1982/04/01

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96 参議院・建設委員会

長良川の河口堰の問題について


○江田五月君 初めての試みである予算の委嘱の審査も大分長丁場になりまして、最後です。
 わが国も戦後三十六年、とにかく廃墟の中から国づくりを始めて、いまGNPで自由世界第二位という大きな経済力を持つところまで来た。この戦後の国土の再建そして発展について、建設省、あるいは国土の適正な開発にとって国土庁が果たされた役割りというのを高く評価することにやぶさかじゃないですが、同時に、いま高度成長の時代から低成長に移行をしてくると、もう経済がどんどん大きくなっていく、GNPがどんどん伸びるというそういう時代が終わって、低成長。まあなかなかトンネルの中をくぐりながら、その先が見えてこない。仮に先が見えてくるにしても、それはもう前のようなバラ色の時代ではないということになってきているわけですね、昭和四十八年のオイルショックを契機にして。しかし、決してオイルショックが原因になったということよりも、むしろ経済の本質的なあるいは構造的な要因、原因でこういう低成長への移行ということになってきていると思います。経済活動の量がこれまでは非常に大切だった。しかし、そろそろもうどういう質の経済活動が営まれるかということが非常に大切なことになってきていると思います。

 ところが、高度成長のときには行け進めでどんどん開発を進めてくる。特に日本の場合、オイルショックというようなことが景気にかなりブレーキをかけ、方向を変えていかなきゃならぬ。そこでどうしてもきしみといいますか、あつれきがいろいろなところに起こってくる。

 私はこの委員会で、たとえば去年のちょうどいまごろ、砂糖の原糖の――原糖というのは砂糖の原料ですね――倉庫を、ある砂糖工場がつくろうとした。そして、コンクリートのパイルをどんどん打ち込んだんですね。一メートルぐらいな間隔でかなりの広い土地に打ち込んだ。その途端に経済の状況ががらっと変わって、砂糖のそういう倉庫が要らなくなってしまった。そこで、そのままほったらかしておったら、そのコンクリートのパイル、これは中が穴があいているわけですね。そこに、あす入学式を迎えようという子供が落っこって死んじゃったという。

 とにかくもう、そういう経済活動の質ですね、安全とかあるいはうまくバランスがとれているとか、環境と調和がとれているとか、そういうようなことが非常に大切なことになってきておるので、建設省も単なる発注官庁、実施官庁ということだけでなくて、安全とか調整とかそういうものにもっと注意を向けていかなきゃならぬ。いろんなプロジェクトがペイするのかどうかということも真剣に考えなきゃ、いままでのようにつくればとにかく経済はどんどん大きくなる、人口はどんどんふえる、だから必ずペイしていくんだということではなかなかないという時代が来ている。また私は、実は行政改革の話の中で、国土庁はもうやめちゃえという話があるわけですが、これにくみしないんで、そういう実施官庁だけでなくて、いわゆる調整官庁としての国土庁とか環境庁とか、こういうものの役割りというものはむしろこれからだんだん重要になってくるんじゃないかというような感じを持っておりまして、ひとつそうした点できょうは多少具体的な問題を質問してみたいと思います。

 まず最初に、建設行政あるいは国土行政に携わっていかれる両大臣に、いま私が言ったようなこれまでのとにかくどんどんつくれということでない、行政の質というもの、安全とか環境とか調整とか、そうしたものに重点を置いた方向に変わってこなきゃならぬのじゃないかということについて一体どういう所見をお持ちか、非常に抽象的なことなんですが、伺っておきたいと思います。それじゃ国土庁長官、その後建設大臣。

○国務大臣(松野幸泰君) いまの御意見、私全く同感でございまして、きょうは、私の方ではありませんけれども、午前中の質疑の中に瀬戸大橋を建設する、それができると国鉄から一年間に五百億円の通行料をもらわなければならない、四国全体で三百億しか運賃が上がらない、こういうこともどうだというような質疑がありましたが、こういうことなどは国土庁としても調整官庁として大変重要なことだと思って傾聴いたしておりましたが、いまの江田議員のおっしゃること、私も大いに検討しなければならぬと考えております。

○国務大臣(始関伊平君) ただいま江田先生から御指摘の点でございますが、何と申しましても、やはり建設省の立場から申しましても国土の安全ということは非常に重要な点だと考えております。建設行政の理想を一言で申しますと、安全で潤いのある国土環境を整備いたしまして、これで活力のある福祉社会をつくるんだということでございまして、安全の問題につきましては、地震の問題もございますが、建設省の担当に属することで安全問題と申しますとやはり川の問題、治水の問題ですね、洪水の防止の問題等があると思うんでございますが、こういう問題につきましては特に注意を払っておるわけでございます。

 それから、建設省の公共事業は別でございますが、その中に有料道路というような問題がございまして、これは後進地域の開発の原動力になるということでございますが、これはなかなか利用度は少ないということでございまして、こういったような点にも問題があるような感じがいたしております。

 それからもう一つ、従前、産業が発展いたしまして経済が成長し、それによって国の税収入等がふえまして、これで公共事業をやっていくということがございましたし、また逆に公共事業を進めることによりまして、最近のオイルショックなどに当たりましても、これで内需の拡大、景気の回復をやってまいった、こういうような点もあるわけでございますが、経済のいま江田さんがおっしゃいましたように成長率は全体的に低くなりまして、従前のような大きな成長ということは期待できないと思いますけれども、しかし四%とか五%とかという程度の成長率でも、公共事業による内需の拡大とか景気の刺激とかいうことが問題になるわけでございまして、やはり建設行政には今後ともそういったような役割りも含んでおる、かように存じております。

○江田五月君 そこで、まず最初に、水資源の問題について伺いたいと思います。
 ここできょう問題にしたいのは長良川の河口ぜきの問題ですが、その前にひとつ水資源というものの考え方について、水資源は、昭和三十六年、水資源開発促進法と水資源開発公団法が基本になってその後開発をされてきた。もちろんまだ地域によって水不足というものが恒常的に常時存在しているような地域もありまして、まだまだもう水問題というのは終わったんだということではありませんが、しかし全体として見るとどうも三十六年当時に、あるいはその後四十年代の初めのころに考えていたものとかなり様相が変わっているんじゃないかということが言われておるわけです。

 ここに、手元に新聞の切り抜きが一つあります。これは朝日新聞ですか、「わたしの言い分」というのがある。大阪大学工学部教授の末石冨太郎という人が語ったことを新聞記者が書いてあるわけですが、水道は第二の国鉄になるんじゃないか、あるいは足りないんだろうか余っているんだろうか、どっちなんだろうか、どうも水道というのは何か足りない、だからみんなが水を使うのを一生懸命に節約すれば水道料金は上げなくて済むんじゃないかと思っていたら、最近はどうも逆で、水をこのごろ余りみんなが使わないから水道料金を上げなきゃならぬというようなことになってきたんじゃないかとか、何か水道、水というのは使っても節約してもどっちみち値上げをされてしまうものなんだろうかというようなことが国民の中で疑問になってきている、工業用水というのは大量に余っているんだということを報道している新聞記事もある。東京、大阪などで給水能力の三割しか使われていない、京浜葉、京阪神、東海、九州北部の四大工業地帯を合わした利用率が五割を切っているというようなことが言われておりまして、果たして一体、これから水の需給の予測というのはいままでの予測でいいんだろうかということが非常に大きな問題になっているわけです。

 そこで、全体としてこの水資源の問題をどうこれから見直していかれるのか、三全総との関係などについてお答えをいただきたいと思います。

○政府委員(福島量一君) 手違いで担当の局長が参っておりませんが、私の知り得る範囲内でお答えさしていただきたいと思います。
 御案内のように、私どもの水需給の問題は、昭和五十三年、つまり三全総の策定されました翌年に長期水需給計画というのをつくりまして、それを基本的な方向づけとして現在に至っているわけでございますが、先ほど三全総云々のお話もございましたように、最近におきまする出生率の変化とかあるいは人口動態の変わり方、さらには経済構造の変化、つまり製造業から第三次産業へのシフトがかなり進むといったような非常な動きが出てきております。そういったことに伴いまして、将来における水需給はどうかという点について改めて再検討すべくいま見直し作業に入っておるという状況でございます。

 工業用水等につきましてのお話がございましたが、確かに御指摘のとおり、工業用水の量としては、実は需要量は減ってきているようでございますが、内容的にはいわゆる再生利用と申しますか、そういうことはかなり進んでおるというようなことも一つございますし、それから地域的に申し上げますと、大都市周辺では確かに需要は落ちてきておるようですけれども、少なくとも需要量は現象的には減ってきておるということでございますが、地方都市を中心に都市的生活様式と申しますか、そういうものの普及がありまして、いわゆる生活用水というものの需要はふえておるというようなこともございます。そういった状況も勘案しながら、マクロの面もさることながら、地域別にブレークダウンした水需給というものを求めてつくり上げていきたいというのがもう一つの水需給の今後の検討課題の大きな柱になっておる、かように聞いております。

○江田五月君 長良川の河口ぜきの問題を聞くというふうにお伝えしてあるはずなんですが、どこでどう連絡が食い違ったのかよくわかりませんが、どうも不思議ですね。

○政府委員(福島量一君) ただいま担当局長が、急遽、間もなく着くはずですが、ちょっと私の方では通告が来ておらなかったものですから……。

○江田五月君 全体の見通し、見直しの問題、三全総との絡みなどのことも言っておったはずなんですが、それはしようがありません。

 そこで、そうしますと、長期水需給計画を再検討すべく見直し作業を進めておられるということでありますが、どうもこの長期水需給計画の一環としての木曾川水系についての水資源開発基本計画、昭和四十三年に決定されて、四十八年に改定をされた計画ですね。これは愛知、三重、長野、岐阜か、この四県、木曾、長良、それから揖斐三川で百二十・五トン毎秒取る、とりあえず八十六トン毎秒の施設をつくる、そのうち二十二・五トンを長良川河口ぜきで取るんだというこの木曾川水系水資源開発基本計画、この計画も、これは根本からもう崩れているんじゃありませんか。

○政府委員(川本正知君) 本来的には国土庁の所管のことでございますが、私からお答えさしていただきたいと思います。

 ただいま先生お話ございました木曾川水系におきます水資源開発基本計画、これは昭和四十八年に策定されまして、今年の三月にごく一部の変更がなされました。その計画におきましては、目標年度を昭和六十年度に置きまして、いま先生おっしゃいましたような数字を目標としておるわけでございまして、長良川河口ぜきにおきましては、いまおっしゃった水道用水及び工業用水を毎秒二十二・五トン確保するということになっておるわけでございます。東海地方におきます水需要の動向につきましても、確かに先生おっしゃいましたように、わが国経済が安定成長期に入っておるということ、あるいは水を使う側にいたしましても、節水意識が非常に高まってまいりました。また、先ほどお話もございましたように、工業用水につきましても水利用の合理化といいますか、そういったものへの努力が高まって、それによって需要動向というのは変化してきておるのは事実でございます。

 全般的なことにつきましては、先ほどお話ございましたように、全国的に長期の水需給計画のフォローアップを三全総に基づいて国土庁の方でおやりになっておるというふうに私どもも聞いておるわけでございますが、水資源開発事業そのものは、特に長良川河口ぜきにいたしましても同様でございますが、計画から完成まで大変長時間を要するものでもございます。いろいろと水需要の変化の原因はございますけれども、今後とも人口は、一時よりは増加は鈍化しておりますけれども、着実にやっぱりふえていくであろう。また、生活水準の向上ということも、やはりスローテンポではありますけれども続くであろう。都市機能の進展ということもございます。あるいは工業生産の形態の変化、そういったものもあるわけでございまして、それぞれの地域の志向を含めた長期的な、総合的な見地から水需要を想定していかなきゃいかぬ、そういうふうに思っておりまして、そういったことからいきまして、やはり長良川河口ぜきの事業というものは着実に、長期的に、計画的に推進していく必要があるんじゃないか、そう思っておるところでございます。

○江田五月君 着実に、長期的に、計画的にというお話ですが、いずれも言葉は非常に簡単ですが、中身は何もないんじゃないですか。

 いまの基本計画の前提となった各種の数字というものが、たとえば人口についても大いに違ってきている。あるいは産業の発展のことにしても、三重県四日市コンビナート、御存じのとおりですね。この水資源開発基本計画策定のときに前提としていたような、四日市のコンビナートがどんどん大きくなる、第二次、第三次と、どんどんこう広がっていくという状況は、もう、まずないですね。常識的に考えて、あそこにいままでと同じような四日市コンビナートがどんどんふえていくということはもう考えられない。これは公害の問題もあるし、同時に産業構造というものが大きく変わってきたということもありましょう。あるいは産業自体の水の使い方ですね、工業出荷額がどんどんふえていけば、水の需要がどんどんふえていくだろうというこの関数関係が変わっちゃったわけですね。工業出荷額が伸びたって水の需要はふえていかない。それは、経済の構造も変わってきただろうし、同時に水の高度利用といいますか、回収率というか、これも大きく変わってきた。

 こういう産業の拡大と水の需要との比例関係がいままでと違ったという。あるいは節水思想、節水機器、あるいは料金体系などで節水型の社会が、こちらは工業用水じゃなくて、生活用水の方ですが、できてきている。

 そういうことを前提に置いてこの長良川河口せきの問題を具体的に考えてみますと、どうもいまの計画の毎秒二十二・五トン、これを愛知と三重に半分ずつ分けるんだと。治水分が千分の三百七十四ありますから、これは三分の一が岐阜県、三分の二が国ですか、しかし千分の六百二十六の工事費の方は愛知と三重で半分ずつ出すんだという。さあ、特にその三重県などですね、毎秒二十二・五トンの半分の水を無理やり買わされて、需用費の千分の三百十三払わされると、いま嫌だとは言えない立場だと思いますが、本当は困ってるんじゃないですか、これ。どうなんですか。

○政府委員(川本正知君) 中京地域といいますか、愛知県、岐阜県、三重県三県を含めた地域におきます近年の水需要の動向というものを見てみますと、生活用水、いわゆる水道用水等でございますが、こういった生活用水につきましては、五十年以降傾向は鈍化しておりますけれども、まだ増加の傾向でございます。また工業用水につきましては、四十八年ごろをピークにいたしまして水需要量が減少しておると、確かにそういう傾向はございます。

 その工業用水につきまして申し上げますと、先ほど先生おっしゃいましたような回収率の向上であるとか、あるいは節水機器の普及、そういったようなことから、河川、いわゆる淡水の取水量が減少しているという傾向が確かにあるわけでございますけれども、工業出荷額と水需要量との相関が狂ってきたのじゃないかということは確かに事実だろうと思います、そういった関係で。

 ただ、技術の進歩といったことからいきますと、回収率の向上ということが私どもといいますか、当初予測しておりました水需要の傾向から比べますと非常に前倒しに進歩をしたというふうなことが一つ考えられるわけでございまして、今後はその回収率の向上もある程度限度に来ているんじゃないか、これ以上回収率がどんどんまた上がるといいますか、向上するということは余り期待できないんじゃないか、考えられないんじゃないか、ほぼ限界に達してきているというふうにも考えられます。そういったこと、あるいは工業出荷額にいたしましても、今後ともやはり増大していくことは事実であろうというふうに思います。

 そういったことからいきますと、工業用水が一時的に減少はしておりますけれども、今後長期的な将来というものを考えますと、相当の量がやはり必要になってくるんではないか、そういうふうに考えられます。

 特に中京地域、特に先生お話しの三重県の木曾川下流部、河口部に関係いたしますような地域は特別でございますが、地盤沈下が非常にひどい地域でございますし、そういったものの地盤沈下を防ぐということの強化のためには、地下水から水を取っておりますのを川からの河川水に水源を切りかえるという必要もございます。渇水時に安定した取水が困難ないわゆる不安定取水といったものも地域的には少しございますし、そういったものの解消ということも必要でございます。そういうことからはやはり水資源開発は今後とも必要になるんではないか、そう思っておるところでございます。

○江田五月君 水が第二の国鉄になるんじゃないかという心配はまさにそのあたりを心配してるんですね。長期的には需要はふえるんじゃないか、まあどういう数字に具体的に基づいてそういうことをおっしゃるのかですね。百年先には何とかなるだろうというようなことで、いまどかっと資本を投下して一体だれがその投下された資本を払うのかということですね。ちゃんとペイアブルなものであるのかどうかということを考えながらやっていかないと、何か将来を考えて、転ばぬ先のつえでやっていけばいいだろうということではもういけない時代が来ているんじゃないですかということです。

 あるいは地下水、地下水をくみ上げる、それでは困る、地盤が沈下しているから、だからこちらの水を使ってくださいよと。ところがなかなか企業というのは、そう簡単に水を持ってきたから、さあ使え、ただで使わしてくれるんならいいですよ。しかし一体幾らのお金で使わしてもらえるのかですね。日本はソ連のような、ああいう経済の国じゃないわけですから、これを使えといって押しつけるわけにはいかないわけですからね。この長良川の河口ぜきの関係では水の料金とかあるいは工事費とか、こういうものは一体どうお考えなんですか。

○政府委員(川本正知君) 長良川の河口ぜきの総事業費が五十四年度の価格ではじいたものが約一千百七十億円というふうな総事業費になっておりますが、そういたしましたときの水の単価が、毎秒一トン当たりの単価で換算いたしますと、毎秒一トンの水を開発いたしますのに三十二億六千万円かかるというかっこうになっております。

 ただ、ほかのたとえば山の方に大きなダムを、いろいろ木曾川水系にも考えておりますが、そういったいわゆるダムと比べますとやはり河口ぜきの水の方がうんと安く生み出せるわけでございまして、たとえば、いま阿木川ダムというダムを施工しておりますけれども、これにつきましてはやはり九十億円を超える一トン当たりの開発単価ということになっておりまして、そういったことからいきますと、長良川河口ぜきの方がまだ割り安な水が生み出せるということでございます。

○江田五月君 連絡の手違いだったと思いますけれども、しかし、局長、河口ぜきの問題というのはわりにいろいろ猜疑心を持って見ている人たちもたくさんいるんです。答えにくいから出てこなかったんじゃないかなんというふうに思われたらこれは非常に困る、私も困ります。

 いまピンチヒッターの皆さんに答えていただいておったんですが、長良川の河口ぜきの問題を引き合いに出しながら、一体水資源のことをこれからどう考えていくのか。先ほどのお答えですと、これから再検討すべく見直しの作業をやっているところだということですが、どうも木曾川水系についての水資源開発基本計画もかなり根本から変わってきている。

 その中でこの長良川河口ぜき、それは将来のことを着実に考えて計画的にとおっしゃるけれども、言葉だけで具体的な数値は全然わからない。毎秒二十二・五立方メーター取って愛知と三重に両方に渡して果たしてペイするのかどうか、この建設費は一体だれが払うことになるのか、料金は一体どのくらいになるのか、そういうことが全然わからなくて、しかもいま補償というものはどんどん上がっているわけですね。いろんなことの名目で補償を取ろうという、これも余りいい風潮じゃありませんけれども、そういうこともあって、そういう細かな配慮をしながらこういう事業をやっていかないと第二、第三の国鉄を幾らでもつくることになってしまうんで、どういう覚悟でこれに取り組まれていくのか。ほかにまだ環境上、安全の問題、承水路がどうだとか、しゅんせつがどうだとか、魚の問題がどうだとか、いろんな問題がありますが、ひとつ局長、これは見直していただけないですかね。

○政府委員(高秀秀信君) おくれて参ってまことに申しわけございません。決して答弁を逃げたわけではございませんので、その点は御了承いただきたいと思います。

 いま先生お話のように、この中京地域といいますか、中部地域について、私どもは木曾川の水資源開発基本計画を昭和四十五年から六十年までというものをつくってやっておりまして、先般も御承知のとおり、先月の二十六日の閣議でこの木曾川の基本計画の一部改定をしたところでございます。

 本地域について申し上げますと、現在私どもが四十五年度より六十年というのは、前のいろんな経済情勢を勘案して需要がどのくらいあるであろうというようなものを推定をいたしております。その時点では毎秒約百二十一立方メーターぐらいの需要があるだろう。その中に河川局長から答弁があったと思いますが、長良川等の供給計画も含むわけでございますが、ただし、その時点では供給施設は約八十六立方メーターだけが施設として確定している。全体のバランスとしては毎秒約二十一立方メーターのものが施設として確定をいたしておりません。ただ、したがって、本地域全体としてはまだ水が足りない、供給施設が不足しているというような状態でございますが、個々の施設に対応しては、いま先生がお話しのようにいろんな問題がございますので、私ども先ほど申し上げましたように、基本計画は昭和六十年度末を目標にいたしておりますので、いま御審議をいただいております予算案にも当該地域につきます水需要その他の調査費を計上いたしまして、六十年度はすぐ来るわけでございますので、先生いまお話しのように、社会環境の変化に対応いたしましたような検討をするという段階になっております。

 ただ、人口とか工業出荷額は、先般も申し上げましたけれども、工業出荷額につきましても、大体計画より若干下回っている程度でございますけれども、ただ回収率で、たとえば工業用水について申し上げますと、私どもは、昭和六十年に六八%ぐらいになるだろうというのが、五十四年末でもう七七になってきているというような社会環境の変化もございますので、先ほど申し上げましたような調査をして改定の準備をするといいますか、そういうことをいたしているのが現段階でございます。

○江田五月君 たとえば、ここに三重県が昭和五十五年二月にまとめられた「北勢地域における水需要予測調査」というのがあります。これで見ますと、長良川の河口ぜきからいただく水は、仮に工業出荷額の伸びを年率五・九五%として、昭和七十五年にやっと九万一千トン・パー・デー。五・九五%も一体工業出荷額が伸びるだろうかという問題がありまして、これが四・九五%を全国平均だとすると、長良川の河口ぜきからは要らないということを三重県の方では予測をしているというようなぐあいですから、ひとつ十分検討していただきたい。このせき本体は一体いつごろ着工されるんですか。何かもう決まっておるんですか、どうなんですか。

○政府委員(川本正知君) 河口ぜきの建設につきましては、実は長良川河口ぜき、先生御承知かとは思いますけれども、これは利水だけの目的じゃございませんで、長良川の治水上もきわめて重要な施設でございまして、五十一年の九月に長良川大水害がございまして破堤事故まで起きた、またそれが現在、水害訴訟まで地元から起こされておるということもございます。そういった大事件があったわけでございますが、こういったことから治水を促進する必要があるわけでございますが、河口ぜきはその長良川のしゅんせつが可能になりますように、塩水の遡上の防止といったことからの治水上の目的もございます。それが一番大きな目的、大きなものだろうと思いますが、それとあわせて都市用水の供給をやるということでございます。そういう効果があるわけでございます。

 現在、河口ぜきの進捗状況でございますが、岐阜県知事さんから五十五年の九月にせき本体工事の着工に同意をしていただきました。それに基づいてこれから、これからといいますか、せき本体工事の着手に必要な漁業補償の交渉を現在進めておるところでございまして、五十四年九月までには三重県の桑名漁連、五つございますが、その漁連のうち四つの漁協について同意を得ましたけれども、なおまた同意は得られていない漁協もございまして、そういうことから、本体工事の着工の見通しがまだついていないということでございます。現在は、そのせきの本体の付帯的な工事でございます漏水対策の防止工事あるいは各輪中対策工事、そういったものを実施しておるところでございます。

○江田五月君 さて、経済環境の大きな変化に伴って建設行政に対する国民のニーズというものも次第に変わってきているということを言いたいわけでありますが、建築物の安全ということも非常に重要な課題です。

 先般、ホテル・ニュージャパン火事で三十三人亡くなる。このホテル・ニュージャパンは建築基準法上の違反というものがあったわけです。あるいは、違反とまで言えなくても既存不適合という形での欠陥もあっただろうと思いますが、ちょっと時間が非常に少なくなりましたが、どういうものがあったか、簡単に教えていただけますか。

○政府委員(豊蔵一君) ホテル・ニュージャパンにつきましては、去る三月の火災が発生いたしましてから、特定行政庁であります東京都の方が立入調査をいたしました結果、配管の区画貫通部の埋め戻しが不十分である、パイプシャフトの壁の欠損があるといった点につきまして、建築基準法の違反事項が判明したわけでございます。また、昭和五十四年の四月から施行いたしております建築物防災対策要綱に基づきまして、東京都の方がホテル・ニュージャパンにつきまして調査をいたしましたところ、非常時の照明装置あるいはまた防火区画等につきまして既存不適格といったような問題がありましたので、これらの問題につきましては同要綱に基づきまして、基準に従って非常時の照明対策を指示いたしまして、早期に改修計画書を提出させまして、防災改修を行うように指導しておったところでございます。この要綱に基づきます期限は、一応昭和五十九年の三月末ということになっておりましたが、その後五十五年の五月にホテル・ニュージャパンから東京都に対しまして、五十七年度中に実施するという報告があったところでございます。

 また、先ほど申し上げました建築基準法違反の事項が判明いたしましたものですから、東京都におきましては三月二日付で違反事項の是正完了まで二階以上の仮の使用禁止命令、また、後日是正の本命令を行う旨のあらかじめの通知を行いまして、これに従いまして三月十日付で違反事項の是正完了時までの二階以上の使用禁止命令、また、一階及び地階のメーンパイプシャフトの壁の欠損及びパイプシャフトの点検孔等の壁等の欠損の是正命令を行ったということでございます。

○江田五月君 たとえば、いまのは配管の穴を完全に埋めておかなければいけないのが埋まっていなかったということですね、これは通常の確認申請をやって、確認をして、そして設計者に監理をさせる、そして完了して完了届けを得て完了検査をするということでわかるんですか、わからないんですか。

○政府委員(豊蔵一君) このホテルにつきましては、昭和三十三年の三月から同三十九年の七月までにわたりまして数次にわたって確認を受け、建築あるいは増改築等を行って現在に至ったものでございます。ただいま御指摘ありましたように、確認を受けましてから竣工いたしました場合には完了届を提出し、また、その完了届を受けた建築主事は完了検査を行うということになっておるわけでございますが、完了検査のときにおきましては、外からその建物を見まして基準法に適合しておるかどうかという判断をするわけでございますので、ただいま申しましたような配管等につきましての区画貫通部の埋め戻しが不十分というのが、これがどの段階で行われたかわかりませんが、外から一見目視しただけではなかなか発見しにくい状況であったかと思います。

○江田五月君 こういうホテル、大ぜいの者が本当にこう自分の身の安全を託してしまうような施設が、建築基準法適合性を実はだれも確認できないというようなことになっている。私はこれは法の欠陥じゃないかという気がするんです。つまり、どの建物も全部そうしろというようなことではありませんが、特に安全上必要な建物の場合は、もう時間が余りなくなってしまいますから、簡単に申し上げます。

 たとえば、いま工事監理者による監理の制度がありますけれども、これなども監理をさせる場合には一級建築士、二級建築士でなきゃならぬ。しかも、こういう建物については監理者を置かなきゃならぬという規定の立て方ではあるけれども、監理をきちんとしなきゃならぬ、監理の不行き届きがあった場合はこういう罰則がある、そういうような立て方になってないんですね。

 あるいはまた、中間検査というような制度もないわけじゃありませんが、しかし、これは特に何かの手段をとろうという場合に、その前提として中間検査ということがあるだけであって、ホテルのようなあるいは病院のようなものの場合には、このポイント、このポイント、このポイント、特に安全上必要な、しかも後からではわからないものについて、そのときどきで中間検査をするというようなことですね。あるいは完了検査についても、いま完了してから四日以内に完了届を出す。七日以内に完了検査をしなきゃならぬ。七日までに完了検査に来なかった場合には使用制限はもう解けちゃうわけですね。こういうことでいいのかどうかということについても、ひとつ建築基準法をしっかり安全という観点から見直さなきゃならぬじゃないかと思いますが、いかがですか。

○政府委員(豊蔵一君) 御指摘のとおり、現在建築基準法の運用において中間検査というものを行っております。しかしながら、現在の法的な体系といたしましては、完了届を受け、これに基づきまして完了検査を行うというふうになっているわけでございます。

 ところで、建築物というものは、建築の当初から完成までいろいろな工程を経て行われるわけでございますので、その工事の各段階におきまして適正な工事が行われるように、建築士によりますところの十分な工事監理が絶対不可欠であるというふうに考えております。私どももこの建築士の工事監理というものをもっと強化充実するための方策につきまして現在検討中でございます。この建築士の行う工事監理の強化充実とあわせまして、私どもといたしましても必要に応じまして中間検査というもののあり方、これは法的な規定をも含めて検討したいというふうに考えているところでございます。

 また、完了検査が必ずしも十分行われていないというようなこともないとは言えませんので、これらの建築主事によりますところの執行体制の充実も考えなければいけませんが、また一面、関係各省との連絡会におきまして検査済み証を交付したものでないと、たとえば旅館業法等に基づく業の許可は行わないといったような関連を関係各省間で持ちまして、有機的になお実効の上がる措置をとるということで実施しているところでございます。

○江田五月君 これは、いまおわかりになればお教えいただきたいんですが、ニュージャパンの場合に、三十三年の三月から三十九年の七月まで数次にわたって建築、増築等があった。その都度完了検査というものをきちんと、書面でなくて現場に赴いてやっていらっしゃったかどうか。それが完了検査に合格する前の使用というものはなかったかどうかですね。完了検査前の使用というのがあったんじゃないか。あるいは、完了検査もどうも書面だけだったんじゃないかという感じもするんですが、おわかりですか。

○政府委員(豊蔵一君) これは、特定行政庁であります東京都におきまして実施したことでございますが、私どもが報告を受けております限りでは、各段階におきまして建築確認を受け、また完了検査も行ったというふうに聞いております。

○江田五月君 いずれにしても、国民皆、非常にホテルというものの、もう泊まる方ではわからないわけですから、しっかり安全を確保してほしいという強い希望を持っているわけで、ひとつ遺漏なきようにお願いしたいと思います。

 さて、多少話が変わりますが、いまわが国の経済も非常に大きくなってきた。いろいろな要因から外国との間で貿易摩擦というものが起こってきておる。一方で、この建設業に関してひとつ海外に出ていって大いに注文をとってきて仕事をしなさいという、そのことがいいんじゃないかということも最近言われておりまして、私もたとえばアメリカあるいはEC、こういうところの日本との間の貿易摩擦というものとかなり趣を異にして、建設受注を海外に求めていくというようなことは、これからあるいはわが国の建設業にとって一つの進むべき道ではないかという気もいたします。

 これは、日本がどんどん出ていってとにかく荒らしてくるということでなくて、その現地へ行ってそこの資材を使い、あるいはそこの人たちに働いていただいて、日本の技術なりノウハウなりを移転していくというようなことでもあるし、南北問題解決なんて、いろいろありますけれども、日本経済が具体的に世界の経済ともっとうまくリンクしていくというようなことを考えますと、こういう海外受注ということをこれから考えていかなきゃならぬと思います。最近検討されているということでもあるし、それからこの予算を見ても、それほど多くないようですけれどもついてはおるようですが、どういうお考えでいるのかを伺っておきたいと思います。

○政府委員(吉田公二君) わが国の建設産業の海外活動、これは先生御指摘のように、開発途上国におきます最も立ちおくれている経済社会の基盤施設の整備を進めるとか、雇用機会を創出するとか、あるいは建設技術というものを移転するとか、そういうことでその国の経済発展、民生の安定に大きく寄与する、また、わが国の建設産業自体にとっても安定的発展に資するものでございますので、今後とも大いに促進する必要があると基本的に考えております。

 わが国の海外建設活動は、従来東南アジアが中心でございましたけれども、石油を背景といたしまして中東諸国での受注というものも増大しておおりますので、急速な伸びを示してきておりまして、海外法人分と合わせますと、昭和五十四年度におきましては受注額は約六千二百億ぐらいまでいっておりました。これが昭和五十五年度におきましてはイラン・イラク紛争の影響もありまして若干減少いたしまして、約五千五百億円となっておりますが、本年度はまたこれがかなり伸びるというふうに見ております。

○江田五月君 昨年の六月の十日ですか、建設省が通達を出して、業界に軍事施設の受注はしちゃいけないということを指導した、その指導を徹底させることになったということが報道されておりますが、今後とも軍事施設などに対する注文をとって、どんどん外に日本の建設業界が軍事施設をつくってくるというようなことは、これはやらさないお考えと伺っていいですか。

○政府委員(吉田公二君) これはわが国の武器輸出三原則の線にのっとるわけでございまして、直接戦力に連なるような武器を製造する工場でございますとか、あるいはそれ自体が直ちに戦力になるような施設をつくるというようなことについては厳に戒めている、そういった工事については、わが国としては平和国家の立場からいたさせないということで、関係各省で一応そういう疑わしいものについてはチェックするシステムをつくっておりますので、そういう方針で進んでいるところでございます。

○江田五月君 いまの点について、一体何が軍事施設かというのは確かにむずかしい問題がありましょうが、そういうむずかしいところへちょっと入るのはいま時間がありませんからやめておいて、軍事施設、直接戦争と結びつくような施設に対する受注はやめるという方向は将来とも堅持していくものであるのかどうか、これは大臣にも伺っておきたい。
 それからもう一つ、海外受注というようなことになりますと、これは建設省だけでやっていこうと思ってもなかなかいろんなむずかしい点がある。たとえば、外務省あるいは通産省、その縦割り行政の枠を越えた検討の体制を整えていく必要があるんじゃないかと思いますが、その点もひとつあわせて伺って、質問を終わります。

○国務大臣(始関伊平君) お答えを申し上げます。
 建設業の海外進出の問題は、日本の建設業の立場からは非常におくれておった分野でございまして、今後とも推進してまいりたいとは思っておりますが、しかし、いま計画局長から申しましたように、これが軍事施設のようなものの受注は今日までも控えておりますし、またそれを各省の連絡会議でチェックいたしまして、今後ともそういう方針でまいりたいと思っております。

 なお、海外進出ということになりますと、外務省はもちろん、それから通産省等の関係もございますが、これらの各省と連絡をいたしまして、特に、たとえば保険とかなんとかいう問題になりますと、通産省あたりで持っておる制度が役に立つかもしれません。われわれが中心になりましてこれを一層推進してまいりたい、かように存じております。


1982/04/01

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