2015年3月25日

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平成27年3月25日 
所得税法等改正案 
民主党・新緑風会 おだち源幸


民主党・新緑風会のおだち源幸です。
会派を代表して、所得税法等改正案について質問を致します。
まず、数字をあげたいと思います。
「1,200億9,784万」
大変大きな数字ですが、みなさん何の数字かお分かりでしょうか?
これは、試験研究費に関して、租税特別措置による「1企業グループ」への減税額です。1つの企業グループへの減税額が1,200億円を超えているのです。この租税特別措置の問題点については、後程あらためて指摘します。
【法人税減税】
  さて、本法案の一番の大項目は、「法人税減税」です。
私たちは、今回の法人税減税は実施すべきでないと考えます。
これから、その理由について述べますが、政府としてそれでも法人税減税が必要だ、という理由があるのなら、お聞かせ下さい。財務大臣に伺います。

私たちの立場を明確にしておきますと、法人税減税そのものに反対している訳ではありません。現に、私は財務大臣政務官として、成長を促すために法人税率引き下げのとりまとめに関わりました。もちろん、財源もしっかり確保しました。
ただし、この法人税率引き下げは、26年度から実施したばかりで、現段階で減税の効果の検証がまだ十分にできていません。
減税の影響と効果をしっかりと見極める前に「更なる」税率引き下げを行うことは、筋が通らず、「企業の歓心を買うために、とにかく減税した」と言われてもしょうがありません。

私たちは、「儲かっている企業から、税金をがっぽり取れるだけ取ればよい」などとは決して考えていません。
財政難の中、減税も含め限られた財源をしっかりと効果的に使う必要があるのです。

今回の法人税減税は2年間、減税のみが先行で行われるため、2年間で4,120億円の歳入の欠陥を生じます。

安倍政権の法人税減税は、今回の法人税減税だけではありません。
思い出してください。
昨年、個人の負担、すなわち復興特別所得税は残したまま、復興特別法人税だけを前倒しで廃止しており、ここでも6,453億円の減税となっています。
つまり、安倍政権は、一連の法人税減税で1兆円以上の減税をしようとしているのです。

そもそも復興特別税は、「復興を国民みんなで成し遂げるために、財源もみんなで負担しよう」という理念で決めたものです。
これを無視して、とにかく法人税率を引き下げて企業優遇しようという安倍政権の姿勢は正しいでしょうか。財務大臣に伺います。

東日本大震災から4年が経過しまました。
ある報道機関の調査によりますと、安倍政権の復興への取り組みを「評価する」人は3割にとどまり、6割の人が「評価しない」と回答しています。
復興特別法人税の前倒し廃止にみられるように、全国民が被災地に寄り添い、一緒に復興を成し遂げていく、という意識が安倍政権にないことが国民にみすかされていると考えますが、財務大臣はいかがお考えでしょうか。

 

【租特透明化】
  続いて指摘したいのが、冒頭にあげた租税特別措置、いわゆる租特の問題です。
租特は、英語では「タックス・エクスペンディチャー」=「租税支出」と言われます。
「租税支出」という観点及び政策の効果を検証するために、租特の適用実態を明らかにすべきと考え、私たちは、政権獲得後いわゆる「租税特別措置透明化法」を成立させ、様々な租特の適用実態を明らかにしました。

その結果、冒頭にあげたように、1つの企業グループに対して「1200億円」もの減税が明らかになりました。
しかし、これだけでは十分ではありません。
現状では、この1,200億円の減税を受けている企業グループが、昨年や一昨年はどのくらい減税を受けていたか、という経年変化が分かりません。
税を減免する租特は税による支出であり、国民の理解・納得を得ることが不可欠です。租特の利用状況や利用の偏りを把握するために、経年変化を把握する手段として毎年固定の企業コードを付けることが必要だと考えますが、いかがでしょうか?財務大臣に伺います。

【企業団体献金】
  次に安倍政権による企業減税に加えて、自民党への企業団体献金について指摘します。

大手企業の代表である経団連は、昨年9月に「(安倍政権と)徹底的に手をつなぐ」として、会員企業に対して自民党への企業献金の呼びかけを行うことを明らかにしました。
かつて年間100億円を献金していた時代の「あっせん」を彷彿させるものです。

報道では、「民主党政権時代に減った総額10億円の献金を呼び戻す」ことが目標だと伝えられています。2013年度は、自民党の政治資金団体である「国民政治協会」への企業団体からの献金は19.5億円で、これに10億円を足すと29.5億円、1.5倍にもなります。

安倍政権による1兆円以上の法人税減税と経団連などによる企業団体献金の増加は、少なくとも時期的には関連があるようにみえます。
大人の論理として、色々と理屈による言い訳はできるかもしれませんが、その論理を子どもの眼をみて言えるでしょうか。

【格差・貧困問題】
  1兆円を超える法人税減税を行う前に、他にやるべきことがある、というのが私たちの立場です。
  まず、取り組むべきは教育への投資であり、貧困問題の解決です。
昨年、ある新聞記事が話題となりました。
北九州市に住む40歳のフリーターの方が、借りた奨学金を返済できないため自己破産したというものです。
返還猶予制度や減額返済制度の導入など、政府の努力は一面では認めます。
しかし、です。
無利子奨学金については、27年度予算案で増額とはいえ、125億円の増額に留まっております。
また、返せなくなった方へのフォロー体制は十分でしょうか。少なくとも先程例にあげたフリーターの方はなぜ、自己破産までしなければならなかったのか?
3か月以上延滞している方々へのフォロー体制にもしっかりと予算を組む必要があると考えますが、財務大臣はいかがお考えでしょうか?

貧困問題については、ひとり親家庭の子供の貧困問題を取り上げたいと思います。
既に皆さまご存じの通り、ひとり親家庭の子どもの貧困率は5割を超えております。
半数以上が122万円以下の世帯収入で暮らしています。

ひとり親家庭のお母さん・お父さんは一生懸命働いていても、苦労しています。
厚生労働省の「ひとり親家庭等福祉対策関係予算案」では、27年度については2,252億円の予算案が計上されていますが、26年度に比べて13億円減額されています。
貧困の連鎖を防ぐために、もっともっと必要な予算を確保するべきと考えますが、財務大臣のお考えを伺います。

母子家庭の平均年間就労収入は181万円です。児童扶養手当もありますが、真面目に働くひとり親について、例えばヨーロッパでも活用されている勤労税額控除制度を導入し、収入の底上げをする必要があると考えますが、財務大臣の見解はいかがですか?

生産年齢人口が減少するなか、何よりも、教育や人への投資こそが真の成長戦略ではないでしょうか。
企業にも世界で活躍してもらい、活発な経済の担い手になってもらう必要がありますが、その経済を支える人が困窮していては、いくら企業が潤い、投資をしても社会は継続的には成り立たないのです。
安倍総理は「企業が世界で一番活動しやすい国をめざす」と仰いますが、私たちは「真面目に頑張る働く人たちが一番幸せを感じられる国にする」ことが大切だと考えています。
今やるべきことは、法人税減税ではなく、貧困の連鎖を止め、若者の教育・人への投資をすることこそ、真のとるべき政策だと考えますが、財務大臣、いかがでしょうか。

【自動車関連税制】
  企業減税をする一方で、貧困対策・若者対策を十分にとらない安倍政権ですが、今年の4月からは軽自動車税を増税する、という地方の人々に対する配慮がない税制改正を実行します。私たちは、今回の政府提出法案に対して、衆議院に対案を提出しましたが、そのうちの1つが軽自動車税増税の取りやめです。
 
私たちは、自動車関連税制については車体課税の抜本見直しなどユーザーの立場にたった税制改正を主張してきました。自動車ユーザーの多くは地方に住んでおり、地方では車は日常の足です。その日常の足をしっかり守ることが、地方の活性化にもつながると考えているからです。
しかし安倍政権は、車体課税を抜本的に見直さないばかりか、この4月から軽自動車税の増税を実行するのです。
  これが「地方を大切に」という政権の取る政策でしょうか?
法人税減税を行う一方で、地方には景気回復の波も行き渡らない中で、地方で重宝されている軽自動車税の増税を行うことは、言っていることとやっていることが真逆だと言わざるを得ません。
総務大臣の見解をお聞かせください。
【消費税】
  続いて、消費税について質問をいたします。
消費税の逆進性を緩和する観点から、減収などのデメリットが多い複数税率ではなく、必要な方に支援がしっかりと届く「消費税の払い戻し措置」を導入すべきと考えています。
複数税率にすると、減税の効果は高所得者層にもおよぶため真の逆進性対策とならず、また一部の品目について税率を軽減するため、税収不足が生じ、税収を確保するためにヨーロッパなどのように標準税率を高く設定しなければなりません。また、中小企業にとっては事務手続きが非常に煩雑になるという問題点もあります。
そもそも三党合意で成立した法律上は、複数税率だけではなく、給付付税額控除についても検討すべし、となっておりますが、政府における給付付税額控除に関する検討状況はどうなっているのでしょうか。財務大臣に伺います。
また、複数税率のような後世に大きな禍根を残す制度は導入すべきでないと考えますが、財務大臣の見解はいかがでしょうか。
【安倍総理の外国訪問】
  最後に、外交について指摘したいと思います。
安倍総理は、就任以来積極的に外国を訪問しておられ、訪問国は54か国地域、のべにすると66か国・地域にのぼります。
訪問の際に、総理は様々な資金援助の約束をしておられ、単純集計するとその額は2013年には9,100億円、2014年には1兆5,200億円にのぼります。
資金援助は外交の重要なツールの1つですが、お土産をばらまくことで訪問国から相手にしてもらうのではなく、何より大切なことは相互の信頼関係に基づいて外交を行うことだと考えます。

この資金援助が、相手国に問題を引き起こすこともあります。
一例をあげると、インドネシア・バタン石炭火力発電事業はJBICによる融資が検討されていますが、現地において多くの人々が反対をしており、インドネシア国家人権委員会も土地買収を巡って人権侵害に関する勧告を出しています。このような状況は、JBICの融資のガイドラインである「社会的合意」に反していませんか。
今日までインドネシア大統領が来日しておられますが、人権侵害の指摘も含めて、バタン石炭火力発電事業について現状をどのように把握し、今後どう対応するのか、JBIC所管大臣として財務大臣の見解を伺います。
折角、日本の貴重なお金を使ってもニーズに合わない支援を行うことは、なんの感謝もされないばかりか、むしろ反発されてしまいます。
外交でお金をばらまくのが一番楽な方法ですが、簡単にお金をばらまき未来につけを残すのではなく、我が国の素晴らしい知恵と工夫と誠意を最大限活用して世界に貢献しようではありませんか。

 あらためて、将来世代につけを残さず、借金を先送りせず、限られた日本のお金をより活かす形で使うべきであることを申し上げて、私の質問を終ります。

2015年3月25日 2015年3月25日 おだち源幸さん代表質問

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