2001/11/27-2

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153 参院・法務委員会

13時半から45分間、(1)アフガン難民、(2)刑法につき刑の免除の関係、(3)刑訴法につき照会の関係、(4)歩車分離式信号について質しました。採決は、いずれも全会一致で可決しました。


○江田五月君 私も、ただいまの刑法改正案についてもさらに前回に引き続いて質問をさせていただきますが、その前に緊急の事件が起きていますので、そのことについて伺います。

 例のアフガニスタン人の難民申請の関係です。

 これは、本邦に在留しているアフガニスタン人九人が難民認定の申請をされた。その九人について強制退去手続がとられて収容令書が執行された。その収容令書に対して取り消し訴訟が起こされて、そのうちの四人については収容令書の執行停止が却下されて、即時抗告がなされて、即時抗告が棄却された。残りの五人については収容令書に対する執行停止が認められて、即時抗告中であると、こういうことだったですよね、たしか。そして、きのう、法務省は難民不認定という結論を出して、その告知の段階に入っておるということだと思いますが、それをざっと法務大臣、事実関係をまずお伺いします。

○国務大臣(森山眞弓君) 今、おっしゃいました件につきましては、おっしゃったとおりでございます。

○江田五月君 難民不認定の判断というものについてはどういうことですか。

○国務大臣(森山眞弓君) 九人のうち、まず四人の人につきましては、十一月二十七日に、難民に認定を申請をされてはおりましたけれども、その理由がないということを裁決いたしました。これを受けまして、昨日、東京入国管理局におきまして退去強制令書が発付されて執行されたと承知しております。

○江田五月君 中身については、この申請をしている者の言い分もあろうし、出入国管理を担当している皆さんの方にもいろんな言い分があると思いますが、そこの中身について細かく質問する時間的な余裕がないので簡単にしますが、アフガニスタン及びパキスタンの情勢について、これは難民認定、不認定の際にはもちろん考慮をされたんでしょうが、どういう証拠に基づいてどういう情勢についての事実認定をされたのか。

○国務大臣(森山眞弓君) ただいまちょっと申し上げたことで言い直しをしたいと思いますが、認定、理由がないということで裁決いたしましたのが二十七日です。そして、入国管理局において退去強制令書が発付されたのはきょうでございます。失礼いたしました。

 アフガニスタンの件についてというお話でございますが、アフガニスタンの状況ということもございますけれども、その本人がそれぞれにどのような事情であるかということを一人一人丁寧に聞きまして、その結果、難民として認定する理由がないということになったわけでございまして、そういう状況でございますので、アフガニスタンの情勢がどうかということももちろん全く関係ないわけではございませんが、それよりはそれぞれ本人の状況でございます。

○江田五月君 申請者の代理人がいろいろ証拠を提出したいということを言っていて、そしてそれには若干の時間的な準備も必要だということのようですが、そういう代理人からの証拠提出、これは受理をされましたか。その証拠の検討はされましたか。

○国務大臣(森山眞弓君) お持ちいただいたものは全部受け付けさせていただいて、検討させていただいたと聞いております。

○江田五月君 十分な時間的な余裕もなくてそんなにやいのやいの言われても、そう簡単には準備できないというようにも聞いておるんですが、そのあたりはさらに適切な運営をお願いするとして、まず難民認定申請について、これは手続の代理人選任権、代理人を選任して代理人によっていろんな主張をしたり証拠を出したりすると、このことは認めてよろしいんでしょう。

○政府参考人(中尾巧君) お答え申し上げます。
 難民申請につきましては、基本的には本人申請ということになっておりまして、申請そのものについては代理人の申請というものは法的には認められてはおりません。ただし、その認定に対しての異議の申し出その他の関係につきましては、これは訴訟、代理人として弁護人がその異議の申し出等はできることになっております。

○江田五月君 ここはやっぱり一つ議論でして、法律上、代理人選任権が明定されていないからといって、いろいろな法律行為、行政行為なんかについて資格を持った代理人を選ぶ権利というものは法律で明定されていなければないのかどうか、これはやっぱり重要な議論ですよ。

 私は、やはり近代法の大原則というのは、そういうときに資格のある代理人によって自分の権利、利益は擁護される、自分の言いたいことは言える、そういうことはやはり守られなきゃいけないんじゃないかと思いますが、もし認めていないとしたら、日本語を解さず、あるいは資力のない申請者がみずから本国についての情報を収集したり、提出したり、説明をすることは困難ですよね。自分自身のことについて、やはり特に日本というところへ遠く遠隔の地から、言葉も全く違う、生活実情、社会の実情も全然違う、そういう人の権利が十分保全されるためには、今の認められていないはいないとしても、代理人によるそういう行動というものは十分に保障して扱う実務の扱いにしておられるんではないかと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(中尾巧君) 今、先生がおっしゃったような形で、当該難民の申請をする者が個々にそういう資格のある弁護人等々を選任されて個別に各種資料を収集されることについては別に禁じるものはございませんし、実際のところ、いろんな形で収集されることはあろうかと思います。ただし、そういって収集されたものを当該難民申請を行う者が、それがみずからのものとして私どもの方に提出すべきものか、あるいはそういうことで申請の資料として提出すべきかどうかということは、当該御本人が考えた上で私どもの方に直接提出していただく、そういう形で運用しておるところでございます。

○江田五月君 その扱いについていいかどうかは、これは後ほどまた議論をしたいと思いますが、現在収容されていない五名、これは、難民申請についての決定の告知のために呼び出しをしたら、出頭せずに代理人が出頭したというように聞いておりますが、それはそれでいいですか。

○政府参考人(中尾巧君) 代理人の弁護士さんが十一月二十六日に私どもの方に来られたことは承知しております。

 私どもの方で告知するのは直接本人に告知するということで、五人の方には当日来ていただきたいということで来てもらうことになっておったわけですが、お越しにならなかったわけであります。ですから、再度来ていただくということで出頭を求めて、来ていただければ告知する、難民の認定に関する私どもの方の決定の内容を告知すると、こういう形になろうかと思います。

○江田五月君 私は、そこはやはり一つ重要なところで、代理人が来ているわけですから、だから難民認定手続におけるそういう申請者の行動、代理人をよこして本人が来ない、だからといってこの退去強制の手続でその人たちがそのことを理由に不利益に扱われるというのはおかしいんじゃないかと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(中尾巧君) 当日、十一月の二十一日に本人が私どもの方に出頭しなかった理由については、これから直接どういうことであったかどうかを確認することとしておりますので、現時点でその不出頭理由が何であるか私どもの方ではわからないわけでありますので、それが退去強制手続の中で情状等で影響を及ぼすものと言えるかどうかということは、今の段階で御返答できるものではないと、こういうふうに考えるところでございます。

○江田五月君 だけど、皆さんのお考えは東京地裁の民事第二部の執行停止の決定の考え方とは違って、退去強制手続と難民認定手続とは全く別の手続であるという、同地裁民事第二部の決定の根拠となっている、論拠となっている論理ですよね。今、出頭しているしていないという話は難民認定手続に関することですから、直ちに言えないじゃなくて、退去強制手続についてはそのことは影響ないと、こういうことになるんじゃないですか、皆さんの議論からすると。民事三部の議論だったらちょっと違うかもしれませんが。

○政府参考人(中尾巧君) これは若干誤解があったら申しわけございませんけれども、要は、今収容中だった者が裁判所の執行停止の決定で身柄を解くという、こういうことになったわけの五人についてでございますので、その者が、もちろん難民認定手続と退去強制手続は別に進行しておりますけれども、仮に十一月二十六日に出頭しなかった理由が、どこかに逃げちゃって、あるいは不法にどこかへ出国したり、これは極端な例でございますが、所在が不明になっておるがゆえに難民申請の告知の当日に出頭しなかったということが後々判明したということになりましたら、それ自体は退去強制手続の中でも考慮されることだろうとは思いますし、もちろん難民認定のもう既に手続が一応終了して告知する段階になっておりますので、これは、そのこと自体は難民認定手続とは関係のない話と、こういうことになろうかと思います。

○江田五月君 私は、難民認定手続について、出頭しなかったことが退去強制手続に影響を及ぼすかと聞いたんで、難民認定手続において出頭しなかったその原因となっている事実がこちらに、退去強制手続に影響を及ぼすかどうかを聞いたんじゃないんですよ。頭をクリアにして聞いてください。

○政府参考人(中尾巧君) 委員御指摘のとおりだと思います。私の方で事実をとらえてというふうに認識した上でお答えしたと、こういうことでございます。

○江田五月君 仮に、難民不認定の決定を告知したとしても、退去強制手続の収容令書についての執行停止、この決定に影響があるはずはないんで、したがってこれはすぐに身柄を収容ということにはならない、そのことだけでは。一方で、身柄が収容されている者については難民不認定決定が告知をされていて、そして、きょうですか、退去強制令書の発付ということになったと。しかし、恐らく難民不認定決定に対する取り消し訴訟は起こされるでしょうし、また今、そもそも強制退去手続に対して収容令書の取り消し訴訟が起こされているわけで、これは、だからすぐにもうアフガニスタンに送り返すということになるものではないと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(中尾巧君) 退去強制令書が発付されますと、そのときに決定されました送還先に送還するということになっておりますし、速やかに送還する、仮に速やかに送還できないときには送還のことが可能になるときまで収容すると、こういうことでございますので、送還先の事情その他、送還のできる条件が整わなければ直ちに送還するということにはならないというふうに思います。

○江田五月君 本件の場合に難民に当たるかどうかは確かに私もいろんな側面があるだろうなという気はしますが、しかしいずれにしても、これはあれですか、退去強制、強制送還する先というのはアフガニスタンですか。

○政府参考人(中尾巧君) 退去強制先、つまり送還先につきましては、入管法の所定の……

○江田五月君 アフガニスタンかどうか。

○政府参考人(中尾巧君) 本件については、それに従ってアフガニスタンということで退去強制令書が発付されたと承知しております。

○江田五月君 アフガニスタンのどこですか。

○政府参考人(中尾巧君) アフガニスタンのどこという御質問のようですが、アフガニスタンという国として、あるところと、こういうことでございます。

○江田五月君 アフガニスタンがどこかというのはわかっているんですが、アフガニスタンといったっていっぱいあるんです。しかも今、いっぱいあるというのは、アフガニスタンは一つだけど、その中に場所はいっぱいあるんで、しかも今アフガニスタン、まあ外務大臣に聞けばよくわかるかもしれませんけど、それは強制送還するのにカブールに送還するのか、カンダハルなのかどこなのか、タリバンのところなのか北部同盟のところなのか、全然違うんじゃないんですか。それをどこへ、じゃ送還されるつもりですか。

○政府参考人(中尾巧君) ですから、今、委員がおっしゃったとおり、アフガニスタン情勢というものを私どもの方で見きわめた上での話でありますので、具体的にそういう、委員がおっしゃるような状況下では送還される状況が整っていないと、こういうことでございます。

○江田五月君 やはり、それ以上詰めませんが、実情をよくお調べになったり、あるいはその当事者の意見を十分聞いたりしながら、形式的に進めればよろしいんだということではなくて、やはりやらなきゃいけないと。今回のケースは、この個別のケースは別として、我が国の難民認定が余りにも厳格で難民条約の締結国として受け入れ実績が異常なほど少ない。こういうことでは、これは国際社会の中で名誉ある地位を占めるわけにはいかないと。

 森山法務大臣、もっと積極的に難民受け入れをすべきだと、本件の事件とは別に、と思いますが、いかがですか。

○国務大臣(森山眞弓君) 難民を受け入れることは嫌だと言っているわけではございませんで、本当に必要な、あるいは条件の整った難民の方が申請していただければ受け入れたいというふうに思っております。

 なかなか、御存じのように、日本の場合は、今までの地理的、歴史的な経緯等で、難民として日本に難民認定してもらいたいと申請される方が今まで非常に少なかったということが第一の原因でございますので、申請があればいつでも積極的に審査をし、条件がかなえば受け入れるということは当然でございます。

○江田五月君 国際社会が一致して二十一世紀の国際秩序をしっかりしたものに仕上げていこうというときで、そのために、どのくらい必要かよくわかりませんが、自衛隊も出そうというわけですから、出す方だけでなくて入れる方もひとつ積極的にやって、日本というのが国際社会の中で存在感のあるそういう国になっていかなきゃと思います。

 それはそれとして、先日に引き続いて刑法改正を質問します。

 危険運転致死傷罪については、まだ聞きたいこともありますが、時間の関係できょうは免除の規定を質問します。

 衆議院の参考人質疑でも、被害者の方を代表して井手参考人が免除の規定の削除を強く主張された。きょうは井上郁美参考人が、免除の規定が一方であって、他方で危険運転致死傷罪があって、危険運転致死傷罪でなければ普通の業務上過失致死傷はもう全部免除の対象になるような、そういう理解がぱっと広がって、そしてこれは大変だということだったけれども、よく聞いて、だんだん何をお考えかはわかってきたというようなお話でした。

 やっぱり、十分な議論が必要なんだなということを痛感したんですが、そこで免除の規定が適用されるような事例をもう少し明らかにしていただきたいと思うんですが、まず軽い、これはどの程度なら軽いか。傷跡が残っていたり、あるいはもっと進んで後遺障害が残ったりというような場合は、これは当然軽いということにはならないと思いますが、いかがですか。

○副大臣(横内正明君) 傷害が軽いかどうかというのは、加療期間だけではなくて傷害の種類とか内容とか、そういうものを総合的に判断をして社会通念で決めるということになると思います。

 したがいまして、加療期間だけで決められるわけではございませんけれども、この一つの目安として申し上げますと、打撲傷とか捻挫なんかの場合には、大体加療期間は二ないし三週間程度にとどまるものが多いようでございまして、およそこの程度のものであれば傷害が軽いときに当たる場合が多いというふうに考えております。

○江田五月君 打撲とか捻挫とかというのは、まあ私もよくわかりませんけれども、傷跡も全然残らない、ある程度の時間がたてばすっかり、見ても何もないという、そういう傷害ということだと思いますが、それはそれでいいですか。

○副大臣(横内正明君) おっしゃるとおりだと思います。

○江田五月君 次に、加療二、三週間ということですが、加療というのは、やっぱり医者へ行かなきゃいけない、あるいは自分で湿布の張りかえするのも加療ですかね、少なくともほっておいて時間が薬だという、その最後の時間が薬だというところは加療に入らないんだろうと思いますが、そうすると、二、三週間もずっと湿布の張りかえしなきゃならぬ捻挫、打撲、結構重いなという感じがしますが、そうですかね、もうちょっと短くなりませんか。

○政府参考人(古田佑紀君) 確かに、加療期間というのはどういうふうに考えるか、これはいろんなケースがあるわけでございまして、実際にお医者さんに行く回数ということで申し上げますと、三回ぐらいということもあるわけですが、結局それが、例えば一週間置きに来てくださいというようなケースもこれよくあるわけです。

 したがいまして、通常、加療という言葉で考えておりますのは、その間、例えば捻挫あるいは打撲であれば湿布薬を張っておくとか、そういうことが必要だとお医者さんの方で考えている、そういうような期間ということになろうかと思います。
 ですから、もちろんその後、そういうふうなけがであれば、逆にその後、もう湿布とかそういうことをしなくてもいいですよというときには実はほとんど治っているということであろうかと思われるわけです。

○江田五月君 この辺は、そこで一日違ったらどうかというような議論をしてもしようがないので、大体今のやりとりのニュアンスでわかっていただくしかないかと思いますが、要するにそういう本当に軽い傷害の場合と。

 次に、「情状により、」ということを伺います。
 例えば、保険請求や何かの関係で完全に示談も成立して、そのことについてはもう後くされ何もない、きれいにそういう関係は済んで、しかし被害者が、私はこの事故については加害者の処罰は求めるんだと。示談については完全に成立して何ももう問題は起きないんだけれども、加害者の処罰は求めるんだと、こう言っている場合は、これは免除の適用はありますか、ありませんか。

○副大臣(横内正明君) 被害者が処罰をしてもらいたいと、そういうふうに明確に意思表示をしている場合ということでございますけれども、免除規定が適用されるかどうかは、被害者の処罰意思のほかに、事故の態様とか過失の程度、内容、被害の状況、慰謝の措置、改悛の情等のすべての状況を、情状を総合的に考慮して決められるものでございますけれども、被害者の処罰意思というのは免除規定の要件である「情状により、」というものを検討する際において重要な判断要素になるものと考えております。

○江田五月君 そこで、被害者の処罰を求める意思というのは、単に被害者が自分勝手に言っているというよりも、事故についてはけがも小さかったし、大した過失じゃないし、示談も全部できているし、しかしその加害者のそれまでの交通事故歴、違反歴を見ると、これはちょっと、私のケースはいいけれども、免除ということではいかぬと、私としてはやっぱり処罰をしてもらいたいと思うと、そういう場合もあるわけですよ。

 したがって、きょうの午前中の井上参考人の御意見は、やはり加害者のそういう犯歴等の情報は、免除規定の適用に当たっては被害者に十分情報を開示されるべきだという、そういう意見があったんですが、これはいかがですか。

○政府参考人(古田佑紀君) 情報開示と申しますか、むしろ交通関係のそういう前科、前歴の有無あるいはその回数、こういうのは刑の免除規定、刑の免除が相当かどうかということを考える上で非常に重要な要素となっていくと思っております。

 したがいまして、これまで何度も相当重大な違反をやっている、あるいは過去にもかなりの不注意等で事故を起こしているとか、そういう前科前歴、こういうふうなものの存在が認められるようなときには、一般的に申し上げて、ここで言う「情状により、」には該当しないことになるだろうと考えております。

○江田五月君 私が聞いているのは、被害者が、この加害者については刑の免除をしてやってほしいと、そういうことを言うような、あるいは言うか言わないかを判断してもらうような場合に、加害者の犯歴情報は被害者には開示をされてはいかがですか、そういう扱いにしてはどうですかということを聞いているんです。

○政府参考人(古田佑紀君) そういう御指摘ではございますけれども、これはやはり前科前歴をどの程度ほかの人に開示するかということは本人のプライバシー等とも、相当考えてやらなければならないことで、慎重に考えなければならない問題だと考えております。

 そこで、そこをちょっと飛ばして、先ほど申し上げましたように、一般的に免除規定が適用されるという前提としては、そういう前科前歴関係、こういうのも十分考慮されるということを申し上げたわけです。

○江田五月君 適切な処理をお願いします。もうそれ以上詰めませんが、幾ら被害者が加害者からいろいろ言われて免除してやってくださいと言ったとしても、それは、被害者には伝えていないけれども加害者に重大な交通犯歴があるというような場合には、それはやっぱり困る、そのまま免除相当だといって起訴猶予にするのは、ということを指摘しておきます。

 被害者の免除の意思表示、これはやはり書面で、例えば調書であるとかあるいは示談書であるとか、そういうところによってはっきりと認められなきゃならぬと思いますが、それもちょっと飛ばして、これで起訴猶予に法的根拠が与えられるということになって、従来も交通事故をすべて起訴するんじゃなくて一定の事故については起訴猶予にしておったと、したがって実際の裁定主文の違いというのが、例えば従来よりも公訴提起が少なくなって起訴猶予が多くなるとか、そういうことではないというように伺っているんですが、それはそれでいいですか。

○政府参考人(古田佑紀君) そのように考えております。

○江田五月君 そうすると、何のために免除規定を設けるのかがよくわからぬのですが、めり張りつけるということですから。めり張りつけるということは、しかし捜査がおろそかになるということであってはいけない。めり張りですから、やっぱり捜査はきっちりやるということでなきゃならぬと思いますが、当然だと思いますが、いかがですか。これは検察庁担当の法務省と警察と両方。

○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘のとおり、きっちりやらなければならないと考えております。

○政府参考人(坂東自朗君) 警察サイドにおきましても、御指摘のとおりでございますので、そういった方向で都道府県警察を、仮に免除規定ができたとしても指導していきたいと、このように考えております。

○江田五月君 ですから、例えば実況見分はしっかりとやる、そのときの見取り図はちゃんとつくっておくと、だけど、それを方眼紙などに定規を使ってぴっとかくようなその書類の作成のところは、免除相当で起訴猶予にするような事案であれば、そこは実況見分のときのいろんなメモ書きでもってかえることができるとか、そういうような扱いだろうと思いますが、これはこれからいろいろお決めになるんでしょうが、よく協議の上、間違いのない決め方をしてほしいと。写真を撮っても、その写真をちゃんと写真撮影報告書に全部仕上げるというところまでやると大変だけれども、しかし写真を撮るのをおろそかにして、しかも写真が何かあっちへ行ったこっちへ行ったになったりするようなことのないように、これはちゃんとやっていただきたいと。

 家裁の送致は、これは家裁では、免除という家庭裁判所の決定はないわけですが、免除相当だからというような送致意見をつけられないと思いますが、どうなりますか。

○副大臣(横内正明君) 御指摘のとおり、家庭裁判所の少年保護事件につきましては、刑の言い渡しは行われませんので、刑の免除が言い渡されることはないということでございます。

○江田五月君 ないので、しかし事案としては、年齢問題を詐称すると裁量的免除相当の事案というのは少年事件の場合でもあると。その場合は恐らく不処分とか不開始とかというような意見をつけるということになるんでしょうね。まあ結構です。

 次、交通安全対策のことをちょっと伺いたいんですが、時間の関係上ちょっと先に行って、刑事訴訟法の方を伺います。

 今回の改正の背景となった実態、未済徴収金額の現状とか、あるいは自由刑、財産刑ごとの遁刑者の実情など、これは一応資料をいただいておるんですが、きのうの私への説明ですと、ことしの一月から三カ月間調査をして、約二万六千件の照会に対して四百件弱の回答拒否があったとのことですが、この回答拒否の公務所または公私の団体ごとの件数、これを明らかにしてください。

○政府参考人(古田佑紀君) この照会状況につきましては、地方公共団体について照会したものが全部で一万二千六百件ほどに上りますが、そのうち二百五十八件が照会に対して回答を拒否されております。これが一番多いんですけれども、そのほか、電話会社に対しまして二千二百件ほどの照会をしたところ、五十三件の回答が拒否されております。あと職業安定所で、これは二百五十六件照会のうち十六件が回答が拒否され、税事務所で百件の照会で二十八件。その他、一々細かく団体名は申し上げませんけれども、約四千五百六十件中二十二件が回答を拒否された例がございます。トータルでいいますと三百七十七件、これは自由刑もひっくるめてですが、回答が拒否された例がございます。

○江田五月君 三カ月でざっと二万六千件程度の照会に対して三百七十七件、拒否をされておるということですが、今回のこういう規定ができれば根拠規定があるわけだからその拒否される例が少なくなるであろうということですが、地方公共団体、これはもう大部分が回答してくれている。ここの部分については根拠規定ができたということが働くような気がいたします。金融機関はすべて回答してくれているので、これはいいと。電話会社、これが若干ありますが、ここにも影響あるでしょうか。病院、陸運事務所、法務局、公共職業安定所、これも若干ありますが、規定が働くでしょうかね。

 税の関係。税の関係については、この規定があると照会に応じてもらえるようになると。税事務所と書いて、百件中二十八件が拒否ですが、この二十八件がゼロになると、こう法務省の方はお考えですか。

○政府参考人(古田佑紀君) 法律に基づく照会でございますので基本的には御回答をいただけるものと考えておりますが、一方で、委員御案内のとおり、税その他高度の守秘義務が課せられている事項があるわけでございまして、そういう点については、裁判の執行という公益と守秘義務によって守られるべき利益との判断で、物によってはやはり守秘義務の方が優先すると判断される場合もあり得ると思います。しかし、かなりの部分は照会によって御回答がいただけるものと考えております。

○江田五月君 これは、この法案の立案過程では財務省の方とは法務省は協議はされておるんですか。

○政府参考人(古田佑紀君) 政府が提案する場合にはすべて各府省庁と協議をいたすと、こういうことになっております。

 なお、この照会も、結局内容に応じていろんな場合がございますので、それについて事細かに具体的な例までということになりますと、これはなかなか難しいというところもございまして、そういう細かい協議はいたしておりません。

○江田五月君 国税庁はお見えですよね。国税庁の方は、こういう規定ができれば、従来はどうも秘密の関係で出しておらないということですが、こういう規定ができればこれは照会に応ずることになるんですか。

○政府参考人(村上喜堂君) お答えいたします。

 御案内のとおり、国税職員には所得税法あるいは法人税法といった国家公務員法よりも重い守秘義務が課せられております。

 したがいまして、刑事訴訟法に基づき裁判所等から資料の提供を求められた場合におきましても、国税当局といたしましては、これは今、法務省お答えになりましたように、比較考量の問題ではありますが、やはり守秘義務に抵触する場合には原則として資料の提供はできないものと考えております。

○江田五月君 その他というのがあって、自由刑三十六、徴収金四千五百二十八、そのうち徴収金について二十二件回答拒否に遭ったと。そのうちの例えばこれは社会保険事務所、四件照会して四件拒否されたということのようですが、社会保険庁は、これはこういう規定ができれば回答をされますか。

○政府参考人(冨岡悟君) 年金受給者に関しますデータにつきましては、受給金額、老齢年金であるか障害年金であるのか遺族年金であるのかといった種別、それから内縁、障害といったことを含む家族や扶養関係等を含むものでありまして、極めてプライバシーとしての性格が強い個人情報でございます。

 そういうことから、このような個人情報の御照会につきましては、御本人の同意が得られている場合のほかは、法令の規定上提供の必要性が高いと認められます場合は提供いたしております。

 具体的には、例を挙げますと、提供が義務となっている場合、これは刑事訴訟法九十九条二項、国会法百四条に基づくこういったものでございます。それから、罰則が規定されている場合、国税徴収法百四十一条、こういった場合には提供を行っているところでございます。

○江田五月君 提供を行っているところでございますという最後の締めくくりですが、しかしそうでない場合に、これは罰則の規定もありませんので、むしろ社会保険庁は出さないという運用を変えないというそういうことのように理解をするんですが、あと地方税のこともあるんですけれども、ちょっと時間の方がなくなったので、地方税についてはお出しいただいているケースもあるようですので、これは妥当な運用にしていただきたいと思いますが、どうもこう見ると、何かこの規定があると根拠ができるから今までと違ってどんどん出てくる、そうでもなかなかないねという感じがするんですが、住民票なんかはちゃんと出てくるようになるから、そのあたりでひとつしっかりした実務の運用にしていただきたいと思います。

 最後に、交通安全対策なんですが、例の分離信号ですね、これは一体どういうふうにお考えになっていますか。

○政府参考人(坂東自朗君) 歩行者と車両の通行を時間的に分離するいわゆる歩車分離信号というものは、車両の円滑な通行に影響を与える可能性はありますけれども、歩行者の安全確保のための有力な手段の一つと私どもは認識しております。したがいまして、警察庁では交通状況あるいは地域住民の要望等を勘案して、全国で百交差点を抽出して歩車分離信号のモデル運用を行うということとしたところでございます。

○江田五月君 前方の信号が赤で、そして矢印、青の矢印で示すと。これで例えば左折の車とその車がこれまで来たと同じ方向に渡っていく歩行者とが分離されるという、そういう信号が仮にある。前方赤です。青い矢印、真っ正面だけはついているけれども、右、左のものはついていない。これは赤信号だから、これを殊さら無視して左折をすると、その他の要件を満たせばですが、危険運転になりますね、法務省。

○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘のとおりです。

○江田五月君 やはり、そのあたりですね、あの矢印の青信号、結構誤解するようなケースもあったりですので、ひとつそういうものを矢印の青、しかし丸の分は、電灯ついているのは赤、これをそのまま法律を誤解して左折、ばっと行っちゃったらそれは法律の誤解であって、事実についてはちゃんとした認識があるんだから、危険運転になるよと、こういうことはちゃんと周知徹底させていただきたいと思います。

 そのほかいろいろ伺いたいことがありましたが、ちょうど時間になりましたので、終わります。


2001/11/27-2

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