2008年1月8日

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<「時事ジャーナル」インタビュー記事訳>

“日本との関係正常化は韓国経済にも大きな助け”
江田五月参議院議長インタビュー/“韓・中・日 入り口をもっと低くするべき”

 1941年 岡山市で誕生
 1966年
東京大学法学部卒業
 1977年
社会市民連合代表、参議院当選
 1993年
科学技術庁長官
 2007年8月 参議院議長

 北の核問題を解決するための6者会談をめぐる北東アジアの平和と安定のため、韓日の緊密な協調がどの時代よりも重要な時期である。しかし、去る2004年以降、韓日両国首脳の間は、対話と交流が中止されていた。李明博次期大統領の登場を契機に、このような関係を一日でも早く正常化しなくてはならないという声が韓日両国で高い。韓国と日本が新たな同伴者的関係をどのように結んでいくか、また北東アジアの平和と安定にどのように到達するかが、注目されている。

 「時事ジャーナル」は、このような重要な時期を考慮して江田五月参議院議長と会った。彼は東京大学法学部を卒業した後、判事であったが、市民社会運動の父であり政治家だった父親が死去するとともに政治に飛び込んだ。参議院3選、衆議院4選を経歴し、2007年7月、参議院選挙で民主党が大勝利するとともに参議院議長になった。

― 韓日関係は冷却期だった。李明博次期大統領の登場で韓日関係がどのように変化すると予想しているか?

 李明博次期大統領には心からお祝い申し上げる。有効投票の半分近い票を獲得し、他の2候補を圧倒したのは、政権交代に対する韓国国民の希望が強いためだと思う。韓国での政権交代は、政治がきちんと機能していることであると評価したい。韓日関係を考えると、日本と中国の間には距離的な間隔があるが、韓国と日本は近い。お互い信頼して助けあい、力を合わせていく両国関係を作らなければならない。そのような意味でお互い良い方向に行かなければならないと思う。

 韓国も直さなければならない部分があると思うが、むしろ日本が直さなければならない部分が多い。例を挙げれば、日本人は対等な関係で国と国、そして人と人との関係を作るよりは、どちらが上でどちらが下と見る傾向がある。日本は優れており、韓国は十分に成熟していないと見る悪い習慣がある。民主主義の側面で見ると、韓国がより進んでいるように見ることもできるかもしれない。政権交代もそうだ。韓国人も、日本人が自慢する文化があるので、決して国境を超えてはならないということはせずに、良いものは受け入れたらと思う。

― 表面的には対等だが、実際にはまだ対等ではないと思う日本人はいないのか?

 戦後60年、日本国民の心の中には、まだ隣国を低く見る傾向があった。申し上げるのは何だが、「蔑視」という言葉がまだ残っている事。そういうものはあってはならない。もちろん、配慮するところもある。

 私の父は30年前に亡くなったが、幼いとき、貧しくて小学校を卒業して進学することができず、当時韓国に住んでいた姉の誘いでソウルに行き、善隣商業を卒業した。

 そんな縁で、韓国に知人も多く、韓国の多くの場所を見たりした。卒業後、日本に来て驚いたのは、韓国にいるとき、人力車を引く人は韓国人で、乗る人は日本人だったが、お金を投げて渡していた人たちが、日本に帰ってくるとお金を丁寧に渡していた。植民地というのが本当に間違ったことだと思ったと言っていた。人間を差別するような事実を見て、政治に目覚めるようになった。

 私の娘も韓国が大変好きである。娘婿はソウルの教会で洗礼を受けた。結婚式もキムチのにおいが漂う中だった。我が家族は皆韓国が大変好きである。

“李明博次期大統領は経済再建を最大の課題として政治をしていくと見ている。北東アジアの平和と安定、繁栄のため、EUのようなモデルも考えてみることができる。”

― 李明博次期大統領に一言言うとすれば。

 李明博次期大統領は、経済の再建を最大の課題にして政治を行っていくようだ。韓国国民も期待していると思う。経済のため、日本との関係を緊密にする必要がある。

― 韓日間の懸案の一つである自由貿易協定(FTA)が日本の農産物開放問題、そして両国間の政治的問題等のため中断している状態だ。新政府の誕生で、この間題についての論議の必要性が提起されているが、どのように展望しているか?

 国境という壁をなくして、人、金そして情報がお互いに行き来する必要がある。日本人の中には、韓国に攻撃されるようなことを思う人はいない。逆に、日本人の中にも日本が韓国を攻撃するようなことを思っている人はいない。ビジネスをすれば、儲ける人も損害を受ける人もいるが、相互関係は一層、発展させなければならない。交流を促進することはお互いにとって良い関係を作っていくことではないのか。

― 北東アジアの平和と安定そして発展のため、韓中日が中心の経済共同体を作らなければならないのでは?

 欧州連合(EU)を見ると、大きく進歩している。第二次大戦後、良い方向に行ったと思う。19世紀と20世紀前半はお互い侵略し合う歴史だった。しかし、最近はお互い戦争をするようなことは想像できない。国境を越える時、パスポートも全く統制されない。経済が大きく遅れる国々もEUに加入することでうまく行く傾向がある。平和的観点、経済と日常生活的観点でもよいことだ。なぜアジアはできないのか。北東アジアの平和と安定、繁栄のため、国境を低くすることは歴史的趨勢だ。

― 過去にも両国間の問題があったが、その度ごとにお互いをよく知る政治的人脈を通じて問題を解決した。韓日間の政治交流が過去とは全く違うようだ。

 過渡期だと思う。過去には特に1955年の自民党と社会党が対立していた時代の日本の体制、世界冷戦体制を見れば、韓国の政治家と日本の一部政治家が大変密着していた。多くの利権関係があった。そうではない日本の政治家には韓国の政治家は敵のようだった。この二つのグループが1955年体制で争う構造だった。すでにそのような構造はなくなった。日本にも与野党がある。韓国との関係も密着することがだんだん弱くなり、韓国側も利権を動かす政治をしようと思う人々がだんだん少なくなると思う。その意味で過渡期である。我々の世代は年をとっているが、次の世代は自由に交流していくと思う。また言うが、韓国の政治家と特別に密着する議員がいるので、そういうことは良いことではない。なぜなら、韓日間の関係は対等なのだから。

― 日本と北朝鮮の間の国境正常化のための非公式接触は成し遂げたか?

 よくわからない。現在日本は北朝鮮に対して不満が大変多い。これは、過去に日本人を拉致したという、北朝鮮も認定した事実に対して北朝鮮がもう少し誠実な、日本が信頼し期待するほどの動きがない面がある。日本人に、日本国民が北朝鮮という国家に拉致され消えたことについて、それは別にして、違うことをしてくれと言うのはなかなか理解しがたい。韓国人は同じ民族だから、非公式チャンネルがあると思う。日本国民が望むところを十分に理解するなら、手伝ってくれることを望む。信頼関係が形成されたら、日本も北朝鮮との良い関係を維持しようとすることは当たり前な話だと思う。

日本・イム ステク編集委員
時事ジャーナル950号(2008年1月8日発行)掲載
2007年12月26日取材)


2008年1月8日

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