2001/03/27

戻るホーム主張目次会議録目次


151 参議院・財政金融委員会


○委員以外の議員(江田五月君) ただいま議題となりました民主党・新緑風会、日本共産党、社会民主党・護憲連合及び自由党の四会派共同提出に係る特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案につき、提出者を代表して、その趣旨を説明します。

 本法律案は、特定非営利活動促進法の制定の際に両院で付された、税制等を含めた制度の見直しについて施行後二年以内に結論を得るとの趣旨の附帯決議に基づき、特定非営利活動法人、すなわちNPO法人の活動を税制面から支援するため、地方税に関する支援措置を定めた特定非営利活動の促進に関する地方税法の一部を改正する法律案とあわせて提出したものであります。

 以下、本法律案の内容につき、既に提出されております政府提出の租税特別措置法等の一部を改正する法律案と比較して説明します。

 第一に、既存の寄附金優遇税制のNPO法人等への適用要件についてであります。
 政府案は、租税特別措置法上の措置として、国税庁長官の認定するNPO法人に対し適用することとし、その認定の具体的要件は政省令に委任しており、そこで想定される認定要件は、例えば、いわゆるパブリック・サポート・テストの適用について、補助金を除外している点、事業による自立を困難にしようとしている点、活動等が一市区町村内に限定される団体は除外される点など、いたずらに厳しくなっており、既存のNPO法人の数%も認定されないだろうと言われています。これでは、市民の自由な公益的活動をサポートするという支援税制の本質に反するものと言わざるを得ません。

 そこで、本法律案では、市民の公益的活動を支援するという立法趣旨を踏まえ、十分に緩和した要件を明確に法律に規定し、あわせて、認定機関を第三者機関である特定非営利活動等促進委員会としています。これにより、恣意的な運用が防がれ、また、既存のNPO法人の六ないし七割が適用可能となります。

 第二に、寄附金税制の対象となる寄附金について、現行のいわゆる一万円のすそ切りを廃止するとともに、NPO法人等に対するボランティア活動やホームステイなどの労務の提供等について、通常必要と認められる費用を寄附金控除の対象とすることとしております。

 第三に、NPO支援のため、政府案にはない各種の支援税制を定めることとしております。具体的には、収益事業から非収益事業へのいわゆるみなし寄附金制度の創設、法人税についての公益法人並みの軽減税率の適用、支払いを受ける利子・配当や少額の事業収益の非課税等であります。

 以上が、この法律案の趣旨及び主な内容です。

 政府案は、地方税について何らの支援措置も講じていないという点でも批判を免れません。私どもは、先ほど述べたとおり、別途、法案を提出しています。

 二十一世紀はNPOの時代です。多くのNPO法人が国税及び地方税の両面で支援を受け、市民の自発的な活動によって支えられた健全な社会を実現するため、特定非営利活動の促進に関する地方税法の一部を改正する法律案とあわせ、本法律案の成立がぜひとも必要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いします。

○委員長(伊藤基隆君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより四案について質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。


○櫻井充君 民主党・新緑風会の櫻井充です。
 きょうは、まず最初にNPOの支援税制についてお伺いさせていただきたいと思います。
 平成十年に特定非営利活動促進法が施行されまして、それに伴っての今回、支援税制ということになります。

 その前に基本的なことをお伺いしたいんですが、今後、日本社会においてNPOの位置づけをどう考えられているのか、まずその点について政府の見解をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(宮澤喜一君) この点は前にもお答えをいたしておりますけれども、私は以前から財務省の事務当局に対しまして、このたびの法律案ができますまでの経緯でありますが、やっぱりNPOというのは、かなり成熟した自由社会において、市場経済の社会においていわば新しい役割を担う社会的な存在になるであろう、理由は余りくどくど申し上げるまでもないことですけれども、そういうふうに考えておいた方がいい。したがって、本来、政府とは縁を持ちたくないという考え方の団体であろうけれども、しかし国として何かできることはやっぱりするということ、それもまた大事なことであるというのが、今、政府もまた政党も法案を出しておられる基本的な考え方であります。

 ただ、そうではあるが、これはいわゆる減税ということになりますので、どういう条件のもとに減税をするか。これは公のいわば財政支援に関するものでございますから、なるべく政府は余計なことはしないのが本当は好ましいわけですけれども、最小限そういうわけにもまいらないということで法案を提出いたしました。

 したがって、政府の考え方はいわばポジティブであります。ネガティブではございません。ネガティブならばこういう法案を提出することはございません。ただ、ポジティブでございますが、それが公金についてのいわば財政援助でありますので、ある程度いろいろなことを整えておかなければならない。それが甘い、辛いということは当然ございましょうと思いますけれども、また政党の方のお考え、各党のお考えは、なるべくそこは緩やかに甘くせよと。それもごもっともなことなんですが、しかし納税者の金を免除するということでございますから、最低のものはやはり整備をしておかなければならない。そこらあたりが幾らかお考えの違いということかもしれません。

○櫻井充君 ちょっと確認なんですけれども、アメリカでは、過去半世紀にわたって拡大してきた政府活動と活発な民間非営利セクターの存在は相反するというような議論がなされてきていたわけです。今はそうではありませんけれども。こういう考え方ではないということですよね、大臣の考え方としては。

○国務大臣(宮澤喜一君) 何反ですか。

○櫻井充君 つまり、相反すると。政府活動と、それから民間非営利セクターの存在というのは、存続というのは相反するものではないと。アメリカは以前は相反するものではないかという議論がなされていたようですけれども、そういうものではないという私の認識でよろしゅうございますか。

○国務大臣(宮澤喜一君) 相反するものでないと考えますがゆえに、場合によって財政的な支援を与えたいと、こう考えておるわけです。

○櫻井充君 もう一つは、現在NPOの先進国でありますアメリカにおいてのNPOの存在といいますか、その辺に関して政府はどのようにお考えでございましょう。

○政府参考人(池田実君) お答えいたします。
 旧経済企画庁で作成しました平成十三年度国民生活白書はボランティア、NPOをテーマとしておりまして、そこでアメリカにおけるNPO活動にも触れております。

 それによりますと、アメリカでは市民の積極的なフィランソロピー活動がNPOの活動を支えている。これは、市民生活に必要なサービス、生きがいを提供するなど、NPOの活動が生活の中で重要な位置づけを占めていることを市民が十分理解しているからこそである。他方、NPOは努力をして社会からの支援を得ることによって、活動の継続が可能となっているとも言われている。このようにアメリカでは、市民がNPOを選び、育て、見守るという姿勢が生活の中に根づき、市民とNPOが好循環の関係を保つ中で、経済社会の成長が続いていると、こう触れております。

 それから、アメリカにおいてNPO活動が活発である背景として、アメリカの識者の見解を紹介しておりまして、その中に、コミュニティーが政府より先に形成されていたため、建国当初から政府を頼らない自助努力の風土が強いことなど、ほかにも挙げていますが、そういうようなことが挙げられております。

○櫻井充君 ちょっと私が持っているのは古いデータなんですけれども、九〇年で、アメリカにおいてですけれども、非営利セクターの雇用者数が七百二十一万人、全雇用者数の六・八%を占めると。そして、経常収支の総額も、国内総生産、GDPの六・三%に当たると。非常に大きいわけでして、日本もこのぐらいまでNPOの活動を広げていこうというふうにお考えなのかどうか、改めて政府の考え方をお伺いさせていただきたいと思います。

○国務大臣(宮澤喜一君) 私が申し上げる担当者であるかどうかわかりませんけれども、私自身は、やはりこういう活動は自然に広がっていくであろう、それはやっぱりいいことだと基本的には考えています。

○櫻井充君 もう一つ、社会福祉支出の中で、基本的にはアメリカはヨーロッパから比べると社会福祉支出が少ないわけですけれども、その中でどの程度非営利団体が支出しているかといいますと、非営利団体が二千九百五十億ドル、それから連邦政府が二千四百四十億ドル、それから州、地方政府が千三百八十億ドルということで、こういう分野でも非営利団体が一生懸命活動されているというような状況になっています。

 そこで、やはり日本もこういう社会を目指していくべきではないかと私は考えているんですが、今回のパブリック・サポート、優遇税制を受けられる団体をどの程度認定されるのかというところになってくると、まず一番大事な点がパブリック・サポート・テストになるんだろうと思います。このパブリック・サポート・テストの内容を見てみますと、政府案になりますとかなり限定されてしまうんではないかという感じがいたしますが、いかがでございましょう。

○政府参考人(尾原榮夫君) 今、パブリック・サポート・テストについてお尋ねがございました。
 大臣からもお話しございましたように、NPO法人制度、そもそも公の関与からなるべく自由を確保するという枠組みになっております。したがいまして、その態様は多様であり、区々でございます。

 そこで、今回の税制上の優遇措置、公的サービスの財源でございますから、この減免を伴う対象となる法人にはふさわしい公益性を有する必要があるだろう、そういう考え方からパブリック・サポート・テストを設定いたしまして、これによりまして活動の公益性を推測し得る指標として使っているわけでございます。

 具体的な指標といたしましては、NPO法人の総収入金額に占める寄附金等の金額の割合が三分の一以上というふうにしてございます。このパブリック・サポート・テスト、ただいま申し上げましたように税の優遇措置を伴うということでのテストでございますので、現在、政府としてお願いしている考え方、適切なものであろうというふうに考えております。

○櫻井充君 今、自由を確保するとおっしゃいました。この自由というのは一体何を指して自由とおっしゃっているんですか。

○政府参考人(尾原榮夫君) 大変申しわけございません。
 今、NPO法人制度でございますが、その設立については、一定の要件を満たしている場合には所轄庁はNPO法人として認証しなければならないとされている、つまりNPO法人制度というのは公の関与からなるべく自由を確保するという枠組みになっているということを申し上げたわけでございます。

 他方、税の優遇措置でございますが、やはり公的サービスの財源となる租税を減免するということでございますので、この対象となる法人はそれにふさわしい公益性を有する必要があるということを申し上げたわけでございます。

○櫻井充君 しかし、今、政府がやっていることというのは、制限をかなり加えていることであって、自由を確保することから反対の方向を向いているんじゃないですか。

○政府参考人(尾原榮夫君) NPO法人制度は、まさに公の関与から自由に活動される法人であろうというふうに認識しております。

 ただ、税制上の優遇措置を受ける対象のNPO法人はどうあるべきかということでございまして、やはり寄附金につきましての租税の減免措置を伴うものであるだけに、納税者の負担においてなされるわけでございますので、その対象となるものについて今回パブリック・サポート・テストを設けていること自体、自由を束縛するとかいうことではなしに、税制としてどのような制度がよろしいのかという観点からの基準というふうに考えております。

○櫻井充君 いや、このテスト自体が少なくともアメリカのパブリック・サポート・テストの計算式から比べるとはるかに厳しいといいますか、認定が受けにくい条件になっているわけです。ですから、そういう意味でいうと、こういう制限をかなりつけ過ぎているんじゃないか。

 例えば、政府案では、認定の要件の中で政治、宗教活動を一切行わないというふうになってきています。しかしこれは、もともとあった法案の中には、主たる目的としなければいいという概念になっていたわけであって、その点からしてみても、いろんな制限がついていて、必ずしも自由を確保しているという状況にはないんじゃないかと思います。
 この点について、いかがでしょう。

○政府参考人(尾原榮夫君) 繰り返しになりますが、NPO法人自体は、NPO法に基づいて自由に御活動をいただく仕組みになっているというふうに承知しております。

 ただ、税制上の特例措置を設ける場合、どのようなNPO法人についてその対象とするのが適当であるかということでございますが、ただいま例でございましたように、この優遇措置の対象となるということのためには、政治活動を行うということは特定の立場に偏るということにもなりかねませんので、税制の優遇措置の認定NPO法人になるためには、政治活動を一切行っていない、そこはNPO法よりも厳しい基準になっているというふうに御理解いただきたいと思います。

○櫻井充君 そんなの法律から見たらおかしいじゃないですか。法の精神というのは一つなはずですよ。ある部分は主たるものでなくていい、片側のところは絶対認めないと。これ、一つの精神になっていないじゃないですか。おかしいですよ。

○国務大臣(宮澤喜一君) それは御質問がちょっとわかりにくいので、どなたもNPO活動はしてもいいんですよ。しかし、減税を受けようとするのならこうですと言っているだけじゃないですか。

○櫻井充君 しかし、法の趣旨からいけば、少なくとも主たる活動でなければやってもいいというお話になっていますし、もう一つ、この間、私、本会議で質問をさせていただきましたが、そのときに福田官房長官からこういう答弁がございまして、今回の「「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを主たる目的とするもの」でなければ、設立の要件に合致するものであり、すべての政治活動が禁止されるというものではなく、」と。そして、今回のNPO法人に係る税制上の措置においても、支援の対象としてふさわしい法人の要件を規定したものであるというふうになっているわけであって、基本的には、そういうことはやっていても認めるという答弁にはなっているんじゃないですか、ここは。

○政府参考人(尾原榮夫君) 繰り返しになりますが、NPO法人は主たる事業としてそのような政治活動なり宗教的活動をしてはいけないというふうに書いてあるわけでございます。

 他方、税制の優遇措置、つまり納税者の負担において、その限りにおいて税の負担の公平を犠牲にするわけでございますが、これはまた裏返して言いますと、実質的に税金で補助金を与えるという側面もあるわけでございます。そのような制度を仕組む場合に、やはり特定の立場に偏らないというような意味、あるいは税制の公平というような意味からして、NPO法で規定している要件よりも厳しい要件が適用されるといいますのは、この税の恩典制度が適用される以上やむを得ないことではないか、こういうふうに考えております。

○櫻井充君 そういうことをおっしゃるのであれば、まずすべての公益法人の政治活動を禁止された方がいいんじゃないですか。片側のところは認めておいて、片側は認めないということ自体おかしいんじゃないでしょうか。

 例えば、ささえあい医療人権センターというところがございます。ここがこの間、政策提言のようなことを行いました。これは厚生省と組んでです。厚生省と連動して、医者にかかる十カ条、こういう形でやっていきましょうという政策提言をいたしました。それからもう一つは、その団体がいろいろ患者さんからの苦情を受けているわけですが、その中で差額ベッドの問題がございました。その差額ベッドの問題をやっていて、こういう場合には差額ベッド料は徴収されませんよとか、そのものを一冊の本に今回まとめたりいたしております。

 そういうような、ある部分でいえば政治活動につながっていくようなものを行っているわけですが、ここは今回、十年間こういう活動をやってまいりましてNPO法人としての認可を受けようとしています。こういう団体というのは、税制の面での優遇措置というのは受けられないということになるんでしょうか。

○政府参考人(尾原榮夫君) 今、個別の事例についてのお話がございました。
 申請いただければ十月一日からこの法律に基づきまして適切に処理されるわけでございますが、一般的に申し上げまして、政策提言でございますが、「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対すること」ということには該当しないというふうに考えているわけでございます。

○櫻井充君 じゃ、もう一つ、ちょっと確認です。
 政策提言することは構わないということですね。

○政府参考人(尾原榮夫君) 政策提言自体は差し支えないというふうに考えております。

○櫻井充君 もう一つ、済みません。
 政策提言するNPO法人であっても優遇税制は受けられるということの認識でよろしゅうございますね。

○政府参考人(尾原榮夫君) 政治活動を行っていないということは一つの要件でございまして、政策提言をする法人、つまりNPO法人自体が政策提言をすることを主たる目的とすると、こういうことではございませんですね。

○櫻井充君 違います。

○政府参考人(尾原榮夫君) 一般的に申し上げまして、政策提言は該当しないというふうに考えております。

○櫻井充君 該当しないというのは、それだと受けられるということですか。

○委員長(伊藤基隆君) 発言は委員長を通してやってください。

○櫻井充君 はい、わかりました。

○政府参考人(尾原榮夫君) その点の要件は満たさないことにはならない、満たしているということでございます。

○櫻井充君 もうちょっとわかりやすく言ってください、イエスかノーか。つまりは、政策提言しているところでも支援税制は受けられるんですね。受けられるか受けられないかだけ答えてください。

○政府参考人(尾原榮夫君) 今度の要件といたしましては、一切の政治活動を行わないというところで実は書いているわけでございまして、そこでの政治活動というのは「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対すること」、「特定の公職の候補者若しくは公職にある者又は政党を推薦し、支持し、又はこれらに反対すること」というふうにすることとしてございます。

 つまり、NPOを引くわけでございまして、したがいましてこれに該当しない限りは問題はないわけでございますから、政策提言は基本的に政治活動をするということにはならない、こういうことでございます。

○櫻井充君 問題ないと。

○政府参考人(尾原榮夫君) はい。

○櫻井充君 端的に問題ないと言っていただければわかることなんですけれども。
 それで、これは野党案の提出者の方にお伺いしたいんですが、野党提案の中では、政府提案の中の分母から本来事業収入を引いております。分子が小さくなる分、かなりのNPOが優遇税制を受けられるというような形になっていますけれども、なぜこのような本来事業収入を分母から引かれたんでしょうか。少なくともこういう式をつくられたのか。

○委員以外の議員(江田五月君) その御質問にお答えするには、まず野党案がNPOをどう見ているかということを御説明しておかなければならぬと思います。

 簡単に申し上げますが、先ほど宮澤財務大臣は成熟した社会でNPOは新しい役割を持つようになるであろうとおっしゃいました。私ども、それは確かに一つだと思います。市民の自発性、多様な価値観に基づく市民活動の主体であって、政府や企業が主導する社会システムを二十一世紀に対応できる新しいシステムに変革する、その変革の主体であると思っておりまして、二十一世紀はNPOの時代だという認識を持っておるわけです。

 それだけではなくて、先ほどアメリカのNPOの説明がございましたが、もともと政府活動が始まる以前から民間、市民のさまざまな活動というのがあった。それは教育にしてもあるいは宗教にしても、医療にしても社会福祉にしてもそういうもので、そしてそれが政府活動よりももっときめ細かく、かゆいところに手が届くように行われるということはしばしば見られるわけで、粘りのきく、あるいは懐の深い、そういう社会をつくっていくにはどうも政府活動というのはかなり失敗をしているんじゃないかということがあって、むしろ市民に譲っていく、そして結果として小さな政府が実現をしていく、そういう成熟した社会に、新しい役割というよりも旧来から持っているNPOの役割を今こそ大切にしていかなきゃならぬという、そういう点がもう一方であるのかなと。

 同時に、政府活動あるいは企業活動だけでなくて、第三の市民セクターで人々が仕事の場を持つ、これも随分雇用として大きな役割を果たすところがあって、そういう場で市民が生きがいを持ち、人とのつながりを持っていく。旧経済企画庁の白書によれば好縁、好ましい縁、そういうものをつくっていくと。

 そんなようなことがあって、私どもは、このNPOというのはやっぱり支援をしなきゃならぬ、促進をしなきゃならぬ、支えていかなきゃならぬ、あるいは政府は譲っていかなきゃならぬ、そういう立場だと思っておりまして、したがって何が公益的な活動かということも、政府の方が判断するのではなくて、むしろ社会に支えられているということでもって公益的活動の認定の基準にしていこうと、こう考えたわけでございます。

 したがって、そういう支援になるような制度設計をしなきゃならぬということが問題でございまして、事業収入でみずから自立をさせながらNPO活動をやっていく、例えばガレージセールなどで、それぞれの家庭で要らなくなったものを集めて売る、これ自体はNPO活動とはあるいは言えません。しかし、その売り上げから例えば海外へのいろんな援助をしていくというような、自分の事業活動で自分の自律的な活動を支えながらNPO活動をやるということは、これは当然促進をされてしかるべき、支援されてしかるべきなので、したがって事業収益というものを分母からも分子からも除きましょうと。同時に、補助金というのは言ってみれば国民の税金から回ってくるわけですから、これもある種の寄附と同じような性格を持っていると考えられるので、これは分子の方に入れましょうと、こういうことで方程式をつくったわけでございます。

○櫻井充君 今の野党案に対して、政府はどのようにお考えでしょう。

○国務大臣(宮澤喜一君) 今の江田議員の御説明は、アメリカの実情を基本におっしゃいましたが、これはやはり一つの私はお考えだと思っております。それは、ピーター・ドラッカーが一番そのことを言っておりまして、アメリカという国はやっぱりボランティアの国なんですね。彼は、大人一人が毎週何時間をボランティアに費やしているかということを統計を挙げて言って、それは驚くべきものであって、教会の活動とも違う。発生がそうかもしれないが、今やもうそうでないぐらいですから、江田さんのおっしゃるように、政府のある前にそういう活動があったとでも言うぐらい大きい部分であるんで、したがって、分子、分母から両方除いたところでそういうことをしたって、それが本来じゃないかと、こうおっしゃっているわけでございましょう。我が国はそこまで事は明らかに行っておりませんから、お考えはそれでなるほどなというふうに思うけれども、日本はどうも今のところそうではないとやっぱり申し上げざるを得ないんじゃないでしょうか。

○櫻井充君 ちょっとわかったようなわかんないようなあれですが。
 もう一度確認になりますけれども、今後そのNPOの活動というのが社会において非常に重要であって、これからもっと拡大していかなきゃいけないと考えていくとすれば、きつい要件をつけること自体が私は間違いなんだと思うんですよ。つまりはこれは政策的なものだと思うんです。税制というのは公平中立な立場でなければいけないということは、これ大原則だろうと思います。しかしながら、政策的なもので例えば減税するとかいうことがあるわけであって、これを政策的なものとしてみなしてくるのかどうかということになるんだろうと思うんです。

 例えば、今回の野党案の場合に、もう一点、パブリック・サポート・テスト、将来は三分の一ですけれども、一回目は五分の一でいいですよということも認めてきています。つまりは、なるたけ優遇税制が受けられるようになって、そしてNPO活動をもっとどんどんふやしていってくださいというメッセージであって政策的な取り組みになるわけです。

 そういう意味において、今回の政府の提案ではそういうメッセージが全く伝わってこないんです。大体、今回のもので優遇税制を受けられるNPOというのは、政府としてどの程度あるとまずお考えなんですか。

○政府参考人(尾原榮夫君) 今、今回の対象となるNPO法人がどの程度になるかというお尋ねでございました。今回の制度を策定するに当たりまして、昨年の九月に内閣府に実態調査をしていただきました。しかし、それもまた一部のNPO法人からの回答に基づいているわけでございます。

 いずれにいたしましても、NPOの実態、態様、正確に把握できないところもございますが、NPO法を政策的に支援する重要性という見地から、この十月一日から新しい制度が適用になるようにしているところでございまして、そのために今回、適用要件も明らかにして、しかも明確かつ客観的な基準によることとしているわけでございまして、できる限りたくさんのNPO法人に利用していただきたいと思っております。

 したがいまして、現在でどの程度かということについては、まさに十月一日を見てみないとなかなかわからないところがある、要は、積極的に利用していただきたいということに尽きるわけでございます。

○櫻井充君 積極的に利用したくても利用できなかったらどうするんですか。
 やはり、こういうのをつくったときに、実態も何もわからないで、まあとりあえずつくってみたらというだけの話じゃないですか。もっと多くのところがこういう優遇税制を受けられるようにしましょうと基本的に考えているのか。大体五〇%なら五〇%ぐらいがこういう対象になるようにしようじゃないかとか、そういうことを本来、今実態もわからずにとおっしゃいましたけれども、実態がわかった上でこういう政策というのは出してくるんじゃないですか。そういうことが何もなしに、とりあえずやってみて皆さん御利用くださいというのは、それはちょっとひど過ぎるんじゃないですか。

○政府参考人(尾原榮夫君) 実態がわからないでという、少し誤解を与えるようなことを申し上げました。

 実は、このNPO法案の、まさに二年以内に適切な措置を講じなければならない、税制を講ずる場合にはその実態をできる限りよく把握した上で講ずるのが当たり前の話と考えておりまして、先ほどの内閣府で行われました実態調査でございますが、千以上のNPO法人を対象に、この措置を検討するに当たってのアンケート調査を出させていただきました。それに基づいて今回の措置を組み立てさせていただいているということを申し上げたわけでございます。

 ただ、申し上げたかったのは、残念ながら、千以上のアンケート調査をお願いしたところ、実際回答していただいた方というのが限られていたという面もあったということを申し上げたかったわけでございます。

○櫻井充君 じゃ、数少なく返ってこられた方が今回の政府のパブリック・サポート・テストの計算式をお認めになっていますか。

○政府参考人(尾原榮夫君) 今回の政府案についていろんな御意見が寄せられていることは承知しておりますが、我々、実態調査に照らしまして、また税の適正公平な課税というような面に照らしまして、さらにはNPO法人に外部資金を導入しやすくするという観点から考えまして、適切な措置であるというふうに考えております。

○櫻井充君 何か答えになっていなくて、先ほども答弁ありましたけれども、二年以内に何かつくんなきゃいけないということで、とりあえずつくってみたということなんじゃないかという感じがします。

 ちょっと別な観点からいきますと、今度はもう一つ、大口寄附とか助成のカウントの上限を設けています。上限二%です。野党案は五%ということになっています。ここも要件きつくなっていますけれども、これはなぜですか。

○政府参考人(尾原榮夫君) 寄付金等の二%の要件と申しますのは、もちろん二%以上の寄附をいただいても結構でございますけれども、パブリック・サポート・テストについては二%までカウントするということでございます。これは、NPO法人が偏った活動がなされていないかどうかというような観点からの二%の基準でございまして、アメリカにおいても同様の考え方からの基準が導入されているというふうに承知しております。

○櫻井充君 それでは、少なくともNPOが、じゃ政府の考え方で結構でございますが、運営していく中でどういう収入が主たるものになるべきだとお考えですか。どのものが主たる収入となって、そしてもっと言えば、どういう所得の割合になっていくと理想的なNPO活動ができるというふうにお考えですか。

○政府参考人(尾原榮夫君) NPO法人の所得なりの構成がどうかということでございましたが、これはNPO法人のそれぞれの活動の方針あるいはサポートされる状況等によって決まってくるんだろうと考えております。

 ただ、今回の優遇税制の対象となるためのパブリック・サポートの基準は、総収入金額を分母にとりまして寄附金等を分子にとる、その比率だけで判断するということになっておりますので、直接にどういう収入構成がいいのかということについては、税の方では判断をしていないわけでございます。

○櫻井充君 収入構成を判断していないからこういう規定が設けられるんじゃないかと思うんですよ。実情がどうなのかということだと思います。

 そしてもう一つ、今回大きな問題だと思うのは、NPO側の優遇税制というのは全くないんですね、今回の措置の中で。例えば、野党案の場合には、収益事業への税率を一律二二%にしようじゃないかと、こういう優遇措置を設けようという案も出ているわけです。しかしながら、政府の方ではNPO側の優遇措置というのは全くございません。これはなぜですか。

○政府参考人(尾原榮夫君) 今回の制度を内閣府と相談しながら構築するに当たりましては、繰り返しになりますが、実態調査に基づいてやっているわけでございます。

 その実態調査によりますと、現在、法人税を申告しておられるような法人というのはごくわずかであり、赤字法人が多い、申告していても非常に少ない金額のものになっている等の実態が判明したわけでございます。

 やはり、今一番NPO法人を税制面からやるにふさわしいといいましょうか、適切なことは、財政基盤の弱いNPO法人に対して外部資金をどうやって入れやすくしていくかというふうに考えまして今回の措置となっているわけでございます。

 したがいまして、NPO法人自体に対して措置をするという考え方はとっておらないところでございます。

○櫻井充君 今、外部資金が入りやすいような状態をつくるとおっしゃいました。そうすると、パブリック・サポート・テストを初めとした認定要件がきついわけですから、優遇税制を受けられるというその認定要件がきついわけですから、外部からの支援を受けにくくしているんです、政府提案は。野党提案の方がはるかに外部からの収入が受けられるようになっていますよ。今おっしゃっていることは自己矛盾じゃないですか。

○政府参考人(尾原榮夫君) 繰り返しになりますが、今回の措置は、寄附金優遇措置を設けることが一番大切であるということで今回の優遇措置を講じているわけでございます。

 なお、寄附金の優遇措置、これも繰り返しになりますが、税の減免を伴うだけに、やはりパブリック・サポート・テスト等の要件によりまして公益性を客観的に担保する基準はどうしても必要であろうというふうに考えたところでございます。

○櫻井充君 委員長、答弁になっていません。

○委員長(伊藤基隆君) 続けてください。

○櫻井充君 答弁になっていません。
 私が聞いているのは、外部からの資金をどう流入させるかということです。流入しやすいようにしなきゃいけないと今おっしゃったじゃないですか。要件が厳しいということは流入しにくいことじゃないですか。違いますか。私はそこの点について聞いているんですよ。どうお考えかです。そんなあなた方の考えを聞いているんじゃないですよ。私の今の質問にちゃんと答えてくださいね。

○政府参考人(尾原榮夫君) 外部資金導入を容易にするといいながら、要件が政府案では厳しいので外部資金が集まりにくいではないかというお尋ねであったかと思います。
 私、説明申し上げましたのは、税の優遇措置を設けまして外部資金を容易にさせるためには公益性を担保する必要がある、その外部資金を導入することを容易にさせるということが重要な政策目標だと、これもわかっております。

 ただ同時に、どうやって税の一種の使われ方として公益性を担保していくか。そういう意味で、そういう客観基準があるのとないのと比べまして、その限りにおいては対象法人が絞られてくるわけでございますが、それは税の考え方から出てくるところでございまして、これをもって直ちに外部資金が集まりにくくなっているということにはならないのではないかと思っております。

○櫻井充君 それでは、政府提案と野党提案では、どちらが外部資金が流入しやすい、集まりやすくなるとお考えですか。

○政府参考人(尾原榮夫君) 政府で考えております適用要件より、ただいま御提案のございます四党からの要件は緩やかなものになっているわけでございます。したがいまして、その限りでは全般的に外部資金が集まりやすいということなのかもしれませんが、一方において、公益性の担保。つまり、租税の減免を伴う以上、その公益性をどうやって担保するかという点については、政府の考え方とその点において異なる点があるわけでございます。

○櫻井充君 そうしますと、今回の、政策的なものとすると公益性が重要であると。NPOの運営が先ほど赤字だということをおっしゃっておられましたけれども、赤字でつぶれても仕方がない、もうこの際だから公益性が担保されるようなところだけちょっと残せばいいという考え方になるんじゃないですか。

 もう一つ、野党案の提出者の方にお伺いしますが、野党案では今の話ですと公益性が担保されないような答弁でございます。いかがでございましょうか。

○委員以外の議員(江田五月君) もともと何をもって公益かという判断に食い違いがあるのかと思いますが、私どもは、公益というのは、政府がこれが公益ですよといって枠をはめてしまう、そういう公益の判断をそろそろ変えた方がいいんじゃないかという考え方でおりまして、したがって、パブリック・サポート・テストというようなものもそういう考えにのっとって導入をしようとしているものでございます。

 そもそもNPO法人、認定されるものはもともと認証されているNPO法人ですから、その認証の段階で公益性の一定の判断というものはあるわけですね。それに加えて一定の要件をさらに付加しているわけでございまして、例えば、政府案の方は一市区町村を越えるような活動でなきゃいけないというようなことを言われるんですが、なぜかといいますと、いや、それは国税だから、一地方の活動だけだと国税がいろいろ言うのはおかしいと言うんですが、それだったら、一市の中で営業しているような八百屋さんや魚屋さんは、じゃ所得税を納めなくてもいいのかというようなことになるわけで、何を言っているんだろうという気がいたします。

 私どもの方で公益から外れるものが、どんどんここでこの税の優遇を受けるようになるということは考えておりません。ありません。

 さらにもう一点言いますと、税というものはとにかく国がちゃんと集めてそれを補助金の形で出していくものなんで、民間の中で、市民の中で資金が回っていくようなことはけしからぬというような、そういう頭があるのではないかという気がいたしますが、それもおかしい。自分のところで全部資金を管理しなきゃ心配で寝られないというような、そういう頭を変えてほしいと思います。

○櫻井充君 今の中でまず大事な指摘は、認定を受ける時点で公益性は担保されているということなんだろうと思います。

 ですから、政府がおっしゃっているような、ここで公益性を担保するものじゃないんですよ。いかがですか。

○政府参考人(尾原榮夫君) NPO法人制度の認証というのは、法人格が認められるということが主たる法的効果かと思います。今回お願いしておりますのは、そのようなものの中から税制の優遇措置の対象となるような法人をどのような客観的な明確な基準で担保していくかということでございまして、その点は異なるであろうというふうに考えております。

○櫻井充君 それでは、こういう理解でよろしゅうございますか。今回の優遇税制が受けられないところは公益性がないと、そういうことですね。

○政府参考人(尾原榮夫君) 今回の対象とならないところでございますが、それは単に今回の優遇税制の対象とならないということだけであって、今回の優遇税制の対象にならないからそのNPO活動が重要か重要でないというようなことを言っているわけではございません。

○櫻井充君 今そういうことを言っていないじゃないですか。民主党案は要件は緩いかもしれないけれども、これで公益性が保てるかどうかという、そういう答弁なさったじゃないですか。ですから私は聞いているんですよ。政府が言っているこの条件でなければ公益性は担保されないんですね、それ以外、外れたところは公益性じゃないんですねと。つまり、もう一つ言うと、もう少し緩くたって公益性は担保できるんじゃないですか。我々そう思っているんですよ。ですから、今おっしゃっているのはまさしく公益性を担保するために要件をきつくしているんだと、そうだったじゃないですか。

○政府参考人(尾原榮夫君) 私が申し上げておるのは、税の優遇対象となるためには、租税の減免を伴うという観点から、納税者の納得なり信頼を得る制度でなければならない、そういう観点から公益性を担保していく必要があるというわけでございまして、もとより、NPO法人が対象とならない活動自体を、何といいましょうか、重要であるとかないとか言っているわけじゃない、税の面から見ての公益性、こういうことでございます。

○櫻井充君 いや、今、納税者の方が納得されるかどうかとおっしゃっていましたね。外交機密費どうですか。(「関係ないよ」と呼ぶ者あり)いや、関係なくないですよ。言っておきますけれども、こういう形で国に納めていること自体を納得していない人たちだっていっぱいいるわけですよ。自分たちがこういう活動をやっている人たちを支えていきたいと思って寄附をしようとしたって全く優遇税制が受けられない。おかしな話じゃないですか。そこはおかしくないですか。

 じゃ、国がこれから全部仕事をしていくのかどうかということになると思いますよ。国は大きな借金を抱えていますよ。この借金は、すべての事業をこれからずっと継続して国がやっていくのか、ある部分、国が持っている部分を地方に渡したりとか民間に渡したりとか、そうやって国が小さな政府を目指していくのかこれから議論になってくると思います。こういうことをやっていったら育たないでしょう、NPOが。違いますか。

○政府参考人(尾原榮夫君) 大変難しいお尋ねをいただきました。
 今回の優遇税制の認定要件の問題でございますが、今私どもの方から申し上げておりますのは租税の減免を伴う措置でございますから、しっかりとその事業にその寄附金が充てられる、あるいはその他の要件がたくさんございますけれども、事業が継続する等々いろんな要件が書いてあるわけでございます。

 今のパブリック・サポート・テストといいますのは、NPO法人を、いわゆる政府側がこれが公益性がある、ないという判断をするのは適当でございませんので、客観的な指標で、どれだけの方からの寄附金を受けられているのかというような観点から公益性を判断していくという仕組みになっているわけでございます。

○櫻井充君 今、どのような方から寄附金を受けられるから公益性だとおっしゃいました。じゃ、三千円未満の寄附はカウントしていないじゃないですか。公益性をどうやって数えるんですか。

○政府参考人(尾原榮夫君) 三千円の足切りの問題でございますが、二点ほど申し上げさせていただきたいと思います。

 一つは、現実の寄附金の実態を見ますと、大体三千円ぐらいは寄附をなされているなという統計がございます。

 それからもう一つ、現実に国税庁が今回お認めいただきますればそれに基づいて認定をしていくわけでございますが、少額の寄附についてどうなっているかというところまでお互いにチェックをするということになりますと、手間も大変煩瑣でございます。したがいまして、三千円というような足切りで申請者側あるいは認定側も事務がスムーズに行えるような、こういう配慮から三千円をつくっているものでございます。

○櫻井充君 どれだけ多くの人から寄附をしてもらっているから公益性を担保するとおっしゃったじゃないですか。煩雑だから三千円以下はすべて切り捨てると言っているんじゃないですか。おかしい話じゃないか、自己矛盾じゃないですか、これも。言っておきますけれども、私の後援会の、政治活動を支えてくださっている方々は一口千円で寄附していただいていますよ。みんながみんな三千円以上じゃないですよ。

 それからもう一つ、民主党案ではボランティアの部分もカウントすべきじゃないかと。ボランティアという活動は日本ではすべてが無償だと言われていますけれども、決してそういうことではなくて、自発的にいくものはすべてボランティア活動だと私は思います。

 そういう意味において、野党案の中には、その部分も優遇税制が受けられるような形にすべきじゃないかという話も出ているわけです。これこそまさしく公益性じゃないですか。みんなが支えていくということになるんじゃないですか。そういう小口の人たちはカットする、その考え方はおかしくないですか。

○政府参考人(尾原榮夫君) この辺も、円滑な執行をするにはどうするかということで内閣府とも協議をしてまいりました。NPO法人の実態調査からいたしますと、今の三千円ということでございますが、個人の寄附については七割程度、法人の寄附については九割以上がこの基準を満たしているということが判明しておりまして、そういう意味で厳しい基準とは考えていないわけでございます。

○櫻井充君 煩雑だからカットされる人が出てくるわけですよ。そうでしょうか。自分が支えているんだというところを認識してもらうということ自体、私はすごく大事なことなんだと思うんですよ。

 そういう意味で、今回もう一つ、寄附側の優遇として一万円の足切りがあります。これは多分、政治資金ですか、あれと同じような形で一万円で足切りされているんだろうと思いますが、今回野党案の提案の中には、一万円未満も寄附側の優遇税制を受けられるようにするという提案がございます。これ、実を言いますと、今申しました点から考えると若干整合性がないんじゃないかというふうに思いますが、いかがですか。

○委員以外の議員(江田五月君) 野党案は、「居住者が特定寄付金を支出した場合には、特定寄付金の額の合計額を所得から控除することができるものとし、現行の一万円の裾切りは廃止するものとすること。」となっておりまして、認定NPO法人に対する寄附だけではなくて、特定寄附金すべてについてこの一万円のすそ切りというものを廃止するということにしておりまして、今の制度と野党案が提案しております新しい制度との間は違っておりますが、この法案が通ることによって今の制度も変わるわけでございますから、その点の整合性はとれていると思っております。

○櫻井充君 改めてお伺いいたしますが、その寄附側の優遇も一万円という足切りをなくしちゃった方がいいんじゃないか、そう思いますが、いかがですか。

○政府参考人(尾原榮夫君) 今の一万円の足切りといいますのは、寄附金控除の対象となる寄附金の額は、一万円を引いた残余の部分が対象になる、所得の一定限度等々の範囲内である必要がございますが、という問題でございます。

 これは、この制度は寄附金を奨励するということで設けられているわけでございまして、そのような奨励という見地から考えますと、通常どなたもがなさるような、一定限度額を超えてなさる、そのようなものを優遇税制の対象にするという考え方で成り立っているわけでございます。そういう意味で、この一万円という足切りといいますのは合理的な理由があるというふうに政府は考えているわけでございます。

○櫻井充君 どこが合理的なのかよくわかりませんが、その優遇を受けられる人たちはある程度の献金なり寄附なりをしなきゃいけない。しかし、収入の少ない方々がわずかなお金でも寄附をされる、そういうものが本来であれば優遇税制を受けられていくというのは、私は当然のことなんじゃないかと思います。本当はそのぐらいの額を寄附したいと思っても、手にない方々もたくさんいらっしゃいます。しかしながら、自分たちが例えば社会を支えていきます、政治活動を支えていきますという思いで寄附されている方々がいらっしゃるとすれば、その方々にも優遇税制が受けられるようにするというのが私は本質論じゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(尾原榮夫君) この寄附金税制は税制の優遇措置でございますので、所得がない限りは税負担の問題が生じない、よって寄附金税制の対象にもなってこないわけでございまして、これは税の仕組み上やむを得ないことであろうというふうに考えております。

○櫻井充君 やむを得ないじゃなくて、そこを変える意思がおありかどうかということじゃないですか。今までの制度があって、もうやむを得ないと言ったら何も変わらないじゃないですか。そこを言っているんですよ。
 大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(宮澤喜一君) 一つは税の執行上の話と申しておりますが、もう一つは、しかし税負担をしていない人にはどうもどうしようもないと、こういう気持ちがあるようですが。

○櫻井充君 もう一つ。
 赤字であるというNPOを何とか助けてあげるためには──その前にちょっと基本的なことをお伺いしたいんですが、NPOの場合には、非関連事業収入にかけられる税率と、それから本来事業収入の税率というのは何%なんですか、今。

○政府参考人(尾原榮夫君) NPO法人の課税でございますが、公益法人課税と同様に、三十三の収益事業に該当する場合には納税義務が出てくるわけでございます。それでその税率でございますが、NPO法では普通法人ということで三〇%の税率がかかることになりますが、ただ、所得八百万円以下までは二二%の税率という仕組みになっております。

○櫻井充君 本来であると、非営利という考え方からすれば社会福祉法人と同じ要件でもいいんじゃないか。つまり、収入八百万だけじゃなくて、それを超えたとしても、少なくとも本来事業収入の分に関していえば、これは本来事業収入に関しても今三〇%ですよね。これは二二%でもいいんじゃないかと思うんですが。

○政府参考人(尾原榮夫君) 今の税率の問題をもう一回言わせていただきますと、基本税率は三〇%になりますけれども、八百万円までの部分は二二%の税率が適用になるということでございます。

 それから、社会福祉法人と同じような扱いにしてはどうかというお尋ねがございました。
 実は、この社会福祉法人でございますが、社会福祉法上厳しい指導監督がなされておりまして、また困窮した人に対してもサービスの提供が義務づけられているわけでございます。そのようなことから、社会福祉法人の営む医療・保健業については非課税というような取り扱いになっているのはそのとおりでございます。

 しかし、この収益事業課税といいますのは、民間で営んでいるものと競合しているかどうかという判断から事業の指定をこれまでもやっているわけでございまして、医療・保健業について申し上げますれば、通常の法人から協同組合、公益法人と多々ございまして、そういう意味で、基本は課税を行っていくのが基本というふうに考えてございます。

 したがいまして、NPO法人につきましても、三十三の収益事業に該当すれば課税が行われるという考え方になっております。

○櫻井充君 その中で、NPO法人が介護に参入した場合、これは結果的には課税されることになったんですか。

○政府参考人(尾原榮夫君) NPO法人の営む介護事業でございますが、この介護事業、幾つかの収益事業に分解されるようでございますが、基本的に課税対象になってくる、こういうことでございます。

○櫻井充君 これも社会福祉法人との整合性という点から考えるとちょっと合わないんじゃないかと思いますが、それはいかがですか。

○国務大臣(宮澤喜一君) それはそうではなくて、社会福祉法人だけを優遇していまして、その他の法人は全部課税にしておる。
 問題は、どうして社会福祉法人だけがそうされているのかということであれば、それはいろいろ議論のあるところですが、NPOであろうとその他の公益法人であろうと、みんなそれは課税でございます。

○櫻井充君 そこはちょっと後でまた議論させていただきたいと思います。
 それともう一点ですけれども、いわゆるみなし寄附の控除といいますか、非関連事業収入から本来事業を行っていくために収入を移転するような場合、野党案ではみなし寄附の控除を認めています。政府提案ではそこは認めてきていません。
 これについて、政府の方とそれから野党の提案者の方に答弁をお願いしたいと思います。

○政府参考人(尾原榮夫君) 政府の考え方から申し上げますと、NPO法人を政策的に支援する上で、その実態に照らしまして、本当に必要かつ有効な措置は何かという観点から寄附金控除等の特例措置を講ずることにしてございます。

 みなし寄附金のお尋ねがございました。
 収益事業を行っておりましても、法人がそもそもわずかでございます。また、収益事業を行っている法人でも法人税を負担していない法人がほとんどであるということから、これらの措置は有効なものとは考えがたく、今回講じないことにしているわけでございます。
 なお、みなし寄附金の問題でございますが、公益法人等に対します課税のあり方とも関連してまいります。今後、認定NPO法人の実態等を見きわめました上で、また公益法人等の課税のあり方も検討しながら検討していく課題であるというふうに考えております。

○委員以外の議員(江田五月君) 政府案の策定に当たって、どの程度NPO活動をやっている皆さんの実態調査をされたか、声を聞かれたかということなんですが、先ほど九月のアンケート調査とか言われました。しかし、その段階ではパブリック・サポート・テストの中身なども何も明らかにならずに、ただ聞いただけの話なんですね。

 先日、麻生大臣が、自分の知っている限りで、自分は二つNPO団体を知っている、一つはこの基準だと落ちるが、もう一つは通るから、まあ五割は認められるんじゃないかというような、まあこれは麻生流の言い方ですから、それをそのままあれこれ言いませんけれども、やっぱり声を十分聞いてない。

 私ども、野党案をまとめるに当たってさまざまなNPO団体の皆さんから意見を聞きました。また、私どもがまとめた案を、パブリックコメントということで案についての意見も聞きました。そうした中で、NPO団体の皆さんが、こういうものをひとつぜひやってほしい、自分たちの活動の中でこういうものがあったら随分活動がしやすくなるという要望がございました。

 そういう中で、一つこれは外せないといって言われているものが今のみなし寄附金制度でございまして、そういうわけで私たちはこれを採用したわけでございます。

○櫻井充君 ぜひこれは政府にお願いですけれども、まず、もうこのままこの法案を変える意思はないんでしょうから、これを施行したと仮定いたします。こういうことを言うと、前にも宮澤財務大臣から、今審議している最中だからそういうことを言っちゃおかしいと言われましたけれども、そうであれば、もう少し積極的にこの与党案を見直すというような意見があってもいいはずですが、全く与党案見直す気がないのでしょうから、そういう意味で申し上げておきたいのは、この認定要件で実際に認定されて、ほんの数%しかもし認定されないようなことがあったとすれば、私はこれは積極的に見直していかなきゃいけないんだと思うんです。

 それは、最初の宮澤財務大臣のお話がございましたけれども、NPOをこれから育てていくんだと、そういうことであったとすれば、政策的に考えていけば、全体の数%しかこういうものが認められない、それからNPO側が赤字で非常に苦しんでいる中でそこの優遇税制も何もないというようなことであったとすれば、その現実をどうやって解消していくのかということがこれから我々国会でやっていく仕事なんだろうと思うんです。

 そういう意味で、もしこれが施行された上でどうもふさわしくないようだというふうに判断されたならば、即刻この要件などを実情に合わせて変えていただきたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。

○国務大臣(宮澤喜一君) 今回の御提案を申し上げました過去の経緯等々、御存じのとおりで、政府はよくやったといって褒めていただけるかと思いましたが、必ずしもそうではなくて、また四党提案もいろいろのお考えに立っておられます。それは、私どもも初めてやることでございますので、いろいろな御質問あるいは四党提案も大変な参考とさせていただきたいと思っております。決して朝令暮改をするという気持ちはございませんが、ただし、初めてやったことですから改良の余地があるということも十分あり得ることであって、それは御質疑にかんがみまして十分まだ勉強をさせていただきたいと思っています。

○櫻井充君 ありがとうございます。実情に合わせてぜひ変えていただきたいと、そう思っております。

以下略


○大渕絹子君 それでは、今回のこの議論を踏まえて、できるだけ多くのNPO法人が適用になるような条件づくりといいますか、そういうものをしていただきたいというふうに思います。そのことを要望しておきたいと思います。

 それで、野党の法案についてちょっと確認だけさせていただきたいと思います。
 ボランティア活動に関する費用を支払った場合等の寄附金控除の特例について規定する租税特別措置法第四十一条の十六において、特定非営利活動法人または民法第三十四条により設立された法人で公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定める活動とありますけれども、著しくとするのは、地方税法改正法案の方の第三十四条あるいは第三百十四条の場合の取り扱いと比べて厳しい要件を課しているものと考えますが、その理由をまずお聞かせいただきたいと思います。

○委員以外の議員(江田五月君) この関係は少し説明を要するのであります。
 NPO法ができて二年以内に税を検討すべしという附帯決議に基づいて、私ども、全国のNPO団体の皆さんといろんな話し合いをしてまいりました。そうした中で、NPOに外部資金が集まってくる税制をつくってほしいということのほかに、NPOが行う例えば阪神・淡路大震災における救援の活動、その活動にみんながボランティアで参加をしてくる、そのときにその参加をしてくる人に特定の負担が生ずるわけですね。あるいはそういう参加をしてくる人に住居を提供する、そうした提供される方々にも特定の負担が生ずる、これを何とかカバーできないかというような意見が随分上がってきて、ボランティア費用というものを何か税制上見る必要があるということを考えたわけですね。

 そこで、NPO法人に外部から資金が入ることについては、これは寄附金税制ということで、個人の場合ですと特定寄附金ということでよろしいわけですが、その場合にはそのNPO法人に着目をしてこれを認定NPO法人ということでこの基準をつくればいいわけですが、そうした活動についてはなかなかそうはいかないということで、しかし、NPO法人なりあるいは国なり地方団体なり特定公益増進法人なりが行う活動に対するすべてのボランティア参加費用は税の優遇を受けられるとするのもちょっと行き過ぎではないかということで、法人に着目をして決めるのでなくて、活動に着目して、それは認定NPO法人でなくても、ある一定の活動があって、それを政令で定めれば、そこに対するボランティア費用というものは特定寄附金の中にカウントできるということで、そういう活動ですから、ちょっとやや高目ということで「著しく」という言葉を加えておると。それほど高いハードルをつけておるわけじゃありません。

 なお、地方税のことをお話しになりましたが、地方税の場合はむしろ法人に着目をして、都道府県知事が一定の法人の場合に認定をして地方税についての免税措置を講ずることができるように条例で定めようと。その条例の場合に、国の法律と若干ハードルの高い基準をつくっても、それは地方のそれぞれの自主性だと思っております。

○大渕絹子君 その「公益の増進に著しく寄与する」ということを定めたその判断をする場合に、極めてその判断の客観性あるいは公平性、公正性というようなものが担保できないとならないと思いますけれども、法案ではどういうことになっておりますか。

○委員以外の議員(江田五月君) 政府の法案はとにかくもう認定要件が何もかにもすべて政省令にゆだねられているということになっておりますが、私どもはそうではなくて、極力法案の中に書き込んで、法案の中に書き込まれないものは後から政省令でいろいろ難しいハードルをつけるようなことができないようにしてあります。

 ただし、ただいま申し上げた、活動に着目したボランティア費用の特例については、これはなかなかそうはいかないので政令で決めるということになっておりまして、この場合には、この法律が皆さんの御理解をいただいて制定された後に、客観性、公平性、公正性がちゃんと担保された政令をつくっていきたいと思っておりまして、その点はよく注意をしてまいります。

○大渕絹子君 政府案と野党案の一番の違いは、もちろんその寄付金の控除を受ける要件についてどう決めるかというところだったと思いますけれども、この野党案の施行によってNPO法人の活動にどういう促進がなされていくのかということをお聞かせください。

○委員以外の議員(江田五月君) 趣旨説明の中で、政府案によると既存のNPO法人の数%も認定されないだろうと言われていると私は申しました。数%も認定されないというのはまだ甘い表現でして、現実にNPOの皆さんから聞くと、限りなくゼロに近いという怒りの声が上がっているようなことでございます。

 私は、NPO団体の皆さんに、それでも政府によって認定されるように自分自身の姿を変えるようなことはせずに頑張ってほしいということを言っているんですが、私どもは今、NPOで活動している皆さんの六割なり七割なりの団体が認定されるように要件を決めているわけで、こういう要件で、しかも初年度はパブリック・サポート・テストについても五分の一という、最初の期間ですから助走的な措置、つまり自転車に乗るとき、乗らない人を後ろから支えて押してあげるという、そういうような措置まで加えてNPOの活動を支援する、促進するということで、今三千五百ぐらいでしょうか、NPOに認証された法人がございますが、私どものようなこの制度ができますと、もっともっとNPOとして認証を受けて活動をしていく団体がふえてくる。それによって確かに、そこに外部資金が投入されることによって国税の収入というものが若干は減るでしょう。減るけれども、それをはるかに上回る民間の活動が行われるようになって、政府もスリムになり、さらにもっともっと質のいい活動で地域社会が豊かになって暮らしやすくなっていくということで、私は大変大きな効果が生まれてくると思っております。

○大渕絹子君 ありがとうございました。

以下略


2001/03/27

戻るホーム主張目次会議録目次