1985/04/09

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102 衆議院・大蔵委員会,内閣委員会,地方行政委員会,文教委員会,社会労働委員会,農林水産委員会連合審査会

補助金一括法案について 2


○江田委員 補助金一括法案について、昨日総理に質問をいたしまして、その総理に伺ったことを繰り返すような形にあるいはなるかもしれませんが、大蔵大臣にただしておきたいと思うのです。

 総理は心配ないということをおっしゃいましたが、やはり地方自治体は随分不安に思っておるんだと思います。三月議会で予算を決めて、その前に国の方から、これこれの補助金については減額になるけれども、しかし一般財源の方で措置をするから、交付金でちゃんと出すからということは言われておる。しかし、一体どの程度が措置され、あるいはどういう形で来るのか、いつ来るのか、いつまで続くかもわからない。その中でどうも先行き不透明という感じが強いですね。

 自治体の方はそういう感じを持っておるんだと思うのですが、これで一体、本当に財政再建に資することになるのかどうか。こういう不透明感というものを自治体が感じておるということについて、大蔵大臣は一体どうお考えでしょうか。

○竹下国務大臣 まず、財政再建あるいは財政改革のときに国の財政というものを担当しておる立場から申しますと、どこに着目するかというと、一般歳出の四割を超すいわゆる補助金等に着目をしていく、それでいろいろな作業をやってまいりました。が、やはりその制度の施策の根源にさかのぼれば、国と地方とのあるべき姿、それに伴う費用負担のあり方ということについて検討が進んでいくある種の必然性というものが私はあるのじゃないか、それが今回の措置となってあらわれておるわけであります。

 しかしそれはいわゆる地方に対する心配を与えているのじゃないかという点については、私の立場から言いますと、地方財政計画という土俵が一つあって、したがって、その地方財政計画というマクロなところに大蔵省としては着目をしての対応策を考えるわけでございますが、さらに自治省におかれて、それをミクロな立場から各市町村に対して心配がないというところのいわゆる周知徹底方が行われるならば、私は国民でありかつ住民である皆さん方もいわば理解、協力していただける課題ではなかろうかというふうに考えております。

○江田委員 はっきりしないんですけれども、大蔵大臣おっしゃるように財政危機を打開をしていく、国の財政を再建をする、そのためには国と地方との費用負担のあり方も考えていかなければならぬ、これはそうだと思うんです。じゃどう考えるのか。国と地方の費用負担のあり方についてこうこうこういうような考え方を持って、あるいは行政改革と財政再建はやはり絡んでいるわけですから、これからの行政改革とも絡めて、事務は国と地方でこういうふうに分け持つんだ、その財政負担はこういうふうに基本的に考えがあるんだ、そういうものがきっちりあってその上でこういうことになってくるならば――そうすると、これは大きな行政の変革であり財政の改革であって、大体今までの財政構造が壁に突き当たったのが今の財政危機ですね。ですから、どうしてもこれまでの財政構造を大きく変えるという根本的な考え方、国と地方とのあり方についての一つの哲学があって初めてこれからの指針が出てくるんだと思うのです。そういうものがあってというようにおっしゃりながら、しかし一体どういう考え方なのかさっぱりわからない。そうすると、今回のこの措置というのはいかにも財政のつじつま合わせにすぎないのじゃないか。財政再建なんておっしゃるけれども、ただ数字をあれこれいじるだけで、いかにも俗に言う大蔵省的といいますか、政治家としての考え方とはおよそ違う単なる数字合わせじゃないかという批判が出てくると思うのですが、いかがですか。

○竹下国務大臣 いわゆるつじつまが合わなければ予算にならぬわけでございますから、これはつじつまを合わせなければいかぬわけであります。が、基本的に、今江田さんおっしゃるのは、いわば地方自治のあり方というものはこのようなものであって、国の役割分担とは外交、防衛あるいは教育、福祉それぞれ基本的にあるべきであって、あとは地方がその自主性において運営していくというのも、一つの考え方だと思います。

 しかし、残念ながら我が国の税源というものが非常に偏ったところにある。岡山県と島根県ではかなり違う。そうすると国の関与するところの調整というものが必要になってくる。そういう考え方の中に仕組んでこられたいろいろな予算の柱が出てきておるわけです。その一つ一つの根源をさかのぼって国と地方とのいわゆる負担区分はどのようにあるべきかということは、やはり考えていかなければならぬ。そういう議論もしました。一年かかって本当にあるべき補助率を全部決めて、それから次のときからお願いするのが筋じゃないか、その議論もしました。それで、例えて言うならば、社会保障に関するならば、昭和二十一年以来の議論の経過をずっとやってみました。しかし、それをやるという基本的な認識を持ちながらも、今日の時点でやっぱりひとつ地方と国との費用分担をしようというのが今回お願いしておるものでございまして、したがって、社会保障については一年以内に引き続き検討して、そのあるべき姿をきちんとさせよう、そして他のものにつきましては、必要に応じ、これも費用負担のあり方ということについて検討しようということで、きょうお願いをしておる。まず初めに哲学ありき、その後この法律ありきというところまでいきたいと思いますが、それは江田さんの時代まであるいは見送らなければならぬかな、こう思います。

○江田委員 なかなか基本的な考え方というものを明らかにしていただけないんですが、しかし、いろいろな議論がありますから、例えば教育の分野であっても、今教育は国というふうにおっしゃったけれども、必ずしも教育は国が全責任ということがいいのかどうか。教育においてもいろいろな分権ということもあり得ると思いますし、そういう考え方をしっかりさせるべきじゃないかというのに対して、なかなかそうはいかぬというお話ですけれども、しかし大蔵大臣、さあいよいよこれからと旗上げをされる大蔵大臣が「日本列島ふるさと論」なんという、大蔵大臣がそういうことでは困るんじゃないですか。大臣の「日本列島ふるさと論」の中では、この国と地方との分担というのは一体どうなっているのですか。

○竹下国務大臣 まだ選挙演説のスローガンのようなものでございまして、いわゆる自治という立場の上には立たなければいかぬぞよということを観念的に申しておりますが、それを政策の整合性の中で並べていくほど、私もまだ成長した政治家ではないと思っております。

○江田委員 そこで、勉強会をと言われるわけでしょうから、ひとつ大いに勉強会をやっていただきたいと激励いたしますが、根本的な立場がはっきりと確立してないとおっしゃるならば、やはりこの措置はとりあえずはことし限りという、来年は改めて考え直すということでなければならぬ。これからもずっとこれで続いていくのか、それともこの措置はことし限りなのか、そこはいかがですか。

○竹下国務大臣 これは法律があくまでも暫定措置になっておりますから、一年限りの法律であることは事実であります。

 しかし、一年限りで毎年同じものを出していくかどうか、こういう議論もやりました。率直に申しまして、いわゆる財源確保法につきまして、特例公債を発行するに当たっても、一年一年やった方がむしろみずからに対して財政節度を厳しく教えるためにもいいだろうといって、一年一年やってまいりました。だからこれらの法律も一年一年やっていくのが本当ではないか、こういう議論もしてみましたが、いずれにせよ、ことしの場合はこの一年の暫定措置ということでお願いして、社会保障は先ほど申しましたように、三省で協議して、各方面の意見を聞いて、なかんずくその意見とは、まず国会ありきというので、国会の意見を聞いたりしながらそれを詰めていこう、そして、他の投資的部門とかということになりますと若干違いますのは、年々それぞれの財政事情に応じて補助率等が違ってきた場合もございますので、それらの経緯をも踏まえながらそれも必要に応じて検討していこうということでございますので、ことし一年でお願いをしました。来年もまた同じように一年でお願いしますという精神ではございません。

○江田委員 昨日総理は、私がお茶の間の声というのは非常に怨嗟の声にあふれておるというとちょっと大げさだけれども、しかし恨みつらみが重なっているよと申し上げたら、総理の方は、いやそんなことはない、お茶の間はみんな安心をしておる、なぜなら、別に国が金を出さないからといってすぐに国民に負担がかかるわけじゃなくて、地方がちゃんとその分を見るわけだから、こうおっしゃって、実質的に、最終的に予算規模がそれぞれの項目で減るというようなことはないんだ、こうはっきりおっしゃったわけですが、これは大蔵大臣、よろしいんですか。

○竹下国務大臣 ちょうどそのとき私おりませんでしたが、総理は恐らく、社会保障なら社会保障は末端の給付水準はちゃんとスライド分も含めて従来と変わらないようにあるのでございますよ、だから負担区分は違いましたが、末端のサービスの点においては決して落ちませんという意味でおっしゃったと思います。もう一つ、投資的経費の場合におきましては、国費はなるほど減りました、しかし事業費でこのニーズに応じておりますよという意味のことをおっしゃったと思います。予算全体は、一般歳出でわずかながらトータルですれば減額になっておることは事実であります。

○江田委員 ですから、末端のサービスについては、もちろん金は減ったけれども質が上がったなんて言われたらこれは困るわけですが、金額の面で水準は下がらない、こういう認識でよろしいんですか。

○竹下国務大臣 正確に申し上げますならば、社会保障関係についての末端の給付水準というのは従来どおり、そしてプラス・スライド分、こういうことでございます。

○江田委員 社会保障以外はいかがですか。ただいま私は文教という委員会の立場でお願いをしておるのですが、文教についてはいかがですか。

○竹下国務大臣 文教については、いわゆる国庫負担法の根幹はそのまま守ってまいります。今度適用除外をいたしましたのは、あれは教材費でございましたか、これは既にいわゆる同化定着しておりますということであります。

○江田委員 文教の場合ですと、教材費とかそれから旅費とかあるわけですが、じゃ教材費でとってみて、サービスの水準は下がらないんだ、そうすれば、地方自治体で組んでおる予算、これが基準財政需要額というものが増額になっておりますから、従来よりも二・八%ですか、増額した予算が組まれておらなければ従来どおりということにはならないということになるかと思うのですが、文部大臣いかがですか、そういうことになっておりますか。

○松永国務大臣 先生御指摘のとおり、文部省関係の国庫負担法から外す分でございますが、それは旅費と教材費でありまして、旅費につきましては前年度と同じ額の財源措置、教材費については二・八%増の財源措置がなされることになっておるわけであります。

 問題は、その財源措置に基づいて市町村がそういう予算を組んでくれるかどうかという問題も事実上の問題としては出てくるわけでありますが、文部省としては、既に都道府県教育委員会を通じまして、市町村に対して今までと同様の事業が執行できる旨の通知をしておるわけでありますが、この法律が通りますとさらに詳細に通知をいたしまして、そして教材の整備がなされるように指導してまいりたい、こう考えておるわけでございます。

○江田委員 今までと同様の事業が組めますよという通知をしておる、しかし現実に予算が今までと同様あるいは今の二・八%増というような予算が組まれておるかどうかということは、これはお調べになっていますか。

○松永国務大臣 この御審議を願っておる法律が成立したならば、速やかに、さらにこの今回の改正内容、財源措置、留意事、項等について通知をして周知をさせる、こういうふうにいたしておるわけでありまして、それと相まって各市町村における所要経費の確保について積極的な指導をしていく、こういうことにいたしております。

○江田委員 現実には、私がちょろっと調べてみただけでも、今までと同様の予算措置がなされているところもあるけれども、全部がなされていないなんて言いませんが、なされていないところもあるんですね。そういうところはこれから補正か何かでまたその分上乗せをしてというようなことをやるかもしらぬけれども、やらぬかもしらぬ。さっぱりわからない。各地方にしても、やっていいものやら悪いものやら、やるはやったが財源はないというようなことになるのかならないのか、そこら辺がわからないという非常に不安な状態に置かれておるわけですが、総理が心配ないのだ、最終的な末端の行政サービスは今までどおりやるのだと言うのですが、これは一つの指示と考えるべきであって、大蔵大臣もあるいは文部大臣もあるいはその他今回関係ある各大臣も、各自治体にそういうふうに、今までの行政水準を落とさないように指示をし指導をし、やらなければならぬと思いますが、大蔵大臣及び文部大臣の覚悟を伺って、ちょうど時間ですので私の質問を終わります。

○竹下国務大臣 教材費の問題は、もとより文部大臣からお答えがあるでございましょうが、いわゆる交付税の中におきましてそれぞれの財政措置が行われておる。しかし、交付税は地方の自主判断に基づいて使われるものでございますから、私どもはそういう指導をいたしますけれども、地方自治の権限を超して命令するようなことはむしろしてはならないことだ。中にはもっとたくさんの予算を自主的におつけになるところもあるでしょうし、したがって、健全な地方自治における予算の執行を心から期待しておるというお答えが私から申しますならば限界でございましょう。

○松永国務大臣 先ほどからお話が出ておりますように、教材費につきましては公費で措置をすることが定着しております。そしてそれに対する財源は、従来は補助が二分の一、交付税が二分の一となっておったわけでありますが、今回は総額とすれば二・八%増の財源措置がそちらに行きますよ、交付税の中身につきましてはこういう割合で積算されたんですよ、教材費の分としてこれだけの積算の上でこうなったんですよという通知が全体としてはなされるわけでありますから、したがってそれに基づいて措置されるように私どもとしては県の教育委員会を通じて指導してまいる、これでやっていく、こういうことなのでございます。

○江田委員 終わります。


1985/04/09

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