2001/06/21

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151 参院・法務委員会

商法等改正2法案(金庫株)の審議。配当可能利益と法定準備金の取り崩し分を原資とする自己株式の取得を自由化するものですが、インサイダー取引や株価操縦に対する規制が十分と言えず、投資運用や会社防衛策のために自己株式を取得することも出来ます。他に、法定準備金を取り崩して配当原資とすることや、額面株式を廃止して単元株制度を導入することも含まれています。緊急経済対策の一環ですが、景気対策への有効性もはっきりせず、乱用防止策も不十分で、あまりにご都合主義なので、民主党は反対です。

午前中2時間は、神田秀樹東大教授と末永敏和阪大教授の参考人質疑で、私も15分質問しました。午後も3時間質疑をし、小川敏夫さんが質問と討論。採決の結果、私たちは少数で、可決されました。


○江田五月君 両先生、きょうはお忙しいところありがとうございます。
 佐々木さんも言われましたが、何か大学へ戻ったような感じで。
 今回の金庫株、それから単元株、これは緊急経済対策の一環だということで出されているんですが、今の不況、これを打開して景気をよくする、そのことに一体どういうふうにこの意味があるのかというのがよくわからないんですが、お二人ともそこのところはちょっとお触れになっておられないようなので、これは商法学者としてはそんなことは中立的だと言われるのか、あるいは何かお考えがあるか、まず神田さんからお答えください。

○参考人(神田秀樹君) 非常に難しい御質問だと思います。
 緊急経済対策というのはやはりいろんな対策を打つということかと思いますけれども、その中の一つに株式市場を活性化するという重要なテーマがあると思います。そのためにはどうしたらいいかというその手段の一つとして、今回の法改正案は位置づけられると私は考えております。

 それはなぜかということなんですけれども、私の理解では、現在、日本では株式が出過ぎているというふうに思っております。これは、一九八〇年代に、大量のエクイティーファイナンスというふうに呼んでおりますけれども、大量の増資ラッシュがございまして、その結果、株が出過ぎたわけであります。一般に、これは理論だけ申しますと、別に株の量が多くても、株価というのは需給で決まるわけですから特に問題はないはずですけれども、先ほどもちょっと申し上げたことにも関連いたしますけれども、私は、その結果、出過ぎているために、株価が企業の真の価値をちょっと反映していない、下回っているのではないかと思います。

 したがいまして、一九八〇年代に大量のエクイティー増資があったので、今大量のいわばエクイティー何というんでしょうか、返却というか消却というか自己株式取得というか、そういうものが行われてしかるべきものと思います。

 ただ、実際にどの会社の株式を消却ないし金庫株にするかというのは個々の会社がやはり判断すべき事柄でありまして、したがいまして今回の法案は、従来から認められております消却という手段に加えまして、金庫株の取得という手段も用意することによって個々の会社の経営判断によってそこの株式を引き揚げてくるというんでしょうか、出過ぎている株式を引き揚げてくる、そういう道を用意するというものでありまして、すぐ即効性があるかと言われますと、これは何とも言えませんけれども、そういう意味で緊急経済対策の中に位置づけ得るものでありますし、またそういう意味でも基本法としての商法の改正で対応するという点につきましては、こういう形での改正は私は望ましいものと考えております。

○江田五月君 末永参考人、いかがですか。

○参考人(末永敏和君) 今回の商法改正案が緊急経済対策の一環として出されてきたということは周知の事実であろうかと思います。果たして、それが本当に緊急経済対策になっているかどうかということにつきましては、私は法律学者でありますので必ずしも適任ではないと思いますが、私の意見を述べさせていただきますと、自己株式を取得するのは、あるいは金庫株を取得するのは企業自身でありますから、企業にその余裕があるかないかという点が問題であろうかと思います。

 しかし、附属資料にあります、ことしの一月十六日の日経新聞の社説にもございますように、「収益力や財務内容に比べて株式の供給が過剰な企業が、自社株を購入する十分な資金を持っているケースはまれ」であるというように述べておりますように、自社株を購入する可能性が果たしてどれだけの企業にあるのかという点で私は根本的に疑問を持っておりますので、経済対策として有効かどうかと問われれば、否定的に解さざるを得ないところでございます。
 以上でございます。

○江田五月君 確かに、神田参考人のおっしゃる株式が出過ぎていると、それを整理して活性化させるというのは一つの、それだけ聞けば、うん、なるほどと思うんですけれども、しかし緊急経済対策という、今のこの大変な景気の悪化の状況に緊急に何かしなきゃならぬということで、何かそんなあっと驚くような効果があるのかなという気がします。

 そして、株価が実際のそれぞれの企業の力と比べて下回り過ぎているとおっしゃるんですが、無額面株式に全部してしまうという、それをやったらそこら辺のつながりというのはむしろ消えるんですか。

 ですから、どうも何か一切の手続をパスして、しかもこれはまだ税や会計処理の扱いもこれから検討するとか、そのために金庫株処分は平成十四年三月三十一日まで停止されたままで、そんなに急いで何をやろうとするのかどうもよくわからぬという気もしますが。まあ、それはおいておいて。

 私ども、大学で商法を勉強したときには、資本充実の原則というのはもうこれは株式会社にとっては一番重要ないわば命綱みたいなものだと教わったような気がするんですけれども、今回はその資本充実の原則についての哲学というのをもう変えてしまうということになるんですか、ならないんですか。これもお二人にお伺いしたいんですが、まず神田参考人に。

○参考人(神田秀樹君) 私は、資本充実についての考え方は、今回、原則として変更はないと考えております。
 自己株式を取得できる場合については財源規制がかかっているわけでして、原則として配当可能利益から取得するということになりますし、ちょっと余計なことかもしれませんが、平成六年改正前に、例外的に自己株式を取得することができる場合、現在、二百十条という条文に上がっているんですが、こういう場合は財源規制がなかったんです。その意味では、今回、すべての自己株式取得について財源規制を横断的に設けるという意味ではかえって商法がしっかりすると、これが資本充実・維持の観点からはしっかりするという面がございます。

 もう一点、ただ、今回新しく導入されますのは、利益からだけではなくて法定準備金を使ってもこの自己株式を取得することができるというふうに変える部分であります。この部分は消却特例法では既に穴があいている部分ですけれども、それは時限措置になっているわけでありまして、これを商法本体に入れていいかどうかという問題であります。

 ただ、これは昔から恐らく教科書等にも書いてあることでございますけれども、資本そのものも商法は減少することを認めているわけです。それは非常に厳格な会社債権者保護手続を踏んだ上でということではあります。

 したがって、ある先生に言わせますと、資本を俗にダム、資本準備金を補助ダムと、こういうふうにおっしゃる先生がおられましたけれども、ダムそのものの高さを下げることも厳格な手続を踏めばできるわけですから、補助ダムの高さを下げることも認められてしかるべきでありまして、これは資本の減少と同じ会社債権者保護手続を踏んでのみ下げることができると今回しているわけです。

 さらに、その補助ダムの高さをどこに設定するかという難しい問題があるんですけれども、それは会社債権者と株主の利害調整という見地から、今回はダムの四分の一の高さを限度として、そこまでは補助ダムを下げてもよろしいということにしよう、こういう仕組みになっているわけでありまして、その意味におきまして、後の方で申し上げましたことは現行法の変更を意味しておりますけれども、しかし資本充実・維持という考え方は今回むしろ横断的、統一的に一貫して整備されたというふうに私は考えております。

○江田五月君 末永参考人にお願いします。

○参考人(末永敏和君) 今の御質問の件でございますが、二百十条の例外の場合には特に取得財源についての規制はないということでございましたが、確かにそれはそのとおりでございまして、反対株主の買い取り請求については財源の規制はないわけで、そういうものについては、不可避的な自己株式取得として、ないわけでございます。これは将来もそのとおりでございまして、これについては私は変わりないのではなかろうかと思います。

 むしろ、問題なのは、今までは自己株式の取得、保有についてはなかったものを今度は規制するわけでございまして、確かに利益から取得するということについては問題はなかろうかと思いますけれども、配当可能利益以外の法定準備金や資本から取得する場合にはやはり資本の充実の原則に反することになるわけでございますが、それについては株主総会の決議や債権者保護手続も一応用意されておりますので、その点ではある程度の手当てはなされておるとは言えますけれども、資本を減らすことには違いないわけで、そういう点では問題はないとは言えないと私は思います。
 以上でございます。

○江田五月君 資本充実の原則というのは、ある種の、株式会社というものの存立の基本の考え方、一番の柱と教わったんですがね。それを、それでも多少はフレキシブルにしていく必要がある、そのときにいろんな手だてを十分加えておく、だからいいんだというのか。資本充実の原則ということ自体、もうそんな考えはちょっと頭から外して、もっと自由自在に会社の資本なんというのは融通無碍にやっちゃった方がむしろいいんだということになるのか。

 今、末永先生の方は、ちょっと大原則が維持できるかどうか危惧があるよという批判的な目で見ておられると思うんですが、神田先生の方は、資本充実の原則自体はそれは大切な原則だと、そこを変えるということはないんだという、これはそれでよろしいんですね。イエス、ノーだけで、ちょっと。

○参考人(神田秀樹君) はい、そうでございます。

○江田五月君 そこで、どうもよくわからないのが、アメリカの場合は、それでもこれだけいろいろ自由にやれるようにしてある、日本もと、こういう立場と、いやいや、そうじゃないんだと、アメリカの場合はレース・ツー・ザ・ボトムということで、これはむしろヨーロッパのしっかりした原則を守っていこうということの方が健全なんだという考えと、お二人、ちょっとそこが違うんでしょうね。それは、もう時間が余りないので簡単にしかお答えいただけないので恐縮ですが、末永先生のアメリカはレース・ツー・ザ・ボトムだというのに対して、神田さんはどうお考えになるか。神田さんのアメリカはもっと自由にやっているのでということについて、末永さんはどうお考えになるか。

○参考人(神田秀樹君) 簡単に申し上げます。
 私の理解では、金庫株の取得等を認めているというのはレース・ツー・ザ・ボトムとは関係のないことであり、ほかの事項でレース・ツー・ザ・ボトムという批判を受けていると思います。

 それから、ヨーロッパにつきましては、ヨーロッパ委員会が現在、自己株式取得の指令というものを緩和する方向での見直しを検討しておりますので、将来的にはこれは緩和されていく方向が明らかになっております。

○参考人(末永敏和君) お答え申し上げます。
 やはり、アメリカの場合は、経営の自由度を高めたいという希望に沿った形での金庫株の解禁といいますか、金庫株の保障だと思いますので、そういう点では、やはり規制緩和といいますか、それの一環に乗っているのではないかと思います。

○江田五月君 最後に、神田先生に、末永先生の一番最後のところの、単元株制度というのは会社に対する権利の行使の単位じゃなく株式の取引単位としてだけ認めればいいんで、会社に対する権利行使については単元株というのはむしろ有害ではないかという、これはどうお考えになりますか。

○参考人(神田秀樹君) そのようなお考えも十分成り立ち得ると思いますけれども、私は別の考え方でございまして、株主管理費用という、これは昭和五十六年のときにそういう観点から単位株制度が導入されたんですけれども、それとの関係で考えておりますので、それぞれの会社が、うちの会社は株主管理にお金がかかると考えれば単位を自由に設定するというのが今回の考え方でありまして、株主管理費用というのは何かといいますと、議決権のある株主に株主総会の招集通知を送ったりするのに一番費用がかかるわけです。したがいまして、それが三千円かかるのであれば三千円ぐらいを単位にしましょう。五千円、うちの会社はかかります。そういう会社は五千円を単位にしましょう。これは余り高い単位にしますと問題ですので、今回の法案は上限を設けているわけですけれども、そういう形で単元という単位を設定するわけですから、これは議決権と結びつかなければ意味がない。そういう意味において、私は今回の法案のような考え方が正しいと思っております。

○江田五月君 終わります。
 ありがとうございました。


2001/06/21

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