2003/07/03

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156 参院・法務委員会  

10時から、法務委員会で、裁判迅速化法案、民事訴訟法改正案、人事訴訟法案の審議。午前中は12時半までで、民主党は角田義一さんが45分、私が75分質問。10年程前に「新民訴」と呼ばれる民訴法改正が行われたとき、改革の先取りとして、「福岡方式」や岡山の「桃太郎コート」など、各地で弁護士さんや裁判官による熱心な取り組みがあり、成果を上げました。迅速化をうたう法律を作って鼓舞するより、手続きや人的・物的条件を整備し、関係者にやる気を起こさせるほうが、ずっと効果が上がります。


平成十五年七月三日(木曜日)

○江田五月君 角田委員の方から質問がありまして、私も全く同感で、何でこんな法律が、法案が出てきたのかなと大変いぶかしく思っております。

 そこで、今の角田委員の質問を更に補足をしたり、あるいはもう少し掘り下げてみたり、いろいろやっていきたいと思います。

 その前に、この法務委員会、今日の前の質問はちょうど一か月前、六月の三日でしたね。そのときは心神喪失者等医療観察法案の審議であったわけです。

 多くの解明すべき問題点が本当にたくさんまだまだあって、私どもも幾つかこれは委員長にもお願いをし、委員長も理事会で協議をすることを幾つかお約束をいただいていたわけですが、これが全部そのまま積み残しになって抜き打ち強行採決と、しかも直前の理事会でも採決の提案もなしにということで。いや、偶然そうなっちゃったんだと、それにしてはいろいろ手際が良過ぎるということだったと思いますね。残念でなりません。

 心神喪失者医療観察法案は衆議院に送られましたが、この場に多くの問題点は残っているわけで、これは、あのときの審議を終了し採決をした経過については、野党各委員の発言もあり、また委員長の御発言もありましたから、それをこれから蒸し返すことはいたしませんが、しかし、そこで残された問題については、これは私たちは今後とも厳しくフォローしていかなければならないと思っておりまして、まず冒頭そのことだけは申し上げておきます。

 また、昨日は、衆議院の方ですが、二つの特別措置法の強行採決が今日にも行われるのかと、すべての審議がストップするのかと思いましたが、これはどうやら回避をされて国会の方は衆参ともに正常に審議が進んでおりまして、私ども法務委員会は、特にこの参議院の法務委員会は、これから処理が待たれている法案がもう山ほど、本当に山ほどあるわけでございまして、精力的な審議を進めていくと。衆参ともに全部の委員会が、この参議院の法務委員会の審議に悪い影響があるようなことがないようにやってもらいたいとつくづく思っております。しかし、本日議題の迅速化法案は、これは手抜きで迅速にとにかく手早くやればいいというものではないと、角田委員おっしゃるとおり。

 そこで、本日のこの裁判迅速化と民事訴訟法の改正案と人事訴訟法案と、この三法案でございますが、私たち民主党も、今、角田委員も私も申し上げたいろんな疑問点は感じておりますが、衆議院での、今日は修正案提出者も来ていただいておりますが、大変な御努力もあって参議院に送付を、修正で迅速化の方はされておりますので賛成の立場ではございます。賛成の立場ではあるけれども、やっぱりいろいろ、ここはただしておきたいと、よりいい法律になるように、そしてその法律の成立の結果、よりよい裁判が実現するように努力をしていきたいというので質問をいたします。

 まず、裁判迅速化法案について森山法務大臣に伺います。

 どうも、なぜ一体この法案が出てきたのか。さきの心神喪失者等医療観察法案とどうも同様に、小泉首相のツルの一声といいますか、お声掛かりで法案化されたとも言われている。私も何かそんな感じがします。となると、またこの医療観察法案と同じように、軽率で誤った認識から出発をしているんじゃないかと、そこを検証しなければならぬと思うんですが。

 一体なぜこの法案が必要なのか、二年以上掛かる裁判が本当にそんなに多いのか、この法案がなければ裁判の迅速化はできないのか、その辺りについて、法務大臣、どう認識をしておられるのか、お伺いします。

○国務大臣(森山眞弓君) 最近は、我が国の裁判は、関係者の御努力によりまして少しずつ短縮化されてきたことはおっしゃるとおりでございます。しかし、例えば当事者間で争いがあったり、人証調べ等を必要とする事件、複雑、専門的な事件、国民が注目しているようないわゆる重大事件などにおきましては依然としてかなりの長期間を要するものが少なくないというのが現実でございます。

 この法案は、このような事件を含めて、第一審の訴訟事件を始めとする裁判の一層の迅速化を図ろうというものでございまして、そのための基本的な枠組みを規定する点に意義があるというふうに思うのでございます。

○江田五月君 確かに、長く掛かり過ぎる事件も、それはあります。個別の事件を言うといろいろ波紋を呼ぶといけませんが、例えばこれは、例のリクルートの江副被告に対する刑事裁判があれだけ時間が掛かって、もう風化してしまってだれも、だれもと言うといけませんが、今ごろ何言っているんだろうという感じになっている。しかも、これは執行猶予ですから被告人は、痛くもかゆくもないと言うといけませんけれども、過ぎたなという、これでいいのかとか、あるいは最近では、十数年掛かった医療過誤事件ですかね、裁判官が判決で、これだけ時間が経過してしまったことについては一定の遺憾の意を表明をしたというような事件もありました。

 こういうものは、それは早くなきゃならぬと。しかし、ごくごく例外だと思いますよ、全体で見ると。そして、むしろ今、訴訟関係者の方は、もうちょっと聞いてほしいと、もうちょっと裁判官に分かってほしいというような、そういういら立ちを感じながら判決を受けておると。これが先ほど角田委員御紹介の弁護士会の資料の中にも出ているわけですよね。

 もし、迅速だけが、つまり速ければ速い、短ければ、審理期間は短ければ短い方がいいというんだったら、二年なら二年で、もう二年たったら判決するんだという法律を決めれば判決はできますよ。森山法務大臣、それはお分かりですか。二年たったら判決をするんですという法律を作って、どうやっても判決するんならできるということを、これはお分かりでしょうか。

○国務大臣(森山眞弓君) もしそういう法律があればそういうことになるだろうとは思いますが、それではやっぱり裁判の目的を果たすことができないと思いますので、そういう法律は恐らく作れないんではないかと思います。

○江田五月君 だけど、例えば裁判というのも、裁判機構も検察も含めて、維持していくのに国民の税金でやっているわけですよね。国民の税金でそうやって提供されている司法サービスを、当事者だけが使うわけですから、それはいつまでも使われたら困ると、もうあなたに許された時間は二年以内ですと、それ以上使っちゃいけませんという、そういう考え方が、どうです、そういう考え方はどこかおかしいですか。まあちょっと、法務大臣。

○国務大臣(森山眞弓君) そういう考え方もあるかもしれませんけれども、やっぱり裁判というものは、民事、刑事、それぞれに目標がありまして、その目標を達成するということが重要なことでありますから、二年だけであとは打ち切るというようなことはできないと思います。

○江田五月君 もちろん私は極端な言い方を今しているので、これは、じゃ、山崎局長とちょっと議論してみましょうか。

 いろんな要素があって、どれもそれなりに一定の必要な利益であると。それをどういうふうにうまく組み合わせながら一番いい組合せの結論を作っていくのかということで、時間は短ければそれは短い方がいいだろうけれども、しかし短いことだけが唯一の価値ではありませんよね。

 今の私の二年でやれと言ったらできるというのは、これは山崎さん、お分かりですよね。つまり、もう立証責任で片を付けりゃいいんですから、もうここでおしまいと、あとはもう勝手にしてくださいと、あとは出ている証拠で、これは立証できています、これはできていませんと、できている、できていないの責任がどっちにあるかは、それはもう立証責任で解決しますとやれば判決は書けますよね。どうですか。

○政府参考人(山崎潮君) 確かに、おっしゃるとおり、そういうシステムを作れば、立証できない方は負けと、そこで終わりということになろうかと思います。これはできることはできると思います。しかし、これをもしやるとすれば、一体裁判って何だということがまた逆に問われてくる。紛争はきちっと解決していないじゃないか、あるいは言い分をきちっと言わせていないじゃないか、こういうことにもなろうかと思います。

 ですから、私ども、今回考えましたのは、やはりやることもきちっとやりましょうと、その上で時間をなるべく短くやっていきましょうと、この二つの要素を両方持ったそういうものにしましょうということを問うているわけでございます。

○江田五月君 ある一定の時間だけ当事者に与えて、そしてその間にどうぞ好きなようにやってくださいと、それで、ある時間が来たら、もうおしまいです、あとは判決しますと、それでは裁判にならないんでしょう、やっぱり。それでは裁判にならないんでしょう。

 さて、そうすると、それじゃなぜそれでは裁判にならないかというと、やっぱりそこに当事者の納得というのが全くないからだということになるんじゃないですか。裁判というのは、刑事裁判もそうだと思いますが、民事裁判の場合は特にやっぱり紛争の解決なんですよね。紛争の解決ということになれば、これは私の持論なんでいろんな意見あるかと思いますが、判決で紛争が解決するなんということはまずないと思った方がいいんです。判決でやって強制執行やって、ちゃんと取れるものが取れるなんということはまずないと考えた方がいい。それよりは、例えばそれは自分の求めるものの半分であったって三分の一だって現実に取れた方がよっぽど解決には資する。

 今のも極端な言い方をしているわけですけれども、そうすると、先ほど角田委員の冒頭強調されていた、やっぱり当事者の納得のためには時間の効用というのがあるんだと。一定のやはり熟度といいますかね、事件がずっと熟してくる。ライプネスといいますか、和解に熟してきた、それがやっぱり一番民事の紛争としては、民事の解決方法としてはいい。しかし、どうやってもこれは和解で熟させるというわけにいかない。しかし、もうここは判決に熟しているという判断をする。そういうような、時間を掛けながら熟成させていくという、それが裁判官の技量だということはあるんじゃありませんか。

○政府参考人(山崎潮君) ただいま御指摘のとおりでございます。そういう側面も当然ございます。ですから、当事者の納得と紛争解決、この両方を求めなければならないということになろうかと思います。

 それで、この法案におきましても、裁判所の責務のところで、「可能な限り」ということを言っているわけでございまして、それからこの六条でございますね、充実した手続を実施することにより、可能な限り二条一項の目標を実現するように努めるものとすると言っているわけでございます。それから、当事者の責務のところも、手続上の権利は、誠実にこれを行使しなければならないということを言っておりまして、やっぱり必要なものをやっていただくということが前提でございます。裁判所の方も必要なものはやるということが前提になっているということで御理解を賜りたいと思います。

○江田五月君 そういうお答えを本当に大切にしながらこの法律の運用をやっていただきたいと思います。

 私なんかは、私も裁判官やっていたんですが、裁判官やっている当時は、どっちかというと早い方が好きでした、本当は。もうそんなに当事者がもうあれこれあれこれ細かなことをしつこくしつこくというのにずっと付き合い切れないよと、もうこの辺でひとつ判決しようやという方が個人的には好きだけれども、それではいけないということで、やはりそこは当事者の納得のためにいろんな努力をしてきたつもりです。

 それから、もう一つこういうこともあるんですよ。当事者の納得といったって、特に民事事件は一審だけじゃないから、さっき山崎局長は、高裁へ行ったらまあ疲れ切ってみんな来ているというふうにおっしゃったけれども、だけれども、裁判所だって、一審は途中下車じゃないけれども、この辺で一遍判決しておこうと。で、判決というものがその両当事者の紛争の中に一つ加えられて、その判決を見て、高裁へ行って和解をするとか、あるいは、まあまあ判決が出たから、どうせ高裁へ行ったってまあ変わりもしないからここらでいいやとか、審理が充実していようが納得が得られようが、まあそんなことはいいやという、そういう処理の仕方もあるし、現実に民事事件の処理の中では、一審はここまで、あとはどうぞ高裁で、和解の素材となるような判決をしておきましょうと、ちょっとこれは片っ方の当事者が余りにも態度がきつ過ぎるから、高裁へ行ってもうちょっとこの態度を変えてもらうためにこっちを負かしておきましょうなんて、そんな判決だってありますよね。どうです、正直なことをちょっと答えてみてください。

○政府参考人(山崎潮君) 何ともお答えしにくい御質問でございますが、事件により顔が違いますから、その顔に合わせた、性格に合わせた処理の仕方というのは当然あろうかと思います。

○江田五月君 刑事だってあるんですよね。それをもうあながち、あなた、今、顔に合わせたとおっしゃったけれども、なかなかいい表現をされる、事件のそれぞれの性格ですから、今のような、一審はここまで、どうせ民事は続審ですからあとは二審でというのも一つの知恵でもあるんですよね。だけれども、一つの知恵でもあるけれども、そういう顔をしていない事件に無理やりそういうやり方を押し付けると、これはえらいことになります。裁判の拒否になりますよね。

 ですから、やっぱり二年あるいは二年以内のできるだけ短いとかというのを機械的に当てはめたら絶対にこれはいけない。絶対それは裁判の否定につながってしまうということを申し上げておきたい。裁判というのは短ければ短いほどいいというものでもないんで、もちろん長ければ長いというものでもない。それから、充実と言うけれども、充実はもちろん大切だけれども、充実という名の下に、何か熟してぽとっと事件が落ちてくるのをじっとただ待っているだけというようなことは絶対あっちゃいけないという、そういういろんな要素が複雑に絡んでいるというのが裁判だということをよくお分かりだと思いますけれども、くれぐれも注意をしてほしいと思います。

 さてそこで、幾つかの事件について、これもお答えしにくければ知恵を働かせた答弁をしていただければと思いますが、例えばオウム真理教の事件というのは、これはこの法案が成立したら進め方は変わるんですか、変わらないんですか。刑事局長は──いいですか。

○政府参考人(山崎潮君) 確かに、個別の事件、係属中でございますし、今ここで個別の事件を言うことは適当ではないかと思いますが、それはさておき、やはり今非常に長く掛かっているような事件、こういうものをいろいろ分析を、検証するわけですね、この八条で。そういうことによって、やっぱりどこに問題があるのか、それが手続なのかあるいは人的体制なのか、あるいは別のものか、こういうものをきっちり検討して出すわけでございます。将来の施策に結び付けるわけでございますので、そういう意味では、全体的な大きな意味では、それが施策に結び付けば裁判が迅速化していくということは当然あり得る話でございます。

○江田五月君 もう一、二、個別の事件ですが、さっきちょっと挙げたリクルート事件、これも非常に長い裁判。これが、迅速化法があったとしたら、この裁判は短縮されたんでしょうか。それからもう一つ、十数年掛かったと言われる医療過誤事件、これはこの法案があったとしたら短縮されたんでしょうか。御説明ください。

○政府参考人(山崎潮君) ちょっと個別の裁判の内容を私も十分承知しておりませんのでお答えすることはできませんけれども、先ほど申し上げましたように、やはり八条で調査をし、それで検証をして、仮に何かその事件が手続上の問題だったと、こういう手続がないからこそ遅れてしまったんだという問題があれば、やっぱり手続を改正せざるを得ないと思うんですね。それに従ってやっていけば迅速化していくということは当然あり得るわけでございます。それが例えば、膨大な事件であると、人が足りないんだと、そこに投入する人が足りないんだというのなら、人を増やしてやっていくということで迅速化が図られるということで考えておるわけです。

○江田五月君 だけどですね、今、私は三つの個別の事件を挙げて、どうなんですかと聞いて、それは、個別の事件のあそこはこうだ、ここはああだという答えはそれは難しいですよね。だけど、今の局長の答弁ですと、どうも個別の事件の検証をして、そこに問題があったら制度を改めてというようなことをやるかのような答弁に聞こえましたが、どうなんですか。最高裁の責務となる検証、この検証は、そういう個々の事件の個別の検証はしないと、さっきあなた、そう答えたばかりじゃなかったですかね。

○政府参考人(山崎潮君) 個々の事件の、検証をして個々の事件の当否を言うわけではなくて、そういうことを抽出させて将来どういう施策にマクロ的に利用していくかと、そういう意味の検証でございます。

 ただ、その前提としては、個別の事件がどんな態様であったかということは調査として把握はする。把握はするけれども、その事件の当否を言うのではなくて、将来どういうことが必要になってくるかということをマクロ的に判断をする、こういうことでございます。

○江田五月君 いや、それがよく分からないんです。マクロ的という言葉を使われた。しかし、個別の事件の、いろんな抽出してということも言われた。しかし、二年以上掛かったものだけを抽出するわけではないと言われた。全部の事件だと、さっき角田委員の質問では言われた。全部の事件なんて、とてもそんな全部の事件を一つ一つ見るなんてできないじゃないかというのは、これは当たり前だと思いますね。

 だから、どういう検証の仕方をするかというのは、何か混迷してしまって私もどうも頭がうまく整理できない。どうやって、どうやって検証するということをこの法案の提出者としては考えておるんですか。

○政府参考人(山崎潮君) これは、現在もいろいろ裁判所の方で統計を取るためには調査をされているわけでございまして、そういう意味では全事件対象になろうかと思います。そういうことにいろいろな必要な項目を加えていくということでその調査をするということになろうかと思います。

○江田五月君 抽象的なお答えになるときはそれなりにふんふんとなるんですが、それが実際どう具体的な姿を取るのかと想像を巡らすとどうもよく分からなくなる。

 検証はマクロで行うと、具体的な事件をピックアップするということはないと、全体を統計的な手法で姿を、今の現実のその訴訟の姿を見て、その中で更に迅速にできるような要素は何かないんだろうかということをこう探っていくと。たしか私が山崎局長から聞いた説明では、そうやって今の全部の事件の中で見ると、例えばやはり人的な体制がもっと整えばもう少し短くなるんではないかというようなことが結論として出てくる。そうすると、人的な体制を整える努力をして、それが今度、その今の検証から出てきたアウトプットの結果、現実の司法の運営の中に投入される。で、それが今度実現されたら、今度はまた司法の姿が変わってくる、ああ少し短くなった、ああなるほどあれが効いたんだなというようなことを検証の結果、また自分たちが手に入れる、そして次には、今度は物的なものがもう少しどうかと、次かどうか分かりませんが。

 というような、そういうある種の検証と施策と検証と施策と、そういう繰り返しの中で裁判の迅速化というのを図っていこうとするんだというように、何か私が答弁しているようで、ちょっと主客逆転しているような感じがしますが、そういう説明受けたんですが、それはいいんですか、それで。あるいは違うんですか。

○政府参考人(山崎潮君) 私の答弁内容を言っていただけたような形になりましたけれども、そのとおりでございまして、まず実態を調査して、検証して、何が足りないかということを抽出して、それを施策に反映させると、それでまたその状態でやってみると。それでもまだ何かが足りないとまた結論が出てくる、またそれは新たな施策にということで、これを何周かやっていくうちに安定的なものになっていくのか、そういうことを考えてこの検証を入れた、こういうことでございます。

○江田五月君 そうすると、迅速化で二年以内のなるべく短いとか言うけれども、それは目標として掲げているだけであって、実際にやるのは、そういうことをやるのは、一人一人の裁判官に、あるいは一つ一つの事件にこれだけでやりなさいというようなことをやるのではなくて、今の検証と、そしてそれに基づく施策の実現ということがこの法案の仕組みである、そこがこの法案の一番のみそであるというように私は理解をしたいんですが、それでいいんですか、そうじゃないんですか。

○政府参考人(山崎潮君) 正にそのとおりでございまして、個々の事件について、あれがいい、これが悪い、そういうことを問うものではございません。将来の施策に結び付けるための調査であり検証であると、こういうことでございます。

○江田五月君 何か誘導尋問みたいになって大変申し訳ないんだけれども、最高裁の方もそういう認識でいいですか。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 今後、法律が制定された段階で具体的に検討していくということになりますけれども、事は裁判官の独立に影響するようなことでございますから、データ取る対象にはもちろん個々の事件ということになりますけれども、これをできる限り類型化する、大数的な観点から見る。そういうことによって、例えば運用面で、これはどうもこういった税法事件では鑑定に随分時間が掛かっている、調査官のですね、そういったものに掛かっている、あるいは医療過誤であれば、鑑定提出までの時間が非常に掛かっている、そういった運用面での解決策が本当に図れないのか。さらに、それで運用面では駄目だということになれば、それは手続面、手続法の改正ということにもなりましょうし、さらにはその後、人的あるいは物的体制といったところに広がっていくというふうに私どもは考えております。

○江田五月君 もう一遍、今の、こういうふうにするということを考えているということは分かりましたが、私が言ったように、個々の、個別の事件に着目をして、二年以内にやれとか、そのためにはこうしろとかというようなことではなくて、全体の今の事件の動き方、民事も刑事も、あるいは家事もある、いろいろある。そういうものを見ながら、そこへ一定の類型化とか、あるいはいろんな尺度を当てはめて、それをある意味では統計的に処理をしてみて、そして施策がそこから浮かび上がってくるものを見付ける、これを実現をする、実現をした結果がまた現実の司法の運営の姿に反映される、その姿を検証してみていくという、そういう繰り返しのシステムというのを最高裁も考えているんだと。これはそれでいいんですか、いけないんですか。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 全くそのとおり考えております。

○江田五月君 そこで次に、そうだとすると、それは私、いいと思うんですが、どういう、今ちょっとお話しになりましたね、医療事件、医療過誤事件ではどうだろうかとか、あと何おっしゃったか、そういう類型化というのもあるでしょう。そのほかにもいろんな、マクロで検証するときの検証の手法、何を基準にして見るのか。あるいは、その中には、例えば当事者が多数の事件はどうなっているかとか、いろんなことがあるでしょうが、そのときの基準あるいは尺度、これはどういうものなのか。これは、まず推進本部の方はそこについてはどういうことを考えておられますか。

○政府参考人(山崎潮君) これは、まず基準、調査の基準でございますけれども、これはやっぱり裁判の迅速化にどういう要素が関与してくるかということが大事でございますので、例えば当事者の数だとか、それから審理の方法だとかそのやり方、そういうものをまず幾つか類型化をしていただきまして、それについて個々の事件、現場の方からチェックをしていただいて上げていただくと、それを基にして最高裁の方でいろいろ分析をしていくと、こういうやり方ということでございます。

○江田五月君 最高裁の方はいかがですか。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) これにつきましては、これ最高裁がもちろん検証主体ということになっておりますけれども、最高裁だけでこういったものがすべてでき上がるというふうには思っておりません。最高裁だけが結論を出したにしても、法曹二者の協力を得られなければ、言わば迅速化は絵にかいたもちになるわけでございますから、そういう意味では、検察あるいは弁護士会の知恵というものもおかりしていかなければならない。

 したがって、ここで断定的なことはもちろん申し上げかねるということは御理解いただきたいわけでありますけれども、基本的には、大きくまずいろんな統計を取りまして、その上で問題を類型化し、その上で、この辺りに問題があるんではないか、この辺りが隘路になっているんではないかといったことに仮説を立て、更にその上でそこの部分に焦点を当てたデータを収集し分析をしていく、こういうふうなことになっていくんではないかなというふうに思っております。

○江田五月君 今まだ、マクロで把握したこの調査検証対象をどういうふうにして解析していくかという基準、尺度までお話しいただけるほど、それこそ熟していないのかもしれませんが、十分そういう問題意識でやっていただきたい。

 そこで、修正案提出者山花衆議院議員に伺いますが、法案の第八条、「最高裁判所による検証」について、「客観的」という、そういう文言を加えた修正をされた、この趣旨ですね。この「客観的」というのは主観的の反対ですから、そうすると、やっぱりデータに基づいた検証というようにも読めるし、それから、最高裁がやるというけれども、最高裁がやるというだけでは、これは、観念的とは言いませんが、最高裁という主体がある意味で主観的にやるということだから、そうではなくて、その手続の主語は最高裁でも、いろんな人をそこへ入れてというようにも読めるんですが、どういう趣旨の修正だったのか、そしてその修正の結果どういう効果を生ずるのか、どうお考えでしょうか。

○衆議院議員(山花郁夫君) 第八条の最高裁判所による検証の方法について「客観的」という文言を加えた趣旨でございますけれども、最高裁判所による検証は外部の有識者による客観的な判断が不可欠であるということを明確にするという点にございます。

 かつて、宮沢俊義先生だったと思いますが、国家上級試験の合格者に非常に東大出身の学生が多いと、どういうことだろうかと。ただ、国家上級試験の試験委員に東大の先生たちが大変多かったので、それを指して宮沢先生が、猿回しが自分の猿を試験しているようなものだからだと、このようなことを言って、猿回しと比較するのは最高裁に失礼かもしれませんけれども、つまりは、自分たちだけではなくて外部の有識者を加えて判断することが不可欠であるという趣旨でございます。

 この修正によりまして、検証を行う際に、法曹三者の協力だけではなくて、外部有識者の関与を認めるための措置を講ずることが期待できることになるものであると、このように考えております。

 なお、衆議院の法務委員会でこの法案を採決した際には附帯決議が付されておりまして、そちらの方には、「最高裁判所による検証については、裁判の独立及び関係者のプライバシーを十分尊重しつつ、総合的、客観的かつ多角的な検証を確保するため、法曹三者の協力に加え、外部有識者の関与を認めるよう、必要な措置をとること。」と、こういう決議を付して、衆議院側の意思としてこういうことを希望しているということも御紹介させていただきたいと思います。

○江田五月君 そういう趣旨の修正だということですが、これは、修正されたものについての、修正案についての質疑というのはここで初めて行われるわけですから、聞いておきますが、推進本部の方は、今のような趣旨の修正であるということは、これは十分理解をしておられるでしょうか。そして、それはそれで、そういう趣旨の修正を踏まえてこの検証の実現を考えておるということでいいんでしょうか。

○政府参考人(山崎潮君) ただいま山花先生から答弁ございましたけれども、趣旨はそのとおりというふうに私どもも理解をしておりまして、これに従ったやり方をしていくということで理解をしております。

○江田五月君 最高裁にも同じことを聞いておきます。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 最高裁判所が最終的な検証主体という、されている意味というのは幾つかございますけれども、私どもの方としては、例えば検証の結果を国民に対してこういうものであるというものをきちんと説明する、そういう責任主体、あるいは、そういったことを提言した以上それを実行しなきゃならない、予算要求等も行わなければならないという意味で、これはそういった実施責任という観点からも、国家機関である最高裁判所が最終的な検証主体であるというところは考えられてきているものだと、こういうふうに受け止めております。

 ただ、先ほどもお話し申し上げましたように、これは独り最高裁がそういった検証を行って結論を出せというものではございませんので、検証の大きなプロセスの中で、当然今、山花先生がおっしゃったような第三者、外部の声も聞く、そういったようなものをシステムとして組み込んでいく、こういうふうに考えているところでございまして、その趣旨が今回の八条の修正案であろうと、こういうふうに考えているところでございます。

○江田五月君 外部の声も聞く、それをシステム化していく。これは、システム化するというのはどういうふうにされるんですか。

 つまり、この検証というのは、何か最高裁事務総局の中に一定の委員会を設置をする、その委員にはいろんな外部の人も入れる、あるいはそういう委員会を作って、その運営を明確にするために最高裁判所規則を作るとか、そういうことはもう既にお考えなんですか。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) まだ成立していないわけでございますから、そこまで確たることは申し上げかねますけれども、そういったような現状に対しての検証システムの中の、検証プロセスの中のある一つのシステムとして組み込む場合、これをもちろん今考えているわけでありますし、また、アドホックにと申しますか、例えば統計の専門家の御意見を特に聞いてみるというような、そういったような御依頼の仕方という形もまたあろうかと思います。

 その辺りは、どういう仕組みにしていくかということにつきまして、法務あるいは弁護士会とも今後相談してまいりたいと思っているところでございます。

○江田五月君 法律がまだできていないと、法案成立していない段階だからと言われるけれども、我々の方は、この法案成立させたらどういうことが行われるんだろうかなということも考えながら、この法案を成立させようかどうかを審議しているわけですから、法律ができてから考えますじゃ、それは困りますよ。
 もう一度。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 江田先生、大変恐縮でございますが、裁判所は法案提出者ではございません。あくまでも法案ができた場合に、司法というのはこれを実行していくというのが私どもの責務でございますから、いささかやはり司法としては先走り発言というのはできる限り抑えたいという気持ちを持っております。その辺り御理解いただきたいと思います。

○江田五月君 先走り発言は慎まれるのは結構ですけれども、提出者でないからといったって、現実に、だって、検証の責任を負うことになる、この法案ができたら。そして、そういうものがここで今審議されている。余りこんなことばっかりやっていたら時間が掛かってしようがないけれども、やはりそこは、この法案が現実に可決されて法律になればこういうことを考えておりますということは、素直におっしゃっていただいた方がいいんじゃないかと思いますが。

 修正についてちょっと伺いましたが、ここでその他の修正部分についても併せて聞いておきたいと思いますが、まず七条の方、これは当事者の責務について二項を加える、正当な権利の行使を妨げてはならないという規定。この修正の趣旨、そして効果、さらにこの「当事者等」、「当事者等」は一項の方に定義があって、その定義の中にある「当事者」、これには刑事被告人も含まれるのですか。その三点。

○衆議院議員(山花郁夫君) この修正は、第七条に新しく第二項を加えまして、当事者等の責務について、「当事者等の正当な権利の行使を妨げるものと解してはならない。」との規定を加えようとするものでございます。

 この趣旨なんですけれども、裁判の迅速化の実現によって当事者の正当な権利義務が害されることのないようにするということであるということで御理解をいただきたいと思います。

 先ほど来、大変御議論があるところですけれども、この修正を行うことによりまして裁判の迅速化と、迅速、迅速ということだけになってしまって当事者の正当な攻撃防御権の行使というものが制限されることはなくしていただきたい、そして裁判における当事者の手続保障に資するためにこういった修正を加えたものでございます。

 なお、この「当事者等」の中には刑事被告人が含まれるというのは、これ、もちろんそのとおりであると考えております。

○江田五月君 二項では「正当」という言葉を使っている、一項には「誠実」という言葉がある。誠実も正当もそれはもう大変結構なことで、だれもそのことを否定する者はいない。ただ、現実の場面になると、これは誠実といい正当といい、非常に難しい場面というのはあるだろうと思うんですね。

 ちょっと極端な例で聞いてみたいんですけれども、人間というのは、たとえ訴訟当事者であっても、訴訟当事者というのがその人の全人生というわけでも何でもないですよね。それぞれ皆、自分のいろんな人生を持ちながら訴訟当事者という一面もまた持って訴訟にかかわってくるわけですから、訴訟当事者ということだけですべてその人生を決めてしまえと言われてもそれは困るだろうと思うんですよね。ですから、私は、例えば死刑が求刑されることが当然予想できるような事件の被告人、この人が、おまえ、訴訟の中ではそれはちょっとやり過ぎだよというようなことがあるにしても、いや、自分はやっぱり生に執着するんだと、自分は生きたいんだと思って一生懸命ありとあらゆる努力をすると、これは誠実じゃないんでしょうか、正当じゃないんでしょうか。まず修正案提出者、そこはどうお考えですか。

○衆議院議員(山花郁夫君) 私は、個人的には死刑制度はなくなれば一番いいと思っているんですが、そのことはさておき、死刑求刑が予想されるような事件においては、恐らくはたから見ていると、弁護士さんも、被告人が犯罪事実について認めているケースなんかですと、一生懸命今度は情状の立証をしようとすると。そうすると、この被告人の小学校のときの先生を呼んでくれとか、はたから見ていると訳の分からないようなことをやっているのかもしれない。ただ、その被告人がどういう人格形成過程を経て今のこういう人になったのかというのを立証しようとして一生懸命そういうことをやることはあると思います。それは、二年を超えようが何であろうが、私、提出者としてはそれは正当な権利の行使であると、このように考えております。

○江田五月君 同じことを推進本部の方にも聞いておきます。

 誠実あるいは正当といっても、その言葉は、それを聞いただけではそれはなるほど分かりますと、ですが、実際の場面場面になるとなかなか苦しむ場面が出てくるだろうという気はするんですが、そこで今の、死刑求刑が予想されるような事件の被告人が生きるということに執着をする、そのために必死の努力をするということは、おまえ、それは誠実じゃないよとか正当じゃないよということが、というようなことをほかの人間が言えることなんでしょうか。どうでしょう。

○政府参考人(山崎潮君) 確かに、死刑を求刑された被告人の立場でございますけれども、その争い方は、犯罪事実を争う場合もありますし、情状で立証をしていくという場合、両方ありますけれども、やはり必要な防御活動を行おうとする場合に、裁判所が二年なら二年という審理期間の目標を、それに拘泥して十分な審理を尽くさないまま審理を進めるということは私はあってはならないというふうに思いますし、正当な権利行使を制限するようなことは避けるべきであるというふうに思っております。

 そういう観点から、この法案の二条三項でも当事者の正当な権利利益を害することがあってはならないということを元々明示していたわけでございますが、修正によりまして七条の二項にも、非常に重要な点なので、そこにもう一度文言を加入をし、挿入をいたしまして、よりその趣旨を明確にすると、こういう修正が行われたわけでございまして、その趣旨は十分反映させた裁判を行っていくという必要があろうかと思います。

○江田五月君 法務大臣に、今のことなんですが、これは法律の細かな解釈がどうとかという話じゃなくて、法務大臣の法務行政全般を預かる言わば高い立場の政治家として、実際に裁判というのは一人の人間の人生が懸かるわけで、特に、人生どころじゃない、生命が懸かる裁判だってあるんですね。そういう営みですから、ですからそういう営みの中で、今の生きるということにもう見苦しいまでも執着をするということを、ほかの人間が、おまえ、それは誠実でないとかいうことが言えるんだろうか。逆に、そういうことを言うということが、何か変な風潮を作り出すということが起きるんじゃないかと。

 やっぱりその立場に立ってみたら、もう生きていくんだという、それはやっぱりみんなの本当の気持ちの中にちゃんと伝わって、どう言うか、国民みんながそういう、自分は生きていくんだといって必死に見苦しい抵抗をしている者に対して、それをある種の理解を持っていくというようなことはこれは必要なことじゃないか。こういう法律を作って、そんなことはもう見苦しいからやめなさいなどということを世間は言っちゃいけないというふうに思いますけれども、いかがですか。

○国務大臣(森山眞弓君) もちろん、正当な権利行使を制限するというようなことがあってはならないというふうに思います。

 この法律におきましてもそのようなことを言っているわけではございませんで、いわゆる世間一般で言うところの濫用のようなものにわたることは慎んでもらいたいというふうに考えているわけでありまして、生命を守るという人間、当然にすべての人が持っている要求、それを実現するために努力するということは正当なことではないかというふうに私も考えます。

○江田五月君 今、特に最近また、かなり目を覆いたくなるような凶悪事件もいろいろ起きたりして、これはこれで大問題。ただ、そのときに、あんな悪いことをしたやつはもう分かり切っているじゃないかと、裁判なんか要らないからもうすぐ殺してしまえなんという風潮が出てくるということはやっぱり慎まなきゃいけないということを申し上げておきたい。

 それから、もう一つ修正で、第一条ですが、「充実」、これはどういう趣旨で、どういう効果を期待しておるのか、修正案提出者、お答えください。

○衆議院議員(山花郁夫君) 第一条の「目的」について、「公正かつ適正な手続」の表記を「公正かつ適正で充実した手続」の表記に改めた修正の趣旨と申しますのは、裁判の審理の充実は裁判の迅速化の前提であるということを明確にするためでございます。

 先ほども角田委員からも大変厳しい御指摘がございましたけれども、やはり裁判の迅速ということだけではなくて充実した審理というものが本当に今求められていると考えております。

 先ほど、山崎事務局長からは、いやいや、必要なことはやるというのは前提であるという答弁がございましたが、前提であればやはりしっかりと法文に明記すべきではないかというのが私どもの考え方でございます。

 また、江田委員は先ほど、この委員会は六月三日に質疑をしたのが、それ以来だというお話がございまして、その中身は、言わば司法と医療の連携ということが問題になる法案だったと承知をいたしておりますが、私は、司法というのと医療というのは非常に似ているところがあるのではないかと思っております。

 九九年の七月ですからもう四年ぐらいになりましょうか、私事で恐縮ですが、四年前、父を亡くしました。治らない、難病指定されている治療法のない病気だったものですから、お医者さんは大変手を尽くしてくれたと感謝をしておりますけれども、お医者さんが一生懸命やろうがやるまいが結果は一緒だったのかもしれません。裁判というのも実は似たところがあって、実体法に当てはめれば裁判やろうがやるまいが結果は一緒なことはあるんでしょうけれども、しかし私がお医者さんに感謝しているのは、もうできるだけ本当に手を尽くしてくれたと思っております。

 裁判でもやっぱり、ちゃんと自分たちの意見を聞いてくれた、あるいはこの人の話を聞いてくれたと、それで納得した判決が出るのではないかと、このように思っておりますので、「充実した」という文言を加えることによって、裁判の充実化という名の下に、裁判において最も重要な審理の充実ということがかりそめにも害されることはなくなるという効果が生じるものと期待をしております。

 先ほど、最高裁の方から、法案ができたら実行していく立場であるという答弁がございましたので、こういう立法の趣旨であるということをよく御承知おきいただいて、実行していただきたいというのが私の希望でございます。

○江田五月君 修正案提出者の方はそういう趣旨で効果を期待して修正されたということですが、推進本部それから最高裁、お分かりですよね、それはもう聞くまでもないですよね。

 そもそも、充実させる、裁判を充実させる、これは本当の意味でですよ、何かじっと、ただただぼたっと落ちてくるのを待っているのではなくて。充実させるということが実は迅速という結果をもたらすことだと思いますよ。是非、くれぐれも充実をお忘れなくいただきたいと思います。

 さて、時間の方もだんだん気になってきましたが、民事局に伺いますが、平成八年に成立して平成十年の施行の新しい民訴法、新民訴、これは裁判の充実、迅速を目指したものだと思いますが、簡単にちょっと、どういうポイントがあってどういう実が上がったのか、何か当事者へのアンケートなども行われたようですが、その結果も含めて御説明ください。

○政府参考人(房村精一君) 御指摘の平成八年の民事訴訟法改正でございますが、これは、大きな目的といたしましては、国民に利用しやすく分かりやすい民事訴訟手続にするということを目指して民事訴訟の充実、迅速を図ろうとしたものでございます。

 具体的なポイントとしては、まず第一に争点及び証拠の整理手続を整備する、次に証拠収集手続を整備する、また少額訴訟手続を創設する、これは簡易裁判所でございますが、それから最高裁判所に対する上訴制度の整備と、こういうようなことが柱でございます。平成八年に制定されまして、平成十年の一月から施行をされております。

 その結果、訴訟の特に迅速化の点が統計上も明らかではないかと思っておりますが、実は十年前の平成五年には、地方裁判所の第一審民事訴訟事件の平均審理期間は十・一か月でございました。平成九年の段階で、それが十か月、平成十年に新民事訴訟法が、現行民事訴訟法が施行されまして九・三か月になりまして、平成十四年には八・三か月になっておりますので、民事訴訟につきましては確実にその迅速化が図られているのではないかと、こう思っております。
 よろしいですか。

○江田五月君 アンケートの結果。

○政府参考人(房村精一君) アンケートの結果は、これから。

 それでございますが、ただ、この新、現行民事訴訟法施行後、司法制度改革審議会が平成十一年に民事訴訟の利用者に対するアンケートを実施しております。

 そのアンケート結果を見ますと、気になりますのはその訴訟の迅速化の点でございまして、裁判結果について、やや長いと、長過ぎるという評価をした人が三六%、そして合理的範囲だと答えた方は二八%、短過ぎると答えた方も八%ございますが、多くの国民は現行の民事裁判についてやはり長いという評価をまだ下しているのではないかと、こう思われます。

○江田五月君 推進本部に伺いますが、この民事訴訟における福岡方式というものは御存じでしょうか。

○政府参考人(山崎潮君) 概略は存じておりますが、詳しいことは存じておりませんが。

○江田五月君 いや、私も実は知らなくて、昨日、日弁連の副会長で福岡弁護士会の藤井克已弁護士、今、彼は来週、参考人でこの委員会に来ていただくので、そのときに詳しく伺えればと思うんですが、この藤井弁護士から初めて伺った。

 平成二年に福岡県弁護士会が福岡地方裁判所と共働して民事訴訟手続の審理の充実促進のための方策、いわゆる福岡方式を実践してみたと。現実の民事裁判で、この双方に代理人が付いている事件でなきゃ駄目ですが、両方の代理人の了解を、了解というか協力をいただいて、もうこの手続ごとに決まった、フォーマットの決まったペーパーにいろんなことを書き込んでいくと。例えば、原告代理人が、今日はせっかく準備書面用意したのになぜ陳述させなかったのだろうかと、裁判官は、こんな準備書面を用意したなんて何てピンぼけなんだろうかなどというようなことを書いて、それで、ずっと審理が終わってからそれを回収して検証して、そうすると、その両方の当事者と裁判官の間でどういう、例えば意見の一致があったのか、意見の食い違いがあったのかなどということがずっと浮かび上がって、そして後で事件の検証ができる。その結果、なるほど、こういうことを改めたらもっと速くなるなとか、充実するなとかというようなことが分かってくると。

 そのようなことのようで、これによって福岡での民事訴訟は、例えば全国に比べて証人調べの人数が多くなって充実が図れるとか、あるいは審理期間も短縮をしたとか、何かその合意では、結審後一年以内、必ず一年以内には判決は出すという合意をしているんだそうですね。本当は一年も掛からないです、普通なら。だけど、一年掛かるようなのもあるけども、冒頭にも申し上げましたとおり、判決を書けといえば書けるんですよ、その内容のいかんを問わなければね。これが往々にして、結審後、随分長く判決も出してくれないと。判決出してくれなきゃ控訴もできないわけですからもう困ってしまうというようなことがあって、そういうことはもうなしにするという約束事で裁判をやるというようなことが福岡方式ということで。

 で、その福岡方式だけでなくて、当時です、つまり新民訴ができてくるよという、そういうことがずっと伝わったころに、裁判官の中でも、それから中堅、若手の弁護士さんの中でも、これは、やっぱりそういう新民訴を先取りして民事訴訟というのの改革を自分たちでやろうじゃないかという機運が生まれてきた。

 私は当時、岡山にいたんですが、岡山弁護士会に所属をしていたんですが、そして、浪人していましたから若干弁護士の仕事をして食いつないだんですが、岡山では桃太郎コートというのがありまして、なぜ桃太郎かというと、これは単純に岡山だから桃太郎というだけなんですが、若手弁護士さん、中堅弁護士さん方がグループを作って、そして両当事者にそのグループの弁護士が付いているときはそういうことをやってみようじゃないかというので、準備もしっかりする、証拠の点検もあらかじめ両方でちゃんとやる、裁判所も入っている。あるいは、宮崎も何かそんなことがあったとかいろいろ伺うんですが。

 私は、これは是非強調しておきたいんですが、訴訟の充実にしても迅速にしても、ここでこうやって法律を作って、そしてかねや太鼓で、それ充実だ、迅速だとやれば、何かみんながそういうことになっていくというものでも必ずしもないんじゃないかと。むしろ、何か当事者が、裁判所も含めて、本当に充実したものをやろう、本当に迅速にやろう、それには次は何かこういう道具が用意されるようだから、ああいうものをひとつ前もって自分たちで実践してみよう、その実践の中で、ああ、こうしたらよりいいものができるというような提案もしてみようという、そういう雰囲気を作り出すことがやっぱり一番大切なんじゃないかと思っているんですけれども。

 どうでしょう、これは推進本部、今のようなことがあったということをもう少し、それこそこの法案じゃないけれども、検証してみられたらいかがでしょうか。

○政府参考人(山崎潮君) ただいま御紹介がございました法曹三者による運用実態でございますけれども、運用の方式でございます。これはこれとして一つの評価ができる方式かというふうに思います。ただ、我々もちょっと、全体に、全国でどのような運用がされているか、これはちょっと裁判所の方を通じて調べなければ分からないところでございますが、我々としてもいろいろそういう実態についてお聞きをしたいというふうに思っております。

 また、この方式は方式として、これを今回のような、例えば検証ですね、これにそのまま登用できるかどうかというのはまたちょっと当事者間の合意があっての前提でございますので、これはまた違うかなというふうに思っております。

○江田五月君 これは、最高裁がおやりになる検証、それはそれとして、それだけでなくて、例えば今のような実例が既にあるわけですから、そうしたことが各地域地域で当事者の参加の下にいろんな形が行われていく。それが、そういう、自分たちで自分たちの仕事を検証をしながら実際の訴訟運営に当たっていくということがあれば、そこへ参加している当事者も、自分で後で反省する思料もずっと日々行えるわけだし、それから、やっぱり何か最高裁に後から見られたらどうも具合悪いなというのでヒラメ裁判官になるということもあるかもしれぬけれども、そうでなくて、自分たちの納得の上で、実際に自分たちで事件処理をしているそのグループが後から検証してみるということになったら、これはためにもなるからいろんなことをやってみようと、もちろん充実や迅速に向けてですよ。

 そういうことにもなるので、そういう検証、最高裁がやるというのじゃなくて、現場で行われる検証の過程自体が迅速や充実につながるんだということがあると思いますが、最高裁、どういうふうにお感じですか。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 福岡方式の実践、そしてそのモニタリングあるいは桃太郎方式、東京、大阪、そういったところではまた別の工夫も行われておりましたし、札幌でもまた同様のことが行われました。そういうことが、平成八年の新民訴法の結実に一歩つながったというふうに理解しております。

 私どもは、法曹三者として、これまでもやっぱり、本来はそういった努力というものがずっと求められてきたはずであります。御承知のように、第一審強化方策協議会というものがございますが、そういったものも本来はそういったものとして機能してくるということであっただろう、それが望まれていたんだろうと思いますが、それが必ずしも十分ではなかったということだったのではないかと思います。

 最高裁の検証とはこれは少し視点は異にしますけれども、最高裁がその検証によって、ここにやはり隘路がある、問題点があるといったときに、現場の方でそういったような工夫がなされてこういうふうに解決されているということでありますれば、それは正に処方せんになっていくというわけでありますから、そういったことが大いに進められていくことを期待しておるところでございます。

○江田五月君 是非ひとつ、現場の皆さんをとにかくエンカレッジする、間違っても締め付けて何かしようというんじゃなくて、エンカレッジする、あるいはエンパワーするという、彼らはそうやればする力を持っていますから、是非そこは現場を信頼して、大いに現場でいろんな試行錯誤が行えるように、むしろ自由度を高めていただきたいと思います。

 そうした関係で裁判員制度のこともちょっと実は伺ってみたかったんですが、だんだん時間が気になりますので先へ行きます。

 民訴法の改正ですが、これは幾つかのポイントがありますが、特許の裁判について、これ、東京、大阪に専属管轄化ということだと、地方の弁理士さんはどうなっちゃうのかなとちょっと心配するんですが、地方の弁理士さんのことはどういうふうに考えておるんですか。

○政府参考人(房村精一君) 今回の民事訴訟法改正におきましては、非常に専門性の高い特許権等の訴訟につきましては、審理体制の整っております東京地方裁判所及び大阪地方裁判所に専属管轄をすることによりまして、適正迅速な裁判を実現するということを考えております。これは、地方の人たちにとりましても、非常に大きな意味のある特許等について専門的な体制の整っている裁判所で適正迅速な裁判を受けるということが長い目で見れば利益になると、こういう考え方に基づくものでございます。

 代理の方につきましても、その地方の方が利用する場合の負担ということがありますので、当事者あるいは代理人のことを考えまして、基本的にまず専属化はいたしますが、特許権等に関する訴訟でありましても、著しい損害又は遅滞を避ける必要があるような場合には、当事者が居住する地方裁判所等に移送するという移送の制度を用意しております。

 それから、東京、大阪等で審理をする場合におきましても、電話会議システムあるいはテレビ会議システム、こういうものを利用いたしまして、争点整理手続あるいは証拠調べの期日について、地方にいながらにして、法廷に出頭することなく審理を行うというような方策も整えられておりますので、こういったものを活用することによりまして、できる限り地方の方の不利益をなくすということを考えております。

○江田五月君 これはやはり最高裁判所におかれましても、東京、大阪の地方裁判所に専属管轄になったから、あとはもうこっちへ来なさいというだけじゃなくて、地方の弁理士さんに例えば訴訟についての情報提供をするとか、今のテレビ会議その他の証拠調べなどなどのいろんな遠隔地の工夫が幾つかありますから、そういうものが地方の弁理士さんにちゃんと活用できるようにいろんな方策を行うよう要望をしておきたいと思います。

 それで、さらに推進本部、この今回の専属管轄化は実質的な特許裁判所の創設だというように民事局としては触れ込みでございますが、推進本部の方で今、知財の検討会やっておられますよね。そこで、この実質的な特許裁判所を超えて、八つの高等裁判所のほかに知財だけの高等裁判所を作るようなことも検討の範囲に入っているというように漏れ伺いますが、入っているのか入っていないのか。いずれにしても、話題には、世間で話題にはなっていますが、検討会の今の状況を簡単に教えてください。

○政府参考人(山崎潮君) 私どもの検討会は、知的財産訴訟の更なる充実・迅速化、この方策について検討を行っています。その中の一つとして、知的財産高等裁判所の創設の問題もテーマの一つとして入っている、こういうことでございます。これ、現在はどういう審議状況かということでございますけれども、現在は諸外国の法制を調査いたしまして、大体この調査が終わったということでございまして、現在大ざっぱな意見は賛否両論あるということでございまして、判決の予見可能性を向上させる必要がある、あるいは我が国の技術立国、知財立国としての姿をはっきりさせる必要があるという考え方と、今御審議いただいております民事訴訟法の改正等、実質的な意味での知的財産高等裁判所の機能を創設するような内容が盛り込まれているわけでございますので、この制度の導入後の姿も見る必要があるという慎重論と、両方ございます。現在、それで検討中ということでございまして、まだ方向は定まっていないという状況でございます。

○江田五月君 賛否両論、どんなことでも賛否両論はあるんですが、ひとつしっかりした検討をしていただきたい。

 人訴ですが、訴訟事件を扱う裁判所と家庭裁判所と、これはもうその裁判所というものの持っている哲学が違うんだというように我々はずっと習ってきたんですが、それは確かにあるだろうと思いますよ。やっぱり訴訟手続をやるところはどうしたってそれは堅いですよね。家庭裁判所は、そうじゃなくて、もっともっと社会との密接度というのは高くなきゃならぬ、後見的役割も必要だ、和やかに優しくというようなことがある。だけれども、人訴が家裁に移管されたら、家裁の持っている雰囲気というか、家裁のアドバンテージが崩されるんじゃないかという心配がある。他方で、いや、そうじゃないんだと、人訴の扱いが、やっぱり離婚とかという話だから余りそうかみしもを着て堅く堅くじゃ困るので、人訴というものがもう少し和やかになっていくんだという、そういう見方もある。これはどちらを念頭に置かれていますか。

○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、特に家庭裁判所での家事調停と民事訴訟で行われております典型的な民事訴訟というのはかなり性質の違う面があるだろうと思います。家庭裁判所は、どちらかといえばそういう人間関係の調整機能を中心として役割を果たしてきた、正にそれが調停等に向いているということだろうとは思います。

 ただ、離婚等の人事訴訟につきましては、もちろん訴訟事件として当事者が厳しく対立するという側面もございますが、しかし同時に、扱われている内容が正にそういう家庭に関すること、人事に関することが中心でございますので、その扱いが典型的ないわゆる財産的な民事訴訟と同じかというと、これは地方裁判所で扱っていてもおのずからその性質の差はあるのではないかと、こう思っているところでございます。

 今回、家庭裁判所に持ってくるのは、正に家庭裁判所の持っておりますそういった人間関係調整機能を生かしながら、それを人事訴訟の側面でも必要な場面には、親権者の指定その他、そういうところに活用できるようにと、こういうことを考えたものでございます。

○江田五月君 その点も是非間違わないようにしていただきたい。

 この人訴で、家裁に持ってきたからというわけじゃないんでしょうが、離婚事件で和解ができるようになるというのは、これは法律をやった者からするともう驚天動地の変革なんですね。そもそも人事訴訟では、これは人間、権利義務の形成であるから、形成訴訟、形成判決、それは当事者に処分権がなくて裁判所が形成していくんだから、そんなものに和解はないんだなどということをもう教わってきている。ところが、何か事もなしに和解できるといって、ああ、なるほど、そんなものだったのかというので、何か法律学なんというのはいい加減なものだなというように痛感をしておりますが。

 これは、もう時間ですよね。余りおたく風の質問はもうやめることにして、最後に法務大臣、家庭裁判所が今の離婚事件までやるようになったと、家庭裁判所というのはますますこれから重要になってくると思うんですが、家裁をどう充実強化させていくかということについて覚悟のほどをお伺いをしておきたいと思います。

○国務大臣(森山眞弓君) 今後の家庭裁判所は、家事調停、家事審判のほか人事訴訟をも取り扱うというようになりまして、身分関係の紛争全体についての専門裁判所ということになっていくわけです。その機能が充実強化されることになるというふうに考えます。家庭裁判所におかれましては、このような充実強化された機能を十分に発揮することによりまして、身分関係の紛争の解決について、ますます充実した司法サービスを国民に提供されるように期待しているところでございます。

○江田五月君 終わります。


2003/07/03

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