2014年9月29日

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2014年9月27日 「現代中国 国画展〜写意画の巨匠・斉白石とその一門〜」開会式挨拶
           公益財団法人 日中友好会館会長 江田五月


 日本では秋は、「食欲の秋」とも言われますが、やはり大切なのは「芸術の秋」です。中国ではどうなのでしょうか。その好季節の始まりに、今日ここに「現代中国 国画展〜写意画の巨匠・斉白石とその一門〜」が開催されることになりました。心からお祝い申し上げます。
 
 主催される中国国際放送局日本語放送には、実は私には思い出があります。ご存じの方も多いと思いますが、1940年12月30日に中国共産党によって短波放送として延安で始まったラジオ放送で、翌41年12月3日には初めての日本語放送が始まりました。私はこの年の5月に生まれたので、同い年です。一時中断しましたが、日中戦争が終わる45年8月に再開され、「北京放送」の名で長く親しまれてきました。実は私も子どものころ、ラジオから流れる「こちらは北京放送です」という声をよく聞いていました。困難な時代にも、両国の人と人との絆を育んでこられた中国国際放送局の皆さんが、今回のような企画にも尽力されていることに、心からの敬意を表します。

 私の初めての訪中は1943年、つまりまだ日中戦争の最中で私は3歳のころです。戦争に反対して獄中生活を経験した父が、つてを頼って河北省の水利工事に携わったためで、終戦直後、両親と中国で生まれたばかりの弟と一家4人で、まさに食うや食わずで引き揚げてきました。中国の皆さんには大変にお世話になったのだろうと思っています。
 その中国が、「改革・開放」の実現による最近の発展振りは目覚ましく、それこそ三日も見ないと見違えてしまうような大変化をしています。大都市の景観だけでなく、遙かな昔から伝わっている書や絵の世界でも、京劇を代表とする舞台芸術でも、古い伝統を踏まえながら、新しい文化の価値を実現してきています。私は子どものころから書に触れてきていますが、最近の中国の書も見ていてずいぶん面白い試みがあります。しかし現代中国の文化や芸術を、私たち日本人は十分には知りません。
 そのような中で、今回の国画展により、今年で生誕150周年を迎える中国画の巨匠である斉白石先生とその一門の皆さんの作品を通して、中国画の中でも特に禅宗文化の影響を最も深く受け継いでいる「写意画」の魅力と、その現代的な新しい展開を見ることが出来ると、私も大変に楽しみにしていました。一門の皆さんと日本人との深い絆も、興味深いですね。

 日中両国の関係が様々な困難にぶつかっている今日、このように両国間で連綿と続いている文化交流という絆を通じて、人と人は心が通じ合い感動や美しさを共有することができるという思いを新たにしています。私が会長を務める「公益財団法人 日中友好会館」も、名前のとおり日中両国の友好協力関係の一層の深化と発展を目指す国民レベルでの活動拠点として、文化交流、中国からの留学生受け入れ、日中青少年交流など、さまざまな分野で積極的に心と心を結ぶ交流事業を展開しています。今回の企画を目の当たりにして、私たちもさらに一層頑張らなければと思っているところです。

 日中両国は、長い歴史のある「一衣帯水」で切っても切れない、引っ越しの出来ないお隣同士の関係にあります。両国関係には、隣国だからこそ生じる懸案もありますが、だからこそ平素から国民各レベルで相互理解を深める息の長い粘り強い交流が大切なのですね。ここに盛大に開幕式を迎えられた「現代中国 国画展」の準備のために、両国関係者が流してこられた汗ほど、両国関係にとって貴重なものは無いと思います。必ずこのような努力の積み重ねが、両国関係の再構築と国民感情の改善に繋がると信じてやみません。
 
 最後に、「現代中国 国画展」のご成功を心よりお祈りして、私の挨拶とします。


2014年9月29日  9月27日 「現代中国 国画展〜写意画の巨匠・斉白石とその一門〜」開会式挨拶

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