護士が自ら行う法律事務であって、権限外法律事務に当たるものの取扱いについて不当な関与はしてはならないと、このルールをはっきり定めております。

 これが一つの基準になるということで、大きな基準になるということでございます。

○江田五月君 業務命令は禁止をすると。それから、不当な関与は禁止をする。しかし、弁護士事務所の中で、外国法事務弁護士といえども法律家、日本弁護士ももちろん法律家、この間で、業務命令ではなくて、いろんな相談事で事を進めていくというようなことはあって、どこまでいったら業務命令になるのかというようなことは、一々恐らく業務命令書みたいな、指示書みたいな、そんなものを出すわけじゃないだろうし、それから不当な関与というのも、何が不当であるかというのは非常に難しいと思いますが、このルール違反があったかないかというのは、一次的にはどこが判定するんですか。

○政府参考人(山崎潮君) この権限は日弁連でございます。

○江田五月君 結局、これは日弁連がやはりしっかりしていただくと。それに対して国が不当な、それこそ不当な関与をするというものではないと。日弁連の皆さん、しっかりしてくださいねと、そういうことが一番基本にあるんだと。これはそう確認してよろしいですか。法務大臣、いかがですか、そこは。

 最後ですから、法務大臣、今の点、日弁連さん、しっかりしてくださいねということが根底にあるんだということの確認をお願いします。

○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおりでございます。

○江田五月君 終わります。


2003/07/17

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