1979/12/05

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90 参議院・沖縄及び北方問題に関する特別委員会

沖繩の問題について

質問の要旨=沖縄が甘やかされているという議論が一部にあるが、長い間本土が沖縄を犠牲にして発展してきたわけだから、逆に本土の方が甘えているのではないか。また沖縄には現在、日本国籍を持たない混血の国際児が三千五百人もいながら、そのままである。こうした犠牲を二度と許すことなく、沖縄開発庁長官として、沖縄に温かい目で臨んでもらいたい。


○江田五月君 どうも本委員会の委員の出席がはなはだ芳しくないのでありますが、もうしばらく質問をさしていただきたいと思います。

 沖繩の問題について一般的、概括的なことを少し聞いておきたいと思います。第二次大平内閣が発足してからいろんなところでいろんな波乱含みの発言が出ておりまして、法務省の方からはロッキード関係の被告人の無罪を念願するかのような声が聞こえてきたり、環境庁の方からは私も水俣病患者になりたいというような声が聞こえてきたりということでありますが、よもや沖繩開発庁の方からはそういうような問題の発言は聞こえてこないと思いますが、沖繩問題について長官の基本姿勢といいますか、基本的な物の考え方、先ほどごあいさつの中で多少ありましたが、もう少し突っ込んでお考えを聞かせていただきたいと思います。

○国務大臣(小渕恵三君) 御案内のように、沖繩は復帰をいたしまして七年半余りになります。この間、平和で明るい豊かな沖繩県の実現を目指して、振興開発計画に基づきまして各分野における本土との格差是正、自立的発展のための基礎的条件整備のため力を重ねてきたところでございます。それなりの成果は上げたと思っておりますが、しかし、よく見てみますると、まだ解決を要する経済的、社会的な問題が数多く存在しておることも承知をいたしております。この計画はまだ二年間残されておりますが、従来積み重ねてまいりました振興計画を十分この十カ年間の中で処理をいたすようにこれから最大限の努力を図っていくことがまず大切な問題だと思っております。

 今後積極的に取り組むべき問題の中で特に重要な点は、沖繩経済の自立的体制の確立と雇用問題であると考えております。先般も沖繩県に参りまして、県民の自助的努力によってかなり上向いてまいっておりますが、いかんせん各産業別のパーセンテージが他の府県並みと相当違っておる、あるいはまだ基地経済に依存しておる点も多々あるというようなことで、非常にまだその過程にある、こういうことでございますので、振興開発、特に経済的自立がなくしては県民の生活は成り立たないわけでございますので、それがまず大切なことだと、こう思って、いろんな問題の解決に取り組んでいきたい、このように考えております。

○江田五月君 いまのその経済的自立ということでありますけれども、その自立ということを基礎に置いた考え方として、一方ではときどき、沖繩というのは甘やかされているんだと、ああいうところを早く自立させるためには、もう余り援助援助じゃなくて、手をかすのじゃなくて、ほっといて自立させるまで苦労させたらいいんだというような意見も聞かれないわけではないわけですね。そういうことについて、一休沖繩というのは甘やかされているからほっといて自立させなきゃならぬのだというようなお考えをおとりになるのかどうか。

 あるいは、私はどうも沖繩が甘やかされているというようなことをもし仮に言うんだとすれば、それは本土の側が逆に甘えているんじゃないか。長い間沖繩というところを一つの犠牲にして本土がこれまでの戦後の発展を遂げてきたわけで、そういう意味で、沖繩をこのままの、いま雇用の問題にしても、あるいはそのほかさまざまの問題で沖繩を除く各県と大きな格差があることは事実です。それをそのままにして沖繩の自立に任せるということだと、これは逆に本土側が沖繩の犠牲の上に甘えてあぐらをかいているんじゃないかという気がするわけですけれども、その辺について一体沖繩県民は甘えているのか甘えてないのか、どうお考えでしょうか。

○国務大臣(小渕恵三君) 沖繩県が戦中、戦後を通じて非常に特別なわが国における地区として存在をし、特に戦後はアメリカの施政権下にあったと、こういう特殊な地域であることはだれしも承知をしておる。そこで、復帰以降全国民もその事態を十分承知をしてそれなりに配慮をすべきであるという考え方のコンセンサスがあったことは事実です。事実でありますが、まあしかし、昨今御指摘のような一部の意見のあることも承知をしております。しかし、私個人は、やはり今日沖繩が本当に自立していくためには何としてもここで全国民のコンセンサスを得て、それなりの力をかしてあげなければそのことは達成できないと、こういう基本的な気持ちに立ってこの沖繩問題に取り組んでおるつもりでございますので、私自身は甘やかしておるとも思いませんし、甘やかされておると現地の人が思っているとも思いません。

○江田五月君 沖繩へ先般行かれたというお話でございますが、十一月の二十二日から二十四日までと伺っておりますが、どういうところをごらんになってこられたか、そしてその現地を長官の目で実際にごらんになった感想をお聞かせ願いましょう。

○国務大臣(小渕恵三君) 大変駆け足でありましたが、二日間にわたっていわゆる先島と言われる八重山あるいは宮古両島並びに本島を視察いたしてまいりました。

 私は、ちょっと申し述べますと学生時代から復帰運動に携わってまいりましたので、もう二十年来沖繩とは深い交わりを持っておりまして、毎年もう行っておりますので、昨年からことしの変化というよりも、むしろ長いその間の沖繩県の発展ぶりを見ておりますと、それ相応に相当伸びてきて、特に復帰以降振興計画を実施いたしてまいりまして以来成果が上がっておると思っております。思っておりますが、実際先島の問題の一つの例を挙げますと、水の問題等につきましても、地下ダムをつくったりあるいは真栄里ダムなどをつくってこれから水が確保されるのですね。しかし、水が確保された後、一体じゃ農業問題どうするかというプログラムを考えなければならない時点だと思うんです。したがって、基礎的ないろいろな他の府県並みの施設なり、そういうものは建設されてきましたが、今度はそういうものを一体今後の恒常的な生活の維持のためにいかにいたしていくかということは、一次産業、二次産業、三次産業すべてにわたって再検討もしなきゃならない時点じゃないかというふうに認識しております。

○江田五月君 ここへ手元についせんだってのこれは朝日新聞「天声人語」というのがあるんですが、沖繩に混血の国際児が三千五百人いる、大部分が母子家庭だということで、沖繩のことが書いてあるわけです。

 どうもこういう記事を見ましても、なかなか本当に沖繩の経済的あるいはそのほかにおける自立、そして本土と格差のない状態をつくっていくというためには、まだまだやらなければならないことが山ほどある。たとえば沖繩県民が日本国民としての自覚と誇りを本当に県民全部が持つことができるようになるためにしなければならないこともまだまだこれからあるような感じもいたすわけですが、そういう中でいまのこの国際児のことなどを考えてみますと、やはり基地の問題というものですね、これを余り避けて通ってしまうわけにもいかないような気がするわけです。

 基地があって現実にそこにアメリカの男性がたくさん入ってきて、そしてやはりいろいろな問題が起こっていることもまた事実ではないか。そうやって生まれてくる、国籍が日本のいまの法律のもとではっきりと日本国籍を与えることにならない子供たちに対して一体どういうふうにこれから沖繩県の中で対策をとっていくのか。基地を抜きにして、ただ小手先のばんそうこう張りだけではどうも済まない問題があるように思いますが、基地問題というのをどういうふうに御認識になっていますか。

○国務大臣(小渕恵三君) 日本全土に散在するアメリカ軍の基地のほとんどが沖繩県に存在しておるという事実は明らかであります。このことは当然のことですが、わが国の安全保障のために当然のこととして存在をする基地ではありますが、しかし、それが存在することによって起こるいま御指摘の問題も付随的に起きてくる問題だろうと思いますが、いろいろ社会問題その他惹起することも事実でございまして、したがって、御指摘のように、沖繩県の問題を語る場合に基地の問題をないがしろにしてできないわけでございますので、われわれとしてはそのことによって県民に御迷惑をかけたりすることのないように最大の配慮を払うとともに、残念ながら起こってまいっておる事実についてはいち早くしかるべき処置をすることによって県民の御理解も得ていく努力をしていきたい、こう考えております。

○江田五月君 いまの基地の問題一つ取ってみても、これが現実に日本の平和に役に立つのかどうかという点は議論があるところですが、少なくとも日本の平和のためにと称して基地を置いていることは事実ですね。そうすると、やはり沖繩にそれだけ沖繩を除く他の日本の各県の平和のために犠牲が集中しているということがやはりあるわけでありまして、これから沖繩開発庁長官としていろいろなお仕事をお願いしなければならぬわけですが、沖繩にひとつ温かい目で臨んでいただきたいと思います。ひとつそのことをお願いしておいて、時間でございますから、質問を終わらしてもらいます。

○国務大臣(小渕恵三君) 誤解あってはいけませんですが、駐留軍施設区域、そうしたものをそのままにあっていいと、こう言っておるのじゃなくて、沖繩振興開発を促進していく過程におきましては、そうしたものの整理統合を図りながら、そして沖繩振興開発計画のうたっておる方向を完成していく努力をしていかなければならぬということでございますので、御指摘いただいたこと十分努力をいたしていきたいと思っております。

○江田五月君 終わります。


1979/12/05

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