2002/03/28

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154 参院・法務委員会 裁判所職員定員法改正案の質疑

10時から、法務委員会で裁判所職員定員法改正案の質疑。私が冒頭40分間、(1)定数改善の詳細、(2)司法制度改革に関し、リアルタイム公開と裁判員制度について、(3)刑務所、少年院、入国管理局の収容状況について、(4)少年法改正後の家庭裁判所の実務について、(5)弾劾判決についてを質しました。裁判員制度については、先日の模擬裁判の経験を紹介し、心証形成のプロセスについて実証的にデータを集めて制度設計をすることを提案。拘禁施設については、美保学園やアフガン難民申請者のケースを引いて、事件が起きることは、システムがうまく動いていないことについての警鐘なのだから、対症療法に留まらない検討が必要と強調しました。


○江田五月君 おはようございます。

 裁判所職員定員法の一部改正案について質問いたします。

 まず、この法案自体ですが、これは、判事の員数三十人、判事補の員数十五人増加、それと裁判官以外の裁判所の職員の員数七人増加と、こういうものですが、判事の員数三十人、これはどういう増加になるんですか。

 民事通常事件の処理及び執行関係ということは書いてありますが、私が聞きたいのは、大体通常ある年に判事を採用すると、年齢はいろいろありますが、そこまで細かく考えたら切りがないので、その年に通常のペースで司法試験合格、研修を終わって、判事補を十年やって判事になった人たち、その人たちがずっとある年限たって、一年間のうちに皆六十五歳になって辞めていくとしましょう。その分を今度、四月一日なら一日、多少時間ずれ込むのか、補充をすれば、判事の人員はそれで埋まるわけですよね。

 ところが、四十年ほど前に採用になった人たちと、その後判事がだんだんと増えていって、今まで増えてきている部分がある。そうすると、この一年間で定年になって辞める人たちを補充するというだけでは足りない部分が出てくるというようなことがあって、その辺の差引きの計算は一体どういうふうになっているのか。三十ということの根拠、これを御説明ください。これはだれか、最高裁。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) お答え申し上げます。

 今、委員の方から御説明がございましたように、判事補、十年たちますと判事になるわけでございますが、これまで裁判所の方は判事補の増員にずっと努めてまいりました。その結果、その判事補の増員の効果が、ようやく十年たちまして判事になってきたというところで、判事の増員をまず基本的にお願いすることにしたわけでございますが、他方で、昨年の十二月七日に日弁連と最高裁判所の間で裁判官の多元化、多様化という観点から、弁護士任官を更に推し進めようということもございました。そういうことも踏まえまして、弁護士からの裁判官任官ということも見込み、それを大いに期待して、こういった三十人という数にしているわけでございます。

 もとより、その背景には、いまだに高原状態にあります民事訴訟事件とか、あるいは倒産事件は平成十三年に最高を記録する、執行事件はやはりいまだに高原状態が続いていると、こういうような状況がございますので、それらを適切に処理するためにも、そういった観点からの計算もしたものでございます。

○江田五月君 今の二種類、判事補増員に努めてきてその成果が上がってきたというもの、それから弁護士任官をこれから取り組んでいこうというもの、これは三十人のうち、前者は幾ら、後者は幾ら、ぴたりとはいかないでしょうけれども、おおむね何か数の目安というものはありますか。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) なかなか実はその辺、微妙なところがございまして、十二月七日にそうやって日弁連との間でできましたけれども、果たしてどのくらい来ていただけるか、大いに期待しておりますけれども、半分不安もございます。

 私どもとしては、十人は是非ともおなりいただきたいと思っておりますが、まだ現下の状況は厳しいところでございますので、その辺り御理解いただければと思います。

○江田五月君 十人は是非達成したいと、希望、努力目標。ということは、あと、判事補の増員の成果というので今度判事が増えるというのは二十あると、これでいいんですか。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 計算上はそういうことになろうかと思います。

○江田五月君 もちろん計算上、定年になる判事だっていろんな年齢の方が、年齢というのは、どういうんですか、判事に最初に任官したときの年齢、いろんな方がおられるから、今の図式どおりにはいかないのはよく分かっています。
 職員の方、これは七名の増加ということですが、内訳はどういうことになるんですか。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 内訳でございますけれども、裁判所書記官をまず二百四十五人増員いたしました。それから、家裁調査官を五人増員の、増員はまず合計二百五十人ということになりますが、他方で、地方裁判所におきましては、逐語録の作成事務につきまして、平成九年以降、録音反訳方式というものを導入してきております。その結果、裁判所速記官五十人、これはほとんどが定年退官された方ということになるわけですが、その裁判所速記官五十人。さらに、事務の簡素化、合理化、これは行政部門でありますけれども、それに取り組むことによって裁判所事務官百五十人をそれぞれ減員するということにいたしました。さらに、政府の新たな府省の編成以降の定員削減計画の協力分や、内部努力による減員、これは現業の行(二)職種でございます、外部委託になじむというところでございますが、それらの職種を四十三人。合計二百四十三人を減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所職員は七人増員ということになるわけでございます。

○江田五月君 書記官二百四十五人、調査官五人、これは、調査官は違うでしょうが、書記官の方は、今の減員の人間はもう裁判所からはほうり出して、新たに書記官二百四十五人を入れるということなのか、それともそうじゃなくて、これまで裁判所の中にいた人たち、これを転官、書記官に転官させて二百四十五ということにするのか、その辺りのことはどうですか。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 書記官になるといいましても、裁判所の事務官を経験した者でなければその試験を受けられないということになっておりますので、形の上では、裁判所の中にいる事務官が新たに書記官に試験に入って、書記官研修所等で研修を積む、そして書記官になってくると、こういう形になるわけでございまして、今現在は既に書記官研修所で今卒業を待っている状況だということで御認識いただいてよろしいかと思います。その分、その分事務官が結局減りますので、その分を新人から採用する、こういう構図でございます。

○江田五月君 書記官二百四十五増員、これは書記官ももちろん辞めていく方もおられるでしょうから、書記官全体としては純増どのくらいになるんですか。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) これは二百四十五人純増ということになるわけでございます。定年退官をした書記官の後は、当然それはまた埋めるということになるわけでございます。

○江田五月君 ということは、純増二百四十五ということは、今養成中で新たに書記官になる人間はそれをはるかに上回る人間がいるということになるわけですね。それはどのくらいになるんですか。大体でいいです。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 申し訳ありません、今ちょっと数字を持ち合わせておりませんけれども、三百を超える数だということを今聞いております。

○江田五月君 次の話題に移ります。

 司法制度改革推進本部の関係のことについて伺いますが、しつこいようですがリアルタイム公開についていま一度、当委員会でリアルタイム公開という、あるいは聞き慣れない言葉かもしれませんが、附帯決議を付けさせていただきました。

 司法制度改革審議会の答申、意見書、これがなかなか画期的なことになっているというのも、司法制度改革審議会の審議がリアルタイム公開、つまり衆人注目の中で行われて、しかもその会議録も全部だれがどういう意見を言ったかということがはっきりするような、そういうこの中で進んできている。したがって、物を言う人も自分で責任を持って物を言うし、国民が見て国民との間のキャッチボールで事が進んでいくから画期的な意見になったという理解をしておりますし、これは大臣、そして関係の皆さんも皆同じ理解をされていることと思います。あえて確認はしなくてもいいですよね、大臣うなずかれましたからいいと思います。

 さて、最近、これも面白いのが、四月二日に最終の報告が出てくると予定をされているBSE問題に関する調査検討委員会の検討がありまして、その報告要旨というものが三月の二十二日に出されました。これはまだ案でございますが。

 これを見ておりましたら、その十九ページのところに、面白いんですね、「(5)専門家の意見を適切に反映しない行政」、農水行政がそうだという。今日は法務委員会ですからこれについては聞きませんが、そこに、「日本の審議会や検討会は、行政から諮問、提示されたテーマを議論し、官僚が書く文案に沿って答申、報告、意見具申するケースがほとんどである。一流の科学者、各界の第一人者を揃えても、卓越した見識が生かされず、行政が政策立案の客観性を装う隠れ蓑に使っているという批判が強かった。」などなどと、こういうことが書いてあるので、これはなかなか政府のこういう委員会としては誠に画期的なことだと思うんですね。それは事実だと思います。

 なぜこういうことが書かれるに至ったかというと、これがやっぱり面白いので、このBSE問題の調査検討委員会がリアルタイム公開で行われてきたということがあるらしいです。らしいといいますか、そうなんです。しかも、これは毎回五十人の傍聴者の注視の中で開いておると。その五十人はマスコミの関係だけかと思ったら、そうじゃなくて、一般人の公募を含んで五十人を選んでやっているというんですね。

 この辺りのところを是非参考にしながら、司法制度改革推進本部の顧問会議とかあるいは検討会とか、こういう会議も極力リアルタイム公開、これはもう堅持をする、こういう姿勢で貫かれたらいかがかと思います。

 検討会の方もリアルタイム公開になっているけれども、どうも会場が狭くて余り人に入っていただけなくて、公募なんというのも今やっていないんでしょうかね、マスコミの皆さんにだけなのかということを聞いておるんですが、しかも検討会の方は会議録、これ発言者の名前を記さない、そういう検討会も半分ほどあるというように聞いていますが、そうじゃなくて、ひとつもう本気でリアルタイム公開には取り組むんだと、これを、法務大臣は内閣の、この点、司法制度改革についての責任者ということになっていて、しかも司法制度改革推進本部の副本部長ですので、法務大臣からその点についてのお答えをいただきます。

○国務大臣(森山眞弓君) 司法制度改革を進めるに当たりまして、広く国民に情報を公開して検討過程の透明性を確保するということは、先生おっしゃるとおりでございまして大変重要でございます。

 ですから、司法制度改革推進本部の顧問会議や本部の事務局で開催している検討会では報道機関に会議を直接傍聴していただいておりますほか、その議事録や議事概要をインターネットで一般に公開するということで、できるだけ検討過程の透明性の確保に努力をいたしているところでございまして、そのことは先生も御承知のとおりでございますが、今後とも更にこの点には特に留意いたしまして力を入れていきたいというふうに思っております。

○江田五月君 今後とも留意して力を入れていきたいという御発言の中身に期待をいたします。これ以上は今日は詰めません。

 次に、裁判員制度を、これをどういうふうに検討していかれるかということですが、まだ恐らく検討会スタートしたところでは、まだどこまでどうするというのはこれからだと思いますが、先日、私、面白い経験をしまして、裁判員制度で裁判をやる模擬裁判というのがあったんです。

 これは日本裁判官ネットワークという皆さんが主催をして、配役は、大体皆現職裁判官がやられるわけですが、もちろん法服着てやるわけじゃない、一般の観客がいて、現職裁判官が現職裁判官の役を担って三名、あと男性三名、女性三名。これは会場に来ている人から抽せんで引いて、これに裁判員になっていただいて、全部でしたがって裁判体は三プラス六という構成になったんですね。

 で、事件は強盗致傷で、被告人が当初捜査段階は自白をしていたんですが、公判になって否認をするということで、なかなか現場の物証というものが非常に乏しい事件なんですが、私は面白そうだから行ってもいいかと言ったら、来るなら何か役割を担えというんで検察官役をやりまして、起訴状朗読、冒陳、それから若干の補充尋問、余談ですが、主任弁護人役は中坊公平さんがやられて、私も中坊さんも途中までしかいられなかったんですけれども、後で結果を聞くと、私、検察官役をやって、ずっと考えてみて、これは検察官としては有罪を確信できるなと思ってやったんですが、結論は何か七対二で無罪になっちゃったというんで、模擬裁判でも負けると悔しいなと思ったんですけれども。

 いや、言いたいのは、そういうのをやってみて、やはり裁判官の方は、私は事実認定、裁判官はプロだから間違いないなどとは思いません、思いませんけれども、やっぱり事実認定のときのどういう論理でどういう証拠の判断でやったらいいかということは、それは分かっている。しかし、一般の皆さんになっていただくと、これは論理的事実認定の手法というようなことは恐らくそんなになじんでいない、あるいは証拠法、これは全くなじんでいない。

 そうすると、事実認定というのは黙って座ればぴたりと当たるというものじゃないので、やっぱりそこに、こういう考えでやってくださいね、こういう論理で考えてくださいねとか、証拠についてはこういうことですよという、そういうものが要る。そういうときの、証拠法則なんかはいいですが、それ以外に事実の認定がどういうふうにしてなされていくかという事実認定、心証形成の科学的研究なんというのは、あるかもしれないけれども、私は寡聞にして余り聞いたことがないので。

 そうすると、裁判員制度を導入しようとすると、一般の人が心証を形成するときにどういうプロセスがあるのか。やっぱり一般にどうも声が強い、大きい人の方が心証形成に影響が高いということがあれば、これはその辺はちょっと割引しなきゃいけませんよというようなことも考えていただかなきゃならぬし。

 そんなことを、司法制度改革推進本部としても、あるいは検討会としても、御自分で模擬裁判をやってみるとか、あるいは大学や何かでそういうことを一杯やって、心証形成過程を一杯データを取って、そしてそのデータに基づいて裁判員制度の制度設計をしていくとか、こういうことが必要ではないかと思いますが、そういう、これは提案ですが、どうお考えになりますか。細かなことについて、じゃ、事務局長。

○政府参考人(山崎潮君) ただいま御指摘の点、確かに頭でっかちに物を考えるのではなくて、実際に即して制度設計をしていくということが大変重要だと私も理解はしております。ただいま御指摘のような方法、科学的な方法、それがうまくいくのかどうかちょっと私も今のところそこまで頭は至っていないんですけれども、御指摘のような点も含めながら、どうすれば実証的な裏付けが得られるかということは今後の検討会の中で努力をしてみたいと思います。

 例えば、諸外国には裁判員の制度もございますので、そういうところでどういうような問題が起こっているか、どういうような運用をしているかとか、それも一つのヒントになるだろうと思っておりますし、それを日本に投影したときにどうなるかという問題もよく検討はしたいというふうに思っております。

○江田五月君 例えば、今の私が経験した模擬裁判員裁判では、刑訴法の三百二十一条以下のいろんな調書についての規定を裁判員の皆さんにすぐのみ込んで活用していただくというのはちょっと無理じゃないかというので、調書は一切使わないというやり方でやってみたんです。それで、例えば捜査段階の自白については、これは捜査官を証人で呼んでその証言の中で法廷に顕出をしてもらうというような方法でやったんですが、調書をどう扱うかというようなことは、これはもう何かお考えは既にあるんですか。

○政府参考人(山崎潮君) 現在、まだ本当に検討会第一回を開いた程度でございまして、そこの御指摘の三百二十一条ですか、この辺についてどうするこうするという話はまだそこまで至ってはおりません。そういうことで、もう少し検討が進んでからということで御勘弁をいただきたいと思います。

○江田五月君 例えば陪審ですと、裁判官が証拠のいろんな法則などについて説示をして、それを受けて陪審員が評議をするわけですが、裁判員制度ですと、込み、職業裁判官も裁判員も一緒に評議をする。そうなると、裁判官、職業裁判官がどういう解説をしているかなんというのは外から見えないことになりますね。それではその評議の中で裁判官、職業裁判官が職業裁判官ならではの役割をちゃんと果たしていくかどうかということが分からない。その辺りをどうするかということ、これも検討を十分しなきゃいけないと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(山崎潮君) まだ検討は進んでおりませんが、いずれにしましても、一般の方に入っていただくわけでございますので、裁判所の方からいろいろな説示はしなければならないということになると思います。そのときに、どういう客観的な基準が見いだせるかという御質問だろうと思いますので、その辺のところ、まだ検討進んでおりませんが、十分頭に入れながら分析をしていきたいというふうに思っております。

○江田五月君 頭に入れるときに是非お願いをしたいのは、頭でっかちで頭に入れるんじゃなくて、実際のデータ、いろんなことをやってみて、その中で、普通の人が心証を形成していくプロセスというのは、なるほど、こういうところで、こんなところが重要だなというようなことが出てくると思うんですよね。頭の中だけで考えていたんじゃなかなかそういうことは浮かんでこないので、是非汗をかいてやっていただきたいということをお願いをします。

 裁判員制度というのは私は重要な制度だと思っていまして、これを後退させちゃいけません。職業裁判官の裁判にちょっと何か味付けをしてあるだけということでなくて、本当に裁判員制度というものを導入するときに、司法制度改革審議会が考えたその言葉で言えば陪審制度や何かの根底にある一つの思想ですかね、そんなものをどういうふうに裁判員制度の中で上手に生かしていくかということを是非考えてほしいと要望しておきます。

 司法制度改革推進本部副本部長さん、何か御意見ございましたら。

○国務大臣(森山眞弓君) 裁判員制度というのは非常に今までの刑事訴訟の在り方を大きく変えるものでございますし、いろいろと新しい課題がたくさんあると思いますので、今御指摘のような点も十分心に留めまして、しっかりと分析もし、研究もして、日本の国民の皆さんに本当に意味のある参加をしていただけるように、そういうふうに考えていきたいと思います。

 残念ながらまだ始まったばかりで具体的なことは申し上げられませんけれども。ありがとうございました。

○江田五月君 今私が問題提起したことはお分かりいただけると思いますので、よろしくひとつお願いします。

 次に、前回、角田委員から御質問ありましたが、美保少年院のその後の経緯について御報告ください、簡単に。

○政府参考人(鶴田六郎君) このたび、鳥取の美保学園におきまして、昨年の八月ころから本年一月までの間に職員が二十数名の被収容少年に対して暴行を働く事案があるということで、大変遺憾な事態が発覚したわけであります。

 この件については、この前も委員会でも御報告いたしましたように、今年の一月に発覚して以来、広島矯正管区を通じて事実調査をいたしまして、その調査結果に基づきまして鳥取地方検察庁に通報いたしまして、現在、刑事事件としては鳥取地方検察庁で捜査が実施されているところであります。

 ただ、当局といたしましても、管区を通じて事実関係に対する調査を行い、もうほぼ終了しておりますので、この事案に係る行政処分につきましては、直接の、直接関係した職員はもとよりですが、幹部職員の監督責任に対する処分も含めまして間もなく実施できるという状況でございます。

○江田五月君 間もなくというのは、いつですか。

○政府参考人(鶴田六郎君) 今月中にはということで御理解いただきたいと思います。

○江田五月君 今月中ですね。

 これは、事件は、職員九名が鳥取地方検察庁で特別公務員暴行陵虐罪で認知、立件して捜査をしておるというふうに聞いておりますが、その中には、どうも前にも同じようなことをやった人がおるというような、これはまあちょっと仄聞するだけですけれども、なかなか大変な出来事です。

 前回、私も聞きましたが、これはしかしそうしたことをやった職員、これはもちろん責めなきゃなりません。責めなきゃなりませんが、私どものところにも、少年院の関係者から、関係者というのは少年院で実際に働いている法務教官から、もう大変なんだと、本当に大変なんだと。つまり、人は少ない、人というのは職員の方の人数は少ない。抱えている少年は多い。しかもその少年は、それは少年といったって、もちろんなかなかのものですよね。そう簡単に、優しく優しく、教育教育といったって簡単にはいかない。やっぱり、何はともあれ、院の中の秩序をちゃんと維持していく保安、こういうものをやらなきゃならぬ。それに加えて、更に教育教化、これもしなきゃいかぬ。ところが、なかなか実際には教育なんかに回らないようなそんな実態があって、しかもその中で、職員がどう努力してみても、もう自分の精神状態を平安に維持することだけでも精一杯だというような声が聞こえてくるんですね。

 それを聞きながら我々何もやっていないというのは、やっぱりこれは、彼らを責めることも大切だが、こちらもやっぱり何かしなきゃいけなかった、これから何かしようという、そういう強い思いを持たなきゃならぬと思います。

 前回、この点は矯正局長お帰りになった後で私申し上げましたので、ひとつ覚悟のほどを矯正局長から。

○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 今回の美保事件の背景には、委員御指摘のとおり、最近、少年院においても収容者が増えておりますし、特にこの美保学園におきましては、小さな少年院であるだけに、収容者が増えた場合、非常に過剰収容の状態になり、いろいろ職員も施設管理及び少年の矯正教育の実施に大変難しい場面に遭遇しているなというのが、今回の事件の背景にもあるのではないかという感じもしております。

 したがいまして、今後の再発防止策と、ただ単に美保学園だけではなく、こういった少年院において、過剰、高率収容下における処遇の在り方等につきましては、部内の例えば管区長協議会等でいろいろ議論して、処遇の在り方も含めて十分検討し、適切を期していきたいと考えております。

○江田五月君 処遇の在り方だけでなくて、処遇体制全体、もっと本当に、大変な時代ではあるけれども、こういう辺りは人員をもっと本気で増やすということを考えなきゃならぬ、これは法務大臣、本当だと思いますよ。

 内閣の例の定員の関係のいろんな縛りがあるけれども、そうはいったって、ここはもう、だってこのシステム全体が悲鳴を上げて、そこから言わば我々のところへ警告を発している、警告が発せられている、それがこういう事件なんです。事件というのは何か教えているわけです、我々に。そういう気持ちで、ひとつ内閣の中でも、これは法務行政の責任者として、こんな体制でやられたんじゃ世の中、法と秩序はむちゃくちゃになっちゃうという、そのくらいのことを大臣、堂々とひとつ御発言いただいて、取り組んでいただきたいと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおりでございまして、私も折あるごとにそのような発言をさせていただいております。もちろんいろいろな制約がありまして、こちらの思うとおりにはなかなかいきませんけれども、しかし、非常に深刻な状況にあって、何とかしなければいけないということは多くの方が認識し始めていただいていると。総理以下、財務大臣も総務大臣も大変御理解いただいておりますが、それを具体的な数字として結び付けていきますように今後とも努力したいと思っております。

○江田五月君 この収容施設の関係をもっと詳しく聞きたかったんですが、ちょっと時間がなくなってきました。

 事件が我々に何かを教えている、事件が我々に何かを警告している。これは難民のことでもやっぱり言えるんだろう。

 アフガン難民が、いろいろ事件が起きていますね。三月十一日、五人が百円玉、十円玉でしたか、飲んだ。まあ、飲んだのはそれですぐ何日か、すぐというか、出ちゃうので大ごとというわけではありませんが、一人は食器洗浄用の洗剤を飲んだと。なぜだということは、いろいろあって、今日はその説明を聞くところまで時間のゆとりありませんが、こういうことが次々と起きてくるという、これもやっぱり何かを教えているんだと。

 世界じゅうを見ますと、途上国、特に途上国でしょうかね、それはもう中がむちゃくちゃで、アフガンというのは特にそうですよね、今、国に帰って、何か特別、物すごい政治犯とかでなくても生命も保障できないというような、そういう地域がある。そういうところから夢を求め、理想を求め、自由を求めて日本に来る。そういう人たちに対して、同じこの地球上に、同じこの二十一世紀の初頭の段階で、同じように人間として生をうけた人たちが日本にまで来て、この皆さんに対して、難民認定法の要件に当たらないから、はい、さよならという、それだけじゃなくて、例えば例のベトナムのボートピープルのときのように、何かやっぱり政治的に温かい手だてを差し伸べるということが必要なんじゃないか。

 これもやはりあの人たちが我々に教えている何かだと思いますが、法務大臣、いかがですか。

○国務大臣(森山眞弓君) 当然、条約の難民に該当する方は難民として認定をしておりますし、また条約難民として認定する条件がない方でも、出身国あるいは自分の今まで住んでいたところが非常に不穏なあるいは不安定な状況である、帰りたくても帰ることが実際上不可能であるというような場合には特別に滞在することを許しておりますし、現にそういう人たちが最近は少しずつ増えております。

 これからもそのような配慮はしていきたいと思いますが、昔、以前にインドシナ難民が大量に出ましたときに、特別に政府として決定いたしまして、特別受入れをしたという経験もございます。そのときの関係で、入国を認め、日本に受け入れたという人々が今一万人以上いらっしゃいまして、そういうことも経験しておりますので、事態によって、そのような状況であるということになれば、そういう可能性も全くないとは言えないというふうに思っております。

○江田五月君 こういう個別の出来事、事件から何を我々が教わるかということは、ある種のこれは感性、感受性の問題でしてね、その点ではもう森山大臣を信用して、信頼していますので、是非そこは本当に思いを持って行政をやっていただきたいと思います。

 最高裁に伺いますが、少年法が改正されました。で、いろんなことが変わっておりまして、あの改正の中に我々も危惧するものもありますが、しかしプラスのものもある。

 家庭環境、保護者への働き掛け、これはどういうふうに進んでいるか、簡単に御説明ください。

○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 御説明申し上げます。
 今、委員が御指摘のとおり、改正少年法二十五条の二におきまして、保護者に対する指導的措置を取るような規定が設けられたわけでございます。現在、審判の場において、あるいは調査の場において、そういった面での更なる工夫をしているわけでございますが、例えば、調査の場におきましては保護者の面接シートなるものを作りまして、非常に分かりやすいものを使いながら、少年の手続、あるいは問題性についての理解を深めさせる工夫をしているところはあるようでございます。さらに、こういった審判、調停の場を離れまして、別枠といたしまして、親子合宿を行うとかあるいは保護者会を行うと、さらには被害を考える会ということで、少年とその保護者を呼びまして、被害者からお話を伺って、その上で考えを深めていくと、こういった工夫も進められている状況にあるようでございます。
 以上でございます。

○江田五月君 いつかテレビでやっていましたかね、親子合宿。やれ親が来るとか来ないとか、やくざの親と思ったらなかなか涙もろかったとか、いろいろ、そんなような経験をするというのはなかなか家裁でなければできないところだと思います。是非やってください。

 一方で、どうもやすきに流れるというのがあるという話もあって、合議体、裁定合議を導入しました。そうすると、これは三人座るわけで、いすを三人いつも並べて、単独で事件やるときにもそのいす三つはそのまま並べているというようなところがあるというようなこと聞いたんですけれども、いけませんよ、それは。やっぱり単独でしたら、いすが三つあると、少年というのはそれはもうはらはらしながら、冷や冷やしながら来ているわけですからね。細かな対応をそこはお願いをしたい。これは要望だけです。

 もう一つ最高裁。国会が久しぶりに、二十年ぶりに裁判所に物を言いました、裁判所にというよりも裁判官にですが。昨年、裁判官を一人、弾劾の手続で罷免の判決をいたしました。その後、最高裁から何の感想も聞いてないんですが、どういう感想をお持ちですか。そして、こうしたことが出ないようにどういうことをされますか。

○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 村木判事の事件は、現職の判事が犯罪を犯したと、しかも、現に刑事事件を担当し、少年事件を担当した経験もあって、その違法性を熟知していた裁判官が買春行為を行ったと、これは罷免判決の中にございます指摘でございますが、というものでございまして、国民の司法に対する信頼を大きく傷付けた極めて遺憾な事案であったと申し上げざるを得ないわけでございます。私ども、弾劾裁判所の罷免判決を重く受け止めております。

 弾劾裁判所の判決中に述べられておりますが、「裁判は、もっぱら事件を担当する裁判官の責任によって、その独立した判断で行われるものであるから、国民に対し、その判断に服するよう求めるためには、単に裁判官が、その職務の遂行につき、事実認定と法律適用に職業的技量を備えているだけでは足りず、職務の内外を問わず、国民から信頼される人権感覚と識見を備えていることが必要である。」という説示が判決の中にございますが、これは誠にそのとおりであると思います。全裁判官が改めてかみしめるべき言葉であると考えております。

 裁判所といたしましては、この事件を教訓といたしまして、裁判官の職責の自覚、倫理の保持に一層努めまして、事件によって損なわれた国民の裁判官、裁判所に対する信頼を回復すべく最大限の努力をしているところでございます。

○江田五月君 終わります。


2002/03/28

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