2011年法政大学大学院政治学講義 ホーム講義録目次前へ次へ

2011年10月21日 第6回「二院制の意義と現実」(続き)

 今日は第六回目の講義です。前回の講義では、高速増殖炉のもんじゅを実験炉と言いましたが、原型炉の間違いですので訂正します。

 前回は、原子力エネルギーの位置づけ、途上国における原子力発電所の開発と、ねじれ国会における議事運営の悩み、議院内閣制と問責決議の二点についてお話ししました。内閣総理大臣は、衆議院の優越が認められているとはいえ、両院の議決による国会の意思として選ばれます。衆議院の内閣不信任、参議院の問責決議には、この点を反映して重みがあるのです。確かに衆議院が行う内閣不信任決議には効果が法定されています。不信任案が議決されてから、内閣は総辞職を行うか衆議院の解散かを選ばなければなりません。一方、参議院が行う問責決議には法定された効果がありません。しかし、首相は国会の意思によって決められるという重みがある限りにおいて、参議院が議決した問責決議案には政治的な効果が生じるのです。ですから、これまでに問責決議を受けた人は、直ちに判断を求められることはありませんでしたが、言ってしまえば「哀れな最期」つまり政権投げだしという事態を迎えているのです。麻生・福田の両氏などはその典型例でした。また、首相ではありませんが、額賀福志郎さんが防衛庁長官をしていた時も問責決議を受け、結果的には辞任しているのです。

 また、西岡・参議院議長による予算案不受理について少しお話ししました。この点に関連して、参議院における議案採決で可否同数が過去二度あり、この事例は何なのか宿題に出しましたが、調べてきた方はいますか。

受講生:参議院のホームページで検索しました。
   昭和50年7月4日、政治資金規正法改正で可否同数、河野謙三議長は可としました。
   平成23年3月31日、子ども手当つなぎ法案、西岡武夫議長は可としました。

 その通りで、参議院ではこれまで採決で可否同数だったことが二回あります。というよりも、二回しかないのです。その内容を見てみましょう。

 河野謙三さんという議長は、選任のされ方を見ても面白いケースです。河野さんが議長になる前は、重宗雄三さんという方が3期9年にわたって議長をしていました。4期目を目指していた重宗さんに与野党が反発して、重宗さんは断念、河野さんが議長になったのです。このような経緯からか、河野さんは野党に理解がありました。また、お人柄も面白い方でした。野末陳平さんという議員がいましたが、この人が議場に来るときネクタイをしていませんでした。ノーネクタイの時期でもありませんでした。河野さんは野末さんにネクタイをするよう注意するのではなく、ネクタイをプレゼントしたのです。議長からもらったのですから、つけてこないわけにはいきません。

 さて、議長の裁決に話を戻しましょう。当時採決に付されていたのは複数の政治資金規正法関連の法律で、そのうちの一つだけが可否同数でした。河野さんは政治資金はきちんと規正しなければならないという考えでしたし、他の法案は可決されていましたので、可否同数となった法案も可決と裁決しました。

 もう一件、3月31日の西岡議長のケースでは、衆議院から法案が送付されてきた段階で、参議院での賛否は伯仲していました。みんなの党の寺田議員は、党の方針とは異なる賛成票を投じることがわかっていましたので、ぎりぎり可決されるかと思っていたのです。しかし、採決の段階で、国民新党の亀井亜紀子さんは、党議に反して棄権してしまいました。一人抜けた段階で可否同数になってしまったのです。結局西岡さんは可と裁決しました。つなぎ法案は無事に成立したのです。

 私が議長をしていた時、可否同数になることはありませんでしたが、なかったのが不思議でした。可否同数の可能性が三回くらいあったことをよく覚えています。参議院では起立採決、異議無し裁決の他に、電子投票方式といって、議員席にあるボタンを押すことによって賛否を明らかにする方式を用いています。白ボタン、青ボタン、そして取り消しの赤ボタンの3つがあります。

 議長が採決の際に「投票ボタンをお押し願います」と言い、投票を締め切りますと、議場の前後にあるスクリーンに投票総数、賛成、反対がぱっと表示されるのです。このスクリーンには当然、結果しか表示されませんが、実は議長席には小さな画面がはめ込まれていて、採決の始めから終わり(これは議長の合図で事務総長が投票を締め切るよう操作しています)までの票の推移も見ることができるのです。

 私もこの画面を見ていましたが、実際に票が動いているのです。賛成が増えたとか、反対が増えたとか、いたずらなのか、それとも悩んでいるのか票の動きから読み取れることは多かった。一瞬だけ可否同数になったり、可決したい法案が否決になっていたりもしました。この推移を見ながら投票を終了するのですが、これには思い切りが必要でした。もちろん私自身、可否同数を狙って締め切ったことはありませんでしたけれども、ひやひやしたのを覚えています。

また、全会一致になるに決まっている、そういう法律・決議もあります。全会派が賛成しているのですから反対票は0でなければおかしい。しかし、反対票が入っていたこともありました。ボタン式ですから、結果がすぐにでます。反対1となった場合、議場がどよめくのです。具体的に話すことは避けますが、ある議員が間違って反対ボタンを押していて、これを訂正して欲しいと言ってきたことがありました。間違えたのだから訂正を認めろというのも一理ある様に思いますが、そうではないのです。例えば、ある議員が党議に背いて賛成/反対をする。その議員は確信犯です。しかし訂正が認められてしまえば、党執行部などの圧力でこれが変更させられる可能性もあります。

 あとは、これもある議員ですが、自席に加えて隣の席のボタンを押してしまったことがありました。ニュースになったので覚えている方もいるかもしれません。その日の夜遅く、この不正が分かりました。翌日にでも懲罰動議を出そうかという話になりましたが、私はその人が所属している会派でどうにかしてほしいと示唆しました。結局、その議員は辞職したのです。

 電子式投票について2つの事例をお話ししましたが、たかが押しボタンではあるけれども、そうやって投じられた一票というのは非常に重いのです。押しボタン投票は数時間後、参議院のホームページで確認することができますので、ぜひ調べてみてください。誰が会派の取りきめに従わなかったのか、それは確信犯だったのか、押し間違いであったのか、よく見るとそこまで分かります。

 可否同数の場合、議長の裁決はどのような基準で行われるのか、私なりに考えたことをお話しします。先のケースでは、河野さんは他の法案と一連のものだからという理由で可としました。私は出身会派(民主党)が賛成だから私も賛成、反対だから反対ということはしたくありませんでした。会派から独立した議長の権限で裁定するわけですから、他の人に言うかどうかは別にして、自分なりの理由が必要なわけです。

 株式会社の取締役会を見てみると、これは代表取締役が主宰します。そして可否同数となった場合、現状維持が原則となります。会社法を見るとそうなっている。例えば新規事業を行う案が可否同数になった場合は、主宰者は非を投じることになります。現状を維持して新規事業は行わないということです。

 議長の裁決もこのように現状維持で良いのかは、また別の話です。政治的な考慮も必要でしょう。しかし、政治的中立性をもっている議長が裁定するのですから、私自身そのときに備えて、理由を考えていました。

 インド洋でのアメリカ軍に対する給油を継続するか否か、大きな政治的問題になりました。多国籍軍はずっと給油を行っています。アフガン戦争に対する支援はどのようになされるべきかについて話し合いが行われていました。それまでの給油をするための法律が失効したため、自民党が多数を握っていた衆議院では、それを再開するための法案を作り、参議院に送ったのですが、民主党はこの法案に反対していました。民主党は給油活動ではなく平和構築活動への参加をするための法案を参院で可決し、衆院へ送るつもりでしたが、民主党は参院で第一党の勢力を持っていたものの過半数を握っていなかったので可否同数になる可能性があったのです。結局は一票か二票の差で可決しました。このときに可否同数になっていたら、私はどうするべきだったのでしょうか。先ほど、議長の裁決は現状維持が基本であると言いました。この場合の「現状維持」とは何でしょう。このことについて少し考えてみましょう。

 インド洋での給油は、法律の失効によって行っていなかった、よって何も支援をしていないのが現状です。ここから二つの考え方が出てきます。第一に、民主党が主張していた平和構築活動に反対することが現状維持になるということです。何も行われていないのですから、平和構築活動のように、あらたに活動を行うことは現状維持と反することになります。第二に、日本国はアフガン戦争に対して何かしらの支援をする、このことが基本的な態度である。とすると、民主党案に賛成することが現状維持になります。なかなか困難なテーマでした。結果的に可否同数にならなかったため私の判断が公になることはありませんでした。私がどのように考えていたのかは言えないのですが、二つのとるべき道があり、私は可否同数に備えて用意をしていたことは事実です。

私が議長をしていた3年間は、緊張の連続でした。与野党逆転が2度あったからです。民主党が政権を取る前に逆転し、野党が多数になりました。民主党が政権を取った後は再び逆転し、野党が多数になった。ねじれと聞くとあるべきではないことのように思うかもしれませんが、実は何回も起きているのです。1990年代にもありましたが、この「危機」は公明党と民社党が自民党に理解を示すことによって乗り切りました。そのほかにも、参院対策として自社さ、自自公などの連立政権が生まれるきっかけになりました。

 与党である民主党は第一党から転落しました。民主党は何をしたのでしょうか。まず、無所属で当選している人を引っ張ってきます。また、たちあがれ日本から与謝野さんを、浜田さんのように自民党に手をつっこんで引っ張ってくるということもありました。しかし、議員の政党間移動は難しく、大勢の野党議員が与党の側に移動するということはありません。

 そこで一時は大連立を、という声が聞こえました。大連立になると国民の選択肢が狭められるという批判があることは承知しています。しかし、ねじれが生じている以上政治を前に動かすことができないことも事実です。私は大連立を頭から否定するような態度はとりません。ドイツでは大連立政権が誕生しているように、諸外国では意外と経験を積んでいるのです。他の党も政権に関わることによって政権担当能力を身につけることができます。しかし日本では非常に少ないのです。現状では、やはり野田さんの言うように「正心誠意」やるしかないと考えています。

  両院のねじれ状態について、もう少しお話ししておきたいと思います。日本では何故、ねじれによってここまで困るのかということは、逆に言えば外国では日本ほど困っていないのです。システムの問題になるので、いくつか例を見てみましょう。まず、イギリスでは上下両院の権限の違いは非常に明確になっています。実質的な権力はすべて下院が持っています。近年の上院改革によって、下院がますます強固な権力を持つようになっています。アメリカでは、そもそも議会と大統領が明確に独立した存在です。アメリカでは、議会で大統領の属する政党が多数であったとしても、オバマ大統領をいつも支持しているわけではありません。

 もちろん、外国が「ねじれ」によって苦労していない、とは言いません。さまざまな苦労があり、その結果としてうまく進むようなシステムを構築しているのです。その上で、日本の苦労はまた質が違います。下院に擬せられる衆議院は、予算と条約しか優越が認められていません。あとは参院が否決した法案を3分の2の議決を持って再可決することもありますが、ハードルは高いのです。日本では上下院の関係ではなく、実は両院関係になっています。

 衆参両院が同じような権力を持っているということに関連して、その中身も非常に似通っている。具体的に審議について見てみます。衆院には財務金融委員会、国土交通委員会のような各常任委員会があります。これはほとんど、省庁の別に対応しています。参院でも、衆院と同様に省庁に対応した委員会建てになっています。以前、事項別の委員会にして審議を行ったこともありますが、いつの間にか省庁別の、それまでの審議形態に戻ってしまいました。参院には決算委員会と行政監視委員会のように独自色を打ち出した委員会もありますが、やはり衆院と似ています。

 審議の方法についても同様です。大臣は、衆参両院で同一の演説を行いますし、内閣総理大臣の施政方針演説は同日に衆参で演説をします。1度でいいじゃないかという意見もあります。アメリカでは上下両議員が集まり、議会で教書演説を行います。それでは日本も衆参両議員が集まって、ということになりますが、場所がないのです。では武道館はどうだ、というのもありますが、やはり議会ですから、そういうわけにもいきません。一方で、国会の開会式は一緒にやっています。天皇を呼んでやるわけで、伝統的設備的に参議院で行います。さっき全員入らないと言ったじゃないか、といわれるかもしれませんが、これは全議員が集まるわけではないので、現状では足りています。開会式はどのような方式になっているかというと、開会式の主催は衆議院です。そして衆議院の議長が式辞を述べます。参議院は場所を貸しているだけで、こうしてバランスを保っているとも言えます。

 やはり日本は、衆参が別の院であって、それぞれの演説が、それぞれの審議のスタートになるわけです。こういう説明もできますが、やはり改革の余地は十分あると思います。

余談になりますが、国会は正面から見て左側が衆議院、右が参議院になります。理由はわかりませんが、私は、おひな様をヒントに理由を考えました。おひな様の下の段には左大臣と右大臣がいます。昔の官職では、左大臣の方が偉い。右大臣は左大臣の下になります。参議院は国会全体からすると左側になりますので左大臣、参議院の方が偉いと考えました。しかも参議院はもともと貴族院です。 

 少し脱線しました。衆参の選挙制度についても考えてみましょう。細かい点で相違はありますが、基本的に両院は選挙区選出と比例代表選出の組み合わせになっています。衆議院が小選挙区比例代表並立制で、参議院が選挙区と比例代表が並立的に用いられています。衆参同日選挙ともなれば、有権者は国会議員の票だけで4つの票を持たなければならず、とても大変です。しかも参議院の比例代表は全国区、しかも非拘束名簿方式です。記入所の壁には、大量の名前が書かれた名簿があり、選ぶだけで疲れてしまいます。選挙制度の問題と併せて、本当にこれで良いのか、制度設計を考えなければいけません。

 日本の二院制について見てきましたが、参議院に対して「衆議院のカーボンコピーだ」という意見があります。参議院は無駄である、参議院は(衆議院にとって)邪魔であると言われています。

 先週少しお話ししましたが、参議院が超権力を持ちそうになったことについて触れておきたい。

 西岡参議院議長は、衆議院から送付されてきた予算案を受け取らなかった。翌日受理しましたが、やはりそれではいけないのです。繰り返しますが、1日の遅延で受理しても良い、ということになれば、原理的には2日でも5日でも良いことになってしまいます。これは憲法に定められた衆議院の優越に反することです。西岡さんには出身会派の民主党や参議院の事務局から進言があったと聞きます。私もこれではいけないとアクションを起こしました。

  選挙制度の話に戻りましょう。このテーマは非常に深刻ですが議論が煮詰まっていません。衆議院は、最高裁に違憲状態であると言われたからか、議論が進んでいます。最高裁は、衆議院の小選挙区における一人別枠方式を改めるようにと、非常に具体的なことまで言われてしまいました。一人別枠方式は、300ある定数のうち、まず47都道府県に1ずつ振り分けます。その上で残った253議席を人口に応じて振り分けます。そうすると各県における選挙区の最小単位は2となります。具体的に言えば、最小の人口である鳥取県が2議席を持つのです。そうすると、どうしも2倍以上の格差がついてしまいます。最高裁は、一人別枠方式が激変緩和措置として導入され、その意義が薄れてきたことなどを指摘し、これは改めるべきであり現状では憲法違反であると言いました。定数是正については既にできる段取りになっていますが、大本の制度を変えない限り、毎回の選挙で1票の格差問題が残ってしまうことになります。参議院も定数配分について違憲状態であると指摘されていますが、これは進んでいないのです。

 ガソリン税について少しお話ししたいと思います。

 衆議院が内閣提出の租税特別措置法案を可決して参議院に送付しましたが、当時参議院での多数派であった民主党は、その中からガソリン税暫定税率の部分だけを除いた法案を議員提出しました。国会法では、他の議院から送付または提出された議案と同一の議案を審議することができないという規定があり、これを一事不再議(一事不再理は刑事訴訟法での用語)といいます。ここで問題が出てきます。

 衆議院から送付されてきた法案には、道路の補修や建設のためだけに使われる道路特定財源について、ガソリン税や自動車重量税、取得税などの税率の特例措置の適用期限を10年延長することが盛り込まれていました。内閣が提出したものです。民主党はみなし否決を回避するために別の法案を参議院で可決し、衆議院に送付しようと考えました。

 議長だった私は、とても困りました。民主党提出の議案が手許にあったのですが、民主党はよくこれを考えたなというのが感想でした。国会法などの議事法に詳しい議員がいるのかな、と思いました。しかし、両院はそれぞれ自立した存在です。衆議院のことは衆議院で決める、これが大前提です。衆議院が「これは同一の法案であり、参議院は否決したのだ」と判断して再可決を行った場合、参議院は文句を言うことはできません。民主党のやり方は技術的すぎて、法体系の理念にはそぐわないと判断しました。

 暫定税率の法案が参議院で採決されなければ、年度末で失効します。1リットルあたり25円の税金が無くなり、ガソリン代が下がるわけです。政府としては我慢ならない事態です。一方で民主党は、国会が国民生活に直結しているということを国民に自覚してもらいたいための行動だったわけです。

 政府はとにかく、他の歳入法案を裁決することができない情勢の中で、年度末での暫定税率廃止を避けるため衆議院での3分の2による再可決を念頭においた、つなぎ法案を出します。つなぎ法案は1月中に衆議院の委員会で可決されました。つなぎ法案(ブリッジ法案とも言いました)は少し奇策に過ぎるのではないかと私は考えていましたから、どうにかしないといけなかった。そう考えているときに、国会の前で河野議長と会って、後で話し合おうということになりました。ニュースにも出ましたが、これが両院議長による斡旋です。しかしこれは斡旋ではないのです。私たちがサインした文書があるわけでもありませんし、とにかく与野党ともによく考えてくれと言ったのです。結果として自民党がつなぎ法案を撤回し、年度末までに一定の結論を出すということになりました。

 結局、自民党は衆議院から送付された法案は参院で否決されたとみなそうということになり、参議院で中間報告を求める動議を提出したのです。法案はまず委員会に付託され、審議されますが、この動議は、法案を委員会から取り上げ、本会議において法案審議の報告を求めるものです。最終的に中間報告を求める動議は否決されましたが、その後60日経過当日、法案を衆議院に返付することを求める動議が出され、可決されました。民主党の方から私に、返付しないでほしいと働きかけがありましたが、やはりルールを無視するわけにはいかないのです。暫定税率の法案は返付されました。

 このような経緯をへて、暫定税率は一旦廃止されたものの復活しました。成立した法律には10年間の延長が定められていましたが、その朝福田内閣は暫定税率延長を1年とすることを閣議決定していました。これならば両院協議会を開き、閣議決定があるのだから10年ではなく1年の延長である、ときちんと話し合えば合意に達することもできたはずなのですが、それもかないませんでした。とても残念です。この両院協議会については、次回で詳しくお話ししたいと思っています。

  ご報告があります。今日、衆参両院で憲法審査会の会合が初めて開かれました。法案成立から4年たって初めての会合です。そこで会長の選出が行われましたが、衆議院の会長には大畠さんがきまりました。参議院では45人が審査会に所属します。通常であれば、動議によって会合の主宰者に会長指名が行われます。参議院では年長者の江口さんが主宰者となりました。しかし、参議院ではそのような動議が出なかったために選挙となりました。私は会長候補となりましたが、22対23で負けました。民主党の幹事にはなりましたが、憲法に関する議論、会長選挙を1票差で決めるとか、幹事も5対4で決めるとか、このような僅差での選出はどうなのでしょうか。憲法審査会を設置する法案審議や、国民投票法の審議の時、怒鳴り合いになってしまった経験があります。このような問題はもっと落ち着いて議論すべきであると私は考えます。なぜこのような鋭い対立が生まれたのかといえば、当時の政治指導者が憲法改正を選挙の争点にしてしまったこと、そして自分の手柄にしようとしたのです。憲法審査会は4年間のブランクがあったと言いましたが、これも無理に決められたためにこれまでずっと止まったままだったのです。憲法は理性的に話し合いたいというのが私の願いです。今回は以上です。

【質疑応答】
(質)選挙制度改革について質問します。司法府は選挙にかかわる格差など、立法に関わる事柄について、踏み込んだ言い方をいません。私は、最高裁が違憲立法審査権を放棄していると思うのです。もっと積極的に言うべきです。このままでは、最高裁は単なる老いぼれの集まりではないでしょうか。

(答)司法府が逃げ腰なのではないかという指摘ですが、私はそのように思いません。一票の格差の問題について言えば、これは司法府が問題なのではなく、違憲状態であるとまで言われているのに直さない立法府の問題であると思います。仮に今以上に強いニュアンスで言おうとすると、もう全議員の当選無効しか言えないのです。数人の当選無効であればできるかもしれませんが、総選挙そのものが無効ということになってしまい、事情が大きくなりすぎてしまいます。あくまで立法府が解決すべき問題です。

 また、立法府の中にも大胆な人がいて、裁判所が偉そうに言うべきではない、選挙のことは国会が決めると言う人がいます。しかし、憲法に適合しているかどうかは裁判所が行うと憲法に明記されていますから、この人の言うことは当たりません。

 今回は非常に細かい話をしました。細かすぎて分からない方もいるかもしれませんが、そこはやはり大学院生なのですから、分からない部分は自分で調べる、制度論についてもきちんとついてくることが大切であると思います。

2011年10月21日−第6回「二院制の意義と現実」(続き) ホーム講義録目次前へ次へ