2009年8月15日

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全国戦没者追悼式 参議院議長追悼の辞

平成21年8月15日
於 日本武道館

 天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、ご遺族の皆さまのご参列のもと、全国戦没者追悼式が行われるに当たり、謹んで追悼の言葉を申し述べます。

 異常に長く続いた梅雨も明け、今年もまた暑い夏のこの日を迎えました。この国の夏にはいつも、蝉時雨が止む一瞬のしじまのように、静かで透き通った時間があります。終戦から64年が経った今でも、あの胸の痛みは去ることなく、私たちを祈りへと駆り立ててやみません。戦地に斃れた兵士、戦火で命を落とした市民、最愛の肉親に先立たれたご遺族、そして戦争が心や体に残した傷に今なお苛まれている方々の無念と悲しみは、いかばかりでしょうか。心から哀悼の意を表し、お見舞いを申し上げます。

 戦後、わが国は焦土の中から立ち上がり、日本国憲法の掲げる平和、民主主義、基本的人権の理念のもと、半世紀以上にわたり、他国と戦火を交えることなく平和を貫いてきました。そして、多くの方々の尊い犠牲と国民こぞっての粘り強い努力により、目覚しい発展を遂げてきました。こうした先人の血の滲む努力を決して忘れず、しっかりと受け継ぐ決意を新たにしなければなりません。

 先の大戦では、国内外で苦難を味わった国民はもとより、わが国の侵略行為と植民地支配により、アジア諸国をはじめ広い地域の人々にも、多大な苦しみと悲しみを与えました。その深い反省の上に立ち、戦争の惨禍を二度と繰り返すことなく、真に世界から信頼される平和国家を築いていくことが、私たちの責務です。

 対立する相手との共存を求めず、排除にのみ走れば、身内の結束は高まっても、必ず対立が一層の紛争激化を生み出します。多様な意見にしっかり耳を傾け、ひたすら対話の努力を重ねていく以外に、平和を実現する道はありません。わが国は、世界で唯一の核兵器の被爆国であり、消し去ってはならない痛ましい経験を数多く持っています。米国のオバマ大統領の核廃絶発言で、世界が新しい扉を開こうとするこの機会に、先の国会では衆参両院で核廃絶の本会議決議を全会一致で採択しました。今こそ恒久平和の理想に向けて歩みを進めるよう、世界に働きかけていくことを決意します。

 終わりに、改めて戦没者の方々のご冥福をお祈りし、ご遺族の皆さまのご健勝とご多幸、そして今後の世界の平穏を心から祈念して、追悼の言葉といたします。

 平成21年8月15日

参議院議長 江田 五月


2009年8月15日

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