2002/12/10

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155 参院・法務委員会

10時から、法務委員会。午前中は、名古屋刑務所事件の集中審議です。矯正施設での公権力による人権侵害につき、千葉景子さんと私とで30分ずつ、千葉さんは主として保護房や革手錠の使用につき、私は人権擁護局の対応につき、質問しました。法務省の矯正局と人権擁護局が、同じ法務大臣の下にあるのに、相互の連絡が極めて希薄で、刑務所内での人権侵害につき、全く監視の実が上がっていない実情を、浮き彫りにしました。アムネスティ・インターナショナルの問題提起も取り上げました。


平成十四年十二月十日(火曜日)

○江田五月君
 千葉委員の方から、名古屋刑務所及びその他の刑務所についての状況を質疑をさせていただきましたが、受刑者の人権、人権と、こう言う。そうすると、刑務所の職員の方から、おれらの人権はどうしてくれるんだ、そんな声もあるかと思うんですね。私は、そちらももちろん大切だと思いますし、過剰収容の中で刑務所職員の皆さん、大変な苦労をしておる。そんな中で、ついぶちっと切れるということもあるかなと思うんですが、これはお互いにとって良くない。お互いにとって良くないんですが、取りあえずここで森山法務大臣に改めて確認しておきますが、受刑者にも人権があるんだ、これは当然ですよね。それはいいですよね。

○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおりでございます。

○江田五月君 ここに、私、一九九八年の六月にアムネスティ・インターナショナルが出しました「日本の刑事施設における残虐な懲罰」、こういう書面がありまして、その中に、府中刑務所の内部規定、ここでクオーテーションですが、君は今日から府中刑務所で受刑する立場にあります。中略。刑務所は刑を執行するところであり、しかも常に多数の受刑者が一緒に生活しているので、規律、秩序が十分に保たれなければならないため、各人が勝手な行動をするようなことは許されません。したがって、刑務所の生活は社会一般の生活と比べて細かいいろいろな制約がありますと。これは入った人にすぐ読んでいただくんでしょうね、いただくというのはいけませんかね、読ませるんでしょうかね。

 そして、所内生活の手引というのがあって、やはり府中刑務所の内部規定より抜粋で、一般心得、自分の住所や家族の氏名などを他の被収容者に知らせないこと。歩行中は懐手や腕組みをしたり、ポケットに手を入れたり、その他肩を振ったり、履物を引きずったりしないこと。この手引に書かれていないことであっても職員が指示したことには素直に従うことと。

 まあ、そうしてもらわなきゃ困るという立場もよく分かります。しかし、一方で、素直に従うことと、そういう関係というのは、これはやっぱり命令と服従の関係であって、そういう関係の中でちょっと間違えば、やはり命令する側が服従する側に対して人権侵害を行う、そういうおそれが非常に高い人間関係だと、こう思いますね。

 私ども、昔、法律を学んだときに特別権力関係なんという概念があって、学校とかあるいは刑務所とかはその典型なんて言われたんですけれども、最近はどうもそういう概念は余り物事を整理するのに役に立たないというのでそういう議論をしていないようですが。

 やはり、素直に従ってもらいたいと思いますよ、それは、職員からすれば。だけれども、人間いろんな事情があって、どんなに素直に従わなくたって、それなりに従っておれば、刑期が終われば、あとは刑務所に入っている理由は全く当然これはないわけですからね。

 ですから、こういう人間関係というのは人権上やはり非常に危ない人間関係なんだと。このことは分かっていただけますかね、法務大臣。

○国務大臣(森山眞弓君) 受刑者にもいろんな人がおりまして、今まで入るまではいろんな暮らし方をしてきた。自分の好きなものや嫌いなものもあるでしょうし、気に入ることや気に入らないこともあるでしょうから、それぞれの人間、様々でございますので、一つのことを言われても感じ方が違うと思います。それは十分に理解して、刑務官の方でも相手がどういうふうに思うか、どういうふうに感ずるかということもよく理解をした上で必要な監督あるいは刑務の仕事をするということが一番重要ではないかというふうに思います。

○江田五月君 やはり、それが常識だと思いますよね。おまえらは懲役を受けている身だから生かすも殺すもおれの自由だ、そういう関係があっちゃいけないと。履物を引きずるなというけれども、人の歩き方だっていろんな癖もあるんですよ。

 そこで、私は、法務省の人権擁護行政、当然これは公権力による人権侵害事案に対しても役割を果たさなきゃならぬ、決然と行動しなきゃならぬ。公権力による人権侵害事件、これは公権力というところ、どこでも起きるので、法務省以外のところでは起きるけれども法務省で起きることはないんだ、そんなことはないですよね。法務省の内部であっても、矯正施設内における人権侵害があれば、それは人権擁護行政は敢然としてこれを是正するために役割を果たさなきゃならぬと思いますが、これはよろしいですよね。

○国務大臣(森山眞弓君) 人権擁護というのは法務省の仕事の大きな一つでございますし、人権擁護局を中心といたしまして、すべての職員がそのつもりで努力しているところでございます。

○江田五月君 そこで、一つややこしい議論がありまして、行政というのは行政庁によって行われるんだと。行政庁というのは、特に法務行政は法務大臣というのが行政庁であって、これはもうその法務大臣が行政行為を行う。その他の法務省の全組織は、法務大臣という行政庁の行政を言わば補助する、そういう補助機関なんだと。その補助機関の一つが矯正局であり、一つが人権擁護局であり、これはもう法務大臣という行政庁の仕事を補助するんだから、その間に、やれ監督だとか、やれ介入だとか、やれ何だとかというようなことはそれはあり得ないんだという、そういう説明があるんですよね、現に。これ、どう思われますか、法務大臣。

 もう法律のややこしい話はいいんで、そういうのは何かおかしいなというふうに常識的にお感じになるかどうか。

○国務大臣(森山眞弓君) 何か難しい御質問で、ちょっとどういう意味か取りかねますけれども、どういう御趣旨でございましょうか。もう一度言っていただけますか。

○江田五月君 難しい理屈なんですよ、その行政法上の。つまり、法務大臣というのが全部を網羅して、矯正局長が何か言うのも法務大臣の言うことなんだと、人権擁護局長が何かやるのも法務大臣がやることなんだと。その法務大臣がやることだから、その中で、右手と左手とが、右手が左手をつかまえてどうとかというようなことはそれはあり得ないんで、全部、体なんだと、全部、頭が全部やっているんだと、こういう法律の理屈があるんですよ。

 今でも、ずっとあるんです、そういう理屈は。それは行政法の試験で答案書けば、やっぱりそういう答案を書けば多分、丸になるんですよ。だけど、何か常識的にはおかしいということをお感じになるかどうか。余り難しいことを聞いているんじゃないんです。常識を聞いている。

○国務大臣(森山眞弓君) なるほど、そういう理屈もあるだろうなと思いますが、確かに何となく変かなとも思います。

○江田五月君 いや、それでいいんです、それで。その常識、大切なんですよ、本当に。

 というのは、矯正局で行っている法務省の行政作用が一つある。刑務所をちゃんと監督して運営していくという。一方で、人権擁護局が行っている行政作用もあるんです。その行政作用はお互いに違うでしょう。お互いにこれは、お互いにといいますか、どっちかというと、人権擁護行政というものが矯正行政に対して人権侵害があるかどうかをちゃんと見ていかなきゃならぬという、そういう行政作用上の関係があるでしょう。ところが、今の伝統的な行政法、総論からいうと、そういう関係がうまく説明できないと思うんですよね。

 だから、私は、やっぱりこれは、人権擁護局は本当に矯正局に対しても、矯正局が行っている行政に対しても、自分たちは人権擁護の観点から役割を発揮するんだということをもう一遍ちゃんと認識していただかなきゃいけない。昨日も説明に来た若い職員の皆さんで、いや、それは同じ省内ですから、監督とかなんとか、勧告とかそんなことはあり得ませんというようなことをぽろっと言うような人がいるわけで、そこでこれまで法務大臣、法務省の人権擁護行政が同じ法務省の矯正施設行政に対して人権擁護のために十分な対応をしてきたと、これも直観で結構ですが、思われるかどうか。

○国務大臣(森山眞弓君) 直観でいいとおっしゃいましたが、私の直観としては十分役に立ってきたと思っています。

○江田五月君 ところが、それはやっぱりその直観、ちょっと改めていただかなきゃいけない。

 昨日、私、いろいろ聞きまして、どうも法務省人権擁護行政は同じ法務省の矯正施設行政に対してはほとんど何もしてこなかったんじゃないかと、むしろ。そういう感じを非常に強くしました。

 まず、矯正局長、法務省の矯正局はこれまで同じ法務省の人権擁護局から矯正施設行政について何か勧告を受けたとか意見を述べられたとか、言葉は何でもいいです、ちょっと、耳打ちじゃまずいかな、アドバイスを受けたとか、協議の中でいろんなことが言われたとか、そういうことがありますか、ありませんか。

○政府参考人(中井憲治君) 突然のお尋ねなので全部網羅できるかどうか自信はございませんが、例えば刑務所が行っております信書の検閲問題がございますけれども、これが行き過ぎじゃないかということが疑われた事案があったように思います。これにつきましては、人権擁護局から私どもに対して、その信書検閲方法ということの是正策というのを要望があったという具合に記憶しています。これ以外にもあろうかと思いますけれども、ちょっと現時点で覚えておりません。

○江田五月君 今、人権擁護局長と矯正局長、すぐいす一つ隔てて座っておられますから、ぱっと書面が、答弁というので人権擁護局長から矯正局長に書面が渡りましたけれども、実際にはもう縦の流れの中で厚い壁があって、そこで今ぱっぱっと書面を相互にお渡ししているような、そういう調子になっていないんですよ。

 人権擁護局長、今まで矯正局に対して人権擁護の観点から勧告とか意見とか、何でもいいです、勧告はありません、意見はありませんが、ちょっとアドバイスはありますなどという逃げを打たないで、そういうことを何かやった経験がおありですか、どうですか、人権擁護局長。

○政府参考人(吉戒修一君) この問題は、先ほど委員がおっしゃいましたように、法務省内部部局同士の話でございますから、いろんなやり方があろうかと思います。

 過去におきまして、今、矯正局長から御紹介いたしましたように、信書の検閲につきましてその是正を人権擁護局長の方から矯正局長に申入れをして、その措置が矯正局長から管下の刑務施設に対しまして指示がされたというような事例が一つございます。

 それから、刑務所職員の個別的な人権侵害事件につきましては、これはその調査を処理いたしますのは言わば法務局、中央法務局でございますけれども、その中央法務局あるいは法務局で受理した事件につきまして、人権侵犯の事実があるというふうに認定した場合には、当該法務局長から加害刑務職員に対しまして勧告をし、更にその監督者の刑務所長に対しても意見を述べたということもございます。

 そういうふうなことで、人権局としては、矯正行政につきましてもその事件の都度、適切な対応をしてきたというふうに考えております。

○江田五月君 探せば多少はあるかもしれませんが。

 じゃ、聞きましょう。人権擁護局長、昨日、説明資料をいただきました。その中に、昭和五十九年八月三十一日付けの人権侵犯事件調査処理規程、こういうものがあります。それに沿って聞きたいと思いますが、まず人権侵犯事件の受理、平成十一年、十二年、十三年、十四年の現在まで、刑務所職員による侵犯、この受理件数はそれぞれ何件ですか。そして、そのうち名古屋刑務所については何件ありますか。

○政府参考人(吉戒修一君) 法務省の人権擁護機関といたしましては、刑務所における人権侵犯事件につきまして、まず受刑者本人からの申告というものが端緒となることが大半でございますけれども、それ以外にも事件の関係者からの人権の相談あるいは通報、あるいは新聞、雑誌等からの情報の認知というものが端緒になります。

 今、お尋ねの件数でございますが、平成十一年から十三年までということで、平成十一年でございますけれども、これは刑務職員による人権侵犯事件でございますが、申告が十八件、情報が一件、委員の通報、委員の通報と申しますのは人権擁護委員でございますが、通報四件、あと移送というのが一件ございます。それから、平成十二年は、申告三十九件、情報一件、委員の通報四件、平成十三年は申告三十三件、委員の通報一件でございます。

 名古屋刑務所に関して申し上げますと、名古屋刑務所における人権侵犯事件の受理件数といたしましては平成十一年に一件ございました。それから、これは本年、平成十四年でございますが、本年現在、今日現在で、いわゆる九月受傷事案も含めて三件ございます。よろしゅうございますか。

○江田五月君 さてさて、そのくらいの件数で本当にいいのかどうかなんですね。

 今、名古屋刑務所のケースはやっと統計の中での数をお話しくださいましたが、昨日の説明では、地方法務局ごとの統計であるから個別の施設の件数は分からないというようなことで、分からないといったって、それは元を見たら分かるのじゃないかといってやっと今、数が出てきたんだろうと思いますが。

 そんなことを話をしておったら、名古屋刑務所についてどういう事件が受理されたかというのは、存否応答拒否情報だなんということもちょろっと出てきたりして、いや、それはちょっと、あるかないかを答えられない情報だというようなことを言っていいんだろうかと。人権擁護局が受理していることが統計上出てきている事件で、いや、それは存否応答なんて、多分間違って言われたんだと思いますが、その辺の感覚の狂いというものを正していただかなきゃならぬと。

 名古屋刑務所の事件について、被害者、加害者がかかわる人権侵犯事実を人権擁護局が初めて知ったのは、これはいつだと。昨日の説明では、今年の十一月八日、つまり今回の被疑者たる刑務官が名古屋地検に逮捕されて、逮捕されて知ったという、逮捕されたことが報道されてでしょうか、初めて知ったと、こういう話だったんですが、そうなんですか。

○政府参考人(吉戒修一君) 名古屋刑務所の九月受傷事案のことだと思いますけれども、これは十月の四日の日にこの受刑者の関係者の方から名古屋法務局の人権擁護部に人権の相談がございまして、名古屋法務局の方では、これは非常に重大な人権侵害のおそれがあるということで、人権侵犯事件として受理するということで、これは、十月の四日はたしか金曜日だと思いますけれども、その翌週には人権局の方に報告をいたしましたので、私の方で受理しております。

○江田五月君 それじゃ、ちょっと早かったですね。

 名古屋刑務所の革手錠使用回数が非常に増えていると。これもどうも知らなかったとかいうことで、まあ昨日から今日にかけて一生懸命調べたら、ああ、このとき知っていたというのが分かった、それはそれでいいですが、これらのことを見ると、やっぱりきっちり役目を果たしていると言えないんじゃないか。名古屋刑務所について、平成十二年と十三年に、これは今回の事件というんじゃないんですけれども、名古屋弁護士会から名古屋刑務所長あてに勧告書が四件出されたと。名古屋弁護士会から名古屋刑務所長あてに勧告書が四件。これは、人権擁護局はそういうことは知っていましたか。

○政府参考人(吉戒修一君) 名古屋刑務所に関します人権侵犯事件は、先ほど申し上げましたように、平成十一年の一件と本年の三件でございまして、今、委員がおっしゃいました事件はそれとは該当いたしませんので、ちょっと私の方では承知しておりませんでした。

○江田五月君 そうですよね。つまり、名古屋弁護士会から名古屋刑務所長あて、これ、矯正局の中の一施設ですよね。そこに来ていても人権擁護局がそれを知るという仕組みはないんですよね。それが問題じゃないかと言いたいんですが。

 受理とおっしゃいますが、受理の端緒は申告、情報、委員通報、関係官署の通報の四種類だそうですが、どうも受理というのも何かこうぴんとこない話で、どこかから言ってこられて初めて人権擁護行政が動き出すというんだけれども、自分の方から何もやらないということですよね、受理ということでこの活動が始まるというのは。情報収集が弱い。例えば、弁護士会に協力を求めるなど、人権侵害のことがあったらとにかく私のところへまず来てください、いろいろやりたいですからと、そういう体制はなぜ取らないんですか。どうなんですか。

○政府参考人(吉戒修一君) 基本的に、事件の受理は、人権侵犯事件というものはやはり被害者の救済を旨としておりますので、まず御本人の申告というものを第一義に考えておりますが、ただ、それだけでは事件に対して少のうございますので、委員の通報でありますとか、あるいは新聞、雑誌等からの情報認知ということもございます。

 今おっしゃいました弁護士会との連携でございますが、これも適宜の機会に弁護士会と人権擁護機関の方で意見の交換はさしていただいておりまして、その際に委員おっしゃるような個別の事件までの情報の交換がなされているかどうかはちょっと私も承知しておりませんけれども、公権力の人権侵害事件についてはその際に意見を交換さしていただいておるということでございます。

○江田五月君 人権侵犯事件調査処理規程の処理の態様としては、告発、勧告、排除措置、説示、援助、通告、処置猶予などがあるということですが、人権侵害があれば、その者を指導監督、あるいはその者に対して、いや、その者にいろんな説示を行うとか、あるいはその者を指導監督する者に対して反省を促し、改善等のための必要な助言を行うもの、それからその者を指導、ちょっとややこしいですね。

 いずれにしたって、人権侵害を行った者があれば、それを指導する者に対していろんな措置を取るというようなことが入っているわけですが、この人権侵害を起こした者を指導監督する者というものとして、これ、人権擁護局長、法務省の矯正局長は入るんですか、入らないんですか。

○政府参考人(吉戒修一君) 矯正施設における人権侵犯事件がありました場合には、加害刑務職員の直接の監督者は矯正施設の長でございますから、その者に対しまして調査いたしました法務局の方で意見の提出をする、あるいは要請をするということはございますけれども、矯正局長まで何か具体的な監督責任があるかどうかというのは、なかなか事例としては想定し難いのではないかなというふうに考えております。

○江田五月君 人権擁護局で今の刑務所行政全体を見ていて、どうも先ほどの戒具の使用とか、全体にもう少しこれはちゃんとしたルールを決めてやらなきゃいけないというようなことが分かったときに、これは個別の刑務所長でなきゃいけないんですか。矯正局長になぜそういうことが言えないんですか。

○政府参考人(吉戒修一君) 先ほど、人権局長の方から矯正局長に対しまして、信書の開披の問題でしょうか、それにつきまして意見を述べたという過去の例を御紹介いたしましたけれども、今般の名古屋刑務所の九月受傷事案につきましては、私どもで今現に調査をいたしておりますが、その結果といたしまして戒具あるいは保護房等の使用方法につきまして適切な使用が望ましいというような意見をまとめました場合には、関係の矯正施設の長に対しまして意見を申し上げるのはそのとおりでございますけれども、矯正局に対してもそういうこともひとつ考えてみたいというふうに思っております。

○江田五月君 今、本当に日本の刑務所行政、矯正行政が適切に行われているかどうかというのは大問題になっていると思いますよ。かつて、例えば警察のやり方がおかしいじゃないかと、いろんなところで、神奈川県警であるとか新潟県警でいろいろ起きましたよね。そのときに警察庁は私はかなり一生懸命に内部の監査をやったと思いますよ。今、法務省、刑務所行政についてこれだけ事が起きているのにどうするのか。

 ノーベル平和賞を受賞した国際的な人権団体であるアムネスティ・インターナショナル、ロンドンに本部がありますが、ここが、今回の名古屋刑務所事件を契機に、十一月の二十日に、「ジャパン:プリズン・アビュースイズ・マスト・ストップ」という文書を出しました。「日本:刑務所での虐待を中止せよ」という声明ですが、まだ法務省に届いていなかったようで、昨日、私からその紙をお渡しをしておきましたが、既に法務大臣のお手元に行っていると思いますが、これによると、アムネスティ・インターナショナルは、名古屋刑務所における刑務官による暴行や虐待について、完全で公開され、かつ独立した調査を行うように訴えておると。また、日本政府に対して、刑務所を査察をして、被拘禁者の処遇や一般的な拘禁状況を監視するために独立した機関の設置を求めたと、こう書いてあるんで、これは、アムネスティによれば、日本の矯正施設は過剰拘禁の状態だと。秘密主義で、囚人に対する虐待が広範に行われておると。また、内部規則の透明性がなく、施設の長は施設内の規則の決定について広範な裁量権を与えられており、しかもこれらは公開されていないなどなど、いろんな指摘がございます。

 その中に当たっているものも、あるいは当たっていないものもあるかもしれませんが、いずれにしても総点検が今必要なんじゃないかと。そういうことをきっちりやらずに、そしてその是正をちゃんとやらずに法務省に人権委員会を作らせろと、いや、三条委員会だからと、それはなかなか国際社会通らないと思いますが。

 どうでしょう、法務大臣、この今の刑務所の問題について何か一つ、アドホックなものになるかと思いますが、ちゃんとしたものを作って、ひとつ全刑務所の査察をきっちりやって、そしてどうやって改善をするかということに本格的な取組をされたらどうかと思いますが、最後に法務大臣の決意を伺います。

○国務大臣(森山眞弓君) 先ほどから申し上げておりますように、この具体的な事件につきましては、検察庁あるいは矯正局あるいは人権擁護局等で今鋭意調査をしているところでございますが、それらの徹底的な捜査とか調査の結果の報告を受けました上で、関係者を厳正に処分するほか、改めるべき点は改め、将来の再発防止に向けた抜本的対策を立てなければならないと考えております。

 現在のところ、外部の医師などを構成員とする独立した調査機関を別途、新たに設置いたしまして、この機関において調査をするというようなことを予定はいたしておりませんけれども、近く検察の捜査結果や人権局や矯正局による調査の結果の報告を受けますので、それの上で必要があれば検討したいというふうに考えております。

○江田五月君 終わります。


2002/12/10

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