2015年9月19日

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参議院本会議 総理問責決議案賛成討論

民主党・新緑風会 神本美恵子


  安倍総理、私を誰だか知っていますか。
 私は、民主党・新緑風会の神本美恵子です。ただいま議題となりました安倍総理に対する問責決議案について、賛成の立場から討論いたします。

  以下、問責決議案に賛成する理由を述べます。
まず、第1の理由です。
 昨日、政府与党は、たくさんの国民の声を無視して、日本の将来と世界の平和に大きく影響を与える安全保障関連の法案の採決を強行しました。 しかも、今回の強行採決は自民、公明の議員が突然委員長を 取り囲み、まさに丸裸の暴力により、行われました。 野党議員が取り囲む場合と異なり、野党議員は委員長が何を話し、何をしようとしていたのか全く推量不能状態でありました。 その結果、野党議員は評決権の行使が出来なかったのが実情であります。
委員長は国会法48条で議事整理権を有しているものの、委員の評決権を奪うことはできず、野党議員が評決権を公使できなかった今回の採決は無効である、と断ぜざるを得ません!

 さらに「突撃!」と言わんばかりの委員外議員の合図から始まり、委員長席周辺での信じられない光景、その騒動と同時並行で私は不思議な光景を見ました。質疑者席で誰も聞いていないのに、2人の議員に守られるようにして、ひたすら原稿を読んでいる人がいたのです。何をしていたのでしょう。議事録に何も残っていないのでわかりません。まるで茶番劇。

 この間、多くの人たちが「アベ政治を許さない」というプラカードを掲げ国会を包囲しています。国民が許さない「アベ政治」とは何か。それは、第一に国民に対し「真実」を語らず「嘘」をついていること。第二は米国への「追従」、第三には安保法制の真実を報道しようとするメディアや自らの意見を声に出そうとする人びとに「恫喝」をかけることです。

 「アベ政治」は、「真実」を語らないので国民は、いつも政治を疑い、裏に真実が隠されているのではないかと疑心暗鬼でいるのです。それを百も承知で強行採決をする。国会での質問に答えず、意味のない答弁をうわ言のように長々と繰り返す。特にこの安保法制が成立したときに国民や自衛隊員にリスクが高まるのかどうかについて、何の検証もなくリスクは高まらないという「嘘」を簡単に言えてしまう。つまり、先にしてしまったアメリカとの約束を守るために、国民には「嘘」を繰り返す。自民党の若手議員のメディアを弾圧する発言や総理と親しい作家の百田尚樹氏による『沖縄の2つの新聞は潰さなければならない』という発言になんら手を打たない。「アベ政治を許さない」とは、そういう国民の気持ちに他なりません。

 総理、あなたも認めているように、多くの国民が納得し得るような審議が尽くされていない、そして、最初から極めて憲法違反の疑いの強い安保法案を衆議院に引き続き参議院においても強行採決をする理由がなんなのか、国民は、よく理解しています。それは、米国への「追従」のためであるということを、です。

 総理、今年4月にアメリカの連邦議会上下両院合同会議で日本の総理大臣として初めて演説する機会を得て、総理、あなたはさぞかしうれしかったのでしょう。自らをエイブラハム・リンカーン大統領に例え、アメリカの民主主義をたたえました。国内では、日本国憲法は占領軍の押し付け憲法だと忌み嫌う総理が、アメリカではあたかも日本の民主主義がアメリカのおかげで成熟したかのような発言をする、あなたの二枚舌には驚きと同時に、国民を代表する政治家として赤面するしかありません。

 
第2の理由を申し上げます。
 私たち、女性の国会議員は、現在、国民の皆さんに選ばれて国会に身を置くものとして、戦前は女性がいなかったこの国会に、今、この平和憲法下に保障された参政権の上に国民の付託に応えるべく仕事をしています。
安倍総理、たくさんの人たちが今も、この国会を取り巻いています。ベビーカーを押した「ママたち」を国会内外で毎日、見かけました。子どもたちが国会の食堂や廊下で楽しげに笑っている姿をこのママたちがどんな気持ちで見守っているか、総理は考えたことがありますか。「徴兵制」などありえない、そう幾度繰り返しても、なぜそうなのかを説明できない総理が信頼されることはありません。
 9月8日の参考人質疑で、伊藤 真参考人は次のように述べられました。「徴兵制は、憲法十八条に反するから全くあり得ない、と言います。憲法十八条で「意に反する苦役に服させられない。」とありますが、しかし、これは公共の福祉で制限できると解釈されているものです。ということは、必要性、合理性が生じたならば徴兵制も可能ということを意味します。」

 そうなんです。憲法9条があり、歴代内閣が集団的自衛権は行使できないとの立場を貫いてきたにも関わらず、いとも簡単に内閣法制局長官をすげかえ、15日の中央公聴会で浜田邦夫公述人に「今は亡き」内閣法制局とまで言わしめたように憲法を踏みにじるあなたが「徴兵制」はあり得ない、野党が煽っているだけだといくら言っても誰も信用しません。安保関連法案には、女性の反対の割合が、男性に比べて際立って大きいことを総理はよく知っておられるでしょう。そこには、決して騙されないぞ、という、女性たちの声が集約されているのです。

 「だれの子どももころさせない。自分の子どもだけではない、だれの子どもも殺させない」、「殺したり、殺されたりするために子どもたちは、生まれてきたのではありません。戦場に駆り出され、銃口を向け合う人たちの間に、そうしなければならない必然性はどこにあるのでしょうか。戦争を必要としているのは、わたしたちではありません。戦後70年となる、この夏。わたしは、他の誰でもない自分の声をあげます。」これが、ママたちの決意です。

総理、気が付かれましたか?ママたちは、誰でもない、私自身として声をあげているのです。戦後70年談話を「わたし」という主語を明確にして語らなかった総理とは違うのです。

私は、小学校の現場で長い間、教師をしてきました。その中で「教え子をふたたび戦場に送らない」という言葉に出会いました。誰の子どもも戦場に送らない、そういう決意のもとで活動をしてきました。先ほどのママたちと同じです。

さて、安倍総理は、特別委員会の議論の際に、再三にわたってヤジを飛ばしました。審議の中で総理大臣席からヤジを飛ばすこと自体が前代未聞です。しかし、安倍総理、あなたがヤジをとばした相手、それは女性ばかりです。

衆議院の特別委員会では、辻元清美議員に、参議院では蓮舫議員に、その前には、私自身にも私のいない所でヤジを飛ばしました。自分と意見が違う女性の議員とは議論ができない、あるいは女性の意見は聞くに値しないと、心のどこかで思っていらっしゃるのではないでしょうか。それとも、安全保障は、男性の問題だと考えているのですか。

総理のヤジは、人間としての品性のなさばかりか、気に入らないことがあると立場と状況を見失う幼児性、そして何よりも女性蔑視以外のなにものでもありません。

日本国憲法 第二十四条には、立法府は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚する立場を決して忘れてはならないと書かれています。
安保法案が審議されている最中、高校の保健体育の啓発教材として、『健康な生活を送るために』という副教材がすべての公立高校に約130万部、配布されました。そこには、妊娠、出産をできるだけ若年のうちにするよう誘導する意図的な内容が加えられています。戦前の「生めよ、増やせよ」という政府の意図を思い出さざるを得ません。女性のリプロダクティブ・ヘルス/ライツ、妊娠出産にかかわる自己決定権、を不当に侵害し、多様な性や多様な生き方を否定するものです。安倍総理、ここにもまた、「嘘」と女性蔑視を高校生に教えようとする安倍内閣の体質があらわれ、あなたの政治が許されない理由があります。

そして、これは、安倍総理の「富国強兵路線」に他なりません。アメリカの議会での演説のあと、別の場所で総理は、「アベノミクスと私の外交安全保障政策は表裏一体」だと語りました。自立した女性はいらない。女性には、「子どもを産む機械」として家族の再生産のためにあらゆる犠牲を払い、国のために尽くせといわんばかりです。断じて認めるわけにはいきません。

 
 次に、第3の理由を申し上げます。
安倍内閣は「働く人」を軽視しています。労働者派遣法の審議では、衆参両議院で、派遣業務に就く女性たちの悲痛な声が、参考人質疑で上がっていたにもかかわらず法案を成立させました。そこには50項目もの附帯決議がつけられるほどであり、不当な法案であることは明らかです。この改悪の結果、事務系正社員の派遣への置き換えが進むと考えられており、労働者間、特に女性の間の格差がなお広がり、分断が進むと考えられます。総理は、「すべての女性が輝く」と言っていますが、その言に反する政策の代表が派遣法改定であります。

「アベノミクス」は実体経済の改善にはつながらず、非正規雇用の増大、格差拡大をもたらしています。「輝きたくても輝けない」女性たちを輝ける場所までつれていく、それが政治の役割です。大企業の利益の滴り、おこぼれを底辺の人間は待っていろ、そして少しは国の役に立てということを総理は、丁寧な言葉で語っているにすぎません。国家はいわば国民に雇われたサービス事業者です。この基本的な関係性を理解できない政治家は今すぐに、国民から解雇されるべきなのです。

「アベ政治」の暴走によって、自由と民主主義の基本が壊されようとしています。「民主主義」って何だ、若者たちは、「アベ政治」に問いかけています。若ものたちが自らの思いや考えを発信し、その若者たちとこれまでの平和運動には、ゆるやかで広いつながりができ、全国津々浦々に広がっています。市民が育んできた平和主義は日本の戦後そのものの歴史をつなぐものであり、その人びとの思いを実現するために、まずはアベ内閣の退陣をもとめます。安倍内閣と与党の暴挙によって、平和も立憲主義もそして民主主義も、またさに「存立危機事態」です。

 
今、一度、すべての議員の皆さんに安倍総理問責決議案へのご賛同を呼びかけ私の討論を終わります。

2015年9月19日 9月18日 参議院本会議 総理問責決議案賛成討論

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