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 金融安定化二法について 
 [1998年2月18日(水)] 

 金融システム安定化策として、二つの法律ができました。2月16日の参議院本会議で可決成立したものです。二つの法律のねらいは、二つあります。その1は、金融機関が破綻した場合に、預金者の預金を無制限に保証するため、預金保険機構を強化すること。その2は、金融機関の体質強化のための資金を用意することです。私は、その1は半分賛成ですが、その2は反対です。

 まず、その1について。2001年に、金融ビッグバンが予定されています。その後は、「ハイリスク、ハイリターン」で、欲にかられて危ない金融機関を選んだら、破綻した場合にも預金者がリスクを負うことになります。つまり、預金の保証は1000万円までとか、限度を設け、それ以上は泣き寝入りとなります。しかしそれまでは、預金は無制限に保証することになっています。その仕組みが預金保険機構で、ここに税金から17兆円お金を用意して、ビッグバンまでは金融機関がいくらつぶれても大丈夫なようにし、国民を安心させようというものです。

 このこと自体は賛成です。しかし、用意したお金は、最終的には金融機関の保険料で賄うべきもので、税金で最後まで面倒を見るというのは賛成できません。

 次に、その2について。ビッグバンに備えて、金融機関の体質強化が必要です。そのため、今年の4月から、分母を資産額(貸出額等)、分子を自己資本額として得た「自己資本比率」が8%(国内業務のみの場合は4%)を切ると、早期是正措置といって、大蔵省から注意を受けることになります。そこで金融機関は、自己資本比率をよくするため、分母を減らすか分子を増やすかしなければなりません。分母を減らすのが貸し渋り。これは困ります。そこで、分子を増やすお手伝いをしようというわけで、その方法の一つとして、株や土地の評価の方法を変えようとしています。これは小手先のことで、国際基準にも合致せず、疑問です。

 もう一つの方法が、優先株とか劣後債とかというものを金融機関に発行させ、これを国が引き受けることにしようというものです。その費用として13兆円を税金で用意しようというのがその2です。

 ちょっと聞くと良さそうですが、果してそんなにまでして金融機関を助けなければいけないのでしょうか。みなさんの周辺で、本当にそんなに金融機関が困っていますか。

 もともと正確な情報があまりにも秘密にされすぎているのです。不良債権がどのくらいあるのか、大蔵省の言うことも20何兆円とか70何兆円とか、いろいろで信用できません。本当は100兆円を超えるという説もあります。情報公開が必要です。

 バブルのときに無茶をやった結果おかしくなった金融機関は、やはり整理が必要です。それをせずに、助けてばかりで問題を先送りすると、金融秩序の体質改善に逆行することになります。

 それなのに、おかしくなった金融機関に手を上げさせると取り付け騒ぎが起きて大変だから、絶対大丈夫な銀行から先にお金を差し上げましょうといって、求められてもいないのに押しつけて、東京三菱銀行に劣後債を発行させようとしているのです。

 そうでなくても大蔵省は、金融検査部汚職で、金融機関との怪しげな関係が取り沙汰されています。大蔵省から金融機関への大量の天下りも明らかになっています。証券会社との怪しげな関係が取り沙汰される国会議員(新井将敬代議士)もいます。

 誰に見られても恥ずかしくない処理の仕方でなく、国民の不安をあおって、秘密主義でことを運ぶのは、人の噂も何とやら、国民なんかこわくないという、官僚や自民党の得意技で、影で誰が舌を出しているか、よく見抜かなければなりません。

 私は、住専のときに主張したように、法律的にもすっきりした処理にすべきだと思います。整理すべきものは整理し、倒れるべきものは倒すことが大切です。だから、情報公開その他の課題に一切手をつけず、金融機関を助けるだけのこの処置には反対です。

 法律は成立していますが、どうお金を出すかは、まだまだこれからです。目を光らせておかなければなりません。

江田五月

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